雄英で保健医(見習い)やってます   作:メロンパン派閥

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マニュアルさんが雄英OBで、オリ主の同級生だと捏造しています。


胸に巣食う不安

教師と言えども休みはある。月曜から土曜の間に1日だけ、名目上の研修日が用意されていた。

 

実際教員は激務のため、自主的に出勤する先輩方は多い。俺も大体の日は仕事をしているが、今日に限っては旧友と会う約束をしていて、東京都保須市へとやってきていた。

 

約束の相手はノーマルヒーロー マニュアル。雄英時代の同級生であり、入学当初の人付き合いが苦手だった俺にも根気強く接してくれたいい友人だ。

 

俺のヒーローネームを考えてくれた友人たちの一人でもあり、高校卒業後もちょくちょく会っていた。今日は久しぶりにお互いの近況報告をしようというわけである。

 

待ち合わせ場所のカフェでのんびりと待っていると、マニュアル––水島がやってくる。ノーマルヒーローという名の通り私服も随分平凡で、完全に街の人に紛れている。

 

「時任。待たせたね」

「久しぶり、水島。元気だった?」

 

水島はどの職務も平均的に行えるヒーローで、知名度はそこまで高くはないが自分で事務所を構えているほどの力の持ち主だ。

 

俺は教職の道に進んだため事務所独立はしていないが、サイドキックから独立して活動している人は同級生の中でも少ない。地味に出世株の一人だ。

 

「最近は事務所の調子はどうなの? 経営安定してきたって言ってたけど」

「保須は今は落ち着いてて、パトロールと依頼待ちが多いかな。地域の信頼が得られてきたのか、堅実に色々できてる感じ」

「頑張ってるじゃん! このまま保須も平和なままがいいね」

 

平和なままがいい、そう言わざるをえないのは、噂のヒーロー殺しの存在ゆえだ。

巷を騒がせているヒーロー殺し、ステイン。各地で複数人のヒーローを殺害している。彼の現れた地域ではヒーローの意識が高まり犯罪率そのものは減少しているが、市民にとっては不安になるだろう。

まだ保須には来ていないものの、いつやって来てもおかしくはない。

 

「そうだなぁ…もしヒーロー殺しが保須に来たらパトロールを増やしていくしかないね。ヒーローが見守ってるっていう安心感がないと」

「水島のそういうとこ、カッコいいよねー。名前の通りマニュアルって感じ。居住地域にいて欲しいもん」

「そういうヒーローを目指してるから」

 

注文したケーキセットをつまむ。水島オススメのこのカフェは、安くて美味しいケーキで有名だ。

俺はチョコケーキ、水島はショートケーキ。水島はこういうところでもスタンダードなものを食べるのが面白い。

 

「んで、そっちはどうなの? 今年から副担持ってるって言ってたけど」

「労働基準法に違反してるんじゃないかってくらい忙しい」

「うわ、そこまで?」

 

もちろん雄英は労働基準法を守っているのだが、生徒のためになることをやろうとすればするほど時間が足りなくなる。サービス精神の問題だ。

 

「ほら、オールマイトさんが教職ついたでしょ? サポートもあるし、保健室業務もあるし……放課後も生徒の手伝い始めちゃってさ、自分で自分の首絞めてる感じ」

「激務だなぁ。でも結構楽しんでるでしょ?」

「……ばれた?」

 

自分で志しただけあって、やはり教員の仕事は楽しい。生徒たちが育っていく姿を見るのは俺たちの特権だと思う。

 

もちろん忙しいは忙しいが、今日みたいな休日もある。全体的に楽しい日々を送っていると言えた。

 

「時任は奉仕精神の塊みたいなところあるからさ、そういうの好きかなって」

「よくお分かりで…」

「死ななきゃいいと思うよ。でも死ぬほどの自己犠牲は認められません。友人からのストップ」

「いやいやいや、教員やってて死ぬようなことってほぼないから」

「どうだかな…時任のことだから、いつかポックリ死んでそうなんだよ」

 

水島の中で俺はどんな存在になっているのだろうか。慈愛の保健室の先生とはいってもそこまで酷くはない。ある程度はわきまえているつもりだ。

 

「んじゃあさ、俺が死にそうになったら助けに来てよ。マニュアルさん」

「無理でしょ。距離的に」

「ふふ、期待してる」

 

なんだそりゃ、と言った水島を軽く殴って、追加でケーキを注文する。なんだか全種類制覇してやりたい気分だ。

そのまま仕事の話を続けるが、お互い守秘義務があるので詳しいことは話せない。それでも友人と気軽に話ができるのは楽しかった。

 

「水島も今度うちの生徒たち、指名するでしょ? 体育祭はA組をしーっかり見といてよね! 俺が鍛え上げてるから」

「仕事しながら見とくよ。他の学年もあるからわかんないけどね」

「もちろん3年生も注目だけど……1年は個性的な生徒が目白押しって感じ。かなり優秀な学年だよ」

「そこまで言われると気になってくるな。そしたら1年ステージに注目しとく」

「ほんと見ないと…って、ごめん。ちょっと出るね」

 

突然スマホが着信を告げる。相澤先生からだ。水島に断りを入れて電話に出る。

 

「時任です。どうされましたか?」

『校内にマスコミが侵入した。ヴィランの手引きがあった可能性が高い。放課後に緊急会議をやるから来い』

「ちょ、それ本当ですか!? 分かりました。今から向かいます」

『急がなくていいから会議には間に合わせろ。それじゃあ』

 

電話が切れた。マスコミの侵入? 雄英のセキュリティをたかがマスコミが破れるわけがない。だからこそのヴィランの手引き…? いや、この時期にヴィランが雄英にちょっかいをかけてくる意味があるのか?

 

「…い……おい、時任! 大丈夫?」

「あ、っと、ごめん。学校で問題あって…ちょっと向かってくる。ごめんね、途中で切り上げちゃって」

 

考え込んでいると、水島に肩を揺すられる。

 

「大丈夫だよ。かなり話せたし……俺としては時任が無理しすぎないかが心配」

「もしもの時は助けに来てね、ヒーローさん」

「はいはい、早く行ってきなよ」

 

財布から多めにお金を取りだして、机の上に置く。迷惑料も込みだ。

せっかく休日に会えたのに、申し訳ない。

 

水島と別れを告げて学校へと向かう。詳しいことはよくわからないが、とても嫌な予感がした。

 

 

–––––

 

 

「それじゃあ、マスコミ侵入の件についての緊急会議を始めるよ。相澤くん、報告を頼んだ」

 

根津校長の合図で会議が始まった。先生方の顔はみな厳しい。

相澤先生は重々しく口を開いて報告を始めた。

 

「この2.3日、マスコミが詰めかけていたことは周知の通りだと思います。事の始まりは昼休み。突如セキュリティ3が突破され、報道陣が侵入してきました。俺とマイクの方で対応をし、警察を呼んで撤退させました。以上です」

 

セキュリティ3の突破は民間人にできるものではない。確実に悪意ある第三者の関与があったとしか思えなかった。

 

「ありがとう、相澤くん。みんなも察している通り、これはマスコミを唆した者がいるか、悪意をもった者の宣戦布告の可能性が高い」

 

根津校長は話を続ける。周りの先生方は深刻そうな顔をして聞いていた。

ここでミッドナイトが手を挙げる。質問があるようだった。

 

「根津校長、セキュリティが突破された時の防犯カメラの映像は残っていませんか?」

「完全に破壊されていたよ。用意周到な犯行だね」

「なるほど…ありがとうございます」

 

防犯カメラの破壊をするなんてただのマスコミには行えない事だ。ますますヴィランの関与が浮上してくる。

 

「校内にも今のところ異常は見つかっていない……けれど、念のための警戒態勢は敷くべきだ」

 

それから、根津校長の指揮の下で、生徒に危害が出ないように厳重警備を行うことが決まった。

特に実技訓練がある時には複数の教員がつくことになり、できる限り生徒たちを教員の監視下におくことになった。

 

もちろん、教員側の負担も大きいので、状況を見て警戒レベルは下げていく。教員側のパフォーマンスが低下することは避けたいことだった。

 

先生方によってこれからの教員の配置が決まっていく。俺は元からA組につきっきりなので、特に変更はなかった。

 

会議が終わり、職員室のデスクに戻る。先の見えない不安が胸の中に巣食っていて思わずため息を吐く。

せっかく水島と糖分を補給したのに、全て飛んでいってしまった気がする。

 

「……時任。お前が不安そうな顔をしてたら生徒まで不安になる。シャンとしてろ」

 

相澤先生が声をかけてくれる。不安な様子がにじみ出ていたのだろうか。

でも、確かにそうだ。俺は生徒を守る立場の人間。こんな姿は生徒に見せられない。

生徒たちの安全のために、俺たちが頑張らないといけないのだ。

 

「…はい。しっかりします」

「A組に関して言えば、特に演習の規模がでかいのが次の救助訓練。USJは広大だから、俺も補助に入る。13号とオールマイトとお前、4人体制だ」

 

USJ、嘘の災害や事故ルーム。演習場の中でも特に校舎から離れており、その規模も大きい。

今度はそこで救助訓練をすることが決まっていた。

 

「校内から特に距離が離れてるので有事の際に他の先生は向かいづらいですね……警戒しておかないと」

「来ると決まったわけじゃないが、常に気は張ってろよ」

「何もないといいんですけどね…」

 

何もないことを願いながらも、確実に何かある、そう思わざるを得ない不安感が、頭から離れなかった。

 

何か甘いものが食べたくなって職員室を出る。こういう時は糖分を摂取するべきだ。

食堂に向かう道中にA組の教室が目に入った。誰か残っているかな…? と覗いてみれば、ほとんどの生徒が教室に残って実技授業の反省会をしていた。

 

「おーっ! 時任先生、今日お休みじゃなかったんすか!」

「今日は特訓がないから、みんなで反省会してたんですよ! 先生も入って入って!」

 

グイッと腕を取られて教室へと入る。みんな実技訓練の度に出している課題の束を手にとって、次にどうしていくべきか考えていた。

ただただ不安に思っていた自分がバカらしくなる。この子たちは明日に向かって一生懸命に走っていた。俺が足を止めてなんかいられない。

 

「どれどれー? 今は何の話してるの?」

「今まで返却してもらった課題を元に、自主トレのプランニングをしておりますの」

「一人じゃないから行き詰っても相談できるし、緑谷とかヤオモモの話がめっちゃ参考になるんだ!」

「あ、芦戸さん…! 参考になってたら嬉しいな」

 

まだ入学して一週間足らず。ヒーローの卵である彼らは、その殻を破って雛になろうともがいている。

 

「よーし、俺も相談のっちゃうぞー! かかってこーい!」

 

どんな悪意が向かってこようとも、この子たちを守る。立派なヒーローに育て上げてみせる。

 

そのために、俺自身が倒れようとも。




USJ編は雰囲気が暗いので、ぜひ皆さんの推しを眺めながらご覧ください。
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