次にたどり着いた世界は、眼下に広がる大きな町の一角。
丁度出た先が雨降りだったのか、二人は近くに変なスイッチがないか探してみることにした。少し先のほうでスイッチを発見したノクトがそれ目がけて一気に走り素早くそのスイッチを踏む。すると天気が一変。雨から晴れへと変化した。しかしすぐに服が乾かず、レティは気持ち悪そうに顔を歪めた。ノクトはレティに少し休む?と尋ねたがレティは首を振って行こうと珍しくノクトを促した。
理由はあるらしい。
ナイトメア探すとのこと。
花火を使ってストレス発散したいらしい。
だがノクトは待て待てと妹の憂さ晴らしを止めにかかった。それは危ないからと。
でも危ないと言われてレティが納得するわけでもない。なら花火に代わる何か欲しいとノクトに訴えた。ノクトは妹の無茶ぶりに困った顔をしたが、運よくまたスイッチを見つけたのでそれを踏んでみる。
ボフン!
するとそこに鋭い牙を持ったモンスターが現れた!
咄嗟にレティを庇うノクトだったが、そのレティ本人がいつの間にかノクトをすり抜けてモンスターに近づくではないか。ぎょっとして「レティ危ない!」と叫び腕を伸ばして駆けるノクト。だがレティがモンスターに腕を伸ばし触れるほうが早かった。
「ワニだ!ワニさんだ」
硬い鱗に触れてワニと意思疎通をこなすレティにノクトは驚愕してしまった。なんとレティはモンスターと触れ合うどころか、仲良さげにレティを背中に乗せて歩いて行ってしまうではないか!ドシドシっと。
ノクトはしばし固まっていたが我に返り慌てて、レティの後を追った。
ドシドシと町中を闊歩するワニに跨ってどこか得意げな顔をするレティ。その横を出来るだけ近づかないように歩くノクト。
「ノクトも乗る?」
「…僕はいい。だって痛そうだし」
「意外とそうでもないよ、ワニさんの背中」
「違うと思うよ、そのワニっていうの」
「ワニなの」
「ち」「ワ・ニ」
「…………」
「ワニワニワニ♪」
ノクトはレティに根負けした。だが絶対にワニじゃない。
けど仕方ないとノクトはため息をついた。
レティは学校に通っていないし知識は家庭教師から教わるモノだけ。ノクトが帰ってきたときにレティの姿が自室にいないときは書物室に篭っていると知っている。そこで馬鹿みたいに本をあさりまくっているのだ。一心不乱とでも言えるだろうか。
まるで、すぐにでも知識が必要だと言わんばかりに。時々、その行動がノクトには不安げに見えてしまう。
レティが、どこかへ消えてしまうのではないかという焦りのようなものを感じてしまって仕方ない。そんな時はレティをぎゅっと抱きしめてその不安が消えるまで待つ。しばらくレティの体温を感じているとああ、思い違いなんだって思えるほどノクトはレティに依存している。その存在を拠り所として安心できるものと信じ切っている。
食事時も、レギスとノクトの会話にレティはかならず口を挟まない。ノクトがレティに相槌を求めると頷いてくれるし話もする。だがレギスとの会話はどこか冷たい印象があり、それは、あの、レティが泣かなくなった日と関係があるはずとノクトは考えている。勿論、レティに問い詰めもした。なぜ父上と話さないのかと。
その問いにレティは、大きくなればわかる。とだけしか答えようとしなかった。
レギスとノクト。
レギスとレティ。
二人の共通点は家族、なはずなのに、まるで家族ではなく他人のような関係に違和感を拭いきれない。
そのレティと言えば……。
ナイトメアの集団を見た途端、レティは目の色変えて、ワニにこう命令をした。
「突っ込め!」
ワニはギラリンと目を怪しく光らせてレティの言葉通り、ナイトメアたちに突っ込んでいき巨大な爪で遠慮なしに引き裂いた。ナイトメアたちはあっという間にワニさんに倒された。レティは良い子良い子とワニさんを褒めてグルルと嬉しそうな唸り声をあげた。
しばらく歩いてレティはワニさんに手を振って別れた。
次も同じ。またスイッチを踏んだら今度は。
「キリンさんだーおっきいな~」
「違うと、思う」
「キ・リ・ン」
「はいはい」
レティはそのキリンさんとやらに懐かれまくってじゃれている。上手く角に捕まって背中に乗せられ、ノクトもおいでよ!と誘われ好奇心からそのキリンさんの背中に共に乗った。
結局ノクトはレティに甘いのだ。キリンじゃないはずのモンスターもレティにかかればキリンになってしまうのだから。
次なるナイトメアの集団もキリンさんの立派な角によって見事倒された。
レティとノクトはキリンさんに手を振って別れた。
その次もまた同じ。
定番のスイッチを踏むと、なんと!
今度は。
「ゾウさんだー!!」
「……もうなんでもいいよ」
レティがモンスターにものすごく好かれるという体質なのは十分理解できたノクト。きっと名前は違うがレティ曰くゾウさんがナイトメア集団をお空の彼方に吹っ飛ばして戦闘はあえなく終了。ノクトは一切戦闘に参加せずにすんだのだが、どうにももやっと感じてしまったのは仕方ないといえよう。カーバンクルと合流した二人はゾウさんとお別れを済ませ、カーバンクルが教えてくれた長い長い廊下を探すために町の中を散策した。
そこであるドアの前でノクトが気づきレティを呼び止めた。
「ここだよ」
「ほんとだ、廊下長いね」
「入るよ」
「うん」
カーバンクルを肩に乗せたノクトが先頭を歩き、後ろからノクトに手を引かれてレティが花火握りしめて歩く。
金色の輪が次なる世界の扉を開いた。