奇怪なる月の聖杯戦争の幕開けは、銀色の侍と共に。
理不尽を、己の魂でもって打ち砕く現存唯一の看板を守り続ける
横を歩くのは、影すら掴めない真相に自身の正体を求める128番目のマスター。
坂田 銀時と、岸波 白野の最後の旅。
見おろせば深淵、
【さぁ、結末の先を始めよう】
第一の海想-聖なる怪物-
第◆の海想-誠の羽織り-
第七の海想-最後の事件-
Record、やったね!
目の前で砕け散る、木でできた人形。たった一撃で、人を模したものが粉々になる。それも、同じ姿形の人形に、完膚なきまでに…。酷く現実的で、これこそ当たり前の結果。
まるで、ここまでの想いを踏みにじるような選別。
微かに見えた希望が、一瞬にして灰塵となった。私の心をへし折るには、十分すぎた。
あぁ、きつい。まぶたが重い。
海の天井から射す月明かりが、とても心地いい。
ここに来る前は、夕方だった気もするが、もう心底どうでもよかった。
狂騒から遠のいていく。呆気ない…何も持てていないから、私も、死を受け入れなければならないのか。
「………の?」
足下に転がる破片は、再起不能と如実に伝えてくれる。最期を受け入れろ、と無機質ながらも親切を込めて言っているようだった。
私も、誰かのように疑問を晴らすことのないまま、死んでいくのか。あぁ、分かる。足先から徐々に、意味もなく、融解されていく。何者にもなれない、なり損ないの情報だ。
「分からない……このまま、終わるの?」
この疑問はもっともだ、とも思う。
やるべきことくらいは、見つけている。
だけど、悠然とこちらを見下す人形への対抗手段がなにもない。私の力では、瞬く間も無く殺される。
じゃあ、このまま床に…それこそ人形のように力なく転がって、心も心身も放り出せばいい。
諦めの悪い瞳が、薄く開いた。
すると、床に伏しているにも関わらず、私と視線を交わす人がいる。
それはもう話すことのできない、悔しさの底に沈んだ人間。黒髪の誰かが、光を失った目でこちらを見ている。……気がして。
「……それは、すごく嫌だ」
メラリと、数十分前までの拒絶が過ぎる。
なんて都合のいい、肉体だろう。死んでいった誰かの、ありもしない声を脳は聞く。
吐き気に襲われる、無機質なルーチンから脱したい。
「生きたい」
死ぬのが怖い。ここで果てていった人たちと同じように、何もせずに消えるのはここに来る決意をした自分と矛盾する。何より。
「私は生きたい。納得のいくまで止まりたくない」
だから、何もできなくても立て。
そうしなければ、意味はうまれない…!
「いいセリフ言えるじゃねぇか。その根性なら、聖杯戦争を勝ち抜くのに十分!これだからどこでも女ってのは、いつも強いんだろうな」
どこからともなく、空間に声が響き渡る。
何事かと目を開け、上を向く。すると、背景であったステンドグラスにヒビが入り、そして。
銀色のエフェクトと共に、誰かが飛び出してくるのが見えた。
「サーヴァント、セイバーだ」
それは瞬く間に木の人形と、私の間に割り込んだ。グワリ、意識が変わる。歪む、というよりも覚醒に近い。鼓動の高鳴りが増す。
携える刀を抜くと、ああも重かったはずの木の人形の攻撃をいなし、一振りで破壊し、私に手を差し伸べた。
「その叫びが契約書代わりだ。生きたい、いいじゃねぇか。当然の話さ。テメェが息して動いて、泣いて笑い転げるくらいで丁度いい。だろ?なら、
その日、私は運命を掴んだ。
真新しい月の聖杯戦争、ここに開幕。
第一の海想-聖なる怪物-
「おおぉ、それはまさしくジャンヌ!民草を救うため、国を救うため、その身の危険を顧みず立ち上がった尊き少女!!
不肖、この願いは…聖杯になぞ託せるものではない。これは、私が成し遂げる報復行為なのだ」
キャスターの言動は、明らかに普通ではない。
ジャンヌへと向けた熱狂的な信仰心が、キャスターの脳を支配しているのか。聖女、ジャンヌといった特定のワードにしか反応しない。
ジャンヌ・ダルク。その名は、記憶を無くした私でも知っている。フランスの田舎町から、その名を日本に轟かせるほど激動の人生を歩んだ少女。
フランス、百年戦争でイングランド軍からオルレアンを奪還した英雄だ。彼女を知っている人物で探せば、そう手間はかからないだろう。
しかし、何故だ…。キャスターのマスターは…。
第二の海想-皐月の王-
「SAMURAIね、知ってますとも。礼儀を重んじ、愛国心ある国の忠実なしもべ。くぁー、遠く聞く話だけで目眩がする!」
森林に響き渡る声。
その姿を捉えることはできず、飛んでくる弓矢をセイバーはひたすら弾く。森の中を駆け、木々を盾にしながら向こうの位置を探る。
いや、盾とは勘違いもいいところだ。これらは全てアーチャーの武器。冷淡にも隠密を許し、アーチャーの実力を最大限にまで押し上げている。
「矢の出処にアーチャーの野郎がいねぇ……。白野、何か分かるか?」
そんな中、私は、セイバーの脇に抱えられた状態で中々にスピーディな爽快感にテンションが上がっていた。
「ばっか、オメェ楽しんでる場合か!いくらサーヴァントだからってなぁ、重いもんは重いんだからな!」
な、なにをぅ……。たまに思うのだがセイバー、女性に対する気遣いというものが欠けていると思うのだが。
ねぇ、聞いてる?私、これでもピチピチだよ?記憶とかないけど、高校生活してたし!(セラフに役割を与えられただけ)
あ、おい今どこ見た。
第三の海想-偶像の軍神-
「あぁ、何を言うんだお前は。神たる僕が指揮をする。これ以上も以下も、全て痕跡が残っていないだけだ。フ、フフフフフ」
「マスター、それは僕の言葉である」
セイバーの攻撃が届かない。柔和な顔をしたサーヴァントの周囲に現れた軍隊は、一糸乱れずにセイバーの突撃へ対処している。
今、多対一の戦場と化した。これでは、トリガーコードの回収どころではない。何も準備なしに、あの軍隊を相手にするのは不可能だ。
「白野、リターンクリスタル!!こりゃ真面な対局もできねぇ、まるで政治家相手にしてるみたいだ!」
セイバーがそこまで言うなら、ここは戦略的撤退をするしかない。情報の海に抗い続ける私らには、とても有効な一手ではないだろうか!?
「逃げるつもりなら、一歩遅かったぞ。既にこの海層にハッキングし、リターンクリスタルに限り使用不可とした!アーッハハハハハ」
「マスター、それも僕の言葉である」
く・・・!
彼のドヤ顔に実に対抗してやりたい。何かないだろうか。
「おい白野、嘘だよな。その顔、絶対ロクでもないもんなぁ?」
第◆の海想-極刑王-
「岸波 白野くんだね、私はダーニック。ユグドミレニアの長を務めている。早速で悪いんだが、君のサーヴァントと共に来てほしい」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆、◆◆◆◆◆◆◆◆◆だ。
初対面という言葉を投棄て、彼は笑ってみせる。差し出された右手には令呪、間違いない。次の対戦相手…!
突然の申し出に私を庇うように立つセイバーすら、一歩引いている。
何かが違うのはわかっている。私は、どうするべきか。
第◆の海想-誠の羽織り-
「無明……」
反応する隙間すらない。声に出すより先に、事が終わる。ハヤテの如く迫る、必殺の一撃。
「間に、合えッ!」
「…三段突き」
理解が追いつけなかった。辛うじて分かるのは、電光石火の速さで決着したこと。
第◆の海想-月姫-
「▅▅▃▄▄▃!!!」
「ぐっ…!バカ強ェ!んな力、どっから捻り出してやがる!?」
まずい、あのサーヴァントはここまで戦ってきた誰よりも破壊力に長けている。今ここでやり合えば、確実に負ける。感情に飲み込まれた一撃が、これほどまでとは…!
罠や当て逃げすらままならない。正面から叩き伏せる以外に道はないとしても、まだその時ではない。
セイバー、ここは退こう。このままじゃ、負けてしまう。
第七の海想-最後の事件-
「白野、まさかお前がここまで上がってくるなんてね。正直、予想外にもほどがあった。てっきり、◆◆だろうと思って、正体不明のサーヴァントの情報を掻き集めていたよ」
校舎の屋上で開口一番、◆◆がそう言った。
最初の頃から変わらない態度に、どこか安心する自分がいる。こんな悠長な、懐かしい日々が記憶の片隅に置いてある。だから、尚更、大切な時間を忘れてはいけない。
君との記憶も、これまで乗り越えてきたマスターたちの言葉も噛み締めて、この奇怪な聖杯戦争に決着をつける。
「あなたのサーヴァントと話がしたい」
「会ってなにをする。それは、一番バカなやつがすることだ」
「それは……どこまでが本気なの?」
Sword,or Death
「生きたいのならば、剣を取れ。この扉を開ければ最後、君か、相手が苦汁を飲むまで戦い続けなければならない」
そう言うと、神父 言峰はスッと音もなくその器をテーブルの上に置いた。
これは、一体……。
スプーンを入れるとジュッて音したんですけど?
「麻婆豆腐だ」
「麻婆豆腐だ、じゃねえぇぇぇぇ!!!こいつに変なもん触れさせんな、お前も当たり前のようにこの劇物を食べるなあぁぁぁ!」
セイバー、これも聖杯戦争に生き残るため。監督さんにごますりしとけば、後でエリクサーくれるよきっと。
「いい食べっぷりだ。遠慮はいらんぞ、これならばエリクサーのように使い渋り、最後まで残ったままゲームを終えてしまうこともない」
三口目で早くも視界がぼやけてきた私へ、彼は笑いかけると。パパッと私のアイテムへ何かを入れた。
「毎ターン使うといい」
麻婆豆腐 × ∞
「このヤロウ、上等だ!」
私は神父へと摑みかかった。
──5年後公開──
4月1日ですね、つまりそういうことです。
本当ごめんなさい。全然、連載する予定はないです。去年もエイプリルフールに嘘予告を書いたので、今年もしようと思っただけなんです。
クラス被りはないです。通常通り、七つのクラスを適用していますので、当ててみてださい。