情報規制により今は世間には実態が知られていない艦娘、芸能人の情報はどっからでも仕入れてくるマスコミも、国ぐるみでの隠蔽には流石に手も足も出ないようで、情報が出回ったことは知ってる限りでは一度もない。
一応ネットにも噂は色々転がってるがイルミナティだの、アメリカの生物兵器だの、日本生類創研が作り出したSCPだの、実は深海棲艦と艦娘はグルだので信憑性があるのは見かけない。
つまり何が言いたいかというとだ、世間じゃそんな伝説の生き物と化してる艦娘の内二人と会話できたのは宝くじの特等を連続で当てるような凄まじい運だろう。(しかも一人と同居してる)
どうせ運使うならこんなのじゃなくて普通に宝くじ特等が欲しかったよ……
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やべぇよやべぇよ……ガサ入れ来ちゃったよぉ!
いや待て、ガサ入れじゃないかもしれない、その可能性に賭けるんだ。
「どういったご用件で?」
「ヲッ」
「あの、どうかなさいましたか?」
「ヲッヲッ……ヲッ!」
ま る で 話 が 通 じ な い
ひょっとしてこれはおちょくられてるのか?
「大丈夫ですか?」
「ヲ!」
頷くヲの人
とりあえず言葉は通じているようだ。
目の前の艦娘(?)は相変わらず「ヲ」しか話さないが、それなのに声自体が鈴の音の様に綺麗だからか不思議と不快にはならない。
「今はちょっと立て込んでるんで、すいませんが日を改めてください」
「ヲ~?」
駄目だこれ、ポカーンとしてるわ
でも心のどこかで安心した、取調べとかガサ入れなら此奴みたいな、ちょっと抜けてる艦娘一人にやらせるはずがない。
あれ?でもそれなら国家機密そのものが家を訪ねてくる理由は何だ?
さっきは焦ってたから気付かなかったが、親方日の丸が絡んでるんだったら警察とかそれらしい奴らを使って、もっとそれらしい方法で調べるはずだよな、麻薬の取調べです~とか言ってさ。
そうでなくとも艦娘一人で現場に来るはずがない、目立つ格好だし、仮に戦闘もやむなしと判断されてるならもっと大がかりな人数で来るだろう。
つまり……あれ?なんで来たんだろう
「どうしてここに来たの?」
「ヲ~」
こっちの言葉は伝わってるみたいだけど、会話が一方的すぎる……
何言ってるのか分からないわ、口が聞けないらしいけど。
何やら家の中を指を指している、ああ、中に入りたいのね?
却 下 す る
今回は艦娘という見えてる地雷には何があろうとも絶対に触れないぞ、ただでさえ俺の後ろにゃ誘爆しそうな奴が約一名控えてるんだ。(そいつは今頃まったりしてるが)
適当に言いくるめてヲ引き取り……いやお引き取り願おう、目立つ格好だからそのうち通報か何かで保護者が来て元鞘に収まるだろ。
「いや~家の中に入れてあげたいのは山々なんだけど急なもんで、ロクなおもてなしできないから……ダメダメダメ!」
「ヲッ」
話し始めたら何故か俺を押しのけて家の中に入ってきやがった。
俺が家の中に入れてあげたいって言ったから?
お決まりのフレーズが通じてねええええええ!
あ、ハイヒール履いたままだこいつ、靴脱いで!せめて靴脱いで!ねえ!
「ちょいちょいちょい!待ってくれ、色々あるからさぁ!別の日に」
「ヲ?ヲッ!」
振り返ってこっちに歩み寄ってくるヲの艦娘、まじまじと見てみると顔立ちはまるで人形のように整っているし、どっかの貧乏舌程ではないがナイスバディだ、街を歩けばナンパの嵐だろう。
少し見惚れているとヲの人はポンポンと軽く肩を叩いてくる
俺が頭に?マークを浮かべていると、キリッとした表情で両手のサムズアップをしてきた。
ええと、ニュアンス的には「大丈夫だよ」か
そうじゃないんだよなぁ……
またズカズカと歩き出すヲの艦娘、このままだと本当に戦艦棲姫の所に行かれる!こいつらを接触させるのはまずい!本能が二人を合わせてはいけないと警告してきてやがる。
ヲの艦娘は戦艦棲姫のいる部屋のドアを開けて……あ、終わった
「何事ナノ?エ、ヲ級?何故コンナトコロニ?」
「ヲッ」
「は?」
想定外だった、お互いは既知の関係だったらしい、戦艦棲姫はヲキューを一瞥すると急に顎に手を当てて思索に耽りだした。
とりあえず話に着いていけないので質問をしてみる
「ええと、知り合いなの?」
「エエ、ソノ子ノ名前ハ空母ヲ級」
「くうぼをきゅー?ああ、空母ヲ級ね、いやそのネーミングは深海棲艦っぽくない?」
「……マ、マァウン、ソウネ」
まったく、空母ヲ級ってなんだよ、軽空母ヌ級とかと同じ系列にされてこの娘もさぞ不満だろう。
深海棲艦みたいな名前にされたら俺が名付けられる立場なら名付け親を殴ってるね。
あれ?なんで汗かいてるんだこのバカ舌。
「ヲ!」
心なしかヲ級の目が輝いている、顔見知りと再会できて嬉しそうだ、しかしこの二人の関係が全く想像できない。
というか待てよ、この流れはマズくないか?
仲良しなのは良いことだが、何度も接触されたらそこから足がつくかもしれない。
ひとまずもうこの家に来ないように誘導して……
「私ノ元部下ヨ、決メタワ、コノ子曰ク逃ゲテキタヨウダシ、コノ子モ匿ッテアゲテ」
「は?寝言は寝て言え」
何言ってるんだこいつは、お前一人養うだけでもストレスが臨界点なのにこれ以上何を望んでいるんだこの貧乏舌が。
まさか本気で言ってないよな?その眼を見ればジョークかどうかすぐに分かるぜ。
こいつ、本気で言ってやがる……
「ヲッ」
ヲ級はニコッとした笑顔で俺の片手を握ってブンブンと上下に振ってきた、なるほど握手か
これはこれは、どうもご丁寧に。
いや、そういう問題じゃないんだが。
「ヨロシク、デスッテ」
「いや養わないぞ?絶対に。そもそも勝手に引き抜きみたいなことをして良いのかよ?」
「構ワナイワ、彼女曰ク自分ヲ追イカケテ来タラシイシ」
「いや、理由があってもこっちの財力的に……」
「ドノ道、コノ子ガ見ツカレバ捜査ノ手ガコッチマデ来ルワ、金銭ヨリモ捕マラナイコトガ重要デショウ」
ああ、糞やっぱりこうなってしまった、その通りだな。
仮にこの子が捕まれば、芋蔓式にこっちが捕まる可能性がある、黒づくめとはいえかなり一般人っぽい格好をしている戦艦棲姫と違ってこの子はかなり目立つ外見をしているからな。
はぁ・・・まぁいいか純朴そうな子だし、見捨てて最悪、野垂れ死なれちゃ後味悪いとは思ってた部分もあるから仕方がないか。
さぁて、金銭面をどうやってやりくりするかね……
「とりあえずよろしくねヲ級さん」
「ヲ!」
ぐぅぅぅと狙い澄ましたようなタイミングで腹の虫が鳴ったヲ級、言った傍から食費が掛かるとは。
まぁ、腹減ってるなら飯にするかな。
「ヲッ」
相変わらずヲしか喋らないヲ級、まったく、これから先どうなる事やら、まさか二人も艦娘を匿う事になることなんてな……
いや待って、本当にこれからどうなるのか分からない、一寸先はあの世だわこれ。
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戦艦は大食いだ。
これは提督であるならば、いや戦艦という物を知っている人物ならば常識と言っていいだろう、深海棲艦側の戦艦も例に違わず大食いであった、では、次点での大食いの艦種と言えば何か?
答えは空母だ、これも至って有名な話だ、どこかの正規食う母、いや正規空母が大食いネタで日々いじられていることも、裏を返せばそれだけ初運用した時の提督の衝撃が大きかったことを意味する。
通常、戦艦及び空母の運用方法だとかは予め学校なりで学ぶ上に、そもそも戦艦・空母を数人運用するだけでヒイヒイ言っていては、何時まで経っても素人の域を出れないだろう。
しかし、今回戦艦・空母を養っているのは何のノウハウも後ろ盾もない一般人だ。
そしてもう一つ忘れてはいけない要素が、艦娘は性能が高ければ、基本、資源消費量が多いという点である。
これも深海棲艦サイドであってとしても変わらず、一部を除き、性能が高い艦は消費する資源量が多い。
さて、想像してほしい、生半端な攻撃を全てカスダメにする凄まじい装甲と大和型だろうが平然とワンパン大破してくる火力(あと吸引力)を併せ持った怪物と、凄まじい制空力と地味に凶悪な装甲で幾多の艦娘と提督の毛髪を葬った化け物。
こいつらを両方、前述の通りの一般人が養っていくとすれば、どうなるか。
当然こうなる
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「返してくれよォ!俺のザビーゼ……食材ぃ!」
「ヲ~ヲッ」
実は小食なのではないのかとほんの少し期待してたが、案の定この空母ヲ級とやらもかなり素晴らしい食べっぷりだ、なまじおいしそうに食べてる分止めるタイミングが見つからないのがズルい。
あれ?食材の消費スピードが加速してね?ついでに俺の寿命が尽きるスピードも食費に比例してどんどん増えている気がする。
食費倍プッシュですか、アカギじゃないんだからさぁ!倍プッシュはいらないんだよ!
ああ、こいつら容赦ねえ。
「なあ」
微妙に聞きたいことができたので、食器を洗いながら戦艦棲姫に声を掛ける。
「もう一回聞くけど、ヲ級はお前の元部下なんだな?」
「エエ、『ヲ』シカ喋レナイケレド、良イ子ヨ?」
「つまり、唐突に砲撃してきたりはしないんだな?」
「ソウネ」
俺は元々ストレスに弱いタイプなんだよ、メンタル攻撃されると命と精神が持たない。
「間違っても問題とかはやらかさないでくれよ?トラブルメーカーが二人いると俺はこのままじゃ
「……ナルベク善処スルワ」
『こんな生活続けてたら体壊しちゃうよ、無理しないでね××さん』
「……?貴方何カ言ッタ?」
「いや、トラブルだけは勘弁してくれって話だよ」
「ソウ、ネ」
「まだ納得いってなさそうな顔だな?」
今何か言ったか?俺、オムツ云々が引っかかったのか?いやそんな筈ないな。
「ヲ」
「お、おう?」
肩を叩いてくるヲ級、俺が手に持っている食器を指さしてくる。
ん~と、「手伝う」って言いたいのかな?
「手伝ってくれるのか?」
「ヲ!」
頷くヲ級、無駄に優雅にお茶啜ってるどこかの貧乏舌にも、ヲ級の爪の垢を煎じて飲ませてやりたいね。
「ごほん、えへん」
当てつけの意味でわざとらしく咳払いしてやる
「風邪カシラ?」
「ヲ……?」
そうじゃねえよ
まったく……何にしても久しぶりに人と一緒に昼飯を食べたな、騒がしかったけど
まぁ、たまには悪くないな。
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昼下がりの鎮守府。
この時間帯は街などが一番活気がある時間だ、当然鎮守府も例外でなく、出撃をしていない艦娘達のワイワイと話す声が聞こえてくる。
艦娘が食事後にひと時の休息を挟む中、一人簡素な食事をさっさと済ませて執務作業に戻る提督。
「提督、そろそろ休まないと本当に体を壊すわよ?」
「大淀にも言われたよ、でも本当に心配は無用だから心配しないで」
執務室に入ってくる艦娘、表情などから艦娘が提督の事を本当に心配してるのが見て取れる、しかし提督はあくまで心配はないと訴える。
「ほら、駆逐艦達も提督の事を気にかけていたわ、だからたまには執務を私たちに任せて、あの子達と遊んでも……」
「うん、その内ね」
相槌は打っていたものの恐らく言葉通り休むことは当分ないだろう、それを察しているのか黙り込む艦娘。
「……まだ、あの時の事を引きずっているの?」
「七割正解かな、意外とまだ頑張れそうだから純粋に頑張っているってのもあるさ」
少しツラそうに語り出す提督、机に置いた手が小刻みに震えている。
「あれは、仕方がなかったの、どれだけ気を付けていても一つの事故で状況はひっくり返る、それは当時の私たちも理解していたじゃない、だから」
「だからこそ俺は二度とあんな思いをしたくないんだ、というより休んでると頭にチラつくんだよ、あの日あの人と最後に交わした言葉がさ」
心配かけちゃって悪いね、と無理に笑顔を作って続ける
「心配しなくてもヤバいと思ったら休むさ、だから今は、お願いだから僕に続けさせてくれ」
「……ヤバそうなのに休んでなかったら、絞め落としてでも寝かせるからね?」
仕方がない、と諦める艦娘、この男の強情さを知ってるからこその判断だ。
「はは、強引だなぁ」
「とりあえず、私は訓練に戻るわね」
「ああ、行ってらっしゃい」
絶対に無理をするなと念入りに釘を刺してから退出する艦娘。
「君が一番つらい筈だろうに、僕と違って強いね陸奥は、だからこそ僕は休めない」
もう見えなくなった背中に提督は呟いた。
こうして見るとガバガバすぎる文章だぁ、文法の勉強しなきゃ(震え声)