ハイスクールD×D ~神(兄)と悪魔(弟)~ 作:さすらいの旅人
旧魔王派の襲撃から二日経つも、イッセーは目覚める気配は無かった。今も病室で眠っている状態だ。
今も深い眠りについているのには色々な理由があるが、その中で一番なのはイッセーの身体状態にあった。
イッセーは人間から悪魔になる寸前、もう俺がどんな治癒を施しても絶対に助からない瀕死状態だった。自分の命を莫大な
もう悪魔になったから大丈夫だろうと思われるだろうが、実際はそうでもない。
イッセーは
答えは簡単。元の状態へと戻す為に、悪魔の寿命を代償としたからだ。人間の寿命は百年程度なので、一万年の寿命を持っている悪魔からすれば大した損害じゃない。だが、問題は
知っての通り、今のイッセーは現赤龍帝であり、
そんな莫大な
リアス達はイッセーの寿命を失ったと聞いて悲しんでいた。その中で一番に悲しんだのはアーシアだ。自分の所為でイッセーの寿命を削る原因を作ってしまったと、物凄く泣いていたから。まぁその後にはアーシアなりの償いとして、自分も悪魔になって今後もイッセーの側にいるとリアスに言った。それを聞いた俺は反対せず、リアスもすぐに了承した。結果、アーシアもイッセーと同様に晴れて正式にリアスの眷族――『
とまあ、アーシアの転生悪魔化は別としてだ。イッセーの容態は今も深刻のように説明したが、失った寿命を除けば問題は無い。身体の治療も一通り済んでいるから、後はイッセーが目覚めるのを待つだけだ。
なので俺は今も眠っているイッセーを人間界へ連れ帰ろうと、冥界の病院で退院の手続きをしている。俺は家族として弟の付き添いをやっているからな。リアス達(その中でアーシア)も付き添いをしたがっていたが、俺一人だけで充分だと言って人間界へ帰らせた。学園生活や体育祭の準備とかがあるからな。その間に俺とイッセーが学校ではリアスによって特欠扱いとなっている。ま、学校に戻って来た時は放課後に補習が待っているが。
そんな中、病室にある扉からノックが聞こえた。俺がどうぞと言うと――
「リューセー兄さま! イッセー兄さまは大丈夫ですか!?」
「おお、ミリキャス。安心しろ。もう後はイッセーが起きるのを待つだけだから」
「ミリキャスさま、病院内は騒いではいけませんと申し上げたではありませんか」
「まぁそこは大目に見ようじゃないか、グレイフィア」
いの一番に入って来たのは俺に飛びついてくるミリキャスだった。その後にはグレイフィアに、我が同志であるサーゼクスが入ってくる。
「やあ、リューセーくん。イッセーくんの容態は相変わらずみたいだね。それとスタッフから聞いたのだが、退院すると言うのは本当なのかい?」
「ああ。そろそろ体育祭も近づいてる事だしな。因みにサーゼクスも来るのか?」
「勿論だとも。妹の晴れ姿を当然見に行くさ。その日はしっかりとオフを取ってあるよ」
分かってはいたが、やはりサーゼクスも体育祭に行く気満々のようだ。グレイフィアは呆れたように嘆息してるがな。
「それはそうとサーゼクス、俺に用でもあるのか? 今も多忙な筈のお前が、イッセーの見舞いだけで来るとは思えないんだが。それにミリキャスまで連れてきて」
「二人に会いに行くと聞いたミリキャスが、どうしても行きたいとせがまれてね」
「ごめんなさい。リューセー兄さまたちが冥界に来てるって聞いて……」
自分が我儘を言って迷惑を掛けたと思ったのか、申し訳なさそうな顔をするミリキャス。
それを見た俺は気にしないように、笑みを浮かべながらミリキャスの頭を優しく撫でる。
「別に謝る必要はないよ。良かったら後で俺とチェスの相手をしてくれないか? 丁度退屈していたところだし」
「っ! はい!」
遊び相手をして欲しいと聞いたミリキャスは満面の笑みを浮かべて了承する。サーゼクスが少しばかり面白くなさそうな顔をしてるが。
一先ずグレイフィアとミリキャスに一時的な付き添いをするよう頼み、俺はサーゼクスと一緒に病室を出た。前にイッセーと話した休憩所で話そうかと思ったが、今回は他の患者もいるので屋上へ行く事にした。幸い、屋上には誰もいなくて話すには絶好の場所だ。
「それで、あの後はどうなった?」
「いちおうの決着はついた。『
「だろうな」
クルゼレイは俺が始末し、シャルバはイッセーがぶちのめされて命辛々逃げたからな。シャルバは生きてても、暫くは使い物にはならない筈だ。赤龍帝とは言え人間のイッセーに敗北したのを考えれば、奴のプライドはもうズタズタだから、当面は表立って動く事はしないだろう。それでも油断は出来ないが。
出来ればシャルバも俺が始末したかった。アーシアを殺そうと次元の狭間へ送ったと聞いた時は、クルゼレイ以上に殺したい衝動に駆られたからな。もし会ったら、問答無用で始末させてもらう。
「因みにアスタロト家の処遇は? まさか裏切ったディオドラはもう殺されてしまったから自分達は関係無い、なんて言わないよな?」
「勿論それはないさ。次期当主が君の身内であるアーシア・アルジェントさんを攫い、『
「ちゃんと罰を与えてくれるなら、俺はこれ以上何も言わん」
端から見れば気の毒過ぎるとも言える厳罰だろう。だがそれは次期当主を甘やかしたアスタロト家の自業自得とも言える。もしもディオドラにまともな教育をさせていれば、こんな結果にならなかったんだからな。
これでもしサーゼクスが言った処罰の内容を聞いてなければ、俺はアスタロト家へ赴いて現当主に直接猛抗議するところだったよ。ディオドラのバカがやらかした所為で、俺の大事な家族であるアーシアやイッセーを危うく失うところだったと。
「あと、今回の件でアジュカも責任を問われている。アジュカ本人も非常に申し訳なく思ってるようで、君からの厳罰を受ける覚悟だ」
「必要無い。俺が許せないのはディオドラと、ディオドラの裏切りに一切気付けなかったアスタロト家だ。既にアスタロト家から離れて、魔王となってるアジュカに恨みはない。と言っても、アジュカの事だからソレで納得しないと思うから……『今回は貸し一つだ』って伝えてくれ」
「分かった、そのように伝えておくよ」
アジュカはサーゼクスと同様に色々と融通が利く相手だから、もしこちらが困った時に無償で力を貸してもらうとしよう。
「けれど、悪魔側は大丈夫なのか? もしアジュカに責任を取らせようと魔王職を降ろしたりなんかしたら大事だぞ。アイツの代わりとなる魔王に相応しい候補とかはいるのか?」
「大丈夫だ。私たちが彼を留めておくように話はしてある。それに現ベルゼブブであるアジュカが外れるのは悪魔側としても痛いからね。術式プログラムに秀でた男で、レーティングゲームの基礎理論を構築したのも彼だ。何よりもあれだけの人材を探そうにも他にいないのだよ」
「だろうな」
ただでさえ今の冥界は嘗ての戦争で、純血種の悪魔が少ない時代だ。加えて人材不足も深刻でもある。そんな状況で優秀な純血悪魔であるアジュカを手放したら、冥界の損失と言っても過言じゃない。
「取り敢えずアスタロト家とアジュカの今後は分かった。次の質問だが、予定となっていたレーティングゲームは今後どうなる?」
「大きな見直しが必要となったよ。テロリスト介入ばかりではあまりに危険だからね」
「となると、『
「流石にそれはないが、仕切り直しになるだろうね。だが、どうしても実現したいカードがある。冥界に住む者たちや他勢力の間でも、その一戦だけは是非ともやって欲しいと熱望された」
「………誰と誰のゲームだ?」
「もうリューセーくんも分かっているだろう? リアスとサイラオーグの一戦だ」
うわぁ、やっぱりか。
よりにもよって、リアスとサイラオーグの戦いとはなぁ。ま、一番の戦いとしてはイッセーVSサイラオーグだろうがな。
何となくだが、サイラオーグ自身が一番に熱望してるんじゃないかと思う。アイツは今もイッセーと戦いたがってるし。
以前に俺がイッセーと戦わせる約束をしちゃったからな。多分、もうサイラオーグの我慢はそろそろ限界を超えていると思う。これ以上待たせてしまったら、もう歯止めが利かなくなってしまうだろうし。
「特にサイラオーグが私に直談判してきた。『もしレーティングゲームが出来ないのであれば、非公式でもいいので赤龍帝と是非とも手合わせさせて欲しい』と」
「うん、それは俺も容易に想像出来る。今のアイツは一番にイッセーと戦いたがってるからな」
未だにお預け状態だから、そろそろ戦わせた方が良いんじゃないかと思っている。とは言え、イッセーは悪魔になったばかりだから、戦わせるにしても身体を慣らしておかないと駄目だが。
「まぁやるにしても、出来れば少しばかり時間をくれ。悪魔になって力のコントロールが出来てない状態で戦わせる訳にはいかないし」
「そこは安心してくれ。試合の是非が決まるまで若手は全員待機ということになっている。尤も、実現出来るかは未だ分からないが」
そうだよな。冥界の世論次第でゲーム自体が潰れてしまう可能性もある。だがそれは決してゼロではない。
ついでに、俺が企画した「ファイタードラゴン」だが、どうやら凄い事に冥界の子供たちの間で社会現象になっているみたいだ。高速格闘戦やイッセーの放つ
「この前の作曲ありがとな。にしてもまさか、サーゼクスが作曲したいって志願した時は驚いたが」
「うふふ、これでも子供の頃は音楽家になりたかったんだ。キミのおかげで、いま夢のひとつが叶ってうれしいよ」
「……そ、そうか。それは何よりだ」
目が爛々と輝いているサーゼクス。
因みに俺が冥界で四大魔王達と会談を終えた際、『「ファイタードラゴン」の歌を作曲してくれる悪魔っていないか?』と軽く聞いたんだが、サーゼクスが真っ先に反応したんだよな。是非とも私にやらせて欲しいって。やってくれる事に感謝はしたが、余りの熱意に俺は内心少しばかり引いたよ。
すると、サーゼクスが改めて口にする。
「キミだけでなく、イッセーくんも凄い」
「イッセーも?」
「うむ。リューセーくんも知っての通り、レーティングゲームのファン層で一番少ない……と言うより、無いに等しかったのが子供のファンだ。大人の悪魔たちが競い合うゲームを子供たちが見ても、娯楽とは程遠いものだっただろう」
「確かに。主に楽しんでるのは、自分達の思い通りな結果じゃないとイチャモン付ける貴族悪魔や重鎮共だからなぁ。この前のリアスとソーナのゲームでは特に」
「………それは聞かなかったことにしておくよ」
思いっきり皮肉を込めた俺の発言をサーゼクスは敢えて流した。現魔王であるサーゼクスからしたら、俺の発言は悪魔に対する侮辱も同然。本来だったら俺を罰さなければいけない立場だ。
しかし、サーゼクスは微塵もやろうとはしない。と言うより、彼も色々と思うところがあるのか、ほんの一瞬頷きかけていたし。まぁそれでも魔王としてやらなかったが。
「サーゼクス、この際だから言っておく。もしも、あの連中が悪魔になったイッセーやアーシアを利権絡みの道具にすると分かった瞬間……
「分かっているとも。私とて、イッセーくん達を大人の醜い争いに巻き込ませる気など毛頭無いからね」
力強く返事をする同志サーゼクスに俺は安堵する。
「あと、これはあくまで私からの希望なのだが、今後のゲームでイッセーくんには次世代を担うであろう冥界の子供たちの柱になって欲しいと思っている」
「柱――ヒーローって事か?」
「ああ。言っておくが強制はしない」
「………悪いけど、それは俺がどうこう言う事じゃない。ま、多分イッセーの事だから引き受けてくれると俺は思うよ」
イッセーはなんだかんだ言って、誰かの為に頑張ろうとするからな。冥界の子供たちの為に一肌脱いでくれる筈だ。
その後は軽い雑談をして、魔王サーゼクスとの話は終えた。
因みに病室へ戻る前、サーゼクスがオフの時に久々の妹談議をやろうと言う約束も取り付けた。場所は人間界にある俺の部屋で。
ふふふ……。以前に撮ったミニリアスをサーゼクスに見せたら、一体どんな反応をするかな~? 楽しみだな~♪
次回でエピローグです。