Fate/Extra _rePlay  ~献身の巫女、烈火の化身~   作:藤城陸月

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 大変お久しぶりです。
 五月中に投稿したかったのですが……。申し訳ありません、リアルが大変でした。

 さて──────Extraのアニメの終盤戦。楽しみですね♪
 公約は守ります。

 水着ガチャ引きました。
 サモさんは来ませんでしたが、槍玉藻は来ました(宣戦布告)。取り敢えず、槍ニキ(80)を聖杯×2を使って90にしてきます(sn過激派なみ感)。

 ──────あ、ついでにアナスタシアも引きました。


 今日からぐだぐだイベ。張りきっていきましょう。

 という訳で、メンテ中の暇な時間にでもどうぞ──────




2───Communication───

『私のことは忘れて、幸せに生きて』

『……分かった。俺は、お前を──────』

『…………うそつき』

 

 ──────ばれてたか。

 

 

 

『──────妹さんの件ですが』

『アイツに、私のことは忘れて幸せに生きろって言われました』

『×××さん』

『ダメな兄ですね。最期まで妹に心配させてしまうなんて』

『×××さん』

『アイツは天国で幸せに暮らしているんだ。そう、思う事にします』

『──────×××さん!』

『? どうか、なさいましたか?』

『いえ……なんでもありません』

 

 ──────そんな風に、思えるわけがないだろう。

 

 

 

 雑音。

 

 

 

     †††††

 

 

 

 何時かと同じように、唐突に目が覚めた。

 

 コンクリート製の天井。

 少し硬めの白いシーツのベッド。

 

 見覚えがない。

 見覚えは無いが───何となく心当たりはある。

 

 ──────学校の保健室。

 

 微かに漂う消毒液の匂いや特徴的なカーテン。

 病室の可能性もあるが、施設の簡素さから除外した──────いや、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 一瞬、違和感が紛れ込む。

 

 ──────記憶の錯乱。

 

 恐らく、()()()()()は『違和感の方の感性』なのだろう。

 今感じている『当たり前』は()()霊子体(アバター)()()()なのだろう。

 

 平和ボケは悪い物ではない──────だが、ここは戦場である。早めに切り替えなければならないだろう。

 

 

「──────起きましたか?実幸(みゆき)

 

 

 シャっとカーテンを開けて、顔を出す美女──────キャスターのサーヴァント。

 ヤマトタケルを名乗った、純日本人的な顔と濡羽の長髪をした巫女装束の少女。

 純和風、巫女──────そのイメージからは外れるが、不思議と調和している。深い海を思わせる深い青の双眸と目が合う。

 

「ああ、今さっき目が覚めた。迷惑を掛けたねキャスター」

「当たり前のことをしただけです。まして、貴女は私のマスターですから」

 

 そう言って微笑みを浮かべる。

 その笑顔は、人を安心させるものだった。

 

「──────ありがとう、キャスター」

「ええ。どういたしまして」

 

 思わず口から零れた感謝に、一瞬の間を開け、嬉しそうに応じる。

 恐らく、このサーヴァントは──────少女(ひと)は根っからの善人なのだろう。

 この笑顔で誰かを導き、誰かを救い──────そして、誰かのために死んだ。きっと、そんな英霊なのだろう。

 

 

 

「立てますか?」

「大丈夫。どうやら、エスコートは必要ないようだ」

「分かりました。それならば、私は霊体化して実体化を解いておきます」

 

 

 

「──────あ、実幸さん。体調は大丈夫ですか?」

 

 丸椅子に座った、制服の上に白衣を着た少女。

 地面に着きそうな淡い紫の髪をした大人しそうな娘だった。

 

『──────キャスター』

『この娘は大丈夫です。保健委員のNPCだそうです』

 

 キャスターとの念話を解く。

 

「今のところは大丈夫だよ。

 ところで、君の名前を聞いても良いかな?」

 

 心配そうな表情をした少女を安心させる。そんな力強い笑みで答える。

 そして情報収集。尚、強制ではなく任意である。

 

「自己紹介ですね、実幸さん。

 申し遅れました。私は保険委員をしている健康管理AI、1年B組の桜──────間桐桜です」

 

 立ち上がり、お辞儀をしながら。

 名前を聞いたからか、光の変化で紫の髪が桜色に見えた。

 

 ()()()()()自己紹介をするのは初めてなんです、と満面の笑みを浮かべる少女──────桜。

 

 自己紹介を当たり前だと思う感性。

 AIだからなのだろうか?それとも、自分の心が汚れているのだろうか?

 断言するが、恐らく後者だろう。

 

「そうか、桜さんか。髪の色を思い起こす良い名前ですね。

 ──────改めて、初めまして。ベッドを使わせてくれてありがとうございました。」

「髪の色みたい、ですか。そんな風に言ってくれたのは貴女が初めてです。

 自己紹介って楽しいですね」

「それならよかった。ところで、()()()()()()()()()()()()()()()?」

「え?名前ですか?それは()()()()A()I()()()()で──────」

 

 咄嗟に両手で口を塞ぐ桜。

 何かの禁忌に触れたのか。それとも、別の何かか──────

 どちらにせよ、新たなナニカが得られる可能性が高いだろう。

 

 

「ごめんなさいっ!

 実幸さんも自己紹介したかったんですよね!?」

 

 

 ………………天使かな?

 

 結論として、自分の心の汚れ具合と目の前の少女が天使だ、という事が分かった。

 

 

 そして、もう一つ。

 

 ──────健康管理AIの特権。

 

 どうやら、もう少し話を聞いたほうが良いようだ。

 

 

 

「ところで、さっきから桜と名前で呼んでいるけど、こんな名前で呼んで欲しい、とかあるかな?」

「いっ、いえっ。他に呼んで欲しい名前はないです。

 む、むしろっ、積極体に桜って呼んでくださいっ」

「わかったよ。よろしくね桜ちゃん」

「ちゃん付けですか……あう」

「頭なでなでされて、気持ち良さそうに目を細めちゃってる可愛い後輩はちゃん付けで良いと思うよー。

 ほれほれー、ここが良いのかにゃー?だらしないふにゃ顔が『もっと撫でてー』って言ってるよー」

「あ………あううー」

 

 

 

「──────私たち、上級AIの名字は参加者の名字の中から無作為に選ばれた一つ何ですよ」

「そうなのか。ということはマスターの中にマトウ某さんがいる、ということか。

 マトウ、という名前は何処かで聞いたことがある。確か、支配系の魔術の大家だったとか──────」

 

 抱き寄せて頭をよしよししたい系の上級AI保険委員後輩少女サクラちゃん───自分で命名してなんだが、属性盛りすぎである───に淹れてもらったお茶(美味しい)を飲みながら話を続ける。

 

「そういえば、桜ちゃん。今、着てるのとは違う制服とかある?」

「制服ですか?ありますよ。

 今の制服はブレザーですけど、昔の制服のセーラー服も一応ですがデータが存在しています」

「おおー。ありがとうサクラちゃん。やっぱり保健室には色々あるなぁ。

 むむっ、制服以外に体操服もあると見た。ブルマとかあったりする?」

「体操服はありますけど、流石にブルマは──────ありましたね……」

「……あるんかーい」

 

 

「──────さて、本題に入ろうか」

 

 自己紹介から話し続け、一時間ほど過ぎた頃。

 お茶(三杯目)を飲み終わったタイミングで切りだした。

 

 ほんだい?とキョトンとした顔で呟いてから。

 

「あっ、ほ、本題でしゅか!えっと、はい。なんでしょうか!?」

 

 慌てて聞き返してくる。

 直後、自分の慌て具合に恥ずかしくなったのか、顔を少し赤らめている。

 少し噛んでからのコレである。正直、可愛すぎないだろうか。

 

 ──────はっ。いかんいかん。

 

 聞かなくてはならないことを忘れていた。

 他言無用何だけど─────と、そんな風に前置いて。

 

 

 

「予選の頃からなんだが、記憶が曖昧なんだ──────」

 

 

 

     †††††

 

 

 

「──────なるほどね。つまり、本来ならばこれが正常な状態だ、と」

「はい、その通りです。

 確かに、予選の段階では記憶を封印して、仮初めの役割演技(ロールプレイ)を行ってもらい、マスターを篩に掛けていました。

 ですが、予選を突破したマスターの方々には記憶が返却されているされているはずなのです」

 

 予選の頃から続く記憶の違和感。齟齬。

 具体的に、月に来るまでの記憶がはっきりとしないのである。

 月に来るまで、と言ったが、月に来て自意識を取り戻したのは(体感で)つい先ほどである。

 

 結論として、原因は不明。

 世界五分前仮説という有名な仮説が真実ならば、俺だけ今までの記憶を植え付けるのに失敗したのかもしれない。

 

「そうか……。まぁ、嘆いてもしょうがない。原因が分からない事について悩んでも生産性がない。

 その時間があるのならば、自分に出来ることをやったほうが良い」

「……随分とあっさりしているんですね。

 その……怖かったりとか、不安だったりとかしないんですか?」

「してるよ。でも、どうしようもないからね。

 だからと言って、手を止めるべきではない──────()はそんな風に思っている」

「──────そう、ですか」

 

 一拍。

 

「でも、あまり無理はしないでくださいね」

「あまり、か。そんなに無理をするように見えたのかな?」

「見えます。危なっかしくて仕方ないです」

「即答か……参ったなぁ」

 

 

「ですから、何かあったら誰かを頼ってください」

 

「──────」

 

「先ずはキャスターさんに相談してください。

 キャスターさんでダメなら、仲のいいマスターや上級AI──────もちろん私でもいいですから」

 

「──────」

 

「私に出来ることは多くは無いです。

 上級AIと言えども権限に限りがありますし、所詮はAIでしかありません。

 ですが、私にも意地があります。健康管理AIとして、貴方たち──────マスターの方々の健康と安全を守るのが私の使命です。

 なので、私に出来ることがあれば何でも言って下さい。微力ですが、力になります──────力になりたいです」

 

「──────そうか。ありがとう」

 

 

 善性。聖性。

 そう言うべき美しいものを──────一人の少女の力強さを垣間見た。

 

「自分の名前は覚えてないけど、妹の事はキチンと覚えていた。多分だけど、妹の事だけは忘れたくなかったんだと思うんだ。

 だから、例え霊子体(アバター)とは言え──────いや、だからこそ妹の身体に無理をさせるわけにはいかないからね。

 困ったら頼らせてもらうよ。保健委員さん」

「お任せください。実幸さん──────そして、()()

 

 先輩、か。

 本当に良い後輩だ。

 

 ──────AI、NPC。

 彼らは、純粋な存在だ。

 穢れを知らない、とでも言うべきなのか。

 出会ってすぐの自称『記憶喪失の男』の少女に此処まで親切にしてくれる人間はいないだろう。

 

 ……さて、と。

 

 

「ところで、さっき何でもするって言ったよね」

「え?あ、はい。言いました、けど……あの、ちょっと怖いですよ」

「言ったよね」

「……言いました。言ってしまいました」

「簡潔に言おう。ブルマに着替えてくれないかな?」

 

 

 残念ながら、此方は悪い先輩なのだ。

 具体的には、可愛い後輩が居たらいじり倒したくなる性を持つ、質の悪い先輩である。

 

 真っ赤な顔で慌てる後輩に、スク水でも良いよ等と迫る先輩。

 着替えることのメリットを聞かれて元気になる、と即答。何処がとは言わないけどね、と平然と続ける。ただの変質者である。

 しまいには「女の子同士だから大丈夫」と妹の体を利用してセクハラをスキンシップで誤魔化そうとする変態。

 混乱して「そ……そうですよねっ!むしろ、女の子初心者の先輩に色々とレクチャーしないと……!」と暴走しだしてしまう女の子歴16年(設定)の中級者。

 

 戸惑う変態に、スカートの注意点の説明を始める保健委員。

 ……保健委員だけに表現がえぐい。

 怖い男に襲われる話とかしないで欲しいと内心震える変質者。

 AI故に一度暴走したら止まらないのかもしれない、そんな風に軽く絶望し始めたところで良識者の登場。

 

 安心と安全の包容力──────良識者、キャスターである。

 

 

 我に返った───返ってしまった赤面少女。

 先輩最低です、を喰らった燃え尽き不審者。

 

 うなだれる若人二人と呆れかえる先達(サーヴァント)

 

 三人とも美人なカテゴリーに入るだけに、ただひたすらに残念な光景だった。

 

「─────さて、落ち着いた?」

「「……はい」」

 

 軽い説教をされた二人は答える。

 

「さて、桜さん。照れ隠しが下手な可愛い主人の代わりに質問したいことがあるんだけど……良いですか?」

 

 ぬぐぁ、と謎の音を漏らしてうつむき具合を増す美幸。

 仕方ない人だ、と少し困った微笑を浮かべて応じる桜。

 

「端的に、これから私たちがすべきことは何ですか?」

 

 

「えっとですね──────

 

 マイルームの鍵と端末機の受け取りの為に言峰と言う名前の神父───聖杯戦争全体の監督役の上級AI。一階の掲示板の前に居ることが多い───に会いに行くこと。

 

 ──────ぐらいですね」

 

 

「ありがとうございます」

 

 謝辞は何処か突き放すように。

 

「さて、行きましょう美幸──────実幸?」

 

 何処か寂しそうな桜を置いて移動を促すキャスター。

 

「いや、もう少し話したいことがあるから」

 

「──────実幸?」「──────先輩っ!」

 

 花が咲いた、と見紛う様な桜。

 対して、不満げなキャスター。

 

「ごめんね。家のキャスターの嫉妬が可愛くて」

 

 ぐはぁ、と崩れ折れるキャスター。

 可愛い物を見た、という笑顔の桜。

 

「……二人とも可愛いなぁ」

 

「女たらしのようなことを言うのですね……」

「えっ……先輩、最低です」

「ぐぬぅあぁ……」

 

 

 

「──────それで、話す内容とは」

「えっと…………必勝法とか?」

 

 落ち着いたところで、閑話休題。

 気を取り直し、緊張した趣で訊ねた桜に『何も考えてません』と分かりやすく応じる美幸。

 

「えっと、必勝法……です、か」

 

 呆れ半分困惑半分な桜。

 

「いや、定石とかさ。ほら、キャスターのサーヴァントの特長とかね。どんな風に立ち振る舞えば良いのか、とかね」

 

 慌てて訂正する実幸。

 このままでは真面目な後輩と駄目な先輩という関係が定着してしまう、と既に手遅れな事を考えての行動である。

 

 

「なるほど」だが、真面目な後輩は素直に受け止め考え始める。「キャスターのクラススキルはご存知ですか?」

 

「いや、全く」

 

 ついさっきまで意識なかったし、と開き直る。

 

 

「それは私から説明しましょう──────

 

 キャスターのクラススキルは陣地作成と道具作成の二つ。

 前者は場を整え、後者は術を補う。

 どちらも『作成』が着くことから分かるように、何かしらの『材料』が必要。

 なので、その『材料』を集めるのが肝心。

 

 ──────というぐらいですか」

 

 

「……なるほどね。

 ところで桜ちゃん。保健室の備品の中で、マスターが持っていって良いものとかある?」

「そうですね……。保険委員が渡せるのは試合毎に回復アイテムを支給するだけです。それ以外の備品は保健室から持ち出すことは出来なくなってます」

「そうか、から仕方ないね」

「協力できなくてすいません……。

 売店で買うか、アリーナでの探索によって手に入れるのが基本ですね」

「なるほどね。……廃棄するものとかもダメ?」

「廃棄するもの、ですか?すいません、基本的にないですね」

「そりゃそうか、電脳世界だもんな。

 でも、ゴミって設定のモノなはないのかな?

 例えば、昔の制服のデータみたいに」

「なるほど、それならば校舎を探せば有るかもしれませんね……。

 言峰神父に会った時に、ついでにに聞いてみてください」

 

 

 …………。

 話が途切れてしまった。

 

「さて、とりあえず言峰神父に会いに行こうか」

 

 沈黙が気まずくなる寸前に切りだす。

 保健室は居心地が良いものと相場が決まっているが、一応は公共の場。

 用事の無い者、終わった者は早めに立ち去るべきだろう。

 

「ありがとう桜ちゃん。長い時間、無駄話に付き合ってくれて」

「いえ、こちらこそ。保健室に来る人はほとんどいないので退屈だったんです」

「そっか」

 

 頭に手を置く。

 

「じゃあ、また来るよ」

 

 軽く撫でた後、手を放す。浮いた手を振る。

 

 

「──────、ぁ」

 

 一瞬前まで感じていた温もりが失せた事への寂寥。

 その欠落を埋めようと口が動く。

 

「──────あのっ!」

 

 保健室のドアを開けていた人影が振り向く。

 

「えっと……せ、制服のデータは後で送ります」

 

 咄嗟に出たのは関係ない言葉で──────。

 

「そっか、ありがとう。君は親切だね」

 

 それじゃあ、また会おう。

 足を踏み出す。出て行ってしまう。

 

「また──────」

 

 声が小さい。言えずに終わりたくない。

 

「またっ──────またッ来てくださいッ!」

 

 ──────言えた。

 

 先輩は顔だけ振り向いて、一瞬、虚を突かれた顔で。

 

「もちろん。可愛い後輩に会いに行くのに理由はいらないだろ」

 

 そんな風に、当たり前のことのように言って、保健室から足を踏み出していった。

 

 

 

     †††††

 

 

 

 素敵な『人』に出会えた。

 

 先輩がここに居た余韻が残る保健室で一人思う。

 基本的にここは私以外誰もいない──────。

 誰かが足を運ぶだけでの珍しいのに、長話をしてくれる人は『今回は』今までいなかった。

 

 あの何処か温かい『人』の事を思うと心が少し暖かくなる。

 そんな些細な事を幸せに思う。

 

 さて、あの人のために制服を見繕おう。

 …………ほんの少しなら、過激なスキンシップの意趣返しをしても良いかな?

 

 

 

     †††††

 

 

 

『さて、教会に行こうか』

『掲示板前に行かないのですか?』

『まあね。監督役に会う前なら知らなかったで済むし』

『……本当に危なっかしいですね』

『いや~。神父なら教会に居ると思っただけなんだヨ。本当だヨ』

 

 霊体化したキャスターと念話をしながら。

 

 保健室を出て右へ。

 ドアノブを捻り、扉を押し開ける。

 僅かに錆び付いた様な感触を五感に受ける。

 

 

 ──────避難誘導の緑光をくぐる。

 

 

 始めに目に入ったのは噴水と花壇。

 視線を左に向けると物静かな教会。

 

 校舎の喧騒も此処までは届かない。

 NPC以外の人気はほとんどない。

 何処か寂れた雰囲気の隔地──────"中庭"。

 

「──────良い場所だ」

 

 そんな感想を呟く。

 

『積極的に来る理由はないけど、何となく時間を潰すには最適な場所だね。教会の石階段に腰掛けて本読んだりしたいな』

『それには共感できますよ実幸』

 

 中庭を歩く。

 頬を撫でる少し湿った風と靴越しに伝わってくる土の感触。

 何処か懐かしい風情。

(──────子供の頃、里帰りをした時に駆け回った森のようだ──────)

 一瞬だけ脳裏を過った風景は記憶の欠片か。

 

 

 教会の扉を開ける。

 木製の軽い扉。キィ、と微かに軋む。

 寂れて風化した、昔の空気を閉じ込めたままの教会。

 腐りかけた木材の匂いと嘗ての美しさを保つような見事なステンドグラス。

 管理する者がいない雰囲気が示すように、此処は無人である。ここにいるのは巣を張る蜘蛛くらいだろう。

 

 五分ほど教会内を歩き回り、目ぼしいものがない事を確かめてから教会を出た。

 

 

 

「──────見つけた」

 

 教会を出てから暫く。

 中庭を散策している途中で『それ』を見つけた。

 

 廃材置き場。

 

 校舎の影になる場所。

 件の"袋小路"だった。

 

「此処かぁ………」

 

 無造作に詰まれた木材や黒いビニール袋に包まれたゴミなど。

 何かに使えそうなもの等も一緒くたに。

 

「使えそうかい?」

「ええ、十分ですね」

 

 口頭での質問に、実体化したキャスターが答える。

 

「さて、監督役に会う前に見つけてしまったな」

 

 どうしようか、と悩む自分に───

 

「そうですねぇ。罠か使い魔でも配置しておきましょうか?」

 

 ───とキャスター。

 

「そうすべきだね」とその案に同意し、何をするかを話し合う。

 

 

 キャスターの持つ宝具の一つで狼を召喚するものがある。

 訳合って本来の召喚は出来ないらしいが、普通の狼を呼び出す程度なら可能らしい。

 

 相談の結果、廃材の目の前に大きめな狼を配置。──────そして、入り口にキャスターの宝具の一つ『気配遮断を付与する衣装』の切れ端を与えることで気配を絶った子狼を配置した。

 

 廃材の前の狼に気を取られた第三者を後ろから襲う構えである。

 えげつない発想にキャスターが引きつったような表情をしていた。

 

 責任感に溢れた凛々しい顔の狼を残して監督役のNPC、言峰神父を探すことにする。

 

 

 

     †††††

 

 

 

「──────失礼。貴方が言峰神父であってるかい?」

「ああ、間違いない。

 私は言峰。この聖杯戦争の監督役をしているNPCだ。年若きマスターよ。

 聞き慣れた祝辞かもしれないが、本戦出場おめでとう。これより君は正式に聖杯戦争の参加者となる」

 

 来た道を帰り、掲示板前にて。

 陰気な雰囲気を浮かべる神父に話しかける。

 

「素晴らしい祝辞をありがとう。

 必要な要素が効率よく揃っている。こういうタイプの答弁は好ましく思えるよ」

「お褒めに預かり光栄だ、とでも言おうか。

 さて、要件は何かね。私と話を早めに切り上げたいのだろう」

 

 図星。

「分かる?」と聞いてみると──────

 

「あからさま過ぎるな。隠す気のないことを態々聞くのは賢明ではないだろう。

 私としても、余計な時間は少ない方が助かる」

 

 ──────と辛らつに帰ってくる。

 出会った瞬間から分かっていたが、この神父とは馬が合わないらしい。

 

「全く同感だな。じゃあ端的に。

 一つ目に携帯端末とマイルームの鍵が欲しい」

「請け負った。

 余談だが、何処で聞いたのかね?」

「ん?保健委員の桜ちゃんからだけど」

「……なるほど。どうやら、君の性格はお見通しらしいな」

「うん?どういうことだい?」

「いや、この端末とマイルームの鍵をマスターに与えることは、どの上級AIでも出来ることだ」

「うわっ……。出会い損かよ」

「君は正直者だな。

 恐らくだが、私に合わなくてはならない理由を作ったのだろう。

 君は、面倒なタイプの人間との接触は避けるか、出来るだけ先延ばしにするだろう?」

 

 図星だよ畜生。はは、ざまぁ。

 

 悪態に遠慮が無くなっている。

 余りに嫌い過ぎて、一周回ってコミュニケーションが楽になっている。

 

「君の性格に桜君も気付いたらしいな。

 ……ふむ。彼女のような少女は好みなのかね?」

 

 嫌がらせに近い言葉。

 この神父、やりおるな……。

 

「そうだね、人間として好ましいよ」

 

 神父の吐き出した言葉の小針をかわすように誤魔化す。

 その一言を──────

 

 

「いや、()()()()()、という意味でだ」

 

 

 ──────神父の一言が突き穿つ。

 

 思考が一瞬停滞する。

 この神父、一体何だ?

 

 感じたのは言いようがない不快感──────そして、恐怖。

 

「周りの生徒には聞こえていない──────それ以前に、話しているとさえ認識されていないから安心すると良い」

 

 その言で、思わず後ずさる足を縫い付ける。

 

「アンタは──────()()()()()?」

「ふむ……身体のバランスが悪い、とでも言うべきかね?」

「肉体・精神・魂。その三つは深い関連性がある。

 魔術世界での常識だが、これと関係があるのか?」

「それは地上での常識だ。

 ムーンセルでの霊子体(アバター)においては、それは通用しない。

 何故なら、霊子体を形成する際、先の三要素の調律が自動的になされる。

 また、優れた魔術師(ウィザード)なら、三要素を自ら調整する事で霊子体をカスタマイズすることが出来る」

 

 霊子体を改竄した者にはその痕跡が残る。

 しかしながら、お前は違う。

 

「一見分かりずらいが、お前の霊子体は改善した形跡がないのに構造があやふやだ。

 例えるのなら、()()()()()()()()()()()()()()とでも言うべきか」

 

 私ではなくても、霊子体の改竄が行えるような優れた魔術師ならば、その奇妙さに気付くだろう。

 

 神父はそんな風に締めた。

 余りにあっさりとした、原因の発見である。

 

「対処法は?」

「ないな」神父はあっさりと否定した。が、「だが」と続け「時間の経過と共にその状態に()()()だろう。恐らくだが、そうなれば記憶の不都合はなくなるだろう」

「そうかい、何処までもお見通しってワケか」

「そういう事だ。

 なに、心配する必要は無い。その体でいても弊害はほとんどあるまい。

 精々が、そうだな──────

 

 肉体・精神・魂の調律が行われていない故に、精神が肉体たる霊子体の性別に寄せられる。

 

 ──────ぐらいのモノだ。大したことではないだろう」

 

「──────」

 

 普通に大事だった。

 

 

 

 混乱が収まるまでかなりの時間が掛かった。

 

 その後、神父から携帯端末とマイルームの鍵を受け取った。

 手に取った瞬間に霊子化して霊子体(アバター)に吸い込まれる。

 例えるのなら、魔術師というPCに接続された『メモリとCPUが内蔵された外部端末』だろうか。

 今後はこの『機能』にアイテム等の情報を押し付けることが出来るようになった。

 

 また、廃材については「自由に使ってよい」とのことだった。「素直に購買を使ったほうが良いと思うがね」という嫌味と共に。

 

 

 

「色々とありがとう。言峰神父。

 これからは余り迷惑を掛けないように気を付けるよ」

「ぜひとも善処し給え。素直に二度と会いたくないと言ってくれて構わんがね」

 

 …………。

 

 本当に二度と会いたくない。

 

 

 

     †††††

 

 

 

「よーしよしよし。

 良い狼だな。そっちのチビも。

 良い目と足と牙を持っている。

 毛並みも良いし申し分なしだ」

 

 なんか、むっちゃ戯れていた。

 

 つい20分前の、責任感に溢れた凛々しい顔は何処へやら。胡座を組んだ謎の美丈夫に気持ち良さそうに撫で回されている。

 

 目の前の光景に唖然としていると、もう一人の青年に気付く。

 肩に掛かる金髪に琥珀の眼、長身をタキシードで包む美青年。

 何と言うか、ザ・貴公子。

 住む世界が違うのだ、とはっきりと分かる貴人。

 魔術は滅びた。

 魔術協会は衰退した。

 だが、魔術師は姿を変えて生き残った。

 目の前の男こそ時代の変遷を生き残った、高貴なる魔術の幻想を保つ者。

 

 ──────魔術の造詣深い、西欧の大貴族。

 

 霊子体(アバター)の精密さが、廊下ですれ違った他のマスターとは段違いだ。

 そも、制服を着ていないマスターに出会ったのは彼が初めてだ。

 それだけて、彼のウィザードとしての実力が伝わってくる。

 

「えっと………はじめまして、かな?」

 

 と、王子様オーラ全開で話しかけてきた。

 

「ええ、はじめまして。

 私はそこの狼の使い手のマスターです」

 

 だが、此方の外見こそ美少女(兄バカ)だが、中身は四十路のセクハラ男である。

 イケメン貴族オーラに対して抱くのは憧れではなく嫉妬である。

 

「警戒させてしまったかな。

 私は───僕は───そうだね、僕のことはルヴィと呼んで欲しい」

 

 相も変わらずの雰囲気を纏いながら自己紹介をしてくる青年。ルヴィ。

 ──────ズキリと、頭の何処かが軋んだ。

 

「では私はユキと。

 そちらの彼は貴方のサーヴァントですか?」

「ええ、そうですよ」

 

 微かな霊子の揺らぎ。

 恐らくはルヴィとそのサーヴァントの間での念話だろう。

 

 後ろを向いていた男が立ち上がる。

 男とじゃれ合っていた二匹の狼はこちらに向かってくる。

 

「お疲れ様です。ですが、後でお説教ですよ」

 

 実体化したキャスターの足元に駆け寄り、申し訳なさそうな鳴き声を上げる。

 

「いや、そいつらは悪くないぜ」

 

 男が──────ルヴィのサーヴァントが弁明をする。

 

 青銅の軽鎧に身を包んだ血錆色の髪を持つ男。

 調和のとれた長身。光宿す紅蓮と目線が合う。

 

 全身の配色に一切含まれたいないが、黄金の気配を纏った戦士だった。

 

()()()()()()()()()()()()事に一瞬で気付いて、それでも足止めをしようとしていた」

「それで、気を引くことを選んだ、という事ですか」

 

 キャスターは膝を下ろし狼を撫で、何かを呟き、彼らを送還する。

 

「狼の気を引くのが得意なようで」

「悪いな、これはオレの性質でね」

 

 互いのサーヴァントの間での一発触発の空気。

 

「そこまでだよ。私にはここで戦うつもりはない」

「同感です。一回戦すらまだなのに、ペナルティを食らいたくはありません」

 

 それを抑えるのがマスターの役割だ。

 

「分かりました。マスターの指示ならば従いましょう」

「同感だ。確かにこの場でやり合う必要は無いな」

「そうですね。このような場所で『神殺し』の気配を持つサーヴァントと戦いあうのはリスクが大きすぎますからね」

「それはお前もだろう」

 

 互いに要件は済んだとばかりに霊体化する二騎のサーヴァント。

 後に残されたのはマスター二人。

 

「それでは失礼します。

 ユキさん。貴女とは長い付き合いになりそうな気がしますよ」

「またいつか、ルヴィさん。

 出来ることなら、貴方とは敵として巡り合いたくないですね」

 

 立ち去って行くルヴィを見送る。

 

 彼の姿が見えなくなり、大きく息を吐きだす。

 緊張の糸が一気に切れる。

 

『大丈夫ですか実幸』

「……あんまり大丈夫じゃなーい」

 

 コンクリートの地面に大の字に寝ころぶ。

 このまま眠ってしまいたかった。

 

 

 

     †††††

 

 

 

『──────さて、どう思ったマスター?』

 

 廊下。

 中庭から遠ざかるルヴィに彼のサーヴァント──────ランサーから念話が入る。

 

『──────分からない』

『あー……そりゃ、一番悪いなぁ……』

『その通り──────

 

 僕から見て、彼女───ユキの霊子体(アバター)は歪に見えた。

 恐らくは霊子体の形成過程で何かのアクシデントがあったのでしょう。肉体・精神・魂の関係に問題がある。

 だが、全く崩れていない。見るからに不安定なのに全く揺るがない。

 

 ──────文字通りの未知数。規格外。それが僕の下した評価です』

 

 

 本来ならマイルームでするべき話なのだが、今すぐに考えなくてはならない、という奇妙な焦燥感があった。

 

『君はどう思う?』

『さてね。ただ、あのサーヴァントはオレを殺せるだろう』

『──────!

 そう、ですか』

『ああ。正体は分からねぇがオレに攻撃を通すナニカを持ってるだろう』

『そうか、警戒が必要だね』

『そうだな』

 

 そう言って打ち切る。だが、念話は途切れてはいない。

 

 ユキと名乗った少女。

 その名前と顔つきから東洋人。おそらくは日本人だろう。

 露骨に警戒する姿に、初めは威嚇をする小さい黒猫のようだと思った。

 だが、此方がルヴィと名乗った時。

 

 ──────その一瞬だけ、『私』は死の恐怖を感じた。

 

 あの刹那の奥に棲むナニカ。その闇の深さを測りかねていた。

 

『そんなに怖がるな。

 相手が未知数なのが普通なんだ。戦う前から恐れていると、本番で失敗する』

『……ありがとうございます。ランサー』

 

 ランサーの念話で、深みに嵌まっていた思考から抜け出す。

 分からないから恐怖を感じるのであれば、かえって親密に付き合えばいい。

 

 積極的に人間関係を構築し、情報を集める。

 同時に、ランサーの不死身の条件を突破しうるナニカについての情報を集める。

 敵を知ると同時に自分自身を知れ(Know yourself as well as your enemy)。東洋──────日本では、彼を知り己を知れば百戦殆うからず、と言ったか。

 出来ることはいくらでもある。迷っている暇があれば、その半分でも努力に回すべきだろう。

 

『改めてありがとうランサー。すっきりしたよ』

『そいつはどうも。

 ああ、そうだ。どうでも良い事なんだが──────』

『何ですか?ランサー』

 

 

『いや──────念話でぐらい、口調を戻しても良いと思うがな』

『いや、止めておくよ。()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

     †††††

 

 

 

 気がつくと、世界が黄昏に染まっていた。

 

「──────寝てた?」

「ええ、ぐっすりと」

 

 上下逆さのキャスターが答える。

 後頭部の軟らかさと弾力を加味すると、膝と平行な向きに膝枕をされているようだ。

 

膝枕ありがとう(胸大きいね)キャスター」

「──────まだ、寝ぼけているようですね」

 

 本音と謝辞が逆ですよ、と言いながら頬を突ついてくる。ひんやりとした指が寝起きで火照った顔に気持ちいい。

 

 いや、余りに見事な双丘だったのでつい。弁明になっていませんよ。ツンツンは良いけどムニムニは痛い。

 

 何時までも堪能していたいが、何時までもこうしているわけにはいかないので。改めて───と言うか正しく感謝を伝えた後、立ち上がる。

 

 ──────さてと。

 

 辺りを見回す。

 相も変わらずの"袋小路"。先程と変わっているのは、地面に浮かび上がる紋様───恐らくは、古代日本の魔術式───と地面に突き刺さっている『長剣』。

 

「結界はもういいですかね」

 

 そんな風に()()()()()()()()()()呟き、『剣』を引き抜く。

 結界は中心に会った支柱が抜けたことで弱まり、一気に外からの冷えた空気が入り込む。

 

 シンプルなデザインの『剣』。

 光がないのに燐光を放つ刀身──────その材質は明かに金属ではない。

 柄に巻かれた布には、日本という列島国家に大陸から文字が入ってくる前に使われていたであろう『紋様』が編み込まれている。

 

「キャスター、その『剣』は──────」

 

 

神子を守護れ、払暁の霊剣(草那芸剣(くさなぎのつるぎ))

 

 

「東征に於いて賜りし、英霊ヤマトタケルの象徴。

 数多の『祭ろわぬモノ』を屠りし刃にして、持ち主を災いから守る霊剣」

 

「所持するだけで、病や呪いから持ち主を守護する効果を持つ霊剣としての性質」

 

「また、祭ろわぬモノを討伐した経緯により、我らが祖先にして、高天ヶ原の主──────天照大神に従わぬ邪神や悪霊を滅ばす無慈悲な刃としての性質」

 

「様々な恩恵を持つ『現存する神器』。

 ヤマトタケルがどのクラスで呼ばれようとも保有している宝具です」

 

 だから──────。

 

「だから安心してください。

 例え、対戦相手が外国(とつくに)の神であろうと私は負けませんから」

 

「神に関係ない英霊であろうとも、暴風で、光矢で、稲妻で、病魔で、暗殺で、大嵐で、神獣で。そして、浄化の白炎で──────。

 私は誰にも負けませんから。

 先ほどの外国(とつくに)の英霊なんかは膨大な『神気』を纏っているので私の良い鴨です」

 

「改めて──────我が名はヤマトタケル。

 美幸──────貴女を熾天の座に導く者。

 だから──────だから、私がいるのに他のサーヴァントを見て不安になったりなんてしないでください」

 

 

「済まなかったキャスター。

 俺は君のことを信頼している。君に不快な思いをさせてしまった」

「──────実幸」

 

 強い視線と目が合う。

 

「君に倒せない英霊はいない。

 何せ、あのヤマトタケルだ。日本では知らない者のいない大英雄。

 仮に倒せない相手がいるのならば、その強さには理由があるタイプだ。そういう奴の倒し方を考えるのが俺の──────マスターの仕事だ」

 

 頼りにしてるよ大英雄。

 こちらこそ、マスター。

 

 満足げな笑みが浮かぶ。

 お互いに。

 

 

 

「さて、順序が色々と狂ったけど、使えそうなものを漁り終えたらマイルームに行こうかね」

「そうですね。マイルームの前に購買に行ってみるのも良いと思いますよ」

「確かになぁ。

 ところでキャスター。現代の食べ物に興味はあるかな?」

「ない──────と言ったら嘘になりますね」

「了解。今晩と明日の朝は無理だけど、それ以降は何か作ろうか──────設備があれば、だけどね」

「大丈夫です。クラススキル陣地作成で何とかして見ましょう」

 

 

 

 俺はこの時、日本神話の英霊───例えば、神武天皇などの高位の神性を保有するであろう英霊───が出てきたらどうするんだ、と聞くことが出来なかった。

 

 

 

     †††††

 

 

 

 ゴミ漁りを終え、購買で食料品や道具作成の材料などを買い込み、マイルームへ。

 

 

 

 教室の扉を開ければマイルーム──────というより空き教室。

 

 まぁ、これをハッキングして好みの部屋を作れ、という事なのだろう。

 そんな風に納得して、誤魔化すことにした。

 

 

 教室の景色が懐かしいから大規模な改造はしたくない、とキャスターに相談し、少しずつ内装を整えたり、私物を増やす方向で改造することに決めた。

 

 本当は今すぐにでも改造をしたいところだが、疲れているので本格的な改造は明日からに。

 差し当たって、40セットほどある机と椅子の内半分ほどを解体する。

 その後、購買で購入したパンなどを食べ、解体した机の天板を適当に並べ、その上に段ボールなどを敷き寝転がる。少し硬いが(慣れているから)問題ないだろう。

 

 目を閉じる前に、キャスターが潜り込んでくる。

 互いを抱きしめながら、深い眠りに落ちていく。

 

 

 

 意識が遠のく中、メールが届いたような気がしたが、穏やかな温もりに紛れていった。

 

 




 また長くしてしまったと後悔・反省中。

 初めての『また来てください』を盛り上げるために話を伸ばしたのが原因です。
 後は着々とフラグを混ぜたりとか……。

 シナリオ集を買って本当に良かったと思う昨今。
 ありがとう過去の自分!


 さて、イベントの準備で騎と殺の金種火を集めたし、ガチャのイメージトレーニングでもしますか。

 ──────フレポで以蔵来た。フレポで以蔵来た。(※来ません。注意)

 因みに、中二の頃に読んだ『竜馬がゆく』で知った人です。『龍馬伝』も懐かしいなぁ……。
 放送局で、武市先生よりも実装が早いといじられていたが、知名度を考えれば残当なんだよなぁ……。
(※個人的な土佐藩士の知名度:坂本龍馬>(越えられない壁)>岡田以蔵>後藤象二郎>武市半平太
 尚、分かりやすさのために入れなかったが、彼ら以外に沢村惣之丞や板垣退助などがいる。明治維新に直接的には関係ない人物ではジョン万次郎や岩崎弥太郎らも知名度が高いかと)


 ここまで読んでいただいてありがとうございました。
 次回更新は何時になるか分かりませんが、八月中には投稿したいな、と思っています。

 PU2に震えながら。
 マクスウェルの悪魔来ないかなー、なんて。





 マクスウェルの悪魔と言えば──────『ウィザーズ・ブレイン』のファンってどれくらいいるのだろうか?

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