切り裂きジャックの幻想入り   作:零壱

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2-3:お嬢様への謁見

 気が付くと知らない部屋の中にいた。

 さっきまであった鉄の門もその門番の美鈴の姿も今はどこにもない。

 最悪なことにさっきからタネのない手品を披露し続ける変態メイド、咲夜が隣にいた。

 

「!?」

 

「ご安心くださいませ。ご客人には丁寧な対応をせよとお嬢様から仰せつかっております」

 

「どうだか。そのお嬢様とやらだって変人に違いない。お前なんかを雇ってるんだから」

 

「たしかに人間の私には理解できないセンスの持ち主ですが、良い方ですよ。それにそのお姿はあどけない幼女そのもので大変可愛らしいのです」

 

「変態メイドに愛される変態幼女とかたまったもんじゃないな」

 

「いい加減にしないと怒るぞ? まったく、本人を目の前に好き勝手言いやがって……」

 

 この部屋に来てからずっとその存在には気づいていたが、よもやこんなちんちくりんがお嬢様だとは思わなかった。

 

「てっきり人形かなんかだと思った。随分精巧に作られているからラブドールってやつかと。やっぱり変態の主は変態なんだと」

 

「咲夜ー? こいつぶっ殺していい?」

 

「連れて来いと仰ったのはお嬢様でしょう? それに、この程度のことで一々気に障っていてはいけませんわ。紅魔館の主たるもの、常に余裕を見せつけなければ」

 

「元はと言えばアンタが変なことしたからでしょうに。そうでしょ?」

 

「変なとこばっかしつこく触られた。あと、襲ってきた理由がお嬢様に似てるからって言ってたからお嬢様もそういう趣味なのかと」

 

「……うちのメイドが全面的に悪かったわね。あと、私にそんな趣味はないから」

 

 お嬢様は案外まともな人物のようだ。背中に一対の蝙蝠羽が生えているし明らかに人外だが、少なくともこの変態メイドよりはマシだろう。

 

「改めて名乗らせてもらうわ、記憶喪失の外来人。私はレミリア・スカーレット。この紅魔館の主であり、そこの変態メイドの主人よ」

 

「苦労が絶えなさそう」

 

「まったくよ。この前なんか食事に大蒜を盛られたわ。ただでさえ吸血鬼は大蒜が苦手なのにね。しかも、その次の日は神社に遊びに行く予定だったのよ」

 

「えげつない嫌がらせ。なんでそんな奴を傍に置いとくのさ?」

 

「世界中どこ探したって咲夜ぐらいよ。吸血鬼相手にこんなことしてくるのは。だからこそ、飽きがない。それがこんな変態メイドを傍に置いてる理由」

 

「お嬢様……! これからもお嬢様を満足させられるよう、精進いたしますわ」

 

 訂正、レミリアもやっぱり変わり者だった。あと、吸血鬼だったのか。……吸血プレイとか想像して気分が悪くなった。おえ。

 

「でも、流石に咲夜にばっかり世話を任せるのもちょっと心配になってきたのよね。そこで、当てもないだろうアンタに提案がある」

 

 レミリアは大きな紅い瞳を細めた。それは何かを期待している目だった。

 

「ここでメイドをやってみないか?」




「秘部に至るまで検査致しましたが、これといったものを隠してはいませんでしたわ」

「ん。ご苦労だった」

「いえ、役得ですわ」

「……」

「それよりも、本気なのですか? 彼女程度の人間に果たして妹様のお世話が務まるのでしょうか?」

「あぁ、間違いない。アレはそれに値する化け物だよ。……時に咲夜。お前はアレをどう思った? どんなモノだと感じた?」

「……正直に申し上げますと、ただの人間としか」

「本当にそれだけ?」

「えぇ。力もなく、能力にも恵まれなかったただの人間。それが私が唯一彼女に抱いた感想ですわ」

「ふむ。やはり、人間と妖怪とでは見えているものが違うらしい」

「申し訳ございません」

「気にするな。こればっかりは仕方がない。むしろ、変に嘘を吐かれる方が困る。お前の感想を聞いたのは私の知識を改めて確かめるためだったからな」

「差し支えなければ、お嬢様はあの娘をどのように見ていたのか教えていただけませんか?」

「……良いだろう。ただし、後悔してもしらんぞ。そう、私にとってアレは――」
 
 純粋な殺意そのもの。何であろうと、誰であろうと殺すことのできる不可視の化け物だ。
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