艦娘(?)を匿うことにした   作:肉羊

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夏祭りってwhiteberryの曲じゃなかったのか……(驚愕)


第十話 ヲ祭りに行こう!

我が家の戦艦とヲ級に内職を手伝わさせてから更に二週間が経った。

相変わらず戦艦棲姫は我儘だし、ヲ級も子供っぽいままだ。

 

ヲ級や戦艦棲姫に朝叩き起こされるのも慣れたもんだ、何なら一人暮らしの寂しさが紛れたとすら思えるようになってきた。

 

まぁ、とにかく生活が安定するのは良いことだ、自分はストレス耐性が皆無だから考え方はネガティブよりもポジティブなほうが断然得だと思っている。

 

色々な考えを巡らせてると、家の錆び付いた郵便受けにチラシが入っているのに気付いた。

 

「ん?何だこりゃ、ああ、町の祭りだっけ?よくやるよなぁこんなご時勢だってのによ」

 

チラシの内容は簡単にまとめると「今日から四日間お祭りします、皆来てね」って事が書いてある、確かにお祭りは良いけど、いくら町が深海棲艦に襲撃されたことがないからって少し迂闊すぎじゃないかなぁ?

 

家の馬鹿舌曰くつい最近戦闘があったらしいし。

 

ぶっちゃけどっちだっていいや、どうせ行かないし。

 

そりゃあそうだ、ただでさえ人込みは苦手だってのに、今回は国家機密まで抱えてるんだから行きたくてもいけないわな。

 

「何ガ書カレテイルノ?」

「ん?今日は祭りがあるんだってさ」

『今日はお祭りがあるみたいだ、たまには行ってみなよ××さん』

「祭リ……祭リ?ウウ……」

 

急に頭を抱えだす戦艦棲姫、会話の途中で頭を抱えることが多々あるが、偏頭痛持ちなんだろうか?

 

「ワタシヲ、マ、祭リニ連レテ行ッテ」

「は?」

 

え?何それは……

いやいやいやいや無理だって!強制ショッピングの時でも何度肝を潰したのか分からないってのにあんな人込みに突っ込んでいくのは自殺行為だって。

 

「オ願イ」

「いやぁ、マジで無理だと思うぞ?今回ばかりは本当に」

「本当ニオ願イヨ……」

 

妙に真剣な眼差しでこっちを見てくる、何か訳有か?

 

「どうしたんだよ、また、何か思い出しそうなのか?」

「エエ……」

 

どうすっかこれ、でも今までにない真剣さだし、忘れた記憶ってのが余程引っかかってるんだろうな……

 

仕方がない、今回だけだ、今回だけリスクを冒すとしようか。

 

「分かった、ただし今回だけだからな?」

「!……本当ニ!?」

「ああ、でも勿論変装はしてもらうぜ?」

「アリガトウ!」

 

マスクとニット帽を付けてもらう、勿論そのネグリジェっぽいドレス?も着替えてもらわなきゃな。

 

角が見えなきゃ肌色が異様に青白いだけの女性にしか見えないんだ、特に夜なら肌色なんてほとんど分かりゃしないよね。

 

よね?

 

「問題はなんだけどさあ、ヲ級はどうするの?」

「ヲ?」

「オ留守番ハ……無理ソウネェ」

 

うん、こいつが居たわ、精神年齢が子供な奴が。

 

「ヲ!ヲ~ヲ~ヲッ!」

「ん?何言ってるんだこれ」

 

物凄い勢いよく身振り手振りをするヲ級、何かを伝えようとしているのは分かる、分かるんだけど何言ってるのかが分からない。

 

いや、ニュアンスは分かるんだよ、多分……

 

「私モ連レテ行ッテ、デスッテ」

 

自分も連れていけって所だろ

ほら当たってた、うーん、流石に無理そうだ

 

「これは流石に無理じゃないかなぁ?ほら、頭のそれは滅茶苦茶目立つし」

 

クラゲみたいな被り物?をどうにかしない事にはどうしょうもないと思うんだ、マミられる一歩寸前というか、見てて物凄く怖い。

 

「ヲ?ヲ!」

 

両手でのサムズアップをしてくるヲ級、何が大丈夫なんだろうか、無駄にキリッとした顔なのが腹立つ、真顔だと人形っぽくて怖いから、そうやって何かしら表情を付けててほしい。

 

顔が整いすぎてると一周まわって真顔が怖くなるって初めて知ったわ。

 

「ヲ~ッヲ~ッ ヲ!」

「何をそんなに気張って……ファッ!?」

 

ヲ級が被っているクラゲのような帽子(?)が一瞬にして消え去った、戦艦棲姫の艤装みたいに一瞬で着脱可能なのか、それ。

 

いや、それともその被り物自体が艤装だったの?

 

つくづく艦娘って謎だよなぁ~

 

「ま、まぁとりあえず祭りに行くのは夜からだから、それまで時間つぶそうか?」

「了解シタワ」

「ヲッ!」

 

 

 

__________________

 

 

 

 

さて、時刻は午後六時過ぎ、暗くなったので祭りに来てみたが、予想していた倍混んでいた。

 

「おいおい、やたら混んでるな、ジジババしかいない町なのになんでここまで混むんだ?祭りがここまで活気あるなら、過疎なんてしないでしょうに……」

「ヲ~!」

 

俺がぼやいていると、ヲ級が目を輝かせながら俺の袖を引いてくる、力強っ

 

連れてこられた先は甘い香りのする屋台だった、旨そうなチョコバナナがいくつも台に刺さっていて、こわもてのオッサンが野太い声で接客をしている、THE・屋台って感じの屋台。

 

ああ、チョコバナナが食べたいのね?まぁ、それくらいならいいけど

 

「ヘイらっしゃい!旦那もお連れさん達に一本どうだい?200円で一本、じゃんけんに勝てばもう一本付いてくる!」

 

こういうタイプね、200円で一本て高くないか?

ま、こういう所で買うんだから多少ノボっててもいいよな。

 

「チョコバナナネェ……ン?チョコバナナ?」

 

『チョコバナナね、××さん甘いもの好きだったっけ?』

『ふ、あなたならそれを笑わないんだろう?』

 

「提督……?行カナきゃ」

 

「ヲ!」

 

ん、ヲ級は青いチョコバナナを指差してる、それにするんだな

 

「んじゃ、このチョコバナナを下さい」

「まいど!さぁお譲さん、じゃーんけん!」

「ヲ!」

 

おー勝った勝った、んじゃもう一本はバカ舌にでもあげるとするか

 

「おい、戦艦棲姫?」

「ヲ?」

 

あれ?さっきまで居たのに、馬鹿舌が居なくなってる

 

あいつ目を離した隙に何処行ったんだよ

 

「あれ?バカ舌?」

「お連れさんなら、さっきあっちの方へ駆けてったよ」

 

まったく、急にどうしちまったんだよあの戦艦内職姫、この人込みじゃ見つけんのも一苦労だぜ?

 

「ヲ?」

「とりあえずあのバカを探すぞヲ級!」

「ヲ!」

 

こうしちゃいられねえ、あの戦艦国家機密を探し出さなきゃ、あのアホが何しだすか分からん!連絡手段もないし、完全に迷われたら本格的に詰んじまう!

 

「畜生、だから来たくなかったんだよこんな陽キャの集まりには!」

 

ずかずかとチョコバナナのおっちゃんが指を指していた方向を歩きだす

 

「ヲ?ヲ!」

「全く、あのバカ舌め、今度の料理にはあいつの苦手な食材をたっぷり入れてやろう」

 

頭に来たので、今度の料理にはあいつの嫌いな物をたっぷりぶち込むことにした。

 

「フン、あいつに姫って称号を与えた奴はきっとトチ狂ってたに違いない」

「だよな?ヲきゅ」

 

同意を求める意味で、ヲ級が居た方向を向く

 

「あれ?ヲ級?」

 

さっきまで居たヲ級も忽然と姿を消していた、どんだけ自由なんだよあいつらは

 

「クソが!どいつもこいつも協調性って概念がないのか!?」

 

迷い人探しに保護者センターは……いや(精神年齢はともかくとして)二人の見た目年齢は高いんだ、保護者センターにいる方がおかしい。

 

 

「見つけました!しれぇ!」

「あーまったく……あの馬鹿舌にアホ食う母め」

「しれぇ!一体どこに行っちゃったのかと思いましたよ~」

 

「あれ?陸奥さん達は何処ですか?」

 

ん?もしかして俺に声かけてるのか?一瞬「死ねェ!」って言われてるのかと思って何事かと思ったけど。

 

呼びかけて来た方向を見てれば、声の主は随分と可愛い見た目をした少女だった。

 

セーラー服の様なワンピースを身に着けていて、片手には双眼鏡、これらも充分特徴的だったが、快活そうな笑顔の口元からのぞかせる、どこかげっ歯類を思わせる前歯が何よりも目を引いた。

 

しかし、ハムスターの様な歯が顔の良さを邪魔している、というよりは、むしろアクセントとなって可愛げを増幅させている様にも感ぜられる。

 

将来有望だなぁ、いや何を考えてるんだ俺は

 

「しれぇ?あれ?」

「いや、申し訳ないけど多分初めて会うよ、お嬢ちゃん」

 

うん、やっぱりこの顔は知らないな、少なくとも印象は薄くない顔だから一度見たら忘れないだろう。

 

「うん、ほら」

「ええ!?もしかして人違いでしたか!?」

 

近づいてよく顔を見せてやる、女の子はようやく人違いに気付いたらしく、あたふたしている。

 

分かるよ、フレンドリーに話しかけてみたら別人だった時って、物凄くこっ恥ずかしい

よね?

 

「誰か、人を探してるのかい?」

「はい!しれ……親戚のおじさんを探してるんです」

「へえ~見つかるといいね、それじゃ、おじさんもう行くから」

 

ちょっとしたトラブルは有ったが、ひとまず解決したのでバカ舌達をまた探しだす。

 

「あ、ちょっと待ってください、しれ……おじさん!」

「うん?どうしたの?」

 

数歩歩いたところで、さっきの少女にまた声を掛けられる、何事だろうか?

 

「もしかしておじさんも人探しですか?」

「え、そうだけど?」

「じゃあ雪風と一緒に探しましょう!」

「ゑ?」

 

ぽんぽんと自分の胸を叩く少女、ちょいと無警戒過ぎないかね、俺が悪い人だったら最悪ハイエースされちゃうよ?

 

ロリコンでも犯罪者でもないから自分目線なら心配ないけど

 

「いや、俺は問題ないけど、嬢ちゃんにとって俺は知らない人だよね?」

「はい!でも良い人だって分かります!」

 

その根拠のない自信はどこから来るんだよ……

止めろ!そんな穢れのない目で俺を見るな!

 

「それじゃ、宜しくお願いしますね!し……おじさん!」

「あ、ああうん、よろしくね、えーと?」

「雪風です!」

「うん、宜しくね雪風ちゃん」

 

押しが強すぎて、つい了承してしまったが、これ警察呼ばれる案件なんじゃないかな?

 

二度目の社会的な死が間近に迫るぜ!目の前の少女が死神に見えてきたぁ!

……マジ通報だけは勘弁してくれよ?

 

 

 

__________________

 

 

 

 

少女と出会ってからどれだけ経っただろうか?

 

相変わらず雪風と名乗る少女は俺の後を雛鳥の様に付いて回っている。

 

「おじさんはこの辺に住んでいる人なんですか?」

「うん、この辺に家があるんだよ」

 

ピーチクパーチク話しかけてくるところも、雛鳥感を増幅させてる、うっとおしさを感じさせないのは純朴そうな性格ゆえか?

 

ここまで良い子だとあっち行けとも言えないし

 

「おじさんは雪風の知ってる人に雰囲気がよく似てます!」

「へぇ~どんな人なんだい?」

 

そういえば、この子が俺に話しかけてきた理由は親戚のおじさんと間違えたんだっけ?

どんな人なんだろうか、興味がある。

 

「えーと、大変な仕事に就いてるのに、決して逃げたり妥協する事が無くて偉い人です!受けた仕事は絶対にやり遂げちゃうんですから!」

「ゴフゥッ!?」

「ええ!?おじさんどうしちゃったんですかっ!?」

「いや、気にしないで、そうだよねそうだよね……逃げないのは良い事だよね……ゲフッ」

 

少女が唐突にえげつない言葉でのボディブローを食らわせてきたので思わずむせてしまった。

 

一発クビ宣告食らっただけでメンタルブレイクして蒸発した俺の人生なんてクソッタレだよね……アハハ。

 

少女の曇りない眼差しが限りなく痛い、心に深く突き刺さるわ。

 

「雪風ちゃんはどの辺に住んでるの?」

「えーと、こっから少し離れた所に住んでます!」

 

ヲ級に戦艦棲姫を探しているのでキョロキョロと辺りを見回しながら道を行く、屋台の通りはまだまだ続く。

 

「うん、親戚のおじさん見つかるといいね」

「ちなみに、おじさんはどんな人を探してるんですか?」

 

どんな人を探してる……か、いやあれは人であるかすら危ういと思うが、いや人型の知的生命体ではあるな、両方共

 

どっちにせよ「艦娘を匿ってるよ僕ちんww国家機密を二つも抱えてまぁすww」

なんて、言えるはずもないわな。

 

適当に噓ついとこ

 

「おじさんは、妹と来てるよ」

「妹ですかぁ!雪風にも妹が居るんです!」

「ほ、ほえ~妹いるんだ……」

 

あ、やっちまったかも、下の子あるあるトークとかされたら答えられる自信ねーわ

どうすっぺ?

 

「はい!妹も姉も沢山います!」

「へえ、何人姉妹なの?」

「17人姉妹です!」

「ウェ!?17人?7人でも多いのに」

「あ!いえいえ7人姉妹です間違えました!」

 

しまった、という顔で慌てて訂正する雪風ちゃん、そうだよね?17人ってハプスブルク家じゃないんだからさぁ、あ~ビビった。

 

その後は容赦なく振られる妹あるあるトークを、必死にエア妹(つまり妄想)の知識で乗り切っていたが、中継地点の広場で妹トークは急に打ち切られることになった。

 

「あ、居ました!しれぇ!」

「ん?親戚のおじさん見つかったのかい?」

「はい!ありがとうございますねおじさん!おじさんも妹に会えるといいですね!」

 

しれえ、って人を見つけたらしい、ともかく雪風ちゃんとはこれでお別れかな?

 

バカ舌共とはぐれて、何やかんや寂しかったのが会話できて紛れたし、あの純朴で底なしの明るさは独り身にはありがたかった。

 

願わくばああいう子には幸せになって欲しいね。

 

「すいませんねウチの親類がお世話になったみたいで」

 

そっと立ち去ろうとしたときに、男性の声に呼び止められた。

 

「いえいえ、こちらも寂しさが紛れて良かったですよ、良い子ですね」

 

大方話しかけてきた人物には察しがついてるので、返答して振り返って相手の顔を見る、そこで思わず鏡なのかと思う程に似通った顔があったもんで、俺は驚いた。

 

相手も似てると思っているのかギョッとした顔だ。

 

ああ、確かに似てるな、いやほんと気持ち悪いぐらいに。

 

「えーと」

「アッハイ……」

 

すぐに言葉に詰まって気の抜けた返事をする所も。

 

「アハハ、いや本当に似てますね、キモチワルイクライニ」

「そうですね、世界にゃ三人は自分と瓜二つの人が居ると言いますが……」

 

動揺すると引き攣った笑顔になるところも、なんなら声も

 

「本当に似てますね!しれえも、おじさんも!」

 

この時の雪風ちゃんの台詞にしれえって人も心の中で大きく頷いていたと思う

 

自分もそうだったから。




縁(えにし)

物事のつながり。かかわりあい。ゆかり。
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