レグルスの子供たち   作:サボテンダーイオウ

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迂直之計~うちょくのけい~

ゲンティアナの導きによれば、レティを助け出すには七神、召喚獣の助けが必要らしい。今、レティの元にはバハムートを筆頭にイフリート、シヴァ、タイタン、オーディーンが集結している。そこに雷神ラムウと水神リヴァイアサンの助力を得ることが必衰。レティが囚われの今、ノクト自らがラムウの元へ赴きその助力を得る為に力を示す必要がある。本来、レティであればその試練も皆無なのだが代理人としてノクトが赴くならば話は違ってくるというのだ。雷神からの試練に合格すればそれなりに相応しい力があるとみなされ、ノクトの訴えも聞き入れるとのこと。

僅かながらやることが見えた。

 

まずは、ゲンティアナの言う通り、ラムウへ会いに行く。協力を得られたのち、オルティシエに向かいルナフレーナから光耀の指輪を受け取りに行く。その後、水神リヴァイアサンの助力を得る。

やることがはっきりした今、すぐにでも発ちたいところだったがイグニスは「しっかりと準備をしてからでも遅くはない」と焦るノクトに諭すように言うと、ノクトはしばし迷ったが、「そうだな、悪りぃ。ちょっと焦った」と苦笑して謝った。イグニスやいいやと頭を振って「………いつものノクトに戻ったな」と少し嬉しそうに言った。

 

多少、すれ違っていた仲間内で結束力が強まる中、イグニスの通りしっかりとアイテム補充や武器の装備見直しなどをした上でノクト達はチョコボに跨り、目的地を目指すことにした。出発する前ゲートを封鎖されたことによりチョコボポスト付近には行く手を阻まれたドライバーの姿や観光客の姿などが目立っていて、ふと耳にした会話では、女性の何気ない一言が胸に突き刺さった。

 

『早く王都人が捕まってほしいわぁ』

 

ノクトは、無意識に手綱を強く握りしめていた。

所詮、他人事の単なる愚痴で何も怒ることはない。

だがお前らに何が分かる!と怒鳴りたくなる。

追われる者の孤独と辛さを、国を奪われ、大切な人の命を奪われただけではなく、守ると決めた人に庇われ置いていかれた虚しさ、苦しさ悲しさ。

幸い、ノクトの中で王になる理由の位置づけは既に決まっている。だから使命に押しつぶされる、なんてことはなかった。

 

だがレティの話は別枠だ。

出来るだけ考えないように考えないようにしているというのに、無神経な言葉に無性に怒鳴りつけたくなる想いを堪えて堪えて、ただレティを救うために前だけを見つめるんだと自分に強く言い聞かせる。

 

そう、全部レティの為に。

今までノクトの為に心砕いてきてくれたレティ。

身を挺して庇ってくれた彼女の行為を無駄にしない為にも、とにかく今は力をつけることだけを考える。レティの無事を信じて。

 

表情には決して出さず黙って真正面を向き目的地に着くことだけを考えた。

 

ゲンティアナが示す先に天と地を結ぶ強き光があるという。

それは灰色の空から絶え間なく落ち続ける雷の印でそれこそが雷神がいる場所らしい。

まるでノクト達を待っているかのように、激しい雨はずっと周辺に振り続けノクト達は濡れ鼠になりながらチョコボを走らせた。距離で言えば一キロぐらいだろうか。

いつもよりも仲間内で漂う雰囲気は重苦しいもので誰一人として声を発することはなかった。

 

そこへ向かう途中、四度にわたり帝国兵からの襲撃を受けたり待ち構えている魔道兵らを無言で倒しまくる四人に出くわした不運な一般人はさぞ肝を冷やしたことだろう。なぜなら帝国軍を問答無用で倒しまくって無残な残骸を残したままチョコボで風のように去るという荒業など早々見かけたものではないからだ。ノクト達とて一般車を巻き込まないように気を遣ってはいたが、昼間だということもあって交通量も多く自然と人の目を引くことは仕方なかった。森深くチョコボを歩かせて目的の場所にたどり着いたノクト達はそこでチョコボから降りて、雷のような形をした石碑を発見した。

 

「……これがゲンティアナが言ってた印?」

「ノクト、触れてみてはどうだ」

 

イグニスからの提案にノクトは頷いて恐る恐る手を伸ばした。

すると石碑から迸るピンク色の稲妻がノクトに向かって広がっていき、それが激しさを増していくと脳裏にゲンティアナの言葉が響き渡ると当時に過去の記憶がフラッシュバックする。

 

 

それは、12年前のこと。襲撃事件により母を失ったノクトの傷と心の傷を癒すためレギスと共にまだ帝国領になる前のテネブラエでノクトはゲンティアナと出会った。

ふと、眠っていたノクトが目を覚ますと、目の前の大きな窓の手前に置かれた椅子に座っている謎の女性に驚いて声を上げた。

 

『えっ』

『こんにちは。怪我の具合はいかが』

 

驚くノクトに優しくいたわりの言葉を掛けた女性は椅子から立ち上がった。ノクトは戸惑いながら「誰?」と問いかける。

 

『ゲンティアナ、七神の遣い。ルナフレーナから聞いていない?』

『………?』

 

ノクトは最初ピンと来なかったようだが、自分の膝に置いてある絵本を見下ろしてハッと気づき両手で本を持ちあげてゲンティアナに見せた。

 

『これだ!で、でもよく知らない。ちょっと聞いただけ、ルーナに』

 

ルーナは六神とノクトに教えたがゲンティアナは七神の遣いと名乗った。ノクトは自分の聞き間違いだとあえて問い直すことはしなかった。

 

『ルナフレーナに』

『そう!ルラ―――』

 

上手くルナフレーナと発音できなくて恥ずかしさのあまり本で口元を隠すノクト。ゲンティアナは微笑ましいものをみるように微笑んだ。

 

『仲がいいのは良いこと。神薙と王は常に共にあるべき二人。この世界を守るという使命の為に……』

『しめ、い?』

 

当時のノクトには理解することは難しかった。ゲンティアナがいう使命というものを。

特に印象に残っているのは、ゲンティアナが吐露するように呟いた言葉。窓枠の外を見つめながら、彼女は言った。

 

『そう。………あの子を彼の地へと導くために。お前達は【必ず】為さなければならないのだから』

 

彼の地。

ゲンティアナはそう言った。はっきりと誰かの為に想って示した言葉だった。

それが誰なのか、ノクトには分からなかったがその時だけは、ゲンティアナの横顔が冷たく鋭い刃のように感じて本能的にノクトはゲンティアナを恐ろしいと感じてしまった。その想いは今でも残っており、最初にゲンティアナと会うとつい身構えてしまう。

まるで、自分とルーナは使命を負うことは確定されていてそのために犠牲になれと言われているような気になるのだ。

 

 

「今のは………ゲンティアナとテネブラエの―――」

 

現実に意識が戻ってきたノクトに次なるゲンティアナの言葉が脳内に響いてくる。

 

『雷神は王子への力の提示を求めている。急ぎなさい、雷神の元へ』

 

まるで急かすかのようないい方にノクトは小さな声で悪態づく。

命令されるのは気に食わないのだ。これが性分なのか、それとも元々自分自身が神という存在を好まないのか。それは分からないが、とにかく気に入らないのだ。

 

「言われなくたってわかってるつーの」

 

それに気づいたプロンプトが遠慮がちに声を掛けた。

 

「どうしたの?また声がしたとか」

 

ノクトは少しイラついた様子でぶっきらぼうに答えた。

 

「ゲンティアナの声がな。さっさと雷神のとこに急げだとよ」

「神に通じる能力、か」

 

イグニスが顎に手を当てがいながら考え込んだ。散々召喚獣と親し気にしてきたレティが身近にいたが、よくよく考えてみればルシスの王族には神と対話する力が備わっているということだ。何よりノクトよりもその力が強いレティでさえタイタンの声が強すぎて激しい頭痛に襲われて弱っていたのをイグニスは目にしている。

 

「……巨神の時はレティが頭痛がってたよな」

 

グラディオが思い出したように言い、こんなにもレティがいるといないとでは静かなものなんだと思い知る。ここ最近笑うことが減ったノクト達にとって、いつも笑いを起こさせていたのはレティだったんだと痛感するのだ。

 

「ああ、タイタンを前にして一番痛がっていた」

「……なんで、レティは召喚獣に慕われるんだろうな」

 

ノクトはポツリと疑問を零した。

ずっと心のしこりとしてあったもの。明確な理由が分からないまま、ノクトはただレティが召喚獣に好かれている事実だけを受け止めていた。理由を知ろうとしないまま流されてうやむやにされていたような気もする。深く考えさせないようにコントロールされていたというか。だが今レティと離れてみて、ようやっと彼女の存在を根本から見つめなおそうとした。それゆえに生まれた疑問。

 

なぜ、レティは選ばれたのか。

その資格は一体どこから生まれたのか。

ただルシスの王族だけではない、もっとはっきりとした理由が隠されいる。

そんな気がしてならないのだ。

 

「……それは」

 

イグニスははっきりと口に出せずに言い淀んだ。プロンプトに至っては表情に出ないように視線を逸らしたりグラディオは「あー、まぁレティが『特別』なんだろうよ」と適当に誤魔化したり。幸いノクトは仲間の挙動不審な態度には気づいた様子はなく、心ここにあらずと言った様子で「行くか」と一人先に歩いて行った。イグニス達はそれぞれ顔を見合わせてはノクトの後に続いた。

 

それからまたゲンティアナの言葉が続けてノクトを急かすように脳内に響いた。

 

ルナフレーナの手によって神は目覚めている。王に力を与えようとルナフレーナは動いているが、それはレティの力と密接に関係している。王と神薙は使命を負う者。けれどレティは召喚獣を統べる者。故にレティなくして本来の力は発揮されない。

 

「どうした?また声が?」

 

イグニスがノクトの変化にいち早く気づいて声を掛けた。

 

「ああ、ルーナが七神を起こしてるって。でも、レティの力がなきゃ召喚獣の本来の力は発揮されないって……。なんで、そこまでレティに拘るんだ?アイツらは」

「………ノクト、今は考えるよりも急ごう」

「……ああ……わかってる」

 

納得しきれていないノクトを誤魔化すかのようにイグニスはそう言って、チョコボを走らせた。

 

まだ、雨はやまない。

 

出来るだけ帝国軍との戦闘を回避させるため森の中を進みながら次なる雷神の石碑を目指すことにしたノクト達。以前、雨は止む様子はなく体も冷え切ってしまい身も凍るような想いの中、それでも休むことはなくノクトはチョコボを走らせた。絶えずゲンティアナの声はノクトの脳内に響き、回を増すごとにその声は語気を強めていく。

 

急ぎなさい。早く、早く―――と。

およそ神らしくない感情の乱れ。ますますノクトのゲンティアナに対する疑念は増すばかり。レティに対する執着心が垣間見えるのだ。だがそれでも従うしかないノクトは目的の石碑の前に立ち、手を翳す。

 

すると前の石碑の時と同じような現象が起きる。

 

『ノクティス』

 

辟易した様子のノクトは「ゲンティアナ……またかよ」と嫌そうな顔をした。

 

『東の洞窟、フォッシオへ。封印は解かれた。血の底に眠る最後の石碑を目指しなさい。力を、雷神を力を早く――ー』

 

ノクトはゲンティアナの声を振り払うように頭を横に何度か振った。

 

「……次が最後だ。フォッシオ洞窟」

 

そう言って皆に次の目指す場所を教えた。

 

「よし、さっさと済ませようぜ」

「いよいよ、雷神様とご対面かぁ」

「準備はしっかりしておこう」

 

これでゲンティアナの指示は終わりにしてほしいと心底願いながらノクトは、先を目指す。我武者羅にただ進むしかない。

 

レティなしで召喚獣と顔を合わせるのは今回が初めてなノクト達。

だからこそ、いつもより慎重に行動をしなければならないと身構える。

神と人との一対一の対話なのだから。

 

フォッシオ洞窟手前の上り坂で大きな雷が落ちて辺りに鼓膜を突き破るようなすさまじい音が響き渡る。その所為でチョコボから振り落とされしまったノクト達は耳を塞ぎながら、チョコボを落ち着かせてるのに一苦労した。

 

「うわ!」

「今のは近かったな」

 

割と冷静なイグニスが辺りを見回しながら言うのに対してグラディオも頷きながら

 

「急いだほうがよさそうだ」

 

とチョコボから降りた。ここからは降りて探した方が良いと判断したようで、ノクト達もそれに続いてチョコボから降りた。ノクトは「ここで待ってろ」と優しくチョコボの嘴を撫でるとチョコボは「クエ!」と鳴いて応えた。頭の良いチョコボでレティも散々可愛がっていたから余計ノクトも愛着がわいている。

 

「なんか雷神にも急かされてる気するわ」

「あー、そうだね」

「………」

 

さすがに気のせいだとは言えないイグニス達。なぜなら彼らはその雷によってぱっくりと割れた岩を目前にしたからだ。その先に深い闇が広がるフォッシオ洞窟が先を急がせるように現れていたのだから。

 

フォッシオ洞窟の中へ入ったノクト達。だがレティのスパルタ修行のお陰でダンジョン攻略は慣れたもので突如頭上に飛び交う蝙蝠の集団にも驚くことはなく黙々と奥へ進み続けた。人一人やっと通れるぐらいの通路を抜けてインプの集団と闘って、腰をかがめて進み、僅かな日の光当たる場所に生えていたアルロエシャロットを拾ってまたインプの集団と闘い、終わったと思ったら不意打ちでサンダーボムが襲い掛かってきたのを返り討ちにし、オラクルカードを入手。二手に分かれている道は左手に進み奥の崖の下で盗賊の心得を回収し右手の袋小路でさびた金属片を拾い、元の分かれ道まで戻り別の方へ進む。その先左通路行き止まりでマジックボトルを回収し、また細い道を通り抜けようとしたが、あえて、インプの集団が来るまで待機。一匹ずつ細い道から出てきたところを魔法でまとめて倒したノクト。プロンプトは思わず拍手して「お見事!」と掛け声をあげた。だが称賛の声にノクトは関心なく「行くぞ」と構わずに先に進むものだから、プロンプトは「あらら」と残念そうに肩を上げた。

無事に通路を抜けたところでアンモナイトの化石を拾い下へ下へと迷わず走っていく。

 

すると、突然プロンプトが待ったをかけた。

 

「あれ、なんか聞こえない?」

 

言われるがまま、耳を澄ますと、女の声で『ウチの子―――』と不気味なおどろおどろしい気配と声が聞こえてくる。プロンプトは岩で塞がれた道の方が気になるらしくそこらへんで辺りを覗き込んでいた。ノクトは構わずに別の通路から下へ降りようとした。その時!

後方からプロンプトの「ひぁ~~~~!!」という悲鳴が響き渡る。

 

「プロンプト!」

「どうした!?」

 

急ぎプロンプトがいた場所へ戻ってみるとそこに彼の姿はなく、焦るノクト達は先の方へ走った。何かがおかしいと本能的に訴えるからだ。

 

「無事か!おい、返事しろっ!」

 

多少開けた場所で辺りを見回すが、まったく暗くてライトの明かりでもプロンプトの姿を見つけるのは困難だった。鍾乳石があちらこちらに連なっており唯一、プロンプトの情けない声だけが響く。

 

「もうイヤだ――!!ここヤバイってぇ。デカい蛇がいたんだよ!そいつに引きずりこまれたんだって!」

 

声を張り上げるくらい元気な様子だからうまく受け身は取れているのかもしれない。なんせレティのサンダガも避けれるくらいだ。たかだかモンスターの攻撃を避けれないはずがない。ただこう薄暗いところと元々怖がりな部分が相まって油断したのかもしれない。そう、総合的に判断したイグニスは

 

「もしかするとソイツはナーガラジャかもしれない」

 

と冷静に判断するとノクトはなるほどと納得したように手を打った。

 

「それってクラストゥルム水道にいた奴か」

「あー、そういえばレティにしごかれていったとこにいたな。そんな奴」

 

グラディオも頷いては、じゃあ大したことないなと納得する。納得できてしまう。

ノクトはどこかに独りぼっちになっているプロンプトへ向かって大声をあげた。

 

「プロンプト―、ただの顔が付いてるモンスターだ。ビビる奴じゃないってー」

「あ、そっかー!って納得できないから~~!」

 

ノリのいいプロンプトは一瞬騙されかけたが、結局ノクト達が迎えに行くまでプロンプトはビビりまくっていた。

多少のアクシデントと軽い戦闘はあったものの、問題はなくアイテムを残さず回収して無事プロンプトと合流を果たしたので良しとしよう。

また腰を屈めて低い通路を進むと上り坂になっており、そこで怪しげな気配でも感じ取ったのか敏感なプロンプトがビビり腰で唸った。

 

「いる~~、絶対いる~~くそっ出て来い!」

「落ち着け。一回倒してんだから大丈夫だろ?」

「そういう問題じゃないの!気持ちの問題なの!」

 

精神的にトラウマ化しているらしい。軟弱なとグラディオは内心ため息をついた。だが口に出せばキャンキャンと食って掛かってくるのは考えずとも分かるのでそこは雰囲気を察して何も言うまい。

プロンプトの呼びかけに応えて、奴は姿を現した。

ぬるりと巨大な蛇の体を持ったナーガが突如行く手を遮るように目の前に出現しプロンプトは顔を真っ青にさせて「うわぁ――!!出たぁぁあああああ!コイツだぁあ、コイツぅぅう」と悲鳴を上げて思わずノクトの背に隠れた。

 

「いけ!ノクトっ」

「借りは自分で返せよ」

 

自分の背中から顔だけ出して威勢よくノクトに指示を飛ばすプロンプトを呆れたように振り返りながら見た。そのやり取りの間にもナーガは探るようにノクト達を見回し、

 

「ウチの子――知らない?」

 

と声を発して謎の問いをしてきたが、ノクトは冷たく「全然知らねぇし」と言い返す。

するとナーガは「じゃあお前をアタシの子に――!」と案の定襲い掛かってきた。

だがノクト達の敵ではない。1分もかからずして子供を返してと言いながら倒され消えていった。子供を返せと言っていたがナーガの子供と会っているわけではないので不気味がるプロンプトをグラディオが一喝して先へと進ませ、ようやくお目当ての石碑にたどり着くことができた。プロンプトは「良かった~~」とほっと胸を撫で下ろし、イグニスとグラディオはノクトを見つめて

 

「ようやく見つかったな」

「ノクト、頼むぜ」

 

と最後の仕上げを求めた。ノクトは短く「おう」と頷いて石碑の前に移動する。

最後の石碑に手を翳すと、いかずちのような石碑にあの雷が迸り、召喚獣が出現!

 

なんてことはなくあっさりと召喚獣ラムウの協力を得ることに成功した。

その証だろうか、ノクトの脳にあるイメージが突如本人の意思関係なしに浮かび上がった。白髪の髭の長いじーさんが威厳たっぷりにノクトの前に立っていて、呆けるノクトに手招きをする。戸惑いつつもノクトはそれに従ってじーさんの傍に歩み寄るとそっと一枚の折りたたまれた紙を差し出される。怪訝に思いつつもそれを受けとり開いてみると、ノクトが読める字でこう書いてあった。

 

『レティが雷好きな理由=儂が幼い頃レティの耳元で【サンダーサンダーサンダー】と洗脳したから』

 

どうでもいいようで割と重要な告白をされたノクトは、ラムウを見てお茶目なジジイという印象を抱いた。ラムウは何も言わずにウインク一つして(似合わない)ポシュン!と消えた。

 

そこでイメージは終わりノクトは意識を現実世界に戻らせる。

ノクトは感想をぽつりと述べた。

 

「ラムウって割とお茶目ジジイだったわ」

「なんだそれは?」

 

イグニスは理解できずに怪訝そうな表情で問い返すが、ノクトはどう説明していいのか分からず簡略的に「あー、レティのサンダー好きがラムウの仕業だったって話」と説明をした。するとノクトの発言に聞き捨てならないと喰いついてきたのがプロンプトだった。

 

「え?どゆこと?レティがやたら雷系の魔法に拘ってるって意味あったの!?」

「あー、騒ぐな!さっさと戻るぞ」

「ちょっとノクト教えて!」

 

レティの被害を一番被っていたプロンプトとしては重要かつはっきりさせたいところらしい。だがノクトは面倒くさがってさっさと洞窟を出る為に歩き出した。と思ったらピタリと歩みが止まりノクトを追いかけようと続いたプロンプトは驚いて慌てて止まる。

 

「急に止まらないでよ!」

 

そう文句を飛ばすとノクトはゆっくりと振り返り、この場に不釣り合いな笑みを浮かべては、

 

「そういや、お前さりげなくレティのこと呼び捨てにしたよな?」

 

と静かに尋ねた。反対にプロンプトは顔を引きつらせてさっと視線を逸らし、「そんなこと言ったかな?」ととぼけてみせながらジリジリとノクトから逃げようとする。たが他に証人はいたので逃げられない。イグニスがスッと指先で怪しく光る眼鏡を押し上げながら、

 

「確かに言ったな、レティと」

 

とプロンプトに迫り、グラディオが

 

「言ったわ、確かに。愛しのレティと」

 

と意地悪い笑みを浮かべる。途端にプロンプトがぎょっとして慌て否定する。

 

「グラディオ!?そこまで言ってないから!!」

「ああ?そこまで?じゃあどこまでの表現なんだよ?っていうか、前から気になってたんだけど、お前ってレティのこと……」

 

すかさずノクトが鋭く突っ込んだ。

 

「くっ、退避!退避しま―――す!」

 

プロンプト戦線離脱。その後をノクト、イグニスグラディオが「待て!」と納得できずに続く。仲の良い四人は全速力で洞窟を脱出した。ここ一番のダンジョンクリア最短記録を更新した。

 

洞窟から外へ出るとあれだけ止まなかった雨は上がっており見事な快晴だった。

 

「見て、雨あがってる」

「雷神様の用事が済んだからか?」

 

だがノクト達の上空に突如現れる謎の飛行機に一同は息を呑んだ。

 

「なんだありゃ!」

「前とは比べ物にならないよっ」

 

巨大な飛行機はノクト達のすぐ真下を通ってどうやら近くの帝国軍基地へ向かうらしい。

そこへ一本の電話がノクトのスマホを鳴らす。ポケットから愛用のスマホを取り出して画面をタップする。

 

「はい」

『王子?私、シドニー』

 

聞きなれた相手の声にノクトはいつもの調子で答えた。

 

「おう。なんか分かったか?」

『うん。レガリアなんだけど帝国軍の基地に保管されてるみたいなんだ』

「マジか?」

 

予想外の言葉に面食らうノクト。

律儀に回収してまるで取りに来るのが予想されているような展開。

 

『ちょっと相手が相手だから話するのも難しいっていうか……。レティの件で怒鳴りつけたくなるからさ、今そういうのマズいじゃない?だから』

 

シドニーとしても手は打ちたいが今二人はイリス達がいるカエムの岬を目指しているとのこと。もし万が一あの場所が帝国軍にバレる可能性も無きにしもあらず。穏便に済ませるためには、単独で動いているノクト達自身で何とかするしかないらしい。

 

「分かった。オレ達で取り返すわ」

『え、大丈夫?』

「ああ。そんくらいしてやんねぇと腹の虫が収まんないし」

 

ノクトの頼もしい発言に少し落ち込んでいたシドニーも明るく返す。

 

『そうだね。派手に、とは言えないけどしっかりやり返してきてよ!』

「おう。任せとけ。それじゃありがとな!」

『うん。気を付けて』

 

ノクトは電話を切りスマホをポケットに突っ込むとグラディオが電話の相手を尋ねてきた。

 

「誰だ?」

「シドニー。レガリアの場所が分かった。帝国軍の基地らしい」

 

ノクトがそう伝えると、まるで次の行き先が分かっているかのように皆はノクトを見た。

 

「おおー」

「たとえどこにあろうと、だ」

「取りに行くんだろう?」

 

レガリアはもちろんのこと。もう一人の大切な仲間でありトラブルメーカーであり、男だらけの紅一点!

 

「当たり前。―――レティもな」

 

少しは前向きになることができた。少なくとも、この時は。

 

【数歩先の闇に嵌ることに気づいてはいなかった。】

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