レグルスの子供たち   作:サボテンダーイオウ

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九腸寸断~きゅうちょうすんだん~

ノクトside

 

 

自分ばっか溜め込んでんじゃねぇよ!アンタだけで解決するも話題なのかよ!?

頼れよ、一人で抱えてんじゃない、オレはアンタにとって何なんだ?

 

オレとレティの関係性。繭に包まれてひた隠しにされてきた事実が露呈し、狂わしい一つの感情がオレを蝕んだ。

 

オレはこの時初めて死んで行った親父を恨んだ。

どうして教えてくれなかったんだ!どうしてオレに黙ったまま死んで行ったんだ!?

 

たった一言だけでもいい。

言ってくれればこんな想いはしなくて済んだっつうのに。

誰もが親父の行為をオレを想う優しさだというだろうな。

だけどオレに言わせればそれは単なる自己満足だ。

オレの為と言っておきながら、ただ知られることが怖かったんだろうよ。

王都が攻められることを知っていたならその時点でオレに打ち明けるべきだったんじゃないか。

オレに王たる自覚がないからか?ギリギリまで平穏に浸らせる為か?

 

そんなもんオレは望んじゃいない。オレが望んだのは、大切な人を失わない世界だ。

母上のことだってそうだ。守れたはずだ。予想できていたなら守れたはずなんだ。なのに、親父は王だからと孤高であろうとした。

王は常に、胸を張り誰よりも率先して国を束ねる者。

けどさ、でもさ。

一人で王になったわけじゃないんだ。誰かの助けがあって初めて王になったんだろ?親父だってそうだったはずなんだ。……そうすればオレは、レティを絶対守れてたはずなんだ。帝国なんかに行かせずに済んだんだ。

 

 

カエムの岬にたどり着いたオレ達は意気消沈したイリスの出迎えで、大体の情報が伝わっていることを確信した。遠くの丘の上に隠れ家がぽつんと立っていて寂しい場所だと思った。

 

「ノクト……」

「…イリス……」

 

腫れぼったい顔でイリスは誰かを探すようにオレ達に視線を彷徨わせた後、落胆したように「レティは、……いないんだね」と蚊の鳴くような声で肩を下げた。

オレは声を振り絞って短く「ああ」と頷くことしかできなかった。イグニス達もそうさ。オレと似たように沈んだ表情で黙っている。イリスは、無理やりに笑って誤魔化した。

 

「ゴメン。分かってて聞いちゃった……。中入って」

「………」

 

そう促すとイリスは先に隠れ家の方に向かって走っていった。いつもの調子なら慰めてやれただろうに、オレにそんな余裕はない。

 

入れ替わるようにシドニーがこちらの方に向かって歩いてきた。すれ違い様に駆けていくイリスを痛ましげに視線で追いかけながらオレ達の方に向き直ると手を振ってくる。

 

「皆!無事みたいだね」

「シドニー」

 

わざと明るく振舞っているらしいシドニーはいつもより声のテンションを上げて、オレ達の無事を喜んだ。

 

「良かった。レガリアも無事みたいだね。どう、結構暴れてこれた?」

「……ああ」

「………あー、その色々あったみたいだね」

 

ぶっきらぼうに答えるオレにシドニーは頬を掻いて困ったように苦笑してコルの方を向くと何かの報告をした。

 

「将軍、例の奴だけど。情報吐いたらしいよ」

「そうか。オレの方でも王子達に話すところだ。皆揃っているか」

「うん。それと、ディーノって記者も来てるんだけど……」

「ああ、奴には情報収集を頼んでおいた。その報告だろう、丁度いい。お前達、中に入れ」

 

コルはそういうと立ちすくむオレ達を中に入るよう指示して先に歩き出した。シドニーもオレ達を気遣うように「大事な話するみたいだから、行こう?」と優しく言ってコルの後に続いた。

 

憤り込み上げオレは拳を強く握りしめた。

自分だけ取り残されている感じが無性に腹立たしかったんだ。

 

だってわかってるんだ。オレだけが知らない。イグニスや、グラディオ、プロンプトはレティに関する何かを知っている。だからこそ、あの女が言っていたことやあのムカツク宰相の言動に驚いてたんだ。

 

「……」

「ノクト、とにかく中へ入るぞ」

 

イグニスにそう促されてオレは低い声で「そこで教えてくれるんだよな」と念を押すように確認をしたけどイグニスの代わりにグラディオが答えた。

 

「……ああ。お前が知りたかった真実を話す」

 

そう言ってグラディオとイグニスはオレを置いて先に家の方へ歩き出した。

プロンプトはそれに続こうかどうしようか迷っている様子だった。重苦しい雰囲気にオレを気遣ってか、「の、ノクト、行こう?」と遠慮がちに声を掛けてくる。オレはそれに答えず、

 

「……プロンプトは、知ってたのか」

 

と主旨を伝えずに尋ねるとプロンプトは、少し間をあけてから

 

「……ごめん」

 

バツが悪そうに謝りオレの視線から逃げるように目を背けた。

 

「……お前もかよ……」

 

何となく疎外感を感じたのは、間違いじゃなかったってことか。

やるせない想いに駆られながらオレは重い足取りで家へと向かった。プロンプトは、遅れて中に入ってきた。決してオレは仲間と顔を会わせようとしなかったが、一瞬だけプロンプトと目があった。……瞳が少し揺らいでいた。

 

 

入ってすぐのダイニングはスッキリしていたが、思いのほか人数で溢れていた。

オレ達四人に、コルとモニカ、ダスティン(初顔合わせ)にグレンと初対面の男女二人にまさかのプライナには驚いた。オレの足元に走ってきて尻尾をパタパタと振って喜びをあらわにしてきたからガシガシと頭を撫でてやった。

それとイリス、タルコットにジャレッド。14人か。それぞれ、椅子に座ったり壁に背中を預けたりとそれぞれのスタイルでオレ達の到着を待っていた。あの、新聞記者、ディーノがいたこともアイツが喋ったことで気付いた。

けどオレとしちゃどうでもよかった。

 

コルが座っている椅子の後ろに控えるのはグレンたち。

オレは無言で正面の椅子を手前に引いて腰を掛けた。

 

「王子、先に王の剣であった二人を紹介しておこう……。頼む」

 

コルはそう言って後ろに控える二人に紹介を促した。それに答えて男女が一歩前に出て浅く頭を垂れる。プライナは女の傍から離れないように横に控えるように伏せていた。

自己紹介とかしてる暇があったらさっさとレティのことを話してほしかったんだ。

無精ひげをたくわえたふくよかな体系の男が先に名乗りをあげた。

 

「初めまして、王子。王様って呼んだ方がいいのか。オレはリベルト・オスティウムだ、イデ!「ちょっとっ」クロウ、痛いって……」

 

隣の女に肘鉄を入れられ、リベルトは苦悶の表情を浮かべて苦言を口にしたが女の睨みですごすごと引き下がる。女はさっと表情を変えて気を取り直して名乗った。

 

「リベルトが失礼な態度をとったこと、深くお詫びいたします。私はクロウ・アルティウスと申します。ニックスとは同じ王の剣に所属しておりました……。王子、少しお聞きしたいのですが…」

「ああ、わかった後にしてくれ。それよりコル!さっさとレティのことを教えろ」

 

クロウとか名乗る女がオレがぞんざいないい方をしたことにムッと眉を顰めて不快感を露わにしたがそんなもの構ってられない。「ちょっとそんないい方は…」とか声を上げようとするクロウにリベルトが慌てて止めに入った。そっちの方が地みたいだな。プライナも体を起こして立ち上がって女、クロウを見上げて「キュゥン」と鳴いた。

……どうでもいい。

 

オレはコルに怒鳴り気味に急かす。

腕を組んで壁際に寄りかかっていたディーノがオレの様子を茶化すように言った。

 

「相当、気がたってるね。王子」

「ディーノ、口がすぎますよ」

 

モニカが目ざとく注意するとディーノは「失礼」とまったく反省していない態度でわざとらしく口笛を吹き始めた。コルは一つ咳払いをしてテーブルに膝をついて、両手を組んだ。

 

「いいか、これから話す内容はあくまで秘密厳守だ。他言無用でいてもらいたい」

 

ともったいぶって強めな口調で皆に前置きをした。緊張に皆口を堅く閉じコルに視線をやった。オレは

 

「もう十分分かったから言えよ」

「…王子、いいか。これから話すことは全てが真実だ」

「………なんだよ、いいから「姫は、陛下の御子ではない」」

 

オレの言葉に被せるようにコルから伝えられた言葉。

 

「なんだ、って」

「姫は陛下の御子ではない。陛下の妹姫であるミラ王女の御息女だ」

 

コルは同じ言葉を二度続けた後に、信じらない言葉を言った。

何言ってんだよ。オレ達は双子、だろ?

 

外野が息を呑む声がする。

 

「……嘘、だ」

「本当だ。ミラ王女は王子、お前の叔母君に当たる御方だ」

「なんで、そうなるんだよ……だったら、オレとレティは兄妹じゃ、ないってことか?」

「ああ、王子にとって姫は従妹となる」

 

ミラ王女って誰だよ。オレは知らない、そんなの。

親父に妹がいたなんて教えてもらってない。そんなこと一言も話さなかったし、写真一枚だって見つからなかった。痕跡さえなかったんだぞ。……そこまでして隠したかった存在?

 

「レティーシア姫の容姿は生前のミラ王女生き写しだ。ミラ王女が亡くなられた後、陛下が姫を引き取られた。先に王子が産まれたことで双子としてお育てになられたのだ。決してこの事実は他のものに明かしてはならないと陛下はお決めになり、姫の為にそして王子の為にこの事実をひた隠しにされてきた。姫は……、その御力だけに限らずその御身自身も」

 

馬鹿じゃねぇの。

双子って、馬鹿じゃん。なんなんだよ、一体何がしたかったんだよ。

 

「だが、それだけじゃない。お前も聞いただろう。……ニフルハイムに新しい皇女が即位したと。」

「それがレティと何の関係があるんだよ」

「レティーシア姫はルシスの王族であると同時にニフルハイム皇族の血を引いている」

「………」

 

頭、爆発しそうだ。

 

「ここからはオレが説明させてもらいましょう」

「頼む」

 

ディーノがコホンと一つ咳ばらいをし、説明を始める。

 

「えー、帝国側で何やら次のイドラ皇帝の後継者が現れたとそれなりに噂になってるようで、詳しく調べてみるとかなり情報操作が行われてまして調べるのに苦労しましたよ。なんせ秘密主義国だ」

「さっさと言え」

 

グラディオが睨みきかせ先を急かすとデイーノはハァ~とため息をついた。

 

「わかりました!……イドラ皇帝は新たな皇女殿下をお迎えになられたそうですよ」

「皇女殿下?その情報は確かか?」

 

どうやらコルも初耳らしい。疑念籠った視線にディーノは申し訳なさそうな顔をした。

奴自身も信じたくない様子だった。

 

「ええ、残念なことに。まだこちら側には大々的に伝えられていませんけどね。時間の問題ではないかと。……なんでもイドラ皇帝が最も寵愛する殿下だとか。今まで身内のことは一切公表してこなかったにも関わらずこのタイミング。まさに次期後継者と噂されるくらいには注目を集められていますよ。彼女は」

「その、皇女の名前は」

「………レティーシア・エルダーキャプト殿下とおっしゃるようです」

「っ!」

 

鈍器で頭を殴られるような衝撃がオレを突然襲った。オレだけじゃない、イグニス達もイリス達も、皆に衝撃を与えた。

 

名前が、一緒なだけだ。きっと、そうだ。そう必死に思い込もうとした。

否定しようと声に出そうとした。けど、声が出なかった。ひゅっと音のない息だけが空しく口から洩れる。

 

「まぁ、名前だけ一緒とかの可能性も……ないですかね?」

 

希望を含ませたいい方をするディーノはコルにハッキリと断言した。

 

「おそらく姫で間違いはないだろう」

「……は、はは」

「レティが、皇女に…?」

「やっぱりかよ」

 

何もかもが嘘だ。妹じゃないってのはいい。オレにとって朗報だ。喜ぶべきとこだ。

けど、レティがインソムニアの皇女だって?だから帝国に連れて行かれて皇女としてお披露目されたって?

そんな、そんな。すんなり受け入れられるかよ。

 

膝に力が入らなく情けなくガクガクと震えている。いや震えているのは膝だけじゃない。自分の手をふと見下ろす。

わかりやすく己の手は震えているじゃないか。

オレは口元をヒクつかせ、空笑いをした。笑うしかなかった。

 

「は、ははっ」

 

何もかもが嘘だと叫びたい。

半複することでオレの中にじわりじわりとインクが紙に滲んでいくようにしみ込んでいく。黒く、黒く、真っ白な紙が染まっていく。

 

「レティが、……インソムニアの、皇女?」

 

誰が信じるってんだ。

 

あの、悪夢は正夢になるのか。オレは親父を恨む。と、同時に決めた。オレは帝国を、ぶっ潰す。どんなことしたって許さねえ。何をしても、誰を殺しても、レティを必ず取り戻す。あんな悪夢の通りになんてさせねぇ。

 

「……ニフルハイム帝国を、潰してやるっ」

「ノクト!?」

 

オレの決断に迷いはない。何があっても、許さねぇ。

心は、オレ達の絆は切れてない、離れてねぇはずだ。断ち切ろうとしてるのは、誰だ。

 

「レティは、オレのだ」

「ノクト、お前……」

「だってそうだろ!?あいつ等が、あいつらがいなければっ!」

 

怨嗟の声はオレの口から止まらずに溢れ出す。

 

親父も、母上も、クレイラスだって、オレが暮らしてきた日常だって、王都だって、壊されはしなかった。全部、この元凶を産み出したのは誰だ!?

 

決まってる、あいつらだ。

 

「イドラ・エルダーキャプト!!」

 

ダン!

強く握りしめた拳をテーブルに叩きつけて、オレは殺意にも似た衝動を抑えきれなかった。

 

【帝国を、ぶっ潰す】

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