公式ではマグラーのようですが昔持ってた講談社のワールドスタンプブック「怪獣の世界」ではマグラでした

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ゴブリンスレイヤー対地底怪獣

その日、ゴブリンスレイヤーは下宿(?)先の牧場から野原を二つ山三つ谷を四つ越えたところにあるとある集落の依頼を受け、集落の近くに出来たゴブリンの巣の掃討に出張して来ていた。

いつものように入念な下準備の末にゴブリンの巣穴を襲撃し、いつものように一片の容赦もなくゴブリンを殺し尽くしたゴブリン絶対殺すマンは、いつものように偏執的な用心深さで殺り漏らしがいたら地獄の入国審査官が職場放棄するくらいの丁寧さでトドメをくれてやろうと探索を続けていた。

中途半端な長さの剣を右手に、松明を左手に持ち、たっぷりと返り血を浴びた兜&革鎧というゴブリンスレイヤーの出で立ちで洞窟内を徘徊するその姿は、サンフランシスコの路地裏でいつも太陽を眺めているように目を細めた刑事(コップ)と遭遇したら、問答無用で44マグナムをぶっ放されること間違いなしである。

そしてゴブリンスレイヤーが巣穴の最奥部にたどり着いた時、練達のゴブリン殺しの目は突き当たりの壁に巧妙に偽装された入口を見破った。

ゴブリンスレイヤーは決断的に入口を蹴り崩して隠し部屋に踏み込む。

ゴブリンの子供でも隠れているかと思ったら、そこには妖精のミイラや呪いの干し首や猿の手といったゴブリンスレイヤー的にはみな平等に価値が無いガラクタが置かれているだけだった。

「無駄足だったか」

ゴブリンスレイヤーが立ち去りかけたその時である。

無造作に床の上に転がっていた黒水晶めいた輝きを放つ漬け物石ほどのサイズの石が、ストロボめいた青白色の閃光を放ちながらガタゴトと動き出したのだ。

「むう」

一声唸って剣を構えるゴブリンスレイヤー。

やがて摩訶不思議な光る石は、バリバリと内側から砕かれていった。

それは石ではなく卵だったのだ。

石の卵から出てきたのは、石炭から削り出したように黒くてゴツゴツした皮膚と太短い四肢と長い尻尾を持つ地底怪獣だった。

豆柴ほどのサイズの地底怪獣は後ろ足で立ち上がると豆電球めいた黄燈色に輝く目玉をゴブリンスレイヤーに向ける。

「ぬう?」

一声唸って剣を振りかぶるゴブリンスレイヤー

そして地底怪獣は抱っこをねだる幼児めいた仕草で前足を掲げ、立派な牙が生え揃った口を開けて「ばおっ!」と鳴いた。

「なん…だと…?」

 

その日、牛飼娘は喜びに胸を膨らませていた。

物理的にも人並み以上に膨らんでいるが。

いつものように遠方の村の依頼を受けてゴブリン退治に出かけていた“彼”が、ほぼ一月

振りに帰ってくるのだ。

“彼”が寝起きする小屋を目指して駆ける牛飼娘は期待に胸を弾ませていた。

物理的にもクーパー靱帯のHPが心配になるくらい“バルンバルン”していたが。

「おかえり!」

扉を開けたらまっくろくろすけだった。

もとい、石炭から削り出したように黒くてゴツゴツした皮膚と太短い四肢と長い尻尾を持つ地底怪獣が後ろ足で直立していた。

「……………」

無言で対峙する一人と一体。

くわっ!

唐突に口を開いた地底怪獣が、ピンク色の舌を伸ばして牛飼娘の顔をベロンと舐めた。

ピキキッ!

牛飼い娘の両眼が限界まで見開かれ、口の両端が耳元まで吊り上がる。

引き攣った笑みを浮かべて、牛飼娘は卒倒した。

 

陽射しは優しく、風は暖かかった。

ゴブリンスレイヤーと牛飼娘は並んで牧場の柵に寄りかかっていた。

男が無愛想過ぎる点に目を瞑れば、お似合いのカップルに見えなくも無い。

そして柵の横木に乗っかった牛飼娘の乳はシャツから溢れそうだ(しかしこの娘のシャツはなぜ一部で人気なバイエルン地方の女給さんの服みたいに胸元がガバガバなのだろう?)。

二人の視線の先では地底怪獣がおそロシアyoutuberが投稿したヒグマの子供のように、日溜まりの中を転げ回ったり羽虫を追いかけたりしている。

「で、何なの“アレ”は?」

「知らん」

何度追い払ってもすぐ戻ってくるし、何処で何を食べているのか知らないがいつの間にかああなっていたと語るゴブリンスレイヤー。

生まれたての頃は子犬サイズだった地底怪獣は、今ではニホンツキノワグマの成獣とほぼ同等の大きさになっている。

「どうしたものか…」

常に決断的かつ独善的なゴブリンスレイヤーにしては珍しく歯切れが悪い。

リソースの90%以上をゴブリン殺しに割り振っているゴブスレ脳細胞には、こういった事態への対処法はインプットされていないのだ。

「飼えばいいんじゃないかな?」

事も無げにそう言った牛飼娘を、ゴブリンスレイヤーは凝視した。

一介の農家の娘が銀等級の冒険者を唖然とさせることに成功した歴史的瞬間である。

「冗談はよせ」

「真面目な話なんだけど?」

実際おふざけではない。

ペットを飼うことでゴブリン殺しに取り憑かれた男に少しでも人間味が戻ればという、幼馴染みの健気な想いである。

地底怪獣というところがちょっとアレだが。

ゴブリンスレイヤーは言った。

「危険だ」

牛飼娘は答えた。

「私は何ともなかったわよ」

実際舐められて気絶したが全くの無傷である。

ゴブリンスレイヤーはなおも言った

「家畜が襲われるかもしれない」

そんなゴブリンスレイヤーと牛飼娘の目の前で、地底怪獣と牧場一気性の荒い牡牛が相撲を始めた。

地底怪獣の小手投げが決まった。

地底怪獣と牡牛は互いの健闘を讃え、熱いハグを交わした。

牛飼娘がゴブリンスレイヤーに顔を向けた。

勝ち誇った笑みだった。

「ぐぬぬ…」

ゴブリンスレイヤーは言葉にならない呻き声を発した。

降参の証だった。

「そうと決まったら名前を考えないと」

「クロにしよう」

この間ジャスト二秒。

ゴブリンスレイヤー、直球過ぎる男である。

 

その日、いつものようにゴブリンスレイヤーは地底怪獣を伴って冒険者ギルドに現れた。

最初こそ驚かれたものの、変わり者が変わった生き物を連れてきても大した問題では無いということなのか、今ではすっかり日常の光景として常連達に受け入れられている。

「いらっしゃい、ゴブリンスレイヤーさん!」

いつものように満面の笑みで出迎える受付嬢。

「ゴブリンだ」

いつものように1ミリもぶれないゴブリンスレイヤー。

「クロちゃんもいらっしゃい!」

ゴブリンスレイヤーとの触れ合いタイムを少しでも長引かせようと、全身マックロケの“相棒”にも笑顔を向ける。

地底怪獣は後ろ足で直立し、カウンターに両前足を乗せて「ばおっ!」と鳴いた。

「あら、こんにち、は」

そして色っぽく腰を振りながら歩いてきてゴブリンスレイヤーの隣に並び、色っぽくカウンターに肘をついて挨拶した魔女は、いつものように胸元と背中が大きく開いた扇情的なドレスにゆったりとした造りでありながら淫靡な曲線で構成された尻の形がくっきりと浮き出るスカートという出で立ちで、いつものように歩く18禁めいていた。

だがいつもと違い、槍使いが一緒ではない。

「奴はまだ?」

「ええ、困った、もの」

ゴブリンスレイヤーの問いかけに、魔女は色っぽく肩を竦めて色っぽく溜息をつく。

その一挙手一投足がいちいちエロい。

それはゴブリンスレイヤーが初めて地底怪獣を連れ冒険者ギルドに現れた時の出来事だった。

魔女に引き合わされた地底怪獣は、腰までスリットの入ったスカートから覗く脂の乗ったフトモモをいきなりペロリと舐めた。

激怒した槍使いの手練の一撃はだがしかし、地底怪獣の身体に傷ひとつつけられなかった。そればかりか、自慢の槍の穂先がパキンと欠けてしまったのだ。

その日以来、槍使いの姿を見た者はいない。

噂では怪獣退治の必殺技を編み出すべく、右足の不自由な“隊長”とともに特訓の日々を送っているとかいないとか。

そしてその一件以来、「俺たちがやりたくても出来ないことを平然とやってのける!」と一部の冒険者の間で地底怪獣が英雄視されているとかいないとか。

「色々とすまん」

色々と歪んではいるが根は善良なゴブリンスレイヤーは素直に頭を下げた。

「いい、のよ」

色っぽくトンガリ帽子の角度をクイッと直し、色っぽいウインクをひとつ。

腕を上げた拍子に胸部に装備された奇跡の膨らみが、その質量と弾力を誇示するかのごとく“たゆん”と波打つ。

このエロさに対抗出来るのは伝説のビキニ鎧を装備した剣の乙女くらいではなかろうか。

「帰ってきたら、彼、きっと一皮剥けてる、わ」

その科白を聞いて思わず顔を赤らめる受付嬢。

本人にその意図が微塵も無くとも、口から出る言葉のことごとくに性的な意味合いを勘繰られてしまう魔女であった。

「そうか」

そして額面通りに受け取るミスター朴念仁。

その時である。

「きゃぁあああああああああああぁっ!」

可愛らしい悲鳴が上がった。

ゴブリンスレイヤー、魔女、受付嬢が絶妙にシンクロした動きで視線を巡らせた先では、地底怪獣が原作のメインヒロイン(だよね?)である女神官を押し倒し、股の間に頭を突っ込んで15才の瑞々しいフトモモを一心不乱にペロペロしている。

「あらあら、また、やってるわ、ね」

ゴブリンスレイヤーは盛大に溜息をついた。

「こいつ、なんてうらやましい…じゃなくてけしからん!」

青年剣士が女神官から地底怪獣を引き離そうとするがビクともしない。

「キャオラッ!」

女武闘家の必殺の前蹴りも地底怪獣には全くのノーダメージ。

女武闘家の方が箪笥のカドに小指をぶつけたような痛みに悶絶している。

「ここは私が!」

女魔法使いが地底怪獣に杖を向ける。

「待て」

ゴブリンスレイヤーが女魔法使いを押しのけた。

「頼む」

そして呼ばれた魔女が色っぽく歩いてくる。

宝具級の谷間に視線を吸い寄せられ、棒立ちになった―性的な意味でも―青年剣士のレバーに女武闘家怒りの地獄突きが決まる。

「オゴーッ!」

床を転げ回る青年剣士を無視して魔女が呪文を唱える。

「やっ、ちょっと…あっ、ひう……はうン♡」

その間にも女神官の漏らす声がドンドン艶を帯びてくる。

見れば地底怪獣のペロペロがじりじりとフトモモの付け根へと移動しているではないか。

おい馬鹿やめろそこから先は成人指定だ。

PAM!

魔女の呪文が完成し、地底怪獣の鼻先で光球が破裂すると石炭から削り出したように黒くてゴツゴツした獣はその場にひっくり返り、致死量のキンチョールを浴びた頭文字Gめいた動きで四肢をジタバタさせる。

この地底怪獣、打撃には強いが大きな音と閃光が苦手のようだ。

 

「反省!」

地底怪獣が落ち着いたところでゴブリンスレイヤーが号令をかけると、石炭から削り出したように黒くてゴツゴツした獣はAAに描いたようなorzの姿勢を取った。

そしてゴブリンスレイヤーは新米冒険者一同に向き直る。

「連れが迷惑をかけた」

深々と頭を下げる。

もう一度言おう、見た目は呪われた鎧めいているが、ゴブリンスレイヤーは根は善人なのだ。

「え゛ッ!?!」

そして一様に驚く新米冒険者四人組。

「相棒だ」

ゴブリンスレイヤーが頭をポンと叩く。

地底怪獣は「ばおっ!」と鳴いた。

実際洞窟を住処とするゴブリンに対し、地中を自在に移動する―なぜ地上を走るより地中を掘り進む方が速いのかは考えるだけ無駄である(彼は“地底怪獣”なのだ!)―うえにゴブリンが仕掛けるトラップ程度なら常識を無視したパワーとタフネスにものを言わせて強引に突破してしまう、そのうえゴブリンスレイヤーの無茶な命令に愚痴ひとつ零さずに従う地底怪獣は支援要員兼肉盾として望みうる最高のパートナーであり、ゴブリンスレイヤーの労力はソロプレイをしていた頃に比べて大幅に軽減されていた。

そして一件当たりの労力が減れば回転率も上がる。

そんな訳で、この日ゴブリンスレイヤーが冒険者組合を訪れた時間も原作より四時間ほど早かったのである。

「本当に申し訳ない」

再度頭を下げる。

しつこいようだが見た目に反して善人なのだ。

「い、いえ。どうかお気になさらず!」

体重に占める水分のパーセンテージと同じくらいの優しさで出来ている女神官が張り合うように頭を下げる。

「そうか、ではこれで」

クルリと背中を向けるゴブリンスレイヤー。

「ちょっと待ちなさい」

体はいいが性格が悪い女魔法使いが「謝っただけで済むと思ってんの?バカなの?」といった具合に呼び止める。

せっかく魔女には及ばないがなかなかのモノを胸にくっつけているのに。

「女の子に恥かかせといてご免の一言で終わり?」

比較的常識人だがこういった場面ではどうしても“悪い男に泣かされる女”という構図で見てしまう女武闘家も険しい顔をする。

せっかくぴっちりしたスパッツを履けばドンブリ飯三杯はいけそうな腰つきをしているのに。

女神官は………うん、可憐だ。

実際女神官はフトモモを舐められただけという認識だが、青年剣士と女武闘家と女魔法使いは乱れたスカートの奥のシークレットゾーンをしっかり目撃していた。

つまりその場に居合わせたその他大勢にもバッチリ見られているのだ。

これは女さん的には加害者は被害者に1000年謝罪と賠償し続けなければ許されない案件である。

結論:女はコワイ。

「ま、まあ向こうさんも悪かったって言ってんだし」

内心眼福と思っている青年剣士がゴブリンスレイヤーを擁護する。

「アンタは黙ってて!」

「そうよ引っ込んでなさい!」

「お、おう…」

もう一度言おう、女はコワイ。

「どうしろというのだ」

女神官が謝罪を受け入れた時点で決着がついた話だと認識しているゴブリンスレイヤーは欠片も悪びれない。

「貴方ねえ…」

女魔法使いがキレそうになったその時である。

「私にいい考えがあります」

受付嬢。が割って入った。

「貴女たちのパーティーに」

新米冒険者一同の方を向き。

「ヘルプとしてゴブリンスレイヤーさんに加わってもらいましょう」

ゴブリンスレイヤーを指し示した。

「なんでこんなのを!」

即座に意義申し立てする、乳はgoodだが性格がbadな女魔法使い。

「銀等級ですよ?」

「え゛ッ!?!」

再び驚く新米冒険者一同。

まあ素人目には安っぽい装備の小汚い男にしか見えないし仕方ないね。

「頼りになりますよゴブリンスレイヤーさんは」

受付嬢渾身の全力ヨイショである。

女魔法使いが言った。

「この小汚いのが?」

女武闘家が言った。

「この安っぽいのが?」

ここで女神官までゴブリンスレイヤーを見下す発言をしていたら、顔に営業スマイルを貼り付けた受付嬢が角に血の染み込んだ会計簿を持ち出していたところだが、女神官は賢明にもコメントを避けた。

「なんでそうなる?」

流石にゴブリンスレイヤーも異議申し立てをする。

「今日はゴブリン退治の依頼は一件しかなくて、それを受けたのがこの人たちなんです」

笑顔で切り返す受付嬢。。

「そうか、分かった」

あっさり納得する我らがゴブリンスレイヤー。

「え゛ッ!?!」

三度驚く新米冒険者一同。

「よし、出かけよう」

そうと決まれば一分一秒たりとも無駄にしないゴブリンスレイヤー。

地底怪獣が後に続いた。

 

そして一同はゴブリンの巣穴の前に辿り着く。

規律の緩い集団らしく見張りは居ない。

原作通り正面から押し込もうと主張する青年剣士の隣でベトコンのトンネル陣地を攻略するGIのように淡々と火攻めの用意をするゴブリンスレイヤー。

「何やってるのよ!」

そのの後頭部に女武闘家の踵落としが決まった。

「痛いじゃないか」

「貴方正気なの!?中には捕まってる女の子たちが居るのよ!」

「巣穴の奥まで焼くわけじゃない、それにまだ生き残ってるかどうかは分からん」

「駄目なものはダメ!」

非情なまでに合理的かつ論理的なゴブリンスレイヤーの主張と女さんの感情論はどこまでいっても平行線である。

受付嬢が太鼓判を捺したにもかかわらず、新米冒険者御一行様はゴブリンスレイヤーの実力を大いに疑問視していた。

特に女魔法使い。

まあ第一印象が小汚くて安っぽい淫獣使いだからね、仕方ないね。

ゴブリンスレイヤーは一同を見回した。

女魔法使いはブーツにこびり付いた犬の糞を見るような目付きでゴブリンスレイヤーを睨んでいる。

女武闘家は女魔法使いよりはマシとはいえ、やはりその表情は厳しい。

青年剣士は女武闘家が強く出ると押し切られてしまう。

女神官は基本中立だが、この件でゴブリンスレイヤーを擁護するつもりは無さそうだ。

地底怪獣は一体どこで捕まえてくるのか、いつの間にかゲットしたエビの味がするダックスフンドサイズの古代怪獣を踊り食いしている。

さてどうするか。

リソースの90%以上をゴブリン退治に当てているゴブスレ脳細胞が高速状況判断。

結論:言い争っても始まらない、そんなことよりゴブリンだ。

「行くぞ」

ゴブリンスレイヤーは巣穴に踏み込んだ。

地底怪獣が後に続いた。

 

「テメエなんざ怖かねえ!野郎ブッ殺してやる!」

「杖が!杖があぁっ!」

「地母神よ地母神よ地母神よ!」

「キャオラキャオラキャオラッ!」

「うるさいよ」

突入12分後、ゴブリンスレイヤーと新米冒険者御一行様はゴブリンの巣穴の中で大立ち回りを演じていた。

まず原作通りに横穴から出てきたゴブリンの伏兵を、あっさり見破って待ち伏せていたゴブリンスレイヤーが叩き切った。

そこで血を見てパニクった女魔法使いがド派手な呪文をぶっ放したため―地底怪獣がショックで仮死状態に陥ったがゴブリンスレイヤーが蹴りを入れて再起動させた―巣穴の奥で拉致した女達をナニしていた連中がおっとり刀で押し出して来たのだ。

豊満でクソ生意気でやかましい女魔法使いは最初の大技で魔力空っぽになったうえ杖を折られ、豊満でやかましいだけの女になっている。

女神官は洞窟の隅で座り込んでガタガタ震えながらお祈りしている。

女武闘家と青年剣士はなんとか戦えているが、やはり初のクエストで力みがあるのか動きがぎこちない。

そしてゴブリンスレイヤーは女魔法使いと女神官のお守りを地底怪獣に任せ、流れ作業めいた手際の良さでサクサクとゴブリンを屠っていく。

そんなゴブリンスレイヤーの英国海兵隊軍旗護衛曹長のごとき落ち着きと自信に満ちた戦い振りを見て、青年剣士と女武闘家も混乱から立ち直る。

そうなると新米とはいえそれなりに地力はあるので戦いは一方的な展開になってくる。

「ヒャッハー、皆殺しだぁ!」

案の定調子に乗ってひとり突出する青年剣士。

「うわわ!?」

そして剣が天井に刺さって抜けなくなる。

「ぐわあぁっ!」

あっという間に囲まれて棍棒でタコ殴りにされる青年剣士。

ゴブリンスレイヤーが地底怪獣に声をかけた。

「やれ」

「ばおっ!」

ガボボボボッ!

地底怪獣の口からアニメ合成めいたオレンジ色の光線が迸った。

この地底怪獣、見た目はマグラだが実はバラゴンの能力も備えていたのだ(スーツ使い回しだし)。

「GAAAAAAAAA!!」

光線が命中したゴブリンはよく乾いた薪のように景気よく燃え上がった。

「あぎゃあああああああっ!」

よく燃え過ぎて青年剣士にも延焼してしまったが、自分で転げ回って消火できたから大したことはないだろう。

そうして主に高度な柔軟性を発揮して臨機応変に戦ったゴブリンスレイヤーの活躍でゴブリンの群れを一掃し終わったとき、洞窟の奥からドスンドスンという重々しい足音が聞こえてきた。

やがて身構える一同の前に足音の主が姿を現わす。

「アイエッ!?」

女武闘家は奇声をあげた。

「ウソ……」

女魔法使いはへたり込んだ。

「地母s……」

女神官は失禁!

「アツウイアツウイ!」

青年剣士はまだ燻っている。

そしてゴブリンスレイヤーは呟いた。

「上位種…いや、変異種か?」

猫背になっても天井につかえそうな巨体。

髑髏めいた顔はゴブリンの特徴を残しているが、首から下は逞しい胴体も逞しい両腕も逞しい両足も逞しい尻尾もトウモロコシめいた硬い皮膚に覆われている。

小鬼赤王(レッドキング)はコキコキと首を鳴らし、両腕を振り回して咆吼した。

ゴブリンスレイヤーは後ろを見た。

そこに石炭から削り出したように黒くてゴツゴツした相棒の姿は無く、代わりに出来たばかりの穴が一つ。

ゴブリンスレイヤーは呟いた。

「ファック」

 



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