ハイスクールD×D ~神(兄)と悪魔(弟)~   作:さすらいの旅人

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四十二話

「我、リアス・グレモリーの名において命ず! 汝、兵藤一誠よ。我の下僕となるため、悪魔と成れ! 汝、我が『兵士』として、新たな生に歓喜せよ!」

 

 死に瀕して永遠の眠りにつこうとしてるイッセーの胸に八つの『兵士(ポーン)』の駒を置くと、リアスは身体から濃厚な紅い魔力を出しながら詠唱をする。

 

 駒が紅い光を発して、イッセーの胸へ……完全に沈んでいった。どうやら転生に成功したようだな。その証拠にリアスは両手で口元を押さえながら、双眸から涙を流しているよ。朱乃達も同様に。

 

 堕天使レイナーレの独断による騒動を解決した後の時だ。リアスがイッセーを眷族にしようと『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』を使ったが、胸の中に沈む直前に弾かれてしまった。

 

 理由は簡単。イッセーの実力+『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』によって、リアスの容量(キャパシティ)を超えていたから。その為に転生悪魔になる事が出来なかったって訳だ。

 

 正式な眷族にする事が出来なくてリアスは最初ショックを受けていた。けれど、自分の眷族にする事を諦めようとしない彼女は、暫くはイッセーを『眷族候補』と言う事で保留する事となって今に至る。

 

 しかし、もうイッセーは『眷族候補』じゃない。晴れて正式な眷族としてリアスの『兵士(ポーン)』となった。リアスにしては、これほど喜ばしい事はないだろう。

 

 余談だが、イッセーが正式な転生悪魔となった事によって、眷族候補のアーシアも後ほど悪魔になるだろう。今後はリアスの『僧侶(ビショップ)』として。

 

 何故今になってリアスの『兵士(ポーン)』になれたかについてだが……恐らくはイッセーが瀕死の状態だからだろう。今のイッセーは闘気(オーラ)だけでなく、命が尽きかける寸前だったから、その事もあって眷族化に成功したと思う。以前に失敗した時のイッセーは万全の状態だったからな。

 

「……どうやら勝ち逃げされずに済んだようだな」

 

 そんな中、ずっと見守っていたヴァーリも安堵した表情となっている。

 

 どうでも良いんだが勝ち逃げって……。そう言えば、以前イッセーとの戦いでは敗北したと認識してるんだったな。イッセーもイッセーで自分が負けたんだと豪語していたし。

 

「う、うーん。あれ? ここって……」

 

 ヴァーリの言い分に思わず内心呆れてると、イッセーが目を覚ました。その直後、号泣するリアスや朱乃が即座に抱きつく。

 

「え? なに? 何で部長と朱乃さんが? 俺、確か死んだ筈じゃ……?」

 

「助かったから、今もこうして生きてるんだよ」

 

「……あれ、兄貴まで何で……?」

 

 どうやらこの愚弟(バカ)は未だに自分が死んでると思ってるようなので――

 

「いい加減に……自分が生きてるって事を実感しろ~~~!!!」

 

「うぎゃ~~~~!! こ、このアイアンクローはぁ!!」

 

 そろそろ現実を教えてやろうと、リアスと朱乃を引きはがした直後、イッセーがバカな事をやった時の折檻シリーズの一つ――アイアン・クローをかましてやった。言うまでもなくイッセーの顔面を片手で掴んでいる。ついでに今は俺は神の姿になってるから、『ゴッド・クロー』とでも呼ぶべきか。

 

『……………………』

 

 イッセーを折檻してる事に一同は唖然とするも、俺は気にせずに続けようとする。

 

「何だったら俺がこのまま本当の死を体感させてやろうかぁ~~~!?」

 

「そ、それだけは勘弁してくれ~~~! こんな死に方は嫌だぁ~~~!!」

 

 ジタバタと無駄に暴れるイッセーに、俺は更に握力を上げ続けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とまあ、感動の場面から突然に俺の折檻と言うギャグ的な展開が起きるも、イッセーは漸く自分が生きていると実感した。

 

 自分が生きているのはリアスが『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』を使って、自分を『兵士(ポーン)』にしたから助かったと俺から説明した。それを聞いたイッセーはリアスに感謝しつつも、俺を見ながら申し訳なさそうな顔をしていたよ。別に気にしてはいない。リアスの眷族となる予定が早まっただけに過ぎないからな。

 

 それと、ゼノヴィアが抱えているアーシアを見てイッセーは驚愕する。俺もどうしてアーシアがいきなり消えたのか知らなかったので聞いてみると、どうやらシャルバによって次元の狭間へ送られていたらしい。そこを偶々その場にいたヴァーリが助けてくれたんだと。

 

 偶然とはいえ、ヴァーリが次元の狭間にいてくれて良かったよ。もしいなければ、アーシアは次元の狭間による無の力で消失されていたからな。本当にありがとう、ヴァーリ。

 

「アーシア! アーシア!」

 

 俺がヴァーリに内心感謝してると、イッセーが未だ気絶してるアーシアに呼び掛けている。すると、彼女の(まぶた)が静かに開いていく。

 

「……あれ? ……イッセーさん?」

 

 アーシアが無事に目覚めた事にイッセーが抱こうとするも――

 

「アーシア!」

 

 

 ドンッ!

 

 

 何とゼノヴィアに弾き飛ばされてしまった。まぁ彼女も心配していたから、その気持ちは分からんでもない。イッセーも分かってるように複雑な顔をしてるし。

 

「ゼ、ゼノヴィアさん。どうしたんですか? く、苦しいです……」

 

「アーシア! 私とキミは友達だ! ずっとずっと友達だ! だから、もう私を置いていかないでくれ!」

 

 アーシアは泣いているゼノヴィアの頭を優しく撫でる。

 

「はい、ずっとお友達です」

 

 何というか……ゼノヴィアに持ってかれた気がする。それはそれとして、後でアーシアにはイッセーが転生悪魔になった事を教えないとな。

 

 取り敢えずは一件落着と見ていいだろう。と言っても、俺はアザゼルやサーゼクス達と一緒に事後処理をされる事になると思うが。

 

 すると、イッセーはヴァーリの方へと視線を向ける。

 

「そういや、まだ言ってなかったな。ありがとな、ヴァーリ。アーシアを助けてくれて」

 

「……聖書の神に続いて、キミも敵である俺に礼を言うとは。ま、素直に受け取っておこう」

 

 宿敵(ライバル)からの礼にヴァーリは素直に受け取ったようだ。すると、今度は空の方へと視線を向ける。

 

「それよりもそろそろだ。空中を見ていろ」

 

「?」

 

 ヴァーリの言う通りにするイッセーは訝しげに思いながらも、何もない空を見上げる。

 

 その直後――

 

 

 バチッ! バチッ!

 

 

 空間に巨大な穴が開き、そこから何かが姿を現した。

 

「あ、あれは……」

 

 穴から出現したものを見たイッセーは驚きの余りに口が開きっぱなしとなっていた。アーシアやリアス、他の眷族達も同様に。

 

 俺は久しぶりに見た存在に、思わず懐かしげな気持ちとなっている。

 

「成程。ヴァーリは『真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)』――グレートレッドを探していたのか」

 

「その通りだ」

 

 空中を雄大に泳いでいる巨大な真紅のドラゴン――グレートレッドを見ながら言うと、ヴァーリはすぐに頷く。

 

「ぐ、グレートレッドって確か、赤龍帝とは別にもう一体いる『赤い龍』の最上位で、今は『次元の狭間』に住んで永遠に飛び続けているアレか?」

 

「ほう、キミも一通り知っているみたいだな。ドライグ、もしくは聖書の神から聞いたか」

 

 そりゃ知ってて当然だ。イッセーは結構前からコッチ側に関わっているんだから、聖書の神(わたし)が直々に色々と教えたよ。

 

 あと、ヴァーリは他にも教えてくれた。オーフィスが冥界(ここ)へ来た目的は、グレートレッドを確認する事らしい。ついでにシャルバ達の作戦はヴァーリやオーフィスにとって、如何でも良いことだったんだと。堂々とオーフィスを利用してると豪語してたクルゼレイが道化のように思えてくるよ。

 

「そして、俺が倒したい目標だ」

 

 ヴァーリの目標と聞いたイッセーが思わず彼を見る。

 

 すると、ヴァーリは今まで以上に真っ直ぐな瞳でイッセーに向かって言う。

 

「俺が最も戦いたい相手――『D×D(ドラゴン・オブ・ドラゴン)』と呼ばれし『真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)』グレートレッド。俺はそいつを倒して『真なる白龍神皇』になりたいんだ。赤の最上位がいるのに、白だけ一歩前止まりでは格好がつかないだろう? だから、俺はそれになる。尤も、グレートレッドと戦う前に倒さなければいけない相手が目の前にいるから、それまでは保留だ。敗北した赤龍帝(キミ)に勝たなければ、あれと戦う資格はないからな」

 

「……そうか。お前もでっけぇ夢を……って、待てコラァ!」

 

 ヴァーリの夢を聞いたイッセーは感慨深く聞いていたが、突然待ったをかけた。いきなりの事に俺やリアス達も何事だと思って見ると――

 

「この前も言ったが、あの時の勝負を勝手に自分の負けにしてんじゃねぇ! アレは俺が負けたんだって何度言えば分かるんだ!?」

 

「キミは本当にしつこいな。あの時は慢心した俺の負けだと言っただろう」

 

「だから勝手に決めんなって言ってんだろうが! いい加減にお前が俺に勝ったと認めろ!」

 

「それはこっちの台詞だ! キミもいい加減俺に勝ったと認識を改めろ!」

 

 またしても自分の負けだとの言い争いを始めてしまった。

 

 コイツ等と来たら本当に……。

 

『………………………』

 

「はぁっ、またか……」

 

「赤龍帝もヴァーリも意固地だねぃ。俺っちから見たら相打ちだよぃ」

 

 リアス達がイッセーとヴァーリの見た事のない言い争いをしてる事に呆然としてる最中、前に見た俺と美猴は呆れた表情をしながら嘆息する。

 

 取り敢えずリアス達には後で事情を説明しておくとしよう。ヴァーリと一緒にいるアーサーの方は美猴に任せておく。

 

「グレートレッド、久しい」

 

 突如、聞きなれない第三者の声にリアス達が驚愕した。声の主はオーフィスで俺の隣に立っている。

 

「お、おい兄貴、その隣にいる娘ってまさか……!」

 

 ヴァーリと言い争いをしていたイッセーが彼女を見た途端、警戒するように言ってきた。

 

「ああ、コイツが『無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)』オーフィスだ。そして『禍の団(カオス・ブリゲード)』のトップでもある。安心しろ。コイツは俺達と戦う気なんて一切無いから」

 

 イッセーは俺の言う事に一先ず信じるも、リアス達は未だに警戒していた。まぁ、敵のトップが現れて戦わないなんて言われても早々に信じる事は出来ないだろう。

 

 もしコイツが戦うとしたら……俺達はもうとっくのとうに殺されている。いくら聖書の神(わたし)やイッセーがいても、コイツに勝つ事なんて出来ないからな。

 

 リアス達の警戒を余所に、オーフィスはグレートレッドに指鉄砲の構えでパンッと撃ちだす格好をした。

 

「我は、いつか必ず静寂を手にする。そして聖書の神、『禍の団(カオス・ブリゲード)』に入るまで、我、諦めない」

 

「俺としてはどちらも諦めて欲しいんだけどな」

 

 相も変わらずブレないオーフィスに俺が呆れてると、羽ばたきと巨大な物が降ってきた音が聞こえた。

 

 音の発生源の方へ視線を見ると、アザゼルとタンニーンがいた。

 

「先生、おっさん!」

 

「おー、イッセー。禁手(バランス・ブレイカー)に至れたようだな。おまえのバカでかい闘気(オーラ)を感じ取れたぞ。それに………もう人間じゃなくなってるみたいだな」

 

「ええ、まぁ……」

 

 アザゼルはイッセーから感じる闘気(オーラ)に違和感があったのか、物の見事に当ててきた。恐らくイッセーの体内にある『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』を感じ取ったんだろう。

 

「……え? イッセーさんが人間じゃないって……」

 

 それを聞いたアーシアがきょとんとした様子を見せる。後で俺がちゃんと説明しておかないとな。

 

「ま、これで漸くリアスの念願だった正式な眷族悪魔になれたって事か。そこんところは聖書の神(おやじ)としてはどうなんだ?」

 

「別に何も。イッセーが悪魔になったところで、俺の弟である事に変わりはない。それに悪魔になった事で身体能力も上がってる筈だから、今まで以上に厳しい修行が出来る。腕が鳴るよ」

 

「おい待て兄貴! そんな恐ろしい笑みを浮かべながら言われると、俺の身が凄く危険なんですけど!」

 

 イッセーが叫ぶも俺は無視だ。因みに俺が厳しい修行をすると聞いた裕斗とゼノヴィアが羨ましそうにイッセーを見ている。

 

「ハハハハ、神が悪魔を鍛えるとはな! ――と、オーフィスを追ってきたらとんでもないものが出ているな」

 

 アザゼルとタンニーンも空を飛ぶグレートレッドに視線を向ける。

 

「懐かしい、グレートレッドか」

 

「タンニーンはアイツと一戦交えた事あるのか?」

 

 俺の問いにタンニーンは首を横に振る。

 

「いや、俺なぞ歯牙にもかけてくれなかったさ。嘗て聖書の神であった兵藤隆誠も知っているだろう? グレートレッドの強さは俺程度で比較にならんと」

 

「そりゃ、まぁ……」

 

 思わず頷きそうになるも、何とか濁す事にした。この場でハッキリと言ったら、元『五大龍王』であるタンニーンの立つ瀬が無いからな。

 

「久しぶりだな、アザゼル」

 

 ヴァーリがアザゼルに話しかけている。

 

「クルゼレイ・アスモデウスは倒したのか?」

 

「ああ、旧アスモデウスはそこにいるリューセー――聖書の神(おやじ)の逆鱗に触れて瞬殺された」

 

 クルゼレイが瞬殺されたと聞いた瞬間、リアス達は恐ろしげに俺を見ていた。

 

 そんな目で見るなよ。俺は単に、大事な両親を冥府へ送ろうとふざけた事を抜かしたクルゼレイを成敗しただけなんだからさ。

 

「とまあ、まとめていた奴等が取られれば配下も逃げ出す。どうやら、シャルバ・ベルゼブブの方もイッセーが『禁手(バランス・ブレイカー)』で片付けたみたいだしな」

 

「因みにサーゼクスはどうした?」

 

 俺がアザゼルに訊く。

 

聖書の神(おやじ)が結界を紙屑みたいに斬って崩壊したから、観戦ルームに戻ったよ」

 

 そしてアザゼルは俺の隣にいるオーフィスに言う。

 

「オーフィス。各地で暴れ回った旧魔王派の連中は退却及び降伏した。もう事実上、まとめていた末裔(まつえい)共を失った旧魔王派は壊滅状態だ」

 

「そう。それもまた一つの結末」

 

 オーフィスは旧魔王派の末路を聞いても全然驚く様子を見せないどころか、まるで如何でも良いように流している。

 

 それを聞いたアザゼルは半眼で肩を竦める。

 

「おまえらの中で、あとヴァーリ以外に大きな勢力は人間の英雄や勇者の末裔、神器(セイクリッド・ギア)所有者で集まった『英雄派』だけか」

 

 そう言えばいたなぁ、そんな勢力。俺から言わせれば、単なる英雄気取りのテロ組織にしか思えないがな。

 

「どころでオーフィス、この後はどうするつもりだ? 俺の近くにいるからって、アザゼル達は手を抜いたりしないぞ」

 

 アザゼルはいつでも戦えるように、光の槍の矛先をオーフィスに向けている。一応、俺も俺でいつでも戦える状態だ。

 

 だが、オーフィスはきびすを返す。

 

「我は帰る」

 

 思った通り、戦闘意欲ゼロのようだ。俺としては好都合だよ。

 

 まぁ俺が良くても、他の面々はそれで納得する訳もなく、タンニーンが翼を広げて呼び止める。

 

「待て! オーフィス!」

 

 タンニーンからの牽制に、オーフィスは笑みを浮かべるだけだった。

 

「タンニーン。竜王が再び集まりつつある。それと、聖書の神」

 

「ん?」

 

 オーフィスは宙に浮いた途端――

 

「――――――――」

 

 

 ヒュッ!

 

 

 俺にしか聞こえないように小声で呟き、すぐに消え去ってしまった。

 

 退散したオーフィスに、アザゼルもタンニーンも嘆息している。

 

「俺達も退散しよう」

 

「って、お前ら逃げ足速過ぎだ!」

 

 どうやらヴァーリも逃げる準備が出来ていたようだ。その証拠にアーサーが作り出したと思われる次元の裂け目に入る寸前だ。それを見たイッセーが突っ込んでいる。

 

「兵藤一誠。この前の勝負は抜きにして……俺を倒したいか?」

 

「……ああ、倒したいさ。けど、俺が一番に超えたい相手はお前じゃない。言っちゃ悪いが、俺にとってお前は単なる通過点だ。兄貴――聖書の神を超える為のな」

 

「俺もだよ。俺もキミを倒したところで一つの通過点にすぎない。キミ以外に倒したいものがいるからな。おかしいな。現赤龍帝と現白龍皇は宿命の対決よりも大切な目的と目標が存在している。きっと、今回の俺とキミはおかしな赤白ドラゴンなのだろう。そういうのもたまにはいい筈だ。――だが、今はお互いに目の前の事が最優先だ」

 

 そう言うヴァーリにイッセーは拳を向ける。

 

「ああ、今度はちゃんと決着つけようぜ。どっちが勝って、どっちが負けたのかとお互いに納得する決着をな」

 

「勿論そのつもりだ。俺と再び戦うその時は………今以上に強くなる事だ、兵藤一誠。俺もキミと同様、強くなる為に修行をしているからな」

 

 お互いに単なる通過点だと言っても、最強のライバルと認識しているようだ。ヴァーリの言う通り、今回の赤白ドラゴンはおかしいが、それはそれで面白くていい。

 

「じゃあな、ファイタードラゴンに聖書の神!」

 

 あれ? 美猴の奴、イッセーがファイタードラゴンだといつ知ったんだ? 冥界へ来た時にイッセー関連の情報でも集めてるのか?

 

「木場裕斗くん、ゼノヴィアさん」

 

 アーサーが裕斗とゼノヴィアに言う。

 

「聖書の神から聞いていると思いますが、私は聖王剣の所有者であり、アーサー・ペンドラゴンの末裔。アーサーと呼んでください。いつか、聖剣を巡る戦いをしましょう。では」

 

 そして、ヴァーリ達は次元の裂け目へと消えていった。

 

 本当だったら追うべきなんだろうが、アーシアを助けてくれたから見逃す事にした。たとえソレが、ヴァーリの単なる気まぐれであろうと。

 

 イッセーもそれを分かってるから、この場で戦おうとはしなかったし。

 

 それを見た俺は安心しながら、イッセーに向かって言う。

 

「さて、帰る前に一度お前を病院に連れて行かないとな」

 

「は? 何言ってんだよ、兄貴。俺はもうピンピンしてるぞ」

 

 問題無さげな感じで振舞うイッセーだったが………その直後に再び倒れてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

「あら、ヴァーリくんじゃない。私に何か用かしら?」

 

「エリガン。あなたは聖書の神に会う筈だったのでは?」

 

「そのつもりだったんだけど、止めにしたわ。クルゼレイのおバカさんがダーリンを怒らせた挙句、シャルバのおバカさんも聖女ちゃんを次元の狭間へ飛ばしたからね。それを知ったダーリンが大激怒だったから、会った瞬間に問答無用で殺されてるわ」

 

「………クルゼレイは聖書の神に始末されたそうだが、シャルバの方はどうなった?」

 

「イッセーくんに打ちのめされながらも、命からがらで何とか転移を使って生き延びたわ。ま、暫くは使い物にならないわね」

 

「とても旧魔王派に属する悪魔とは思えない発言だな」

 

「嘗てアルスランド家は、あの連中とそれなりの(よし)みがあって、無下に扱う事が出来なかったのよ」

 

「そうだったのか。まあ何にせよ、シャルバは急ぎすぎた。徹底抗戦を唱え、現魔王政府に追放された先人も急ぎすぎた。目先の怨恨だけで動くから滅ぶ」

 

「全くもって同感ね。ああ、そうそう。旧魔王派の幹部達から、ヴァーリくんをトップに迎え入れたいと言ってたわ。一応聞いておくけれど、どうする?」

 

「聞かなくても分かると思うが、いまのポストで充分だと伝えてくれ。これ以上、前魔王の血族としての役職を増やしたくない」

 

「でしょうね。取り敢えず、これで旧魔王派は殆ど瓦解って事になるわ。これで漸く私も自由に動けるわね」

 

「ならばもう俺を監視、場合によっては始末する必要が無くなったという事だな。ならば俺達の前から去るがいい」

 

「……あら、気付いてたの? 私がシャルバ達から指示されてた事に」

 

「あの連中の考えてることぐらい、俺でも容易に分かる」

 

「あらあら、何もかもお見通しだったわけね。あ、言っておくけど、私はこのままヴァーリくん達といるつもりよ」

 

「……どういうつもりだ? もうあなたは俺たちに用は無い筈だろう」

 

「まだあるわ。ヴァーリくんとの修行は終わってないんだから。それに……イッセーくんは禁手(バランス・ブレイカー)に至って、悪魔になったそうじゃない。加えて今後のダーリンとの修行で、この先かなり強くなる筈よ。パートナーがいない修行で強くなろうとしても、高が知れることくらいはヴァーリくんも分かってる筈よ」

 

「………………………」

 

「今も信用出来ないのは分かってるから、監視は今まで通りしても構わないわ。前にも言った通り、私はダーリンに勝ちたいが為にやってる事だから」

 

「……俺から後で美猴たちに言っておこう。以前も言ったが、妙な事をすれば即刻打ち切る。良いな?」

 

「ふふ、勿論よ♪」




あと何話か更新したら完結予定です。
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