ハイスクールD×D ~神(兄)と悪魔(弟)~   作:さすらいの旅人

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第三話

 目的地であるグレモリー本邸前に着いたので、俺――兵藤一誠は部長達と一緒に列車を降りた。

 

 因みに兄貴も降りようとしていたが、アザゼル先生から『お前は会合があるから、俺と一緒に魔王領へ行くんだよ』と言われて阻止された。最初は文句を垂れてた兄貴だったが、結局諦めるように席に座りなおし、列車から出る俺達と別れた。その際に俺は父さんと母さんが用意した和菓子+日本酒入りの土産袋を渡されたけど。

 

 駅のホームから降りてすぐに、グレモリー家の兵隊や執事やメイドから歓迎された。部長が家に戻る度に毎年やってるのかどうかは知らないけど。あと言うまでもないが、メイドの中には当然銀髪のメイド――グレイフィアさんもいた。

 

 そこから先はグレイフィアさんが案内する事になり、馬車を使って部長の家に向かう事となった。ってか、馬車なんて初めて乗ったよ。因みにアーシアはグレモリー家の歓迎から馬車の移動まで、ずっと俺の傍にいて手を繋いでる。初めての経験だから無理もないよなと内心思った。まぁ、俺も人の事は言えないが。ついでに部長が何故か俺をちょっと睨んでいたけど。

 

 そして部長の家に着いて馬車から降りると、目の前には巨大な城があった。部長曰く「お家のひとつで本邸」だと。

 

 兄貴と一緒に冥界へ調査してグレモリー領の事を粗方知ってても、グレモリー家の次期当主である部長から聞いたら改めて凄いと再認識したよ。今更だけど、俺は凄まじい上級悪魔の眷族になったな。と言っても未だ人間のままだが。

 

 部長の案内で城に入ると当然と言うべきか、両脇にメイドと執事が整列して道を作っていた。ってかどんだけいるんだ? 長い道の先までメイドと執事が整列してるぞ。

 

 部長に先導されて歩いてると、前方から紅髪の可愛らしい少年が部長の方へ駆け込んでいく。あ、確かあの子は……。

 

「リアス姉さま! おかえりなさい!」

 

 俺が少年を見ながら思い出してると、その子はそのまま部長に抱き付いた。

 

「ミリキャス! ただいま。大きくなったわね」

 

 そうそう。以前、冥界の調査中に偶然出会ったグレモリー家の次期次期当主ミリキャスで……って、この子はサーゼクスさまとグレイフィアさんの息子だった。ちょっとばかし忘れてた。

 

 ミリキャスのことを思い出してると、部長は紹介しようとする。

 

「この子はミリキャス・グレモリー。お兄さま――サーゼクス・ルシファー様の子供で――」

 

「あっ! イッセー兄さま!」

 

 すると、こっちを見たミリキャスが今度は俺に駆け寄ってくる。ミリキャスの行動に俺を除く全員が驚くように注視してる。

 

「お久しぶりです、イッセー兄さま!」

 

「おうミリキャス、久しぶりだなぁ。元気にしてたか?」

 

「はい! イッセー兄さまに会えるのを楽しみに待ってました! ところで、リューセー兄さまは?」

 

「兄貴はサーゼクスさま達との会合で魔王領へ行ってる。それが終わったらコッチへ来るみたいだ」

 

「そうですか……じゃあ、それまで待ってます!」

 

 理由を聞いたミリキャスは少し残念そうな顔をするも、すぐに明るい笑顔となった。

 

「ちょ、ちょっとイッセー。どうしてあなたがミリキャスの事を知ってるのかしら?」

 

「兵藤一誠さま、よろしければ詳しくお聞かせ願えませんか?」

 

 部長とグレイフィアさんが即行で詰め寄りながら尋ねてきた。グレイフィアさんはちょっとばかし睨むように見てて怖いけど。

 

「あ、いやぁ、その……以前、兄貴と一緒に冥界へ来た時、偶然ミリキャス……さまと会いましてね」

 

 いつも兄貴が説明してくれるんだが、当の本人が此処にいない。どうやって説明しようかと考えてると――

 

「あら、リアスにグレイフィア。二人揃って殿方相手に何をしてるのかしら?」

 

 その時、上から女性の声が聞こえてきた。

 

 階段から降りてきたのはドレスを着た美少女。髪の色が亜麻色なだけで、あとは殆ど部長と一緒だ。あの人は確か……部長のお母さんだったな。

 

 悪魔はある程度歳を重ねると自分の好きな見た目に変えられる術があるから、あの人は多分部長と年恰好な姿で過ごしてるんだろう。尤も、以前に部長は失敗してアーシアと一緒に幼児化したけど。ミニ部長やミニアーシアの可愛さを知ったから問題はない。

 

「あ、お母さま。ただいま帰りましたわ」

 

「失礼しました、ヴェネラナさま。大したことではありませんので」

 

 部長のお母さん――ヴェネラナさまの登場で部長とグレイフィアさんはすぐに振り向いて挨拶をする。

 

 しかしまぁ、術で姿を変えてるとは分かってても凄くキレイだなぁ。おっぱいも凄いし。流石は部長のお母さまだ。遺伝子バンザイだよ!

 

「……イッセー、私のお母さまに熱い視線を送っても何も出ないわよ?」

 

「え? あ、いや、別にそんなつもりは……」

 

 と、部長が機嫌が悪そうに少し睨みながら言ってきた。

 

 ゴメンなさい、部長。だって、キレイな女性ですもの、ついつい見ちゃいますって! 男なら当然ですよ!

 

「リアス、その方が彼の実弟――兵藤一誠くんね?」

 

「え? 俺の事をご存知なんですか?」

 

 俺の問いに部長のお母さんは頷く。

 

「ええ、娘の晴れ舞台である初のレーティングゲームに顔ぐらい覗かせますわ、母親ですもの」

 

 げっ! って事はあれか? レーティングゲームでやらかした俺の恥ずかしい言動を見てたんですか!? うわぁ~~! 思い出したら急に恥ずかしくなってきた!!

 

 もし過去に戻れるなら、その時の俺を思いっきりぶん殴りてぇ! 朱乃さんやレイヴェルに相手にキザな台詞や、部長やアーシアに大事な女って言っちまったんだぞ! ぜってぇ怒られる! もしくは罰せられる!?

 

 俺が内心ビビりまくってる中、部長のお母さんはクスッと小さく笑う。

 

「初めまして、私はリアスの母、ヴェネラナ・グレモリーですわ」

 

「ど、どうも、兵藤一誠です。あ、これ、ウチの両親からですので、どうぞ。中身は和菓子と日本酒らしいです」

 

「あらあら、これはご丁寧に。主人には後で言っておきますわ。あの人は日本の食べ物やお酒が大好きですから」

 

 

 

 

 

 

 数時間後、夕飯時となったので俺たちはダイニングルームにいた。とんでもない量の豪華な食事があって、どこから手を付ければいいか分からない。戸惑ってるのは俺以外にもアーシアやゼノヴィア、更にはギャスパーも食事に四苦八苦していた。

 

 あと小猫ちゃんが妙だった。いつもなら食事をもりもりと食べてるのに、全く食事に手をつけてない。一瞬、別人じゃないかって思った。俺と目が合っても、すぐに視線を外されるし。一体何があったんだ?

 

 因みに兄貴は食事に間に合って合流したが、アザゼル先生は一緒じゃなかった。まだ会談は続いているみたいだが、兄貴曰く「俺の立場はあくまで助っ人だからな」だそうだ。多分だけど適当な理由を言って切り上げたんだろうな。

 

 んで、ミリキャスが兄貴の顔を見た途端に「リューセー兄さま!」と呼びながら即行で飛びついてきた。突然の事に面食らった顔をした兄貴だったが、すぐに笑みを浮かべて頭を撫でていた。その行動に部長たちはまた驚いていたけど。

 

 部長が問い詰めようとしてたが、夕飯の時間だったので一旦後回しとなった。部長のお父さんから、兄貴は食事の後に部屋で聞かせてもらうだとさ。

 

「リアスの眷族諸君、そして聖書の神よ。ここを我が家と思ってくれるといい」

 

 朗らかに仰る部長のお父さん。いやー、こんな大きな城を自分の家と思うのはちょっと無理がありますよ。今は超豪邸な家で暮らしてますけど、それまでは小さな一軒家に住んでた庶民の生活だったし。

 

「グレモリー卿。今の聖書の神(わたし)は兵藤隆誠ですので、今まで通りの名で呼んで下さい。個人的に人間の呼び名が好きなので」

 

「これは失礼した。では今後も隆誠くんと呼ばせてもらおうか」

 

「ええ、是非ともそうして下さい」

 

 流石は兄貴と言うべきか、食事を楽しみながら部長のお父さん相手に気後れしないどころか堂々と振舞ってる。まぁ、人間になる前まで聖書の神だったから、こういう雰囲気はとっくに慣れてるんだろうな。

 

「ならば隆誠くんも、私の事をお義父さんと呼んでくれてもかまわない。勿論、兵藤一誠くんも同様にね」

 

「えっと、それはまだ早過ぎるかと……」

 

「そうですわよ、あなた。それは性急ですわ。先ずは順序というものがあるでしょう? フェニックス家とのお話もまだ済んでいないのですし」

 

 兄貴の台詞に頷くように、部長のお母さんが夫を窘める。

 

 何だ? 話が途中から段々分からなくなってきたぞ。何で部長のお父さんが兄貴や俺に「お父さん」って呼ばせるんだ?

 

 そういえば以前、サーゼクスさまが俺に「お兄さん」と呼んでくれって仰ってたな。それと同じか?

 

 兄貴は何か知っているのか、苦笑しながらも丁重に断ろうとしているし。ってかフェニックス卿って……確かライザーやレイヴェルの家だったな。何で急にあそこの家に触れてるんだ?

 

「お二方。私は隆誠さん、一誠さんとお呼びしてもよろしいかしら?」

 

「勿論です」

 

「は、はい! 俺も良いです!」

 

 部長のお母さんからの確認に、兄貴と俺はすぐに快諾する。

 

「では隆誠さん。急なお願いですが、暫くこちらに滞在されるのでしたら、一誠さんを少しの間だけお借りしてもよろしいですか?」

 

「と、仰いますと?」

 

「はい。彼には今後の為に紳士的な振舞いも身につけてもらわないといけませんので、少しこちらでマナーのお勉強をしてもらいたいのです」

 

「…………成程。だそうだ、イッセー。どうする?」

 

 兄貴が何か分かったように頷き、今度は俺に向かって問い掛ける。

 

 いや、どうするも何も、それって一体どう言うことですか?

 

 

 バン!

 

 

 突然テーブルを叩く音がした。発生源である部長がその場で立ち上がろうとする。

 

「お父さま! お母さま! 先程から黙って聞いていれば、私を置いてリューセーと話を進めるのはどういうことなのでしょうか!?」

 

 その台詞に部長のお母さんは目を細める。そこにはさっきまで快く俺たちを迎えてくれていた笑顔じゃなかった。

 

「お黙りなさい、リアス。あなたは一度ライザーとの婚約を解消しているのよ? レーティングゲームで勝利したとは言え、お父さまとサーゼクスがどれだけ他の上級悪魔の方々へ根回ししたと思っているの? 一部の貴族には『わがまま娘がゲームに参加出来ない人間を使って無理矢理に婚約を解消させた』と言われているのですよ? いくらリアスが魔王の妹とはいえ、限度があります」

 

 ――わがまま娘がゲームに参加出来ない人間を使った、ねぇ。

 

 確かにレーティングゲームはルール上、悪魔だけしか参加出来ないものとなっている。それを人間の俺やアーシアが参加して勝ったとなれば、貴族悪魔は絶対納得なんてしないだろう。悪魔ってのは古い伝統を遵守するし。

 

 だけど前回のゲームは非公式だ。部長とライザーが合意した上で人間の俺やアーシアは参加したんだから、それを今更どうこう言われる筋合いはないと思うんだが。

 

 ま、あの連中はそんな事より、人間(おれ)悪魔(ライザー)達に勝ったなんて実績を認めたくないんじゃないかと思う。悪魔は人間を下等な生き物と認識してるからな。

 

 兄貴も兄貴で予想していたかのように呆れ顔となりながら溜息吐いてるし。言うまでもなく貴族悪魔に対して、な。

 

「まぁまぁヴェネラナさん、そうリアスを一方的に責めないで下さい。元はと言えば、こちらが勝手に口を挟んでライザーを挑発し、人間のイッセーとアーシアを参加させるように誘導したんですから。当然、俺にも非があります」

 

「隆誠さん。仰る事は分かりますが、これはあくまで我々グレモリー家や悪魔側の問題なのです。それに三大勢力が協力体制になった今、リアスの立場は他の勢力の下々まで知られています。この子が魔王の妹である以上、もう勝手な振舞いは出来ない立場でもあります。隆誠さん――聖書の神である貴方ならば、それはご理解されてるでしょう?」

 

「それは、まぁ……」

 

 いつも正論で言い返す兄貴だが、今回はしなかった。珍しい事もあるもんだ。恐らく兄貴は一瞬神としての立場を考えた上で、部長のお母さんの言い分は正しいと思って言い返さなかったんだろう。

 

 部長も部長で兄貴と同様に言い返せない様子で、納得出来ないまま、椅子へ勢いよく腰を下ろす。

 

 反論しない兄貴を見た部長のお母さんは息を一度吐いた後、すぐに申し訳無さそうな顔をする。

 

「すみません。客人である隆誠さんに無礼な発言をしてしまいましたね」

 

「いえ、お気になさらず。貴女の言い分はグレモリー家だけでなく、母親の立場として言ったのですから」

 

「そう仰って頂けると助かります。リアスの眷族さんたちにもお見苦しいところを見せてしまいましたわね。話は戻しますが――」

 

 部長のお母さんは俺に明確な理由を言わないまま特別な訓練、ぶっちゃけ勉強させる事となった。

 

 俺が再度理由を尋ねるも、次期当主たる部長の最後の我侭とか、親としては最後まで責任を持つとか、訳の分からん事を言われた。

 

 全く分からなかったから今度は兄貴に確認すると――

 

「……まぁ、この先お前にとっては必要な事だ。覚えておいて損はないさ」

 

 部長のお母さんと同様に訳の分からん事を言われた。

 

 二人して一体何が言いたいんだ? 部長が俺と視線を合わせると、急に真っ赤になって顔を背けられるし。

 

 もう全然分からん! 俺は一体どう言う立場にいるんだ!?

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