ハイスクールD×D ~神(兄)と悪魔(弟)~ 作:さすらいの旅人
一先ず勝負は俺――兵藤隆誠の勝ちだが……あの
してやられたよ。まさか兄の俺が
俺のドラゴン波を受けたイッセーは力を使いつくしたのか、
「全く、お前には恐れ入ったよ」
「ははは……兄貴にそんなこと言われるなんて、初めてだな……ごほっ! ごほっ!」
俺の台詞にイッセーがしてやったりと笑みを浮かべるも、途端に咽て血を吐いた。同時にイッセーの左胸が徐々に出血していく。
早くイッセーを治療しようと完全崩壊した神殿へと降下し、俺はすぐにイッセーを横にしたまま地面へと下ろす。その直後には『治癒の光』を使って治療を始める。
「お前と言う奴は……ずっとこんな状態で戦っていたのかよ」
「ま、まぁな……ごふっ。兄貴と戦う前に、シャルバって野郎に、不意打ちを、喰らっちまってな……」
「シャルバだと?」
その名は確か、旧ベルゼブブの子孫――シャルバ・ベルゼブブっていう旧魔王の名だったな。
俺が始末した首謀者の一人――クルゼレイ・アスモデウスの他にいたのは知っていたが、まさかイッセー達の所にいたとは……。
「そのシャルバはどうしたんだ?」
「俺が、ぶち殺して、やった……。けどあの野郎……俺が、止めを刺す寸前に、ギリギリで、転移を、使って、逃げや、がった……ごほっ、ごほっ……」
「……そうか」
となると、シャルバの阿呆がアーシアを手に掛けた事によって、イッセーが
念願だったイッセーの
「それと兄貴、すまねぇ……。俺の所為で、アーシアが……!」
「もういい、それ以上喋るな。言っておくがアーシアは今……ん?」
おかしい。さっきから『治癒の光』を当てて、重症だったイッセーの左胸は完治してる筈なのに……どうしてイッセーは未だに完全回復しないんだ?
それに加えて、イッセーの
「おい、イッセー! 今になって気付いたが、お前……自分の命を
どうやって出来たのかは知らんが、コイツは以前のレーティングゲームでのシトリー戦で、匙がやった方法を実行していやがった!
「よ、よくお分かりで……。どうせ死ぬんなら、兄貴と戦う前に、無駄遣いしておこうと、思ってな……」
「だからあの時、
確かに考えてみれば、イッセーが
くそがっ! コイツ、自分が死ぬ事を前提として色々な事を考えていたな! 俺とした事が、それに全く気付かなかったなんて!
「ふざけるなよイッセー! 俺がお前を死なせると思ってるのか!?」
「思って、ねぇから、ああしたんだよ。それに、いくら兄貴でも、傷は治療出来ても、失った命までは回復、出来ねぇだろ?」
この野郎……それも見越して自身の命を使ったな! 俺のやろうとする事は何もかもお見通しかよ!
ここまでイッセーの思惑通りに動かされるなんて考えもしなかった。それに一切気付かなかった俺自身にも腹が立ってくる!
「兄貴、勝手で悪いけど、俺は、ここまでだ……。アーシアの後を追うから、父さんと母さんに、上手く、言っといてくれ……」
「だからアーシアは――」
「何か、疲れたから、俺もう、寝るわ……」
俺の話を全然聞かないイッセーは勝手に話を終わらせて、両目を瞑って眠ろうとする。
「おい! 勝手に寝ようとすんな……って不味い!」
本当に死ぬ寸前になっていやがる! このままイッセーが死んでしまったら、アーシアに何て言えばいいんだよ、このバカが!!
一先ず延命措置を施そうと
今の私ではもうイッセーを助ける術はない。となれば……もう一つの手段として、
すると、遠くから見守っていたリアス達が此方へとやってくる。
「リューセー! イッセーは大丈夫なの!?」
我先にと言わんばかりに、リアスが俺に駆け寄ってイッセーの容態を訪ねてきた。
「……イッセーはもう死ぬ寸前だ。もう
「そんな……!」
俺の言葉にリアスだけでなく、気絶してるアーシアを除く眷族の朱乃たちも顔を青褪めていた。自身の大事な存在が危篤状態だと知った事に。
その中で一番深刻な状態は朱乃だった。今はもう両膝をついて絶望寸前の表情になっている。
「どうしてよ!? あなたは全知全能の神なんでしょう!? どうして人間のイッセーを助ける事が出来ないのよ!?」
「生憎、今の俺は“元”神だ。全知全能なんかじゃない。
今の
「じゃあ、何であなたはそんなに落ち着いているのよ!? 自分の大事な家族が死ぬ寸前になっているのに!」
「イッセーが助かる方法はあるから、今はこうして冷静になってるんだよ。尤も、その方法は賭けに近いが」
『………え?』
イッセーが助かると聞いて、さっきまで絶望状態に近かった朱乃達が一斉に俺を見る。
「助かるって……それは一体どんな方法なの!?」
「おいおい、もう忘れたのか? お前は今も肌身離さず大切に持っている筈だろ? イッセーを正式な眷族にする為に必要な『
『!』
リアス達は本当に忘れていたのか、まるで今思い出したようにハッとした顔になる。『
「なるほどな。彼に『
リアス達と一緒に同行してるヴァーリが納得な表情をした。が、その後は不安そうにリアスを見る。
「しかし聖書の神の言う通り、それは本当に賭けも同然だな。知っての通り、主のリアス・グレモリーは兵藤一誠との実力差が余りにも開き過ぎているから、果たして上手く転生する事が出来るのかが怪しいものだ」
「っ!」
ヴァーリの指摘にリアスは悔しそうに唇を噛みしめながらも、大事に閉まっていた『
その証拠として、以前にリアスが『
「まぁ、そこは多分大丈夫だろう。今のリアスならイッセーを眷族に迎え入れる事は出来る筈だ」
リアスは以前と違って、イッセーの主になるよう今も己を鍛えている。修行して強くなっているイッセーに追い抜かれないようにな。
純血種の上級悪魔は元々才能に優れた存在だから、自らを鍛える事はしない。サイラオーグは諸事情によって鍛えざるを得ないが、そこは敢えて省略させてもらう。
んで、将来有望として優れた才能を持っているリアス・グレモリーが、今は抗うよう必死に努力して人間のイッセーに近付こうとしてる。異性として惚れているからと言っても、それは上級悪魔として信じられない行為だ。
だが今のリアスはそんなの知った事かと言わんばかりに、大好きなイッセーの為に頑張っている。俺はリアスのそう言うところを気に入ってるから、イッセーを眷族にする事に反対はしない。
「後はお前の想い次第だ、リアス。それによってイッセーを眷族に出来るか否かで決まる。どうする?」
「わ、私は……」
俺からの問いにリアスは迷っている表情をしている。恐いのだろう。今の自分で本当にイッセーを眷族にする事が出来るのかと。
「もし無理なら………緊急措置として、現魔王サーゼクス達の誰かに頼んでイッセーを魔王の眷族にさせる手もあるが」
魔王であるサーゼクス達は今でもイッセー以上の実力があるから、容易に眷族にする事が出来る筈だ。
もしリアスが断れば、俺はすぐにサーゼクス達に連絡をして事情を説明するつもりだ。代わりにイッセーを自身の眷族にして欲しいと。
向こうは俺の要請を断らないどころか、率先してやってくれるだろう。サーゼクスを除く現魔王達はイッセーを眷族として迎える事に一切の不満は無いからな。
だが――
「冗談じゃないわ! イッセーは私が眷族にするって決めてるのよ! いくら貴方や魔王さまでも、そこだけは絶対に譲れないわ!!」
「そうか。なら早くやってくれ」
どうやらリアスが漸く決心したから、サーゼクス達に頼む必要はなさそうだ。
迷いのない表情をしているリアスは、八つの『
それを見た俺はすぐにイッセーを包んでいる光を解除する前に、確認をしようとする。
「ではリアス、覚悟はいいな?」
「そんなの聞くまでもないわ! 早くこの光を解除して!」
「了解、と」
リアスの覚悟を見た俺は包んでいる光を解除すると――
「イッセー、私はあなたが大好き。だから死なないで! あなたと一緒にやりたい事がまだたくさんあるのだから!」
そう言って彼女は持っている『
果たして結果は…………
イッセーが悪魔になるかは次回で!