七天龍の遊戯   作:JAIL

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4月1日に投稿しようとしてたのをすっかり忘れてましたww


崩壊の始まり 前編

楠木魅子と鷹野颯馬との三つ巴の戦闘の3日後。

友姫の家で朝食を摂っている中、テレビを付ける。

すると画面には〈声優の楠木魅子、遺体として発見される!〉という表示と現場の様子が映されていた。

 

「あら~…お若いのに…」

 

友姫の母親である沙弥は楠木魅子が七天龍の遊戯の参加者である事は知らない為、なぜ遺体で発見されたのかもよく分かっていない。

だが龍護と友姫には分かる。

それを知ってる為無言になってしまう。

楠木魅子が出演予定だった番組は中止となって別の番組に、アテレコしていたアニメも別の声優が担当となった事をアナウンサーが報道している。

 

「あら2人ともどうしたの?いつもなら仲良く話してるのに」

「え?あ、あぁ…いや…ボーッとしちゃってて…」

 

アハハ…と誤魔化した。

龍護が先に食べ終わり、食器を片付ける。

 

「龍護君、ちょっといいかな?」

 

まだ食事中のスヴェンが龍護を呼び止め、自室で待つように告げた。

龍護も頷き、スヴェンの自室に向かった。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

龍護がソファーに座って待っている。

暫くして引き戸が開き、スヴェンが入って来た。

 

「さてと…楠木魅子さんの件だけど…」

「その前にスヴェンさん、【傲慢の龍】の力はどういったものなんすか?」

 

龍護の問いにふむ…と顎を摩る。

 

「詳しい部分はよく分からないが恐らく洗脳の一種だと考えていい」

「洗脳?だとしたら【色欲の龍】とほぼ変わらないんじゃ…」

「いや【色欲の龍】とは違い、【傲慢の龍】の力は相手の思想を無理矢理自身と同じ思想にするって感じだよ」

 

スヴェン曰く、コントロールとは相手が自身の意志を持ちながら他者の言動に従って動く事を指し、洗脳は相手がどんな考え方を持ってあろうともその思想を捨てさせ、自身の思想に捻じ曲げる事を指すというものらしい。

その事を聞いてなるほど…と理解した龍護。

 

「それで…楠木魅子の紋章は…」

「…一応…」

 

龍護は自らの髪を1本だけ軽く切ってスヴェンに渡す。

一般人からはその紋章は見えないが、お互いに龍の所持者になれば紋章は見えるからだ。

スヴェンを【強欲の龍】の所持者にしてから手の甲を見せる。

そこには【強欲の龍】の白い紋章の色と【色欲の龍】の桃色の紋章の色が混ざり合った薄い桃色に輝く紋章があった。

 

「奪えたのだね」

「まぁ…」

 

紋章は奪えたが龍護の顔は浮かばれない。

楠木魅子が最期に言おうとした言葉が分からないからだ。

それを聞きたくても既に楠木魅子は亡き者になってる為、情報を引き出したくても出来ない。

 

「まぁ焦る事は無いさ、残ってるのは【暴食の龍】と【傲慢の龍】だ。それに期限まであと1ヶ月もある。落ち着いて彼等を倒していこう」

「ですね」

 

龍護は紋章を消して部屋に戻っていった。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

借りている自室に入ってすぐ横にある棚を見て気付いた。

 

「あ、姉貴に誕生日のキーホルダー渡さなきゃ」

 

丁度今日は恵美の誕生日。

時計を見ると午前9:00。

駅前のケーキ屋に寄ってその後に実家に行くか…と考え、私服に着替える。

すると友姫が入って来た。

 

「リューゴ!ゲームし…ってどこか行くの?」

「あぁ、今日、姉貴の誕生日なんだ」

「そっか、おねーさんに宜しく!」

「おう」

 

靴を履いて外に出る。

すると後からスヴェンもスーツを着て外に出てきた。

そして後ろにはスーツを着た沙弥も立っている

 

「あれ?今日休みじゃ…それに沙弥さんまで…。2人で出掛けるんですか?」

「うん、緊急で会議が入っちゃってね…何故か分からないけど沙弥も連れて来るように言われたんだ。君もお姉さんに宜しく」

「うっす、スヴェンさんも仕事頑張って下さい」

 

あぁ、とだけ返し、高そうな乗用車に乗る。

社会人…特に社長となるとかなり忙しいんだな…と感じた龍護だった。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

龍護がケーキの入った箱を持って街中を歩く中、目の前の信号が赤になり横断歩道の前で止まる。

ビルの壁に設置された電子掲示板にはニュースキャスターが映っていて世間に蔓延る事件や話題を取り上げて意見を出し合っていた。

最近特に話題なのは楠木魅子の死亡事件だ。

様々な憶測が立てられる中、やはりコメンテーターの目に止まったのは手や胴体に残る被弾痕だ。

これについては現在捜索中との事だが龍護は内心溜息が出た。

 

(どうせ【傲慢の龍】の能力や権力とかで揉み消されて興味本位でネタ探ししてる雑誌関係者も排除されるんだろうな…)

 

面倒なこった…と呆れた目でそのニュースを眺めている。

すると目の前の信号が青に変わっていつの間にか出来ていた人集りに紛れて龍護も横断歩道を歩き始めた。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

同刻。

スヴェンと沙弥はサニーの本社を訪れていた。

自家用車を客専用の駐車場に停めて建物に入り、受付を済ませる。

待合室で待つように言われ、女性の後を着いて行く。

そして待合室に入って、社長が来るのを待った。

だがスヴェンは少し神妙な面持ちだった。

なぜなら以前から行われていたサニーとラジネスカンパニーが共同で開発する製品に関しては既に決定していたからだ。

その他に会議をする事なんてあったか?それに沙弥まで連れて来る必要もあるのか?と思いながらパソコンを開いて書類の整理を進める。

暫くして社長である呉羽裕次郎がビジネスバッグを持って現れた。

 

「これはスヴェン社長と奥様。急な会議を開いたのにも関わらず対応して頂きありがとうございます」

「いえ、こちらこそ。それで今回はどのような件で私を?」

 

それについては少々お待ち下さい。と扉を閉め、何故か鍵を掛ける。

そしてスヴェンの向かいに立ち、お互いに着席した。

 

「今回お呼びしましたのは…実を言うと個人的な事なのです」

「はぁ…?」

 

仕事に私情を突っ込むか…と半ば呆れ半分だが少しは話を聞いてみるかと裕次郎の話に耳を傾ける。

 

「スヴェン社長、貴方の娘さんはお元気ですか?」

「え?えぇ、最近ではボーイフレンドが出来てより一層元気でいますよ。少し私にも分けて欲しいくらいです」

 

 

それは良かった。と裕次郎は他愛のない相槌を打つ。

それに対しスヴェンはそろそろ会議を始めませんか?と穏やかに急かす。

 

「そうですね。それでは…」

 

すると急に先程のビジネスバッグを広げる。

その中にはガスマスクのような物が入っていた。

それは…?とスヴェンが疑問を投げるも裕次郎は聞こえていないかのようにそのマスクを着ける。

そしてそれが合図だったかのように天井に設置されていた小さい円盤型の装置からシュー!と煙のようなものが吹き出した。

 

「!?裕次郎さん!これはどういう────」

 

事ですか!?と言おうとしたが目の前がボヤけ、眠気がスヴェンを襲う。

 

嵌められた…

 

そう思った時には既に遅く、スヴェンと沙弥は睡眠ガスによって眠らされた。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

同刻。

恵美は研究室で資料作成をしていた。

 

「…あ…資料のデータ、実家だ…」

 

面倒だけど取ってくるか…と重い腰を持ち上げ、研究室を出て細い路地に入る。

大通りからもこの大学へ行けるが大回りになってしまう為、遅刻しそうな時は近道であるこの細い路地を使っている。

路地に入ると工事中のようで警備員が誘導している。

空いている道に入ろうとした途端、その警備員に後ろから捕まった。

 

「────!?」

 

悲鳴を上げて助けを呼ぼうとしたが既に遅く、口にはハンカチを宛てがわれている。

 

『やばい…意識が…』

 

ハンカチに薬品が染み込んでいたのか、視界が歪んで身体はふらつき、抵抗が弱まっていく。

恵美はそれでも必死に抵抗するがとうとう気絶した。

警備員は気を失った恵美を抱え、近くに停めていたバンに押し込む。

すると中にいた覆面の男性が暴れないように恵美の身体を縄で縛り、バンは何処かに行ってしまった。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

龍護は実家に来ていた。

持っていた鍵を使って中に入る。

恵美は帰ってきてないのか真っ暗だ。

すぐに靴を脱いで壁にあるスイッチで灯りを付ける。

 

「まぁ準備でもして待ってるか」

 

冷蔵庫を見たがあまり使えそうなのは入ってない。

持ってきたケーキを冷蔵庫に入れ、龍護は溜息を付きながらも近くのスーパーに買い物をしに向かう。

すると龍護のスマホに着信が入った。

だがその画面を見て怪しむ。

その画面が【非通知】となっているからだ。

 

(誰だ…?)

 

少し怪しみながらも通話状態にする。

 

「…はい」

『奪木龍護君だね?』

 

機械でその声は加工されていて男性か女性か分からない。

 

「…誰だよアンタ」

『私かい?そうだな…”君の運命を握る人”と名乗っておこうか』

 

何言ってんだこの人…と普通に思った。

 

「悪ぃ、悪戯電話なら他所でやってくれ。こっちは今から出掛けるんでな」

『せっかちだなぁ君も、少し落ち着いて話でも聞いてくれないかな?』

 

時計を見ると午後の3時。

夕飯を作るにはまだ時間があると思ったのか少しだけ話を聞くことにした。

 

『話が分かる少年で助かったよ。けど───『龍護!?龍護そこにいるの!?』』

 

また別の人物の声がした。

いや、しただけではない。

よく聞き知った声だ。

 

「おい…てめぇ、俺の姉貴に何してんだ?」

 

龍護の声に殺気が篭もり始める。

 

『おっとこれは失敬。まさか声を聞かせてしまうとは…』

 

龍護は夕飯作り所では無いと考え、すぐに外に出た。

外に出たのを音で聞いて分かったのか、再び機械加工の声が入る。

 

『まぁまぁ落ち着き給え。まだ彼女には何もしてないよ』

「…要件は何だ?」

 

話が早く進むから助かるねぇ~と、また軽い口調で話す誰か。

その声の主は条件を話した。

 

『君の持つ【強欲の龍】と君の彼女、友姫・S・ラジネスの持つ【怠惰の龍】を渡して貰おうか』

 

その言葉を聞いて龍護は確信した。

 

 

この人も七天龍の遊戯の参加者であると───

 

 

「…お前はどっちだ…?」

『ん?どっち…とは?』

「【暴食の龍】か【傲慢の龍】のどっちだって聞いてんだよ」

『まさか!先程の質問でそこまで分かるとは!』

 

いちいちムカつく奴だ…と心の中で吐き捨てて次の言葉を待つ。

 

『ふむ…【暴食の龍】は中国人だから今度旅行して貰いに行くつもりだよ』

「て事はアンタは【傲慢の龍】か…悪いが今からそっちに行く。せいぜい怯えて待ってろ」

『ははは、勇敢な少年だ。けど…───言葉には気を付けた方がいい。君の行動で無関係な3人が死ぬかもしれないんだからね』

「待て!それってどういう───」

 

それだけを言って声の主は電話を切った。

その時、龍護はある事に気が付く。

 

(待て…そういえば何でアイツは声を加工なんてしたんだ…?鷹野って奴が【傲慢の龍】の所持者なんだろ…?だったら…)

 

自分で推測して、ある答えに辿り着く。

 

 

あの時は囮を送ったのか───

 

 

チッ!と舌打ちして友姫に電話をし、協力してもらおうとした。

そして友姫が電話に出る。

 

「友姫!ちょっと頼みが!」

『龍…護…』

 

その声には違和感があった。

いつもの元気そうな声ではなく、切羽詰まってどうしようも出来なくなっていそうな声だ。

 

「どうした…?」

『私…どうしていいか分かんない…』

 

何が起こってる…!?と感じて龍護が説明させようとする。

すると友姫が一枚の画像が送られたから龍護に渡すと言って電話を切った。

そして龍護のスマホにその画像が送られる。

その画像に驚愕した。

 

スヴェンと沙弥が鉄製の椅子に座らされ、手は手すりに固定し、足は椅子の脚に縛られ、布で目と口を覆われている。

 

完全に身動き一つ取れない状態だ。

だがそれだけではない。

スヴェンと沙弥の目の前にタイマーらしき物が置かれていて、よく見てみると2人の椅子の下には大きな爆弾がそのタイマーに繋がれていた。

龍護は無意識にスマホが壊れるのではないか?と思える程握り締める。

すぐに再び友姫と通話する。

ある事を伝える為だ。

 

「友姫!お前の両親は多分町外れにある町外れに廃工場にいる可能性がある!今すぐ行って救助しとけ!」

『…うん…』

 

元気の無い声に少々不安が残るも、電話を切った。

龍護の言った廃工場は2つある。

1つは鍛造(金属を叩いて加工する方法)をしている工場。

だがその工場がある場所は龍護が通っている学園の近くにあったのだが騒音が原因で近所の住民から苦情が多発し、対策として別の町に建設する事になっていたのだ。

そしてもう1つ、その工場は龍護がこの世界に転生した時からあった工場なのだが少し前に潰れ、今では廃工場となっている所だ。

写真を見て、龍護はすぐにその町外れの廃工場だと判明し、友姫に救助を急がせた。

その後に雪菜にも協力をしてもらおうと電話を繋ぐ。

だが雪菜は電話に出なかった。

 

「こんな時に何してんだよ!!!!」

 

時間が無い!と思ったのか龍護はスマホをポケットに入れて走り出す。

すると再び【非通知】着信が入った。

 

「おいテメェ!姉貴はどこだ!!!!」

『まぁまぁ落ち着こうじゃないか。まぁ数ヶ月前に建った日本支部にいる君の姉はまだ元気だよ。まぁ頭を柔らかくして探してくれ給え、あぁそれとちょっとしたプレゼントを君のメールに送っておいた。精々有難く思ってくれ』

 

再び一方的に切られる。

ヒントすら与えてくれなかった。

だが走り出した龍護はある事に気付く。

 

(確か…日本支部とか言ってなかったか…?)

 

 

数ヶ月───

 

 

日本支部───

 

 

もしも工場があるのなら国指定ではなく▽▽株式会社○○工場と、その市町村名を指定するはずだ。

それをせずにただ日本という国を指しているという事は…

 

(別の国にも支部があるって事か…)

 

それと機械加工された声の主は「数ヶ月前に」とも言っていた。

数ヶ月前に建設された工場はあそこしかない。

 

ラジネスカンパニー日本支部───

 

(どんな嫌がらせだよ…!!!!)

 

そしてスマホを起動し、メールのアイコンに【1】が表示されていた。

開いて中を確認する。

 

To.龍護君

from.優しき紳士

解除コード

【gukde2257】

起動コード

【bdkwy7831】

 

恐らく何かしらの罠が姉の近くに設置されているんだろう。

龍護は急がないとと思い、ラジネスカンパニー日本支部に走り出した。




そろそろ書き溜めも頑張って増やさないと…

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