プロンプトside
残された者に託されたものって何なのかな。
オレは彼女がいなくなった後でも正直、わかってない。ただやらなきゃって想いだけで必死にやってきた感じだ。
オレさ、もう少し落ち着いたら旅に出ようって考えてるんだ。
ほら、オレって写真撮るの好きじゃない?なんだか世界が平和になったって考えたら体がウズウズしちゃってさ。色んな場所へ行ってカメラに収めたいって衝動が沸いちゃって……。モンスターは相変わらずいるけど、夜になるとシガイが出ることも無くなったから比較的安全になったよ。外は。
ノクトには言ってあるんだ。そしたらいつでも行って来いって背中押されてる。
ちょっと予想外。もっと働けとか言われるかと思ってた。
ああ、それと報告。父さんと母さん、無事だったよ。間一髪逃げることができたんだって。
再会した時なんてもう大変だった。
お互い号泣してさ、恥ずかしかったよ。
……色々と訳ありだったオレを、大切な息子だって涙浮かべて抱きしめてくれた、迎えてくれた。今まで傍にいられなくてごめんって。今までのこと、全部教えてほしいって。
オレ達、時間をかけてようやく【家族】になれた。
長かったけど、本当に良かった。これで心置きなく行けるなってノクトに言われたけど、まだ駄目なんだ。どうしても後ろ髪を引かれてここから出れずにいる。
君が、オレがいない間に目が覚めたらって思うと居ても立っても居られなくて。
……なんか、オレ全然変わってないなぁ。まだあれから二年しか経ってないなんて信じられないよ。
姫が、レティが眠ってから世界は目まぐるしく変わっていったってのに。
王都だって、無事に元の姿を取り戻してきているのに。君はオレ達の前からいなくなった。いや、いなくなったって言葉は違うのか。
レティーシア・ルシス・チェラムという王女様は死んだんだ。
この世にもう存在していない。その方が良いってノクトは言うんだ。オレもそう思うよ。彼女はもう静かに眠らせてあげるべきなんだ。
運命に翻弄され続けた彼女の人生でもっとも輝いた瞬間は、きっと最後の瞬間だったはず。レティは最後までノクトの為に行動してた。
ただノクトの為。ノクトが王となる為に必要なことをした。おとぎ話に悪い魔女はつきものでその末路は悲しいものばかり。けど、逆に言うなら悪い魔女がいるから王子が輝ける。お姫様がいるから王子は活躍できる。お姫様を助けるのは王子の役目で、悪い魔女を助ける王子なんていない。
レティは、悪い魔女になることで、王子とお姫様を目立たせて世界の光とさせた。
世界が光という希望を見られるように。
ノクトの為、ノクトの為って言ってた割にはちゃんと皆のこと考えてるんだよ。本当に、不器用すぎだよ。
でもさ、一つだけ読み間違い、あったよ。
レティはノクトとルナフレーナ様が一緒になることを予想してたけど、二人ともそんなつもりないってさ。だって未だに、ノクトは独身。ルナフレーナ様の方は分からないけど、今はテネブラエの為に尽力したいらしい。
世界から七神は消えた。召喚獣っていう存在そのものがいなくなった。元々いた所に還るんだってさ。そこは、生身で行けるところじゃない。けど、人は最終的に還る場所みたい。ちょっとその辺は曖昧だからはっきりと言えないんだけどさ。
だからこの世界は、完全に人の力だけで守って行かなきゃならない。誰かの守護を受けるんじゃなくて自分たちの力で全てを守る。
オレ達は、馬鹿だからきっとまた争いを繰り返す。それは人でいる以上仕方ないってあきらめがつくかもしれない。でも、さ。
レティが、身を挺して守ったこの世界を、オレは守りたい。
オレにできることなんて、たかが知れてる。弱っちいオレに出来ることは少ない。でも世界の現状を写真に収めて世界に発信することはできるよ。
自分たちの知らないこと、教えるきっかけになると思うんだ。
もうすぐ、レティの命日。
ルシスの民はレティの訃報を知らない。だから極関係者だけの集まりになる。
もう、区切りにすべきなのかなぁ……。
オレは、レティに恋した期間も短いし片想い歴も日が浅い。ノクトやイグニスみたいにずっと想い続ける、なんてこと苦しすぎるよね。
諦めようと、何度も考えた。分不相応な恋だって。
オレみたいな奴が好きになっていい人じゃない。彼女にもっと釣り合う人物こそが相応しいってさ。自分の気持ち押し殺して、笑顔でいれば皆幸せになる。
けど、君が目の前からいなくなって初めて気が付いた。
君を思い出さない日はないって。
レティ、最後まで【好き】だって言わせてくれなかったよね。
それって迷惑だった?オレからの好意に気づいてたくせにさ、卑怯だよ。
友達以上親友未満って君ならいいそうだ。
もし、未来を変える力がオレにあるなら、君を止めたいって心底願うよ。
サンダーを容赦なく落とされても、情けなく引っ付いてでも止めてやる覚悟はある。
たとえ、君が手が届かない存在だったとしてもオレは実行してた。でも君はきっとそんなこと許してくれないはずだ。だって、どっちにしろ君はノクトが縋って頼んだとしてもやってたはずだから。
「…レティ…」
君とお揃いの星型のストラップ、まだ未練がましく付けてるよ。
何度も捨てようとした。これを見るたびに君を思い出して辛かったからさ。
それでも捨てられなかった。これも君との数少ない思い出の品だから。
とにかく、皆と顔を合わす日を無事に過ごそう。
そして、…それから先のことを考えて答えを出そう。
【きっと、進むことは必要だから】