艦娘(?)を匿うことにした   作:肉羊

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リスのぬいぐるみ(4桁円税込)
値段はアレだが可愛いし、抱き心地も最高※メイドインチャイナ

鎮守府にも民間の団体から感謝の気持ちの意を込めて送られている、送られたぬいぐるみに、どこかの生真面目な戦艦の艦娘はご熱心だったとか……


第九話 Two Fleet girls

ここは何処だろうか?やけにタバコの匂いがするが……

 

気が付くと俺はどこか堅苦しい室内に居た、おいくらなの?と尋ねたくなるような古めかしい置時計がコチコチと時間を刻んでいて、物々しい机にはいくつも書類を乗っけてある。

 

これでもかと言わんばかりに机に乗っている書類を見て、軽くブラック企業勤め時代の古傷が開いた、思わぬところで精神的ダメージを受けつつ、このままじゃいけないので俺は部屋でうろうろし始める。

 

「本当にここは何処なんだ?波の音が聞こえるけど……誰かいるのか?」

 

そこで嫌な予感がした、自分はもしかして誘拐されたか、そうでなくとも別の事件に巻き込まれたんじゃないか?

 

あるいはここに泥酔して勘違いしたりなんなりで迷い込んだのであれば、この家の家主に見つかれば警察沙汰だ、そう思うと一気に緊張で心拍数が上がる。

 

そしてハッと目が覚めた。

 

「夢かよ畜生……」

 

枕元にあるデジタル目覚まし時計を見ると午前二時過ぎ辺り、明日は新聞配りの日じゃないし、まだまだ全然眠れる時間だ。

 

しかしさぁ、子供の頃は悪夢を見たと言えば何かに追われるだとか、どこかから落ちるだとかの直接的な悪夢しかなかったが、どうして大人になると見る悪夢がこうも生々しくなるんだ?

 

「まぁ、どうでもいいや、二度寝するか」

 

二度寝する時の心地よさだけは認めるがね、そのまま俺は深い眠りに着いた。

 

 

今度はなんなんだ?また場面が変わった、下を見ると水だった、海か湖のように広い水面の上に俺は居た。

 

「うお!?」

 

沈む!?と、焦ったがどういう訳か俺は水面の上に立てた、ここまでおかしいと流石に夢だな、と気付く。

 

夢であると自覚できる夢、明晰夢ってやつか?

 

適当にそこに佇んでいると、急に真後ろから爆音が響いた。

 

「今度は何だ、花火でも見れるのか?」

 

興味本位で振り返ってみると、変な兵器?を背負った黒髪の女性が通り過ぎて行った。

 

腰まであるロングストレートの黒髪が目に付く、夢だからか、顔はあんまりハッキリとは見えない。

 

お~あの人後姿がうちの馬鹿舌にそっくりだな、あの人も大食らいなのかな?

 

そんなくだらない事を考えていると、また爆音が響く、何だろうと思って見てみれば、長い黒髪の女性ともう一人、これまた姿は詳しくは見えないが、肌も髪もまっ白の女性(アルビノか?)が背中に背負った砲台を使って互いに向かい合ってドンパチを繰り広げていた。

 

黒髪は機械的な砲台を背負い、白髪は生物的な武器?を背負い、どちらも退かずに背中に着けた砲を撃ちあって、素人目で見ても戦況は五分五分だった。

 

物騒な夢だなぁ……

永遠に続くかと思える戦闘だったがその内決着が付いたようで、黒髪が放った砲弾が白髪の方に着弾したのか、白髪の女は爆発炎上して沈んでいった。

 

爆発炎上して沈むなんて、特撮の怪獣じゃないんだからさぁ……仮面ライダー辺りの見過ぎか?モロ夢に反映されてるな~まったく。

 

ともあれ戦闘は黒髪の勝ちに終わった、しかし戦闘に勝利した黒髪の方も無事じゃなかったらしい、よろめきながら数歩分進むと、その場(水面?)に倒れ伏した。

 

体を見れば、いくつか砲撃を貰ったのだろう、服は所々破けて、破れ目から流血しているのが分かるし、背負っていた砲台はボロボロで、もはや砲としての機能を果たしているかさえ怪しい有様だった。

 

え、ここまでリアルだといくら夢でも怖いし可哀想なんだけど

 

「私もついにここまでか、しかし今度は戦いの中で終われる、ふ、本望だな」

 

見るからに弱っている黒髪の人、おいおい大丈夫かな?いくら夢でも助けたくなってきた、どうせ俺が見てる夢だし、俺の思い通りにならないかな?

 

「一つ心残りがあるとすれば提督、貴方にまた、会いたい……」

 

おいおい黒髪さん沈みかけてるぞ!このままじゃ本当に逝っちまうんじゃないか!?クソッタレ、ついさっきの夢の方が心が痛まない分まだマシだったよ!

 

「ねえ?」

 

なんだよ、誰だうるさいなぁ?俺はあの人を助けないと行けないんだよ、見てやがれ今に夢が捻じ曲がるぞ!

 

「ネエ?」

 

うるさいって、あと一時間寝かせてくれよ……せめてあの人を救うまでは

 

「起キナサイ」

 

ああ、うるさいんだよなぁ……

 

イライラしながら目を開ける、さて、朝起きたら誰かが自分の顔を覗き込んでいたら、誰でもビビることは間違いないだろう、まして顔を覗き込んでいるのは青白い肌をした女の顔(角も生えてるよ!)だぞ?

 

「起キタカシラ?」

「ひええええええ!?」

「キャアア!?ダカラナンナノヨ!」

 

まぁ、つまり、ビビって跳び起きるってことだ。

毎朝これじゃ身が持たない。

 

 

 

 

____________

 

 

 

 

デジタル時計を見れば今は午前七時ちょい過ぎ位、今日は仕事があるから辛い。

欠伸を噛み殺しながらのそのそと起きて朝食を作る、今日の献立はスクランブルエッグ、パン、ウインナー、ヨーグルト

 

実に朝飯らしい朝飯だな。

 

「マダデキナイノ~?」

「ヲ~」

「生でよければベーコンあるからそのまま齧ってろ、ついでに食中毒でおっ死ね」

 

気持ちのいい朝のムードを徹底的にぶっ壊す奴が居るのは寝る前と変わらないが

 

そうこうしている内に、朝食を作り上げて、席に着く

 

皿の上に乗せたウインナーとスクランブルエッグを、ぼ~っと眺めながら今朝見た夢を回想する

 

夢に出てきた黒髪の女の人が気になるなぁ、顔はあまり見えなかったけど良い尻してたなぁ……

 

あれ?夢の中の黒髪の女の人は何してたんだっけ、忘れちゃったよ。

ま、夢ってのは起床してから数十分で殆ど忘れちゃうらしいし、別におかしなことじゃないか。

 

「ヲ?」

「ウン、ソウネ」

 

顔を合わせて日本語ではない原語を使って戦艦棲姫と会話しだすヲ級

だから謎言語で話されると訳分からないんだってば、来日したばっかりの留学生かよお前らはぁ

 

「何カアッタノ?ヲ級モ言ッテルケド、何カ思ウ事デモ?」

「何かって、いや何てことはないんだよ」

 

こんな夢を見ました~なんて言っても変な目で見られるだけだもんな、夢十夜じゃあるまいし。

 

でも言わなけりゃ怪しまれるし、そうなったら馬鹿舌は、またあのシリアスモードに入るのかな?いやいやそんなまさか……

入ったら嫌だなぁ……よし、正直に話すか。

 

「分かったよ、変な目で見るなよ?俺は妙な夢を見たんだ」

『××さん、××さん、僕は変な夢を見たんだよ』

 

こんな夢を見た。なんて、夏目漱石のような綺麗な切り口とはいかなかったが、とりあえず覚えてるだけの夢の内容を話した、真実を話したのだから信じてくれなきゃ困る。

 

「……?エ、エエ、ソウネ信ジルワ」

「ヲ~?」

「信じてくれて何よりだよ」

 

まぁいいか、とりあえずさっさと朝飯を食っちまおう。

 

時間がもったいないと豪快に飯を掻き込む俺、今日の内職でノルマの三倍超えてくれなきゃ割に合わない、このアホ共を養っていく為にそろそろ本格的に働かなきゃいけないか?

 

名残惜しいが休日は終わったんだ、これからは気を引き締めて行かなきゃな。

 

「飯とか顔洗いとか終わったら内職するからお前らも手伝えよ?」

「嫌ヨ」

「ヲ!」

 

……まぁ、知ってた

 

「一宿一飯って言葉知ってるかお前ら」

「知ラナイ」

「ヲ?」

「ヲ級ハ内職手伝ウラシイワヨ」

 

ナチュラルに仲間を売りやがったよこの畜生め、だがしかーし!昨日の時点で俺の内職を手伝ってくれることを確約してるんだよなこれがぁ……

 

「リスのぬいぐるみの件は?」

「ウッ」

「気に入ってたよな~?あれ、お前が約束を破るなら返品しよっかなぁ~」

『随分気に入ったんだね、そのぬいぐるみ』

「リス?ヌイグルミ?あナたは……?一体何者ナんダ?」

 

俺はリスのぬいぐるみをチラチラと見ながら勝ち誇ったように言ってやる

完全に痛い所を突いてやったね、指摘された戦艦棲姫はポカンとした顔でとぼけてやがる。

 

「忘れたとは言わせないぞ姫様よぉ、昨日俺の財布の中身を生贄に内職を手伝うように言ったじゃないか」

「姫……私ハ姫……アア、ソウネ、私ハ確カニ昨日手伝ウト言ッタワ」

 

すっとぼけてたが、ついに認めたなぁ?

さ、戦艦内職姫の言質も取れたし内職するかぁ

 

 

 

____________

 

 

 

 

「お、意外と上手いじゃん二人とも、この調子で一人でやってた時のノルマの三倍以上を目指すぞ」

「分カッタワ」

「ヲッ」

 

今日の内職はアクセサリーの制作だが、思ったより二人が器用だった、勝手な想像で不器用だと思ってたが嬉しい誤算だな。

 

こいつらの名前は今日から装飾屋ヲ級と内職棲姫にしてやろう、存分に名乗るがいい。

なんてジョークを本人に言うと間違いなく拗ねるだろうから口が裂けても言えないけどな!

 

まぁ、仕事が円滑に進むと雑談する余裕が生まれるわけで。

 

「そういえば、元に所属してた組織じゃ何やってたんだ?娯楽とかあるのか?」

「エ?エエト……」

「ヲ?」

「鎮守府って海に面してるし、敷地内でビーチバレーとかさ?」

「ビーチバレーネェ……ウウ」

『水着で浜辺に集合だ!』

 

暇だから自分から雑談を切り出した

 

ビーチバレーとか楽しそうだよな、スイカ割りとか砂でお城作ったりさ、惜しむらくはそれらを一緒にやる人間関係が俺にはもうない事なんだけどね、ハハハ!

 

失踪しない方がよかったような気がしてくるから人間関係の話は止めよう……

 

「何でもいいや、とりあえず前に居たところはどうだった?」

「ソウネ、嫌イデハナカッタカモ」

「嫌いじゃない、かぁ……中途半端な答えだなぁ、戦い自体は嫌になったけど組織は好きって奴?」

「エエト、マァ、ソウネ」

 

煮え切らない態度の戦艦棲姫、これ可能性としては元の鎮守府でボッチこじらせてたってのもあるな、うわ詮索するのが可哀想になってきた、この辺にしとこ。

 

「ヲ~」

 

モゾモゾと体を動かすヲ級、これは内職に飽きだしてるな、かれこれ一時間近く作業を続けてたし無理はないが。

 

確かに同じ作業の繰り返しって飽きるよね、俺も最初に内職始めた時は地獄だと思ったよ。

でもそのうち精神が研ぎ澄まされてくるんだわ、これが。

 

とはいえ、ヲ級は自分の意志で手伝ってくれてるし、この際何か旨味がなきゃ以降のやる気は出ないよな?

それならそれで考えはあるさ。

 

「ほれ、ヲ級集中しなさい、終わったらアイスあげるからさ」

「ヲ!?」

「エ!?」

「いや、何でお前まで食いついてるんだよ」

 

目をキラキラと輝かせるヲ級と戦艦棲姫、子供っぽいヲ級の反応は予想できたが、自称姫まで釣れるとは思わなかった。

 

甘味で釣られるとか子供か!お前はぁ……いや、この際やる気出してくれるならどっちもアイスで釣るか、丁度いいし。

 

「まぁ、それは一人の時のノルマの三倍を超えられたらの話で」

「ヲッ!」

「命ニ掛ケテモ!」

 

言い切る前から凄まじい集中力を発揮して内職に打ちこむ二人、ちょろすぎじゃないですかねぇ……

ちなみにこいつらには言ってないが、格安アイスだぜ!

 

こいつらにはハー○ンダッツはやらねえ!

 

「どんだけアイス好きなんだよ」

『本当に間宮アイスが好きね、隠れて食べないで堂々と食べればいいのに』

 

「アイスクリーム……間宮?」

「あん?マンマミーヤ?ああ、マミヤね、いやなんなのか分からないんだけど」

「ヲ?」

 

マミヤ?何だよそれ、人名なら北斗の拳か何か?

 

「間宮、間宮……何カヲ思イ出セソウナノニ……」

「まぁ、こういう時って思い出そうと頭を捻っても絡まるだけだぞ、数日後ぐらいに思い出したりするから今は内職しろって」

 

忘れたことってのは思い出そうとしてる時は大抵、別の記憶が邪魔して思い出せないもんな。

 

その後は雑談を挟みつつ、内職を進めた、こいつらが意外と器用で内職の効率が想像以上に上がることが分かった

おかげでこの馬鹿共が来てから初めて家計がプラスになるかも?という希望が湧いてきた。

 

戦艦棲姫の言ってることが妙に気になるが……その内思い出すだろ。

 

 

 

 

____________

 

 

 

 

 

鎮守府内、艦娘達は昨日と違うメンバーと一緒に、昨日とは違うメニューの朝食を摂る、そんな中でも昨日と変わらないのが仕事内容である。

 

その中でも更に前日と変わらない事をしているのが鎮守府の提督でもあるこの男だ。

 

しかし、どうやら今日ばかりは進展があったようだ、随分と嬉しそうな顔をしている。

 

「やっぱりそうだ、上位種が下位種に与える強化効果の範囲はだいぶ綺麗な形で表せられる、つまりこのまま鎮守府近海の外を探索させて、上位種の効果が及んでるかどうかのギリギリの範囲を地図にメモしていけば、その中心に忌々しい上位種本体がいる」

 

少なくとも今のこの男の心境は、桃源郷を彷徨っているかのような幸福に包まれていた、なんなら遅れて朝食を取っている艦娘達を連れてきて進展を見せつけてやりたいくらいだった。

 

「ようやくこんな仕事からも解放される、ああ、疲れた」

 

椅子に倒れ込むように深々と座りなおす提督、しかしここから上位種の場所を絞り込んでいくのに更に長い時間を拘束される羽目になるとは、この時有頂天であった彼には思いもしない事だった。




輪廻転生(りんねてんせい、りんねてんしょう)

転生輪廻(てんしょうりんね)とも言い、人が生まれ変わり、死に変わりし続けること。
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