う〜ん!爽やかな朝。空はスッキリと晴れわたり、雲一つない。まさに、飛行訓練には最適だ。
ソーレは、もう起きて、城の中を散歩しているのだろう。
私は、伸びをして、ベッドから立ち上がり、パジャマを脱いで、制服に着替えた。そして、長い黒髪をポニーテイルにする。
準備がすっかり整ったところで、大広間に行く。グリフィンドールのテーブルに、ハリーとロンが座っているのが見えた。
「おはよ!」
そう言って、ハリーの隣に座る。
「今日は飛行訓練だよね。僕、一番楽しみだったのに、スリザリンと合同授業なんだ。残念」
「へぇ、そうなんだ」
「ティアナって、クィディッチって知ってるかい?」
「うん。やったことも見たこともないけど」
その時、朝の郵便が届いた。メンフクロウがネビルに小包を運んできた。
「『思い出し玉』だよ。これをギュッと握って、赤くなると何かを忘れてるってことなんだけど。って、あれれれれ...」
ネビルがそのガラス玉を握ると、思い出し玉が赤く光り始めた。
「あれぇ?何かを忘れてるってことなんだけど...なんだろな?思い出せないよ」
ネビルよ、どんだけ忘れん坊なんだ...
ちなみに、今日の私の朝食のメニューはスコーン、リンゴジュース、ロールパン、スクランブルエッグ。私にしては、小食な方だろう。
____________________________________ 午後3時半。私たちは、校庭に出た。そこには、グリフィンドールとスリザリンの生徒たちが集まり、ガヤガヤと話に花を咲かせていた。
そこに、担当教官である短く切りそろえた白髪に鷲のような黄色い目をした、マダム・フーチが現れた。
「何をぼやぼやしているんですか!皆箒の側に立って!さぁ早く!」
そう言われて、生徒たちは慌てて箒の側に移動した。
「右手を箒の上に突き出して、『上がれ!』と言う!」
マダム・フーチの言葉に、皆右手を突き出して、「上がれ!」と言った。
私やハリー、マルフォイぐらいしか無事に手に収まった人はいなかった。ハーマイオニーの箒はコロコロと転がるだけだったし、ネビルのは、ピクリとも動かない。
全員が終わった後、マダム・フーチが乗り方をレクチャーし、生徒の間を回ってそれぞれの箒の握り方を直していた。マルフォイの箒の握り方が間違っていたのを知って、ハリーもロンも大喜び。
その後、いよいよ飛行訓練が始まった。
「さぁ、私が笛を吹いたら地面を強く蹴ってください。箒はぐらつかないように押さえ、2メートルほど浮上してそれから少し前かがみになってすぐに降りてきてください。
では、いきますよ..1、2の...」
「う、うわぁぁぁぁぁぁ!」
マダム・フーチが笛を吹くより早くネビルが悲鳴をあげて、飛び上がった。
マダム・フーチは慌てて戻ってくるように叫ぶが、ネビルはそのまま12〜13メートルほど飛んでいった。もう我慢できない。
「レピコーパス!」
ネビルに杖を向け、そう唱える。無事、ネビルは軟着陸した。
「大丈夫ですか!」
「はい、先生」
「あぁ、よかった ...Ms. ブラック、適切な対応でした。グリフィンドールに20点あげましょう」
そう言ってマダム・フーチはネビルを支えた。
「私はこの子を医務室に連れていきますから、その間誰も動いてはいけません。
箒もそのままにしておくように」
そう言うと、マダム・フーチはネビルを抱きかかえるようにして、医務室に向かった。
2人が声の届かないところまで行った瞬間、マルフォイが、
「あいつの顔を見たか?あの大間抜けの」
他のスリザリン生たちもはやし立てた。
「ごらんよ!ロングボトムのばあさんが送ってきたバカ玉だ」
マルフォイが草むらから拾い上げたのは、朝食の時にネビルが送られてきたって言ってた『思い出し玉』だった。
「マルフォイ、返せよ。それはネビルのものだ」
ハリーがそう言うと、マルフォイが笑って、箒にまたがり飛び上がって、
「それじゃ木の上にでも置いておくよ。ロングボトムが後で取りに来られるだろう」
それを聞いて、ハリーもハーマイオニーが止めるのも聞かずに、箒にまたがり飛び上がる。
「ここまで取りに来いよ、ポッター」
ハリーと私が急上昇してマルフォイの前に行くと、まさか来られるとは思ってもいなかったのであろう。呆然としている。
「返せよ、マルフォイ!」
「ふん、取れるものならとるがいい、ほら!」
と叫んで、マルフォイは思い出し玉を放り投げ、地面に戻って行った。逃げ足はやいな、お前。
ハリーも私も急降下する。ガラス玉を掴み、地面に着陸。
「ハリー・ポッター!」
マクゴナガル先生が走ってきた。ハリーの顔が真っ青になる。
「まさか__こんなことはホグワーツで一度も...」
「ちがいます!ハリーが悪いんじゃぁないんです!」
「お黙りなさい、Ms.パチル」
「でも、マルフォイが...」
「くどいですよ、Mr.ウィーズリー。Mr. ポッター、一緒にいらっしゃい」
___________________________________
その後の夕食の時間、ハリーからクィディッチチームのシーカーになったと伝えられた。なんでも、100年ぶりらしい。
「誰にも言わないでよ。ウッドは秘密にしておきたいんだって」
その時、双子のウィーズリー兄弟が声をかけた。
「やぁ。初めてだよね?僕、フレッドっていうんだ。こっちはジョージ。知ってると思うけど、ロンの兄貴さ」
「はじめまして。私、ティアナ・ブラックっていいます。ティアナって呼んでください。ロンから噂はかねがね聞いています」
「タメ口でいいよ。ハリーともタメ口だし」
「じゃぁ、よろしく。フレッドにジョージ」
そして各自自己紹介が終わった後、
「すごいなぁ。ハリー。僕たちもクィディッチの選手なんだ。ビーターだよ」
「じゃあな。僕たちもう行くよ。リーが抜け道を見つけたって言ってたから」
そう言うと、フレッドとジョージは足早に去って行った。
その後、マルフォイがやって来て、真夜中にトロフィー室での決闘をハリーに挑んで帰って行った。
「2人とも行かない方が良いわよ」
「そうよ、ティアナの言う通りだわ」
私がそういうと、ハーマイオニーも横から言った。その後ロンと口論になり、ハーマイオニーは怒った顔をして立ち去ってしまった。
「はぁ。どう言っても行くのを諦めてはくれなさそうね」
そう言うとハリーとロンは首を何回も縦に降る。
「それなら、私も行くわ。少しぐらいなら戦力になれるわよ」
な〜んちゃって。多分瞬殺だろう。マルフォイぐらい。
それに、1回生で見てみたかったんだよね〜。三頭犬。
「ダメだよ。ティアナまでまきこんじゃぁ」
「あら。こーなったら意地でもついて行きますからね」
ハリー達はこれは話題を変えた方が良いと思ったのだろう。
「あぁ、ティアナ。金曜日、ハグリッドの小屋に僕たちと一緒に行かないかい?
ハグリッドと約束してるんだ」
「うん!もちろん行く行く」
私はその夜、隣で寝ているサニーやラベンダー達を起こさないよう、こっそり寝室を抜け出した。談話室へ降りてきた時、ちょうどハリーとロンが肖像画の穴から出ようとしているところだった。あぁっ。ハーマイオニーも続いて出て行く。私は、こっそりと後を追った。
「グリフィンドールがどうなるか気にならないの?私がせっかく稼いだ点数をあなたたちがご破算にするんだわ」
「あっち行けよ」
ロンが言う。
「ちょっと。それは可哀想よ、ロン」
そう言って出て行くと、ハリーもロンもハーマイオニーも驚いた顔。
「あっちゃ〜。やっぱり来ちゃったのかぁ」
ハリーはそう言って手で顔を覆った。
「失礼ね、ハリー」
「もう良いわ!私は談話室に戻る!」
そう言うと、ハーマイオニーは肖像画の方に向き直った。だけど、ハーマイオニーは中に戻ることはできなかった。
なぜかというと、太った婦人は、夜のお出かけに出かけてしまったからだ。というわけで、ハーマイオニーも私もハリーもロンも寮から締め出されてしまった。
「さあ、どうしてくれるのよ?」
と、ハーマイオニーは言うが、
「知ったこっちゃないよ」
とロンが言うと、
「僕たちもう行かないと。遅れちゃうよ」
そう言って歩き出したロンとハリー。もちろん私もついて行く。ハーマイオニーも後を追って来た。
「一緒に行くわ」
「ダメ。来るな」
「私、フィルチや先生方に本当のこと言うわ。あなた達、私の証人になるのよ」
「君、相当図太い神経してるぜ…」
ロンが大声を出した。
「し〜ロン!静かにしてよ!」
途中でネビルに会った。ネビルもついて来る。
それから私たちはトロフィー室に向かった。マルフォイ達を待っていると、ミセス・ノリスを引き連れた、管理人のアーガス・フィルチがやって来た。私たちは逃げた。全力疾走。さらに、そこでピーブスに遭遇。またも私たちは全力疾走した。もう私の心臓はパンク寸前です〜。
逃げた先は例の4階の右廊下。私たちは必死でそこに逃げ込もうとしたけど、鍵がかかっている。私は鍵に杖を向ける。
「ア、アロ、アロホ、モ、モア〜」
息切れしちゃって、呪文が発音できない。
私に代わり、ハーマイオニーが鍵を開ける。私たちは逃げ込んだけど、そこにいたのは三頭犬‼︎私は心の準備してたから良いけど、もうネビルとか失神寸前。
三頭犬から逃げ、なんとか寮に戻ってきた私たち。談話室に入ると、肘掛け椅子に倒れこんだ。ネビルは、可哀想にブルブル震えて、2度と口が聞けないんじゃないかとさえ思った。
「あんな怪物を学校の中で飼うなんて。ほんと、何考えてんだろ?」
と、ロン。
「ほんとだね」
と、ハリー。
「2人とも、あの犬がどこに立っていたのか、見えなかったの?」
「床の上にでも立ってたんじゃない?僕は頭を見るだけで精一杯さ」
ハリーが言うと、ハーマイオニーは不機嫌になって、
「あの犬は仕掛け扉の上に立っていたのよ。何かを守っているんだわ」
「 あなた達、さぞご満足でしょうね?
もしかしたら皆殺しされてたかもしれないのに。もっと悪いことに退学になっていたかも。
それじゃあ皆さん、 私、おさしつかえなければ、休ませていただくわ」
ハーマイオニーは立ち上がり、寝室へと行ってしまった。
「また明日ね。おやすみ」
私ももう寝ることにする。寝室に行くと、もうハーマイオニーは眠っているように見えた。私は心の中でハーマイオニーに謝りながら、自分のベッドに入った。
ティアナ、持久力がありません。