日が沈みはじめ辺りは夕暮れに染まっていく頃、ノクト達はアラケオル基地から離れた茂みの中から基地の様子を伺っていた。真正面から突っ込めるほどノクト達は強い。レティのスパルタ修行でRPG風に言うならば81レベルぐらいに到達しているのだ。だが万が一、レガリアを壊されたらたまったものじゃないのでイグニスの提案でとりあえず様子見ということでコソコソと男四人は辺りを伺っている。ノクトはしゃがみ込んで【ほかほか備蓄米にぎり】をおいしそうに頬張りながら観察を続けている。
「んぐ……まるで要塞だな」
「飛んできたヤツがここに来たのか?随分と立派なカベじゃねぇか」
グラディオは大好きなカップヌードルBIGをフォークで掬い上げ豪快に啜りながら注意深く様子を伺う。ちなみに具材はズーの卵である。
イグニスはノクトに「ほら」とコップに注いだ香り立つお茶を渡しながら
「あの壁は昔の戦争の名残だ。それを帝国軍が利用しているようだな。どう攻めるか考えよう」
と軍師とオカンの両方を器用に掛け持ちしている。同じくイグニスのお手製おにぎりを両手に持って、誰よりもやる気を見せているプロンプトは噛り付くようにおにぎりを食べながら
「(もぐもぐ)」『オレ張り切って写真撮るよ!レティに見せてあげるんだ』
と意気込みを語った。そこにイグニスとグラディオはプロンプトの言葉を理解した上で同時に突っ込んだ。
「「いや写真は撮るな」」
ノクトは一人食べかけのおにぎりを見つめて、ああ、そういえばレティのおにぎりはもっとデカくて不格好で食べずらかったなぁとちょっとしんみりしていた。
だが同時に強く誓うのだ。
必ずレティを助けてデカくて不格好で食べずらいおにぎりを作ってもらうのだと!
こうしてはおれないとノクトは口元にご飯粒をつけてきりっとした顔でイグニスに尋ねた。
「イグニス、何か策は?」
「策というほどではないが、この人数で正面からは攻められるが大元のレガリアを壊されたら元も子もない。潜入した方がリスクも軽減できるはずだ。深夜、オレ達は敵に気づかれるまでに作戦をクリアする必要がある」
イグニスは指先でノクトの頬のご飯粒を指摘しながら、軍師の面を発揮する。ノクトは指摘されて初めて気づきご飯粒を取って口に運んでから「それまでは?」と先を促す。
「できる限り基地の情報を洗おう。レガリアの場所にも見当をつけておきたい。入手した情報を分析し潜入方法と位置を確定する」
「そこら辺は頼んだ」
イグニスからおしぼりを手渡されたノクトはそれを受け取って手の汚れを落とす。
プロンプトは誰よりもやる気を見せながらカメラを構えて意気込みを語る。
「いよいよレガリア奪還&激写作戦だね」
「だから写真はやめとけ」
カメラを没収しようするがその前に逃げられてしまったので疲れたようにグラディオはため息をついた。
【ちょっとレティ不在時にテンションが変わってきてる人達】
※
アラケオル基地近くのコンテナの影に身を潜めて四人は魔導兵の隙を突いて侵入することにした。ノクトのシフト能力を使って背後から襲い掛かり、最初は問題なく進めた。だが基地内部に潜入するとサーチライトがノクト達の行く手を阻むかのようにいくつも闇の中を明るく照らして忙しなく動いている。しかもそれだけではない。魔導アーマーが何体か基地の中を闊歩しているのだ。できれば相手にしたくないというグラディオの意見に賛同してまずはレガリアの場所を特定するために闇に紛れて進むことに。幸い、コンテナや軍の私物が端っこにはたくさんあるのでそれを壁にして動くことはできる。イグニス先頭の元、ノクト、プロンプト、グラディオと忍び足で進み、また魔導兵を発見。これも難なくノクトのシフトでクリアし周辺の魔導兵は倒せた。奥の方にあるゲートのキーを解除して中へ踏み込むと、少し先に高い塔がありそのてっぺんから放出される赤い光が周囲を取り囲むように拡散されている。
魔導エネルギーを利用した装置らしいが、イグニスの推測によると帝国兵らを強力にするためじゃないかとのこと。壊した方がいいんじゃないかとグラディオから提案が上がるも、まずはレガリアを優先させるとのイグニスの意見により皆はさらに奥のゲートを解除して進み、辺りを警戒しながら行くと念願のレガリアが無傷で発見された。そこで気が緩んだノクト達はレガリアの傍へ歩み寄る。しかし重魔導アーマー【マニプルス】が目ざとくノクト達を発見。攻撃を加えようとするもノクト達の攻撃の方が早かった。出てきて数秒で重魔導アーマー【マニプルス】は倒され、そこからノクト達の快進撃は始まる。敵が哀れとも思えるほどの無残なスクラップ状態となりかくしてノクト達は圧勝した。
召喚獣ラムウは出番がないことに、ノクトが呼んでいないにも関わらず派手な雷を落として愉快そうに笑って消えていった。幸いなことにレティがイグニスにあげた指輪のお陰でラムウの攻撃に巻き込まれずにすんだノクト達。
「お茶目ジジイ、はんぱないわ~」
「レティのサンダー好きもラムウからきているなら頷けるな」
「オレは一番の被害者なんですけど」
「そのお陰で耐性ついてるだろうが」
プロンプトによりこの作戦名の名は【B2B】に決定され後は貰えるだけのアイテムをもらってレガリアと共に華麗に去るだけ。
とすんなりと見逃してくれる帝国軍ではなかった。ここで思いもよらぬ再会を果たすことになる。
いち早く、自分たちに近づく靴の音に反応したプロンプトが驚き、「あ、あれ!」と声を上げる。
「ひさしぶりだ、……ノクティス」
「レイヴス!」
かつてテネブラエで顔を合わせて以来12年ぶりの再会だった。
あの頃よりも互いに成長した姿を見るのは初めてのはず。なのにレイヴスはノクトに対し、
「雷神の啓示を受けたのか?それが何を意味するかもわからずに」
ひょっこり勝手に現れて派手に雷を落としていったラムウの一部始終を観察していたのだろう、まるでノクトに対して愚かだと侮蔑を込めた視線を送る。
レイヴスは剣先をノクトの喉元にやり今にも突き刺すほどの殺気を感じとるがノクトは怯まずに睨み付けた。
「オレは啓示なんて受けちゃいない。レティを助ける為に協力を得ただけだ!」
「何?」
「おい!」
ノクトを助けようと動くグラディオに今度は標的を変えて素早く剣先をグラディオの喉元にそえさせ、少し動いたイグニスに対して左手を翳し、「動くなよ、お前たち」とノクト達を牽制する姿に、プロンプトは「なんか、ヤバイ?」と呟かずにはいられなかった。
色んな意味でヤバイ。写真撮れなくてヤバイ。すっごい勘違いされてる気がしてヤバイ。雰囲気に飲まれてるけどオレ達結構強いはずじゃない?なのに気迫で負かされてるからヤバイ。
「ではどうして雷神がお前に従う?誰も叶わなかったというのに、選ばれし王たる男がこうも無力で愚かだとはな。誰にそそのかされたかは知らんが、私の、邪魔をするな!」
レイヴスはノクトがラムウの啓示を受け取ったと勘違いしているらしく、苛立ちを抑えきれない様子で自分の左手を動かしてゆっくりと握りしめる。黙ってられないノクトはつい言い返した。
「じゃああんたは何やってんだよ。なんで帝国軍でルーナまで狙って――レティを連れ去ったんだよ!!」
「あの皇女の身柄はオレの範疇ではない。よってその質問に答える義務も、ない!」
だがレイヴスの痛いところを的確に突いたらしいノクトはレイヴスの左手によって首を絞めあげられる。
「ぐあぁぁ!!」
そのまま掴んで後ろへとノクトを飛ばす。
「ノクト!」
咄嗟にグラディオがノクトを背に庇う。
「盾のつもりか?」
「わかってんじゃねぇか」
レイヴスと対峙し身を挺してノクトを庇うグラディオ。
「脆い盾は踏み台にもならん」
そう言ってレイヴスはグラディオに向かって剣を振りかざす。
寸前でグラディオは武器を出現させてその一振りを庇う。最初はレイヴスが押しているように見えたが、徐々に力の差はグラディオに傾いてく。
「おい、まだまだだなぁ?」
「……少しはやるようだな」
レイヴスは勢いそのままにグラディオを一刀両断するかのように見せかけて軽くフッと力を抜きグラディオの不意を突いたところで剣先でいなして、防御が崩れた所、グラディオの腹目がけて腰を少し落とし剣の柄で腹に強烈な一撃を入れた。
ように見えたが、攻撃の一手を読んでいたグラディオは僅かに後ろに体を引いていたことでレイヴスの一撃を多少和らげることに成功。それでも痛みは走り、地面に膝をついてしまう。
「グラディオ!」
プロンプトがグラディオを助け起こし、イグニスが武器を構え、ノクトが唸るように低い声で「調子、乗ってんなよ」とファントムソードを出現させ、改めてレイヴスを敵と認知した。
かつての、知り合いとは袂を分かつ決断をしたのだ。
「フン。ここで死ぬようなら、それがあの姫の為でもある」
両者対決の構えを見せた時、その者は現れた。
「はい!そこまでにしておこう」
アーデン・イズニアが突如としてノクト達の目の前に現れたのである。これにはノクトだけでなくレイヴスも目を見張った。
「てめぇ!?」
「貴様っ!!」
憤りから声を荒げるノクトたちに「ああ、お元気そうで何よりだよ」と手で制しを掛けながら、アーデンは飄々とした態度でこういった。レイヴスを諫めた。
「助けに来たよ」
と。ノクトはアーデンの行動に翻弄されまいと
「何を言っている?レティは、彼女は無事なのか!」
「ああ。君はノクトの参謀役だったよねぇ。ああ、彼女は無事さ。むしろ手厚く迎え入れさせてもらっているよ。彼女は我が帝国の新たな光なのだから」
「光?」
「勝手なこと抜かしてんじゃねぇ!!レティを返せ!」
吠えるようにノクトはアーデンに怒鳴った。
「あー、今は自分たちのこと心配した方がいいんじゃない?レティーシア殿下も君たちの身を案じているんだ。だからオレは君たちを助けに来た。彼女の、直々の命でね」
まるでレティの臣下のように振舞う言動にグラディオは嫌な予感を覚えた。
「レティの、命?………テメェ、ふざけてんのか」
「ふざけてないよ、こんな時に。軍を帰らせるって言ってるの。そうだな、次に会うのは海の向こう?いやその前にも会うかも。うちもあそこの水神様に用事があってさ――ね?」
わざとらしく振り返りレイヴスに視線を送るアーデンはまたノクトに向き直った。手を軽く降ってレイヴスに退けと指示を送りながら。
「それじゃあ王様、よい旅を」
と退いたレイヴスに続いてアーデンも背を向けた。だがノクトが待ったをかけた。
「待てよ!」
「ああ、ノクト。まだ教えてもらってないこと。そこのお仲間たちに尋ねた方がいいんじゃないかなぁ。例えば、うちで最近新しくお迎えした麗しの皇女殿下について、とか?」
「皇女、殿下?」
ニフルハイム帝国に皇女がいたという事実はノクトでさえ知らないこと。
「「「!」」」
「そう。君が知らない真実だ。君は知る時だろう。それじゃあ今度こそ、またね」
レイヴスが先に立ち去り続くようにアーデンもその場を去った。
残されたノクトはアーデンの意味深な言葉に引っ掛かりを覚えてならなかった。
「………オレに隠してること、あんのか」
「………言い訳はしない。いずれ打ち明ける気だった」
イグニスは重い口を開きノクトはカッとなってイグニスの胸倉を掴んで迫った。
「何をだよっ!?」
自分が知らないことを仲間は知っている。
自分だけ蚊帳の外だった事実と、アーデンがいう【皇女殿下】という存在と、レティが帝国に連れて行かれた理由がそれぞれ主張して一番嫌な結果にノクトを追い詰めようとする。ノクトだって理解できないほど馬鹿じゃない。
だからこそ、今、この場で聞き出したかった。教えて欲しかったのだ。
だがグラディオの有無を言わせずの態度にノクトは舌打ちして従うほかなかった。
「………場所を変えるぞ」
安易に話せない内容だということはそれだけで丸わかりだった。プロンプトでさえも沈痛な面持ちでノクトから視線をそらしている。
「……クソっ……!」
重苦しい雰囲気の中、ノクト一行はイリス達が待つカエム岬へと向かうことになった。
そこで、驚くべき事実をノクトは知ることになる。
【to fall into someone's trap】