もしも、燕結芽に兄がいたら   作:鹿頭

10 / 14
ヒスリヒメに頭を抱える→生放送に涙を浮かべる→ヒスリヒメに頭を抱える→ゲーム版PVを見る→真希さんの高まる主人公力と結芽ちゃん復活ルート疑惑に胸が高鳴る


六。

刀剣類管理局本部 某所───

 

「夜見の情報の裏は?」

 

「取れた、と仰ってましたわ」

 

タギツヒメは綾小路武芸学舎に居る。

皐月夜見が、以前に真庭本部長に提供した情報だ。

その情報の裏が取れた事を寿々花は先程、本部長の口から聞いていた。

 

そんな事を、パイプ椅子に座りつつ話していた。

 

「それで? 仕掛けるのか?」

 

タギツヒメは人間への憎悪の塊と言っても過言ではない。

向こうが聞く耳を持たない限りは相互理解は不能だからこそなのだが……。

 

「それは、教えて下さいませんでしたわ」

 

首を横に振る寿々花。

それを見た真希は歯軋りをするが───

 

「恐らく、相楽学長の出方を伺ってるのでは? 結芽さん、こちら側に居ますし」

 

「……どう言う事だ?」

「もうちょっと、詳しく教えて下さらない?」

 

夜見の言葉に疑問を抱く真希。

寿々花も同じく、続きを促す。

 

「相楽学長は荒魂の研究で人々の病気を治せないか、と考えていました」

 

「……そうなのか?」

 

「ハイ。最も結芽さんは、向こう数十年は一般に降りない予定の技術でどうにかなった訳ですけど」

 

「……それ、逆に逆恨みしないか?」

 

「何処の国も真っ黒ですわね……」

 

無表情の夜見から聞かされた話に、二人はそれぞれの感想を抱く。

 

「と言うか、何故そんな事を知っているのか気になるんだが……」

 

「さあ……私は相楽学長ではないので、判りませんし、ネタ元は秘密です」

 

「夜見、お前がこっちに居てくれて良かったよ……」

 

心の底から思う真希。

これから起こる事も含めて。

 

「……所で、そろそろ良くって?」

 

寿々花が呟く。

 

「ハイ。先程出て行った結芽さんは今頃、衛藤さんと試合をしている頃です。この部屋の周りに人の影も有りません」

 

「盗聴器の類は?」

 

「なし。全て良しです」

 

「では、第4回目となる作戦会議を始める!」

 

夜見の確認報告を受けた真希が、声高らかに宣言する。

 

「今までの総括からですね」

 

「……1回目は結芽を引き剥がす為に、結芽をどうやって自立させるかで大揉めに揉めたのだけれど……」

 

足を組み替えると、1回目の概要を寿々花は話した。

平和的に展開した事を寿々花は同時に思い出していた。

 

「無理ですね」

 

「ああ、無理だな。だから本丸である燕さんの方をなんとかしよう、と言う方向性になったんだったな」

 

真希が1回目の総括。

ようやくスタートラインに立っただけで、何も進まなかったな、と思い出に耽る。

 

「ハイ、具体的には結芽さんと過ちを犯してしまう前に先に既成事実を作ろう、と言う事で2回目は纏まりましたが……」

 

「独占しようとしても、誰も得をしないから、独占はナシ。誰が先を越すかも不問にする事に3回目でなったな。……もう斬り合いはゴメンだ」

 

今まで、あれ程死力を尽くした事が有っただろうか。

と言うか、夜見は弱いって自己申告してたじゃないか、あの狸め。

全然弱くないじゃないか。

 

あの時の真希はそう思ったし、寿々花も溜息を吐いた。

 

 

「……結芽が聞いたら、切り掛かってきそうなものですけれど」

 

「結芽は精神的にまだ未熟だから独占欲が強いのかと思ったが、アレは違う。依存だな。ま、無理もないが……」

 

「……経緯的に、理解はしますが」

 

「私も理解はしましたわ。……ですが、やはり兄妹と言うのは…」

 

「現代じゃ許されないからな……難しい所だ」

 

こめかみを抑える真希。

言葉に尽くしがたい心境に、どうする事も出来ない。

幾ら結芽が願おうとも、この国はそれを許さないのだ。

 

「……私達のやろうとしてる事も、世間から見たらどうなのでしょう」

 

「話を変えよう。どうやって既成事実を作るか、だが……」

 

「押し倒して貰う、と言うのはどうですの?」

 

「いやあの、ちょっとお二人」

 

ふと冷静になった夜見が、自分達の状況の再考を二人に促した。

しかし、都合の悪い事は見たくないのが人間と言うものだ。

 

「…………何か、何故かは判らんが、うまく行かない気がする」

 

「どなたか、経験者の方に伺うとか……」

 

「寧ろ、こんな状況を経験した事ある人が居たら是非とも話を伺いたいです」

 

「………撤回しますわ」

 

「…………」

 

「…………」

 

沈黙の帳が降りる。

自分から目を背けた事象は、周り巡って自分達の前に立ちはだかるのだと、嫌が応にも自覚させられる様な時間だ。

 

それを破るのは───

 

「なあ、実際、そう言う経験……有るか?」

 

大きな爆弾でなければならない。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

沈黙を継続する寿々花と夜見。

つまりはそう言う意味だと真希は捉えた。

 

「…………真希さんは?」

 

ポツリ、と寿々花が返す。

 

「………有るわけないだろう」

 

真希は顔を逸らし、頭を掻いた。

 

「あら、あんなに男女問わずおモテになるのに?」

 

「……それとこれとは関係無いだろう、寿々花。第一キミ、縁談とか有る様な名家なのに、その……無いのか?」

 

「一応、作法は心得てますのよ? ま、その前に破談になったワケで……」

 

バツが悪そうに笑う寿々花。

 

「そう言えばそう、だったな……」

 

溜息をつき、頭を抱える真希。

 

「ですが、お陰でこの場に立てているのですもの。運命って意外とロマンチストなんですのね……」

 

自分の髪の先端を指で弄る寿々花。

頰にはうっすらと朱が差し、口元は綻んでいる。

 

その様子を見た真希は辟易とした。

夜見は相変わらずの無表情だったが。

 

「私達のことを意識してない、訳じゃないんですのよね、夜見?」

 

「私を連れ出したり、真希さんの面倒を見たりなんかする、相当なお人好しでしたが、寿々花さんがやってくれたお陰で、ここ最近は妙に距離を感じます」

 

「あら? 夜見だってなんかしてらしたんじゃなくて? 何が『私は、そう言うのじゃ……』ですか。そう言うのを蜘蛛って言いましてよ?」

 

辺りに、静かに火花が散り始める。

火蓋が切られるかもしれない、そんな険悪な空気が漂い始めている。

 

「お前ら……そんな事してたのか」

 

「真希さんは、家でタダ飯食ってたかと思えば、掃除洗濯の家事やり始めて、挙句には料理を教わってたんですってね?」

 

真希の何気ない一言にも噛み付く寿々花。

 

「キミはキスとハグだろう!? 全然比較にならないぞ!」

 

煽られた真希。

耐性が無かったのか、すぐさま噛みつき返す。

 

「お二人共、ここは落ち着いてください。争いは禁物と、第3回会議で協定を結んだハズです」

 

夜見が取り直す。

共倒れしてもいい事はないし、あの兄妹が先に過ちを犯しかねない。

我々は協力すべきなのだ、という事で一致したからだ。

 

 

──自分達のことは棚に上げて。

 

 

 

「……色々言いたい事は有りますが、ええ。それで意識はしている、でしたっけ?」

 

夜見の提案を受け入れ、話を戻す寿々花。

 

「ああ。押し倒してくれるとは到底思えんがな。……こちらから押し倒すか?」

 

「現状、方法がそれしかないのだけれど……」

 

もはや正常な思考が困難になっている中の思考。

堂々巡りになるのも、無理はなかった。

 

「それだと……時と場所。それから()()の話になりますね」

 

「「!」」

 

「三人同時に、と言ってもですよ? やっぱり、その()()しか無いわけで……」

 

「………なあ」

 

「なんです?真希さん」

 

「燕さんって、今まで彼女居た事あると思うか?」

 

「……………」

 

誰かが生唾を呑んだ。

 

それを皮切りに、空気が一気に冷たいモノへと変貌していく。

 

変わりゆく雰囲気の中。

まるで示し合わせたかの様に、立ち上がった三人の手が、腰に佩く御刀へと影が伸びる様に伸びていく。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

ゆっくりと、鯉口が切られていく。

 

「止まるなら、ここですわよ?」

 

そう言いつつも、寿々花は九字兼定を抜刀している。

椅子を避け、じりじりと背後に間合いを取っている。

 

「説得力が無いな」

 

とは言いつつも、真希の手には薄緑が握られている。

 

「誰が先を越すか、不問なのでは?」

 

決めた約定を違える気か、と夜見が問う。

だが、この問いには意味が無いと鼻から切り捨てている夜見は、水神切兼光を構えている。

 

「そう言う事と有れば、致し方ないのではなくって?」

 

「確証はないんですけどね」

 

寿々花と夜見は写シを貼る。

最早、誰にも止められない。

 

「あの時の続き、と行こうか」

 

写シを貼った真希。

そのまま刀を振り上げ───

 

 

 

 

 

「私もまーぜて!」

 

「!」

 

真希の背後から袈裟懸け(斜め)に切ろうとする、乱入者の一閃。

 

真希は刀を振り上げた勢いそのままに、迅移にて振り返り、それを受ける。

 

「チッ……! 結芽!」

 

八幡力を発動し、結芽を押し払う。

 

「もー、そーゆー事なら早く言って欲しかったなー」

 

奇襲を仕掛けるも、失敗に終わった結芽は、押し払われた勢いを利用して後ろに跳びく。

着地し、ため息をつくと、担ぐ様に肩に御刀の峰を当てる。

 

「言うわけないでしょう? 貴女は───」

 

結芽に切っ尖を向ける寿々花が言い終わらない内に──。

 

「おねーさん達以外に、邪魔するヤツは誰もいないんだから!」

 

予備動作無しの三段階迅移を駆使した鋭い突きを放つ──!

 

「……くっ!」

 

刀を横に倒す、天然理心流独特の平青眼の構えから放たれたそれは、鳩尾、喉、眉間を狙った三段の突き。

 

正確に放たれるそれを、寿々花は鞍馬流の手首を駆使する、独特の巻き落としで右側へといなす。

 

「そう来ると───」

 

時に幕末。

天然理心流は田舎剣法と謗られていたと聞く。

何故ならば。

 

 

勝つ為ならば、手段を選ばないからだ。

 

 

 

「思ってたよ!」

 

「な!?」

 

右側へと跳ね除けられた御刀から右手を離し、近くに有ったパイプ椅子を、八幡力を駆使し、寿々花の顔面目掛けて投げつける。

 

「もーらいっ!」

 

顔目掛けて椅子が飛んで来た事により、視界が奪われた、その一瞬の隙を結芽は見逃さない。

 

パイプ椅子毎、寿々花の顔を貫かんと刃を突き立てる───!

 

「はぁっ!」

 

結芽が突き刺すニッカリ青江が、寿々花を貫こうとしたその刹那、夜見が上から叩き落す。

 

「ちっ!」

 

夜見は切り落とした勢いそのままに結芽を貫こうとするが、結芽は迅移で横へ飛び退く。

 

「もー、なんで邪魔するかなー」

 

無邪気に笑いながらそう言うが、目元は笑っていない。

 

「私達個々人では、結芽さんには敵いませんので」

 

「へー、わかってんじゃん」

 

そう言うと結芽は、夜見へと襲い掛かる。

 

「く……」

 

唐竹()逆袈裟斬り(斜切り上げ)袈裟斬り(斜め)

途切れる間も無く、次々と放たれる様々な斬撃は、次第に夜見を追い詰めていく。

 

「そう言う事ならっ!」

 

夜見の苦境に、薙ぎ払って入る真希。

結芽は受け流し、跳びのき、また刀を振るう。

 

「何処までも出鱈目な!」

 

寿々花の参戦により、三対一となったこの剣戟。

親衛隊とあって、流石の連携。

言葉を交わさずとも、結芽を三角点の中心に追い込む様に動く。

 

「おねーさん達の手は読めてるんだよー!」

 

囲まれる前に、常に誰かがもう一方の剣線上に被る様に移動し、連携を崩そうとする結芽。

その際も、辻斬りの如く素早く刀を振るう。

 

「クソっ、此処まで強かったか!?」

 

「可奈美おねーさんと毎日試合してるから、ねっ!」

 

「ぐっ……!」

 

真希は鍔迫り合いに持ち込むも、逆に刀を上に払い上げられ、鳩尾に肘鉄を入れられ、脚を払われる。

 

「真希さん!」

 

足払いを受け、倒れ込む真希が斬られない様、援護する寿々花。

 

「こんな簡単にひっかかるんだね!」

 

寿々花が振るった刀に合わせて、同じ剣線上に斬りつけてくる結芽。

 

「きゃっ!?」

 

鎬に逸らされ、僅かにブレた寿々花の九字兼定は、主人が拳を斬り落とされる事を許してしまった。

 

「いやー、凄いんだよね可奈美おねーさん。これも教えてもらったんだ。確か……《十文字勝ち》だったっけ?」

 

確か、柳生新陰流だったっけ、可奈美おねーさんと結芽は呟く。

その様子に、歯噛みするしかない寿々花。

 

「いっぱい勉強になるよ!」

 

すぐさま真希を斬りつける結芽。

 

「っ……!」

 

何とか膝を立てて受ける事に成功する真希。

だがら結芽の御刀が下にジリジリと火花を立てつつ下がって行く。

切先が抜けた途端、顔面を貫く積りだ。

 

「私を忘れられては困ります!」

 

膠着する状況に、結芽へと斬りかかる夜見。

真希を救う事には成功した様で、結芽は迅移で背後へと逃げる。

 

「どうする? あ、まだノロ残ってんだっけ? 使う?」

 

「舐めやがって……!」

 

結芽の挑発に怒りを募らせる真希。

 

「まー別に? 使っても勝てると思うし? このままお兄ちゃん諦めてくれたら嬉し……うわっとと!」

 

「挑発に乗ってはいけませんわよ、真希さん?」

 

怒りに今にも飛び出しそうな真希の代わりに、結芽へと横薙ぎに斬りかかる寿々花。

 

「……ふーん、使わないんだ」

 

「癪に障りますからねっ!」

 

一閃、二閃と、煌めく斬撃の応酬。

だが、互いに流派の()を知ってる結芽には中々その一撃は届かない。

 

「別におねーさん達がお兄ちゃんの事好きなのは別にいいやって最近は思うんだけどさー」

 

剣戟から先に離脱した結芽は、靴の先で地面を何度か小突く。

 

「私が妹だからって遠ざけようとするのが気にくわないの!!!」

 

結芽は前方近くに居た、寿々花を無視して真希や夜見に、勢いを更に増して襲いかかる。

 

 

「くっ……」

 

「っ……おお!!!」

 

受け流し切れずに、数回、斬りつけられる夜見。

対して、結芽の実力に並ぶ事を目指して鍛錬を続けてた真希。

 

長い事見てきた結芽の僅かな隙とも言える癖。

不思議とそれが、今なら見える。

その刹那に───。

 

「……っええ?!?」

 

御刀を一振り。

見事に胴を斬り裂いたその一閃は、結芽を驚愕させるに足るものだった。

 

「ボクだってな、お前の気持ちは理解出来る。だが、それとこれとは───」

 

「何がわかるの!!!」

 

斬り裂かれ、否定された結芽の怒りは怒髪天を突く。

 

「凄い凄いってあれ程私を褒めてた人間は私が凄くなくなった途端にみんな離れた!……パパやママもだよ!?」

 

「……結芽」

 

「それなのに、お兄ちゃんはずっと側に居た! どんな時でも側に居てくれた!」

 

感極まったのか、それとも別の何かか。

慟哭する結芽の眼からは、涙が溢れていた。

 

「それなのに好きになるな!? ふざけないでよ!! 私から、私から───」

 

「……来ます!」

 

「お兄ちゃんを奪るなぁあああ!!!!」

 

三段階──否。それすらをも上回るのではないか、と見まごう迅さで、三人目掛けて吶喊する。

 

「な……」

 

「ちょっと!? 速すぎやしません!?」

 

場所を気取られない様に、右へ左へ、一秒たりともその場に留まることなく、稲妻の如く移動を重ねる結芽。

 

「……っ!」

 

持ち前の勘で、幾ら対処しようとも、経験した事の無い速さに翻弄されていく。

 

 

 

 

賽は投げられた。

 

天秤は、何方へ傾くのだろうか。

 

 

 

 

 

 




次回辺りにルート分岐するかな……
20話の夜見さんに思う所があるのでやさしい世界にしよう
夜見さんが一番覚悟決まってんのはわかるけどさぁ……
バッドもやりたいね
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。