電脳空間のAgentが異世界から来るそうですよ? 作:ガーネイル
現在、富士市にいます。明日は入社式なので少し面倒ですが、千葉のほうまで行ってきます。早く家に帰りたいですが我慢します。
それではお楽しみください。
元の世界に帰るためのギフトがあるのか否か。それが二人の知りたいことだった。黒ウサギの顔は少し、いやかなり青くなっている。全身濡れていたら水死体と判断されてもおかしくないくらいだ。黒ウサギはあわあわと焦りながら返答する。
「あるにはあると思うにのですが。あ、あの。御二人さまは……」
「そっか。あるなら探すし、無いなら仕方ない。作り出す。それでいいですよね、まり先輩?」
「そうね。でも、わたしは大くんと一緒ならどこでも大丈夫だよ」
黒ウサギはこの事態を重く考えていたのだが、二人はそうでもなかったらしい。だが、それでもまだ不安なのか落ち込んでいる。その証拠にウサ耳が両方ともへんにょりと外向きに折れている。それを見かねてなのか、大輝が言葉を投げかける。
「黒ウサギさん。俺たちを呼んだのは何かしらお願い、もしくは達成したいことがある。っていうことでいい?」
「は、はい。で、でも黒ウサギたちは……」
「なら、それを成すまで帰るわけにはいかない。向こうには六人いるし大丈夫だろうからな。ごめんな、不安にさせるようなこと言っちまって」
大輝が謝りながら黒ウサギの頭を撫でる。それが気持ちいいのか黒ウサギは沈んだ顔から一変してニコニコしている。徐々にピンクな甘い雰囲気を作り出していく。一方、それが面白くないのかまりねは面白くなさそうな顔をしている。そしてその光景をニマニマと見ているのが問題児三人。彼らにとってこれは最高のエサだ。十六夜はスマホでサイレントカメラを起動し、写真を撮っている。昼ドラに近付いているというか、下手したら修羅場一歩手前まで来ているような気がする。
(むぅ。わたし、まだ大くんに撫でてもらったことないのにぃ。いいなぁ、黒ウサギさん)
まりねの頬がまるでフグのようにプクっと膨らんでいる。そのうち爆発するんじゃないかと思えるくらいには膨張しているのだ。
はっきりと言うなら幼馴染みであり後輩である大樹に好意を持っている。だが、学校、仕事ともに先輩である。それに関してはどうしても素直になれず、先輩風を吹かせ誤魔化してしまうのである。でも恋する乙女の本音としては好きな人に甘えるなどの行為をしたいのである。
「…………い。……せ……い。ま……先……い。……まり先輩!」
「え?」
いつのまに撫でるのをやめたのか目の前には大輝が顔を覗き込むようにこちらを見ていた。思いのほか顔が近づいていたことに気付き、顔を赤くして少し距離を取る。彼としてはただ呼んでいただけなのにこの反応は少々傷ついたのか、少し悲しそうな表情をしている。
「いくらなんでもその反応酷くありません?」
「え、あの……。えと、大くんが悪いんだから!」
「えぇ……」
理不尽なことこの上なかった。距離を置いているまりねが小声で何か言っているがそれを聞き取ることが出来ない。
なら、一体どうすればよかったのか、と思わなくもない。が、気持ちを切り替えてもう一度声をかける。
「黒ウサギさんがもっと詳しい話をしたいから移動するって言ってましたので今から移動を始めるそうです」
「わ、分かったわ」
************
黒ウサギに連れられ歩くと外壁のようなものが視界に映った。壁はボロボロで所々はがれている。外壁がこの様だと中も少しひどいのではと思ってしまう。
「ジン坊ちゃーん。新しい方を連れてきましたよ!」
ジンと呼ばれる少年は明らかに子供だった。身長にあっていない大きいローブを着ている。控えめに言っても言わなくてもダボダボである身長は黒ウサギの胸の位置より低い。おそらく135あるかどうかだ。大機は少々訝しみながらジンを見ている。
「おかえり、黒ウサギ。そちらの三人が?」
「Yes! こちらの五名が……ってもうお二方は? 如何にも問題児って方と大人しそうな方がいたはずなのですが……」
「十六夜くんなら、『ちょっと世界の果てを見てくるぜ』とか言って駆け出したわ」
「何で止めてくれなかったんですか!」
「『止めてくれるなよ』と言われたもの」
ちょいちょい十六夜の真似と思われるものを挟んでくる飛鳥。ただ、最終的に目をそらしてはあまり意味がないのではなかろうか。
「どうして黒ウサギに教えてくれなかったのですか!」
「『黒ウサギには言うなよ』と言われたから」
「嘘です、絶対嘘です! 面倒くさかっただけでしょう、お二人さん!」
「あぁ……。それでは大輝さんは……」
「大くんなら大丈夫。勝手に帰ってくるから」
飛鳥と耀に続き、二人以上と言ってもいいほど全く当てにならないパートナーの言葉に絶望し、再び膝をつく黒ウサギ。また耳も思いっきり垂れ下がっている。出会ってからのこの短時間で二回目だ。それはそれとしてどうやら大輝も意外と問題児に分類されるようだ。ただ、まりねとしてはこれくらいいつものことなので全く重く考えていない。いつもの散歩くらいの認識だ。
「大変です! “世界の果て”にはギフトゲームのために野放しにされている幻獣が」
「幻獣?」
一般的な幻獣の定義というのはグリフォンやキマイラ。最も有名なもので言えばドラゴンなどの現実には存在せず、言葉通り幻でのみ存在する獣の俗称である。だが、この世界では違う。この世界における幻獣の定義とは――。『ギフトを持った獣』である。
「特に“世界の果て”付近には強力なギフトをもったものが多く存在しています。出くわせば最期。とても人間では太刀打ちできません」
「あら、それは残念。彼はもうゲームオーバー?」
「ゲーム参加前にゲームオーバー? ……斬新?」
「冗談を言っている場合ではありません!」
ジンは事の重要性を必死に伝えようとする。だが、相変わらず二人は肩を竦めるだけで何の変化もない。
膝をついていた黒ウサギがぬらっと力なくゾンビのように立ちあがる。そして。
「ジン坊ちゃん。御三方の案内を先によろしいでしょうか? 黒ウサギは問題児お二人を捕まえに行きます。“箱庭の貴族”と謳われるこのウサギを馬鹿にしたこと、骨の髄まで後悔させてやります」
完全に立ち直った怒りのオーラを全身から噴出させ、黒髪を淡い緋色と髪色を変える。
勝手にいなくなる時点で問題児といえば、そうなのだが大輝は十六夜のように“世界の果て”に行ったわけではないのでまだほんの少しだけ情状酌量の余地があると思う。最も行ってないと言い切れるかどうかだったら答えはNoである。つまり、黒ウサギからするとそれは些細な問題でしかない。勝手にいなくなった時点で同罪なのである。
「すぐに戻ります。なので御三方は先に箱庭ライフをご満喫ください!」
黒ウサギが踏み込むと地面が沈む。そして弾丸のような速さで跳んでいく。ジンを含め、四人の視界から消えるまで全くと言っていいほど時間がかからなかった。その速さで発生した全てを巻き上げるような風から髪を庇いながら呟いた。
「……箱庭のウサギは随分速く跳べるのね」
「ウサギたちは箱庭の創始者の眷属ですから。様々なギフト以外にも権限も持ち合わせているので彼女なら余程のことがない限り大丈夫だと思います」
「そう。なら御言葉に甘えて先人に入っていましょう。貴方が案内してくれるのかしら?」
「はい。コミュニティのリーダーをしているジン=ラッセルです。齢十一になったばかりの若輩者ですがよろしくお願いします」
十一になったばかりだというが、それでも年齢の割に背が低い。それはまるでスラム街や環境上による貧困の中で過ごしている子供の様に。
まりねは三歳の頃から児童養護施設で育ってきた。今でも手伝いに行くことがある。それでもジンと同じ年齢で同じ身長の子は全くと言っていいほど見ない。だから何かしらの問題があるのはすぐに察することが出来た。
「久遠飛鳥よ。そこで猫を抱えているのが」
「春日部耀」
「わたしは鈴森まりね。よろしくね」
この場にいる者だけで自己紹介を終えた後、門をくぐり箱庭の中へと入っていく。
******
―――箱庭二一〇五三八〇外門・内壁。
ジンを先頭に四人と一匹は石造りになっている通路を歩いて行く。門の下を抜け天幕の下に出ると頭上から光が差し込む。眩しさに思わず目を閉じる。ゆっくり瞼を開けると欧州のような街並みが広がっていた。
『お、お嬢! 外から天幕の下に出たのにお天道様が見えとるで』
「……本当だ。外から見た時は箱庭の内側なんて見えなかったのに」
事実、彼らが上空4000メートル付近から落下している時は天幕で覆われていることしか確認できなかったため、街並みは全く見えていなかった。だというのにこの街から太陽が姿を現し、光もしっかりと入っている。何とも不可思議な光景に首を傾げる。それを見たジンが補足を入れる。
「箱庭を覆う天幕は内側に入ると不可視になるんですよ。あの天幕は太陽の光を直接浴びることの出来ない種族の為に設置されているんですから」
「ここには吸血鬼でもいるのかしら?」
そう言う飛鳥の声色には皮肉めいたものが混じっている。それに対し、はい。と短く返すジン。飛鳥は、そう。と何ともないように言うがその表情は何とも言えないような複雑そうなものだ。
何といってもここは異世界。初めに黒ウサギから説明の受けたギフトゲームも然り。今までの常識が必ずしも通用するとは限らないのである。それは社会の成り立ちから生態系を含めた全てのことに言えることだ。
「この箱庭では様々な種族が存在しています。それこそ神仏、悪魔、精霊、獣人、人間。この東区画は農耕地帯が多いので住人の気性は穏やかですけど。まだ、召喚されたばかりで落ち着かないでしょう。詳しいお話は軽くお食事をしながらでもどうですか?」
ジンの案内で近くにあったカフェテラスへと入り、入り口付近の空いている席に座る。間もなくして注文を取るためにお店の奥からオーダー票を持った猫耳の少女が素早く出てくる。身のこなしからベテランであることが窺える。
「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりでしょうか?」
「ティーセットを四つと……」
『ネコマンマを!』
「はいはーい。ティーセット四つとネコマンマですね」
店員の言葉に耀を除く全員が首を傾げる。耀だけが信じられないものを見ているような顔をしている。そして確かめるように猫耳店員に問いかける。
「三毛猫の言葉、分かるの?」
「そりゃ、分かりますよー。私は猫族なんですから。お年のわりに随分と綺麗な毛並みの旦那さんですし、ここはちょっぴりサービスもさせてもらいますよー」
『ねーちゃんも可愛い猫耳に鉤尻尾やな。今度機会があったら甘噛みしに行くわ』
「やだもー。お客さんったらお上手なんだから」
そう言った後、猫耳店員は長い鉤尻尾を揺らしながら店内に戻っていく。全く会話の内容が分からない四人は置いてきぼりである。
後ろ姿をしっかりと見送った耀だけは嬉しそうに三毛猫を撫でている。
「……箱庭ってすごいね、三毛猫。私以外に話が分かる人がいたよ」
『来てよかったな、お嬢』
店員とのやり取りを黙って見ていたまりねが質問する。
「春日部さんって動物と会話できるの?」
「うん。生きているのなら誰でも出来る」
その言葉により深く興味を示したのは飛鳥だった。
「素敵ね、そこを飛び交っている野鳥でも可能なのかしら?」
「多分? 鳥で話したことあるのは雀と鷺、不如帰ぐらいだけど……ペンギンがいけたからだいじょ」
「「「ぺんぎん!?」」」
「う、うん。水族館で知り合った。あとイルカたちとも友達」
遮るように三人が声を上げる。
水族館で知り合ったと表すのもおかしいが実際、そこくらいしか見る機会はないだろう。空を自由に駆ける鳥ならまだしも基本的に極寒の地に生息している動物と話す機会があったなど露ほどにも思わなかった。ジンが、しかし。と言葉を紡ぐ。
「全ての種と会話が可能なら心強いギフトですね。この箱庭において幻獣との言語の壁はとても大きなものですから。一部の猫族やウサギのように神仏の眷属として言語中枢を与えられていれば意思疎通が可能です。ですが、幻獣たちは確立した一つの種です。同一種、もしくは相応のギフトがないと難しいというのが一般です。黒ウサギでも難しいと思うので」
「そう。春日部さんは素敵な力があるのね、羨ましいわ」
そ う言う飛鳥の声音と表情は今まで全く違い、陰を帯びていた。ジンは別としてまだ出会って間もない女性三人だが、耀はらしくないと思い、まりねは“箱庭”に来る前に色々とあったのだろうと思った。
どんな力を持っているのか気になった耀が問う。
「久遠さんは」
「私のことは飛鳥でいいわ。よろしくね、春日部さん」
「う、うん。飛鳥はどんな力を持っているの?」
「私? 私の力はまぁ酷いものよ。だって……」
飛鳥が自分の力について言おうとした時、上品ぶってはいるがあまり品のない声が横から割って入ってきた。
「おんやぁ、誰かと思えば東区画の最底辺コミュニティ“名無しの権兵衛”のリーダージン君じゃないですか。今日はオモリ役の黒ウサギは一緒じゃないんですか?」
割って入ってきた声の主は明らかに2メートルを超えている巨体にパッツパツのタキシードに身を包んでいる中々の変態紳士が立っていた。
その変態紳士は不覚にもジンにとって知った顔だった。出来ればこんなところで会いたくはなかっただろう。本当は無視したいのだろう。ジンはとても嫌そうな顔をしながら返事をする。
「僕らのコミュニティは“ノーネーム”です。“フォレス・ガロ”のガルド=ガスパー」
「黙れ、この名無しめ。聞けば新しい人材を呼んだらしいじゃないか。コミュニティの誇りである名と旗印を奪われてなお、未練がましくコミュニティを存続させるなどできたものだ――そう思わないかい、お嬢様方」
ガルドという名のパツパツタキシード男は三人に愛想笑いをするが、突然入ってきた変態紳士に冷ややかな態度で返す。
「話を続ける前に、自分の名前を示すのが当たり前じゃないかしら?」
「おっと、これは失礼。私、箱庭上層部に陣取る“六百六十六の獣”の傘下である」
「烏合の衆の」
「コミュニティのリーダーをしている、って待てやゴラァ! 誰が烏合の衆だ小僧ォ!!」
さっきまで被っていた似非紳士の皮が剥がれ、本性が露わになる。怒鳴り声を上げながらジンに食ってかかる。人間の顔だったガルドの顔が今は獣のそれになっている。口は大きく裂け、肉食獣特有の鋭い牙と大きな瞳が怒りと共にジンへと向けられる。
「口を慎めや、小僧。紳士で通っている俺でも聞き逃せねぇ言葉はあるんだぜ?」
「森の守護者だった頃の貴方なら相応に礼儀で応えていました。ですが、今の貴方は二一〇五三八〇外門付近を荒らす獣にしか見えません」
「そう言う貴様は過去の栄華に縋る亡霊と同じだろうが。自分のコミュニティがどういう状況に置かれているのか理解しているのか?」
まさに一触即発。犬猿の仲といえる位仲が悪いことが窺える。このままだと言い争いが始まりそうだが、ここで仲裁に入り、二人にストップをかけたのは女性の中で最も最年長だと思われるまりねだった。
「まあまあ。二人が仲悪いのは分かったから、一回ストップ。続きをするなら後にしてね。それでジンくん。お姉さんとしては、ガルドさんが言っているコミュニティの置かれている現状について詳しく教えてもらいたいんだけどいいかな?」
「そ、それは……」
ジンはまりねの言葉に対し、即座に返すことが出来ず、少しずつ視線が下へと落ちていく。それでも、そのままジンを見ながら続ける。
「ジンくん、キミはコミュニティのリーダーなんだよね。なら、黒ウサギさんと同様、私たちにコミュニティがどういうものなのか説明する義務があるよ」
一方的ではなく、悪さをした子供に優しく注意するように、あくまでジンを諭すような感じで伝える。だが、ジンにとってそれはナイフのような鋭い切れ味を持っていた。
それを横から見ていたガルドは獣から人間の顔に戻す。そして含みのある笑顔を浮かべ、先ほどの妙に芝居がかった口調で話し出す。最も今更取り繕っても何の意味もなさない。
「レディの言う通りだ。コミュニティの長として新たな同士に箱庭のルールを教えるのは当然の義務。ですが、彼はそれをしたがらないでしょう。よろしければ、私がコミュニティの重要性とジン=ラッセル率いる“ノーネーム”のコミュニティを客観的にさせていただきます」
女性三人は一度ジンの方を見るが、俯いて黙り込んだままだ。
「ガルドさん、お願いできるかな」
ガルドは承りました。と言って静かに語りだす。コミュニティの概要、名前と旗印がなぜ必要なのか。それらを必要最低限の説明として述べた後、本題に入る。ジンのコミュニティが過去は東区画最大であったことから始まる。その途中途中でジンを攻撃するのだから面倒である。そして最大のコミュニティが潰れた大本の原因。――それは魔王と呼ばれる存在だった。
******
三人がガルドによる現状の説明を受けている時。大輝はキャットレイの同種であるキャットムルを隣に呼び、森の中を探索していた。森の中を歩いている最中、沢山の幻獣が一人と一匹を見つめている。人間の方はともかく、未知の生物がすぐそこにいるのだ。気にならないはずがない。
大輝はどうしたものかと頭を掻いていると物凄い地揺れに襲われた。収まると間もなくして水柱が上がる。収まってからキャットムルに跨る。
「行くぞ、キャットムル!」
このユニットの場合、原生地偵察を考慮して生まれた存在であるため、森林の中を駆け抜けるのは何一つとして不都合はない。これがキャットレイであれば少し速度を落とす必要があったかもしれない。何故なら後者は寒冷地のような環境下でも耐え抜ける術を持つユニットだからだ。
――そろそろか?
徐々に視界が開けていく。すると丁度視界に入ったのは巨大な白蛇を蹴り倒す十六夜の姿だった。
控えめに言ってもドン引きだった。何とも言えない苦虫を潰したような顔をしている。着地後、十六夜がさっき見た獣と似た生き物に乗っている主を呼ぶ。
「何だ、大輝も来てたのかよ」
「好きでここまで来た訳じゃねぇよ。誰かさんが派手にやってたみたいだからな」
「あ、大輝さんまで……ひっ!」
最初に襲い掛かってきた類似種であるため、髪が薄く緋色になっている黒ウサギが小さく悲鳴を上げて距離を取る。
「そんなに怯えなくてもいいだろうに。ありがとうな」
キャットムルの頭を撫でてから撤退させ、データに戻す。その後、二人に向き合う。
「大方、十六夜があの巨大な白蛇にギフトゲームを仕掛けてたってところだろ。で、何の話をしようっての?」
「それはな……。黒ウサギ、俺たちに何か隠してることあるだろ?」
――あぁ、そのことか。
大輝は内心で頷きながら事の成り行きを見守る。
黒ウサギは少し間をおいてから答える。
「箱庭の話ならお答えすると約束しましたし、ゲームのことも……」
「違うな。回りくどいのは嫌いだから直接的に聞くぜ? 黒ウサギ、どうして俺たちを呼び出す必要があったんだ?」
「それはさっきもお話しした通り、十六夜さんたちにオモシロオカシク……」
「本当にそうなのか? なら、何でこいつとウェスタンガールが帰るためのギフト云々であんなに焦ってたんだ? それだけの理由ならあの時、そこまで焦る必要はなかったはずだ。これはあくまで俺の勘なんだが、黒ウサギのコミュニティは弱小か、もしくは訳あって衰退したチームじゃないのか?」
黙って事の成り行きを見守っている大輝だが、まりねのことをウェスタンガールと評された時は何とも言えないような、何かを諦めたような表情をしていた。
それはそれとして置いておいて、黒ウサギ自身、十六夜のその指摘に対し何も返すことが出来なかった。どう返せばいいのか分からなかった。彼の言っていた勘というのは合っている。全くと言えるほど反論する余地がない。
「沈黙は是なり、だぜ。ほら、さっさと話せ。じゃないと、こいつとその相棒。後、お嬢様方はともかく、俺は他のコミュニティに行くぞ」
吐いた方が楽になるぞ? みたいな表情を浮かべながらつべこべ言わずに話せという雰囲気を醸し出す男二人。場所を移し、風通しのいいところに腰を下ろす。そして色々と考えを巡らせ諦めたのかポツポツと現状について話していく。ほとんどの内容はガルドが話すのと似た部分が多かった。
さらに告げられたのはノーネームにおいてギフトゲームに参加できるのはジンと黒ウサギのみ。それ以外の百人以上は全員十歳以下の子供。まさに崖っぷちの状態なのである。旗印や名前だけでなく、子の親でさえ魔王によって奪われた。それが今の状態である。
そんな話の中、『魔王』という単語が出てきた瞬間、恐ろしいほど問題児の目は輝いていた。今日一番の輝きをもっていただろう。
最後に黒ウサギが立ち上がり頭を下げて懇願する。どうか、コミュニティの再建を、旗と名を魔王から取り戻したい。だからそのための力を貸してほしい、と。
問題児であり、快楽主義者である彼がそれに参加しないわけがない。いいなそれ、面白そうだの一つ返事だった。沈黙を貫くのは大輝だった。
黒ウサギは黙って見つめて答えを待つ。
「……。あ、俺も言うの?」
考えていたわけではなく、自分が答える必要はないと思っていたらしい。あははと笑いながら後頭部を掻いている。何か色々と台無しだった。
「俺の答えは変わらない。さっきも言っただろう、達成するまでは帰らないって。ちゃんと最後まで協力する。ただ、これからこういう隠し事は無しでいこう。後腐れない方がいいからな」
二人から了承をもらえたことで気が緩んだのかヘナヘナとその場に座り込む。十六夜はいつも通りの挑戦的な笑みを浮かべ、大輝は微笑を浮かべて黒ウサギに手を差し伸べる。
「皆のところに戻ろう?」
「は、はい! ありがとうございます!」
手をとって立ち上がり、綺麗な笑顔を浮かべるのだった。
今回もツッコミどころ満載でしょうが楽しんでいただけましたでしょうか? あとCOJに興味を持ってくれた方はいらっしゃるでしょうか? いたら幸いです。押し付けるわけではありませんが、興味を持って下さった方は向き不向きがあるでしょうがやってみてください。
近い内に次回を投稿します。おやすみなさい、それではまた!