とある海の底での切ない出会い

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ankou暗きを行く

 

 

 

深い深い水の底

 

 

光さえ届かない暗く冷たい深海を泳ぐ

 

一匹の魚がいました

 

 

 

 

今日も相変わらずに真っ暗の中を

 

ただ一匹は泳いでゆきます

 

 

 

猛々しく突き抜けた海底の岩山の間を、

 

わずかに生い茂った海藻の森を

 

泳ぐ泳ぐひたすらに泳ぐ

 

 

 

 

 

 

 

どれほど泳いだ頃でしょう

 

20年か30年か

 

途方もない時間を泳ぎたどり着いた海の果て

 

 

 

一匹は初めてのそれを目にします

 

 

 

 

 

 

 

真っ暗な海の底で魚の目の前に

 

淡く温かい光の玉が漂っていたのです

 

 

 

何だろうこれは?どこからやってきたんだ?

 

 

 

魚はそれがなんなのか理解できませんでした

 

光なんて初めて見たのですから!

 

 

 

それは小さな小さな太陽のようであり、

 

魂のようでもありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

一匹はただ無性に好奇心を駆り立てられ

 

それを追いかけてみることに決めました。

 

 

ちょんとこづいて遊ぶのもいいし

 

なんなら食べてみるのもいい。

 

 

 

 

 

 

しかしどれだけ追いかけても近づいては離れて、

 

離れては近づく光の玉には

 

決して届くことはなく

 

 

 

 

こうして一匹と光の玉一個

 

おかしな旅が始まりました

 

 

 

 

 

 

太平洋インド洋、ケープ岬を迂回し大西洋へ抜ける

 

 

追いかけっこに疲れたら沈没した海賊船を寝床にし

 

またあるときは黒潮の流れに乗り

 

楽して追いかけもしました。

 

 

 

 

 

とうとう七つの海をまたにかけることになり、

 

 

それでも決して届くことはなく

 

 

 

光が淡く照らす海底を

 

どこまでもどこまでも追いかけて一緒に進んでいく

 

 

 

 

 

 

 

魚はとても楽しかったのです

 

今までずっとただの一匹だったから

 

 

 

それが何なのかなんてどうでもよかった

 

 

 

一度だけです、ほんの一度だけ

 

一匹はそれに聞いたことがあります。

 

 

 

なあ、どうしてお前はそうやっていつも

 

おれのすぐ前を漂っているんだ?何か楽しいのか?

 

 

 

当然返事はありません

 

プカプカゆらゆらと揺れるだけ

 

 

でも一匹にはそれでよかったのです

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日、魚は気づいてしまいました

 

玉の光が弱くなっていることに

 

 

 

 

 

このまま消えてしまうんじゃないか

 

 

 

そう思った矢先にとうとう

 

 

 

 

フッと蝋燭の火が消えるようにそれは光を失い

 

魚はまた真っ暗な冷たい海の底へと逆戻りしました

 

 

 

 

 

おい!どうしたんだ!なにがあった!無事か!

 

 

一匹は必死に呼び掛けますが当然返事はありません

 

 

 

突然の真っ暗闇です

 

一匹は右も左もわからず途方に暮れてしまい

 

泳ぐことをやめてしまいました。

 

 

 

 

 

 

すっかり光に慣れてしまった魚の目は

 

もう二度と海底の猛々しい岩山も

 

生い茂った海藻の森も映すことはありません

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ、いまでもいつまでも

 

一匹の目に焼き付いているのはあの…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは彼がチョウチンアンコウになる前の物語

 

 

 

 

 

 


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