艦娘(?)を匿うことにした   作:肉羊

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世界観は同じですが本編主人公たちとは全く関係ないストーリーです。
要望があれば別のシリーズとして書いていきます。


番外編:自分の事を提督だと思い込んでる元提督のお爺さんと自分の事を那珂ちゃんだと思い込んでいる軽巡棲鬼

かつて、眉雪の鬼と呼ばれた提督が居た。

 

とてつもない提督適正ゆえ国から声が掛かり、着任時点で70を超える老齢でありながら彼が指揮した戦闘は常勝無敗、彼は軍人として己を曲げず、誰にも媚びず、彼の生き方は寸分違わず英雄であった。

 

しかし誰もが英雄視していた彼も本格的な老いには勝てず退役する事となった。

そんな彼はその後、静かに己の終焉の時を待ったか?

 

否、常に戦という物に向き合っていた彼は、退役した後も周りの俗物に交じる事を良しとしなかった。

 

彼は本土とは離れた小島に住み、己という物に向き合い続けた。

人とは殆ど関わらず、ひたすらに散って行った戦友達へと祈りを捧げた

所が、彼はそのような俗世と離れた生活をしていたため思考回路が混濁してしまった。

 

平たく言えば彼はすっかりボケてしまったのである。

 

そんな彼は未だに自分の事を提督だと思い込んで静かに暮らしている。

 

彼も本当に一人であるなら、ひょっとすれば何処かおかしいと気付けたのかもしれない。

彼が自分の事を提督だと信じて疑わないのは未だ風化しない壮絶な過去の経験と、彼を提督だと慕う者の存在が大いに関係している。

 

 

 

 

 

 

 

またある所に、もう一人鬼の名を冠する者がいた

 

軽巡棲鬼と言われた彼女は、敵対する者に容赦という物は無く、軽巡と言うには無理はあるオーバースペックとそれを10割以上発揮する戦闘センスを存分に振るい、当時彼女は無敗であったという。

 

そんな軽巡として無双の強さを持った彼女も激戦の最中、頭部に砲撃を受けてあっさりと敗北を味わう事となった。

 

彼女は敗北の味を知ってしまったが、一切悔しがるような事は無かった。

 

と、いうよりそもそも彼女は余りにも良い砲撃を食らいすぎて記憶を遥か彼方に吹っ飛ばしてしまったのである。

 

記憶がぶっ飛んだ彼女は、何故か自分が艦隊のアイドルとして宜しくやっていた様な記憶が引っかかり、長らく思い悩んでいたが、たまたま出くわした他所の那珂を見て確信に変わった。

 

そう、自分は艦隊のアイドル那珂ちゃんなんだ、と

 

自分が那珂であると思い込んだ彼女の行動は早かった、自分が仕えるべき提督を探すべく、近海を航行した。

 

なんの変哲もない小島を通りかかった時に、彼女は強い気配を感じた。

砂浜を見れば尋常ならざる気配と提督適正を持った老人が海を眺めて座っている、それを見た彼女は一種運命の様なものを感じたのか、老人に部下として付いていくことを決めた。

 

「艦隊ノアイドル那珂チャンダヨ~ヨッロシクゥ~!」

 

記憶を辿って、出来るだけフレンドリーに、アイドルらしく老人に話しかけた。

老人も相手が那珂であると言えば、疑う事を知らずに軽巡棲鬼の事を那珂ちゃんだと思い込んだ。

 

「うむ、私は××鎮守府所属の……以後宜しく頼むぞ那珂ちゃんや」

 

かつての経歴を語った元提督、非常にシュールな光景だが本人たちは至って真面目なので目を瞑って欲しい。

そしてこれがかつて鬼と呼ばれた者同士の奇妙な関係の始まりであった。

 

 

奇妙な会遇から早数か月が経った、互いの関係は拗れることなく、絶妙なお互いのすれ違いにより奇妙な関係が成り立っている。

 

「マルロクマルマル、アッサデー……」

「おはよう、では朝食後に事務作業を始めようか」

「ム~那珂チャンハアイドルナノニ~提督ノ方ガ忙シソウ~」

 

二人の朝は早い、どうせ仕事なんて無いのに無駄に早い。(多分片方老人で片方深海棲艦だから)

起床した二人は仲良く食卓を囲んで、小さいテレビを見ながら朝食を取る、情報収集を欠かしては勝つ戦いにも勝てないというのが彼らの談である。

 

「ご馳走様」

「ゴ馳走様デシタ、那珂チャン食後ノボイトレ行ッキマース」

「よし、聞こうじゃないか那珂ちゃん」

 

食後のボイトレを始める軽巡棲鬼、食器を片づけながらそれに聞き入る元提督、お互いまともであった頃は顔を合わせれば殺し合いを始めていたのに、皮肉にも敵同士という前提を取り除けば祖父と孫の様に微笑ましい間柄に早変わりする。

 

ボイトレが終われば島の見廻り、自主訓練とルーティン化された習慣を続けていく。

昼食を挟んで、午後が始まり、全ての業務を終えるのは夕方頃になる、そしてその頃には提督も書いていた「報告書」を書き終わる。

後はもう夕食食べて、晩酌して、軽巡棲鬼の一人コンサートを老人も楽しんで・・・ニの字になって(もう一人居れば川の字だったか)仲良く寝る。

そんなこんなで一日は終了する。

 

明日もまた規則正しい時間に起きて二人で「業務作業」をするのだろう、そしてお互いの大事にしながら励まし合い、一つの目的の為に協力するのだろう。

誰も見向きもしないような島で、深海棲艦と人間。両者間で、ある意味理想的な共存関係が築かれている事は、本土の人間には恐らく知る由もない。

 

彼女らの終わりの無い奇妙な「戦い」は当分続く。

 

 

 

 




軽巡棲鬼:自分の事を艦隊のアイドル那珂ちゃんだと思い込んでいる深海棲艦、砲撃を頭部に受けて記憶が見事に混乱してる。
元提督の事は本気で慕っているようで、意外と命令に忠実。
普通に考えれば自分を那珂ちゃんだと思い込んだ所で、那珂ちゃんの細部まで真似できるはずがない、しかし行動は完全に那珂ちゃんのそれ。
もしかして、昔は本当に那珂ちゃんだった・・・?


眉雪の鬼:昔は有能な提督だった、今はボケてる。
本人的には真面目に提督業務をしているつもり、「匿う」主人公と違って深海棲艦の正体も知ってたが、そういった記憶も全部ボケて定かじゃなくなってる。
文字通りチラシの裏に業務報告を書き込んだりして、極秘文書として、ぶっ壊れて存在も忘れ去られたポストに投入したりする。(当然届かないが)

余談ですが事の進み方によっては鬼~姫級が懐柔できる可能性も出てくるという事実が大本営に知れれば大ニュースどころか戦争終了の絡め手になるでしょう。
まぁ、そんな日が来ればですが。
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