レティーシアside
いざ出発と隠れ家から出ていく男たちの背を視線で追いかけながら気まずい雰囲気を払拭させる為、少しでも旅を快適にさせる為に私、決めました。
「私が運転するわ」
そう意気込んで静かに、だが力強く宣言してみれば、皆から冷たい視線が突き刺さる。
「……いや、さすがにやめておいたほうがいいだろう。大体君が履いている靴は運転に不向きだ」
そうですね。オルティシエから来たままの恰好、つまりどこぞのお嬢様スタイルな私。
でもこれ見た目よりも動きやすいのよとスカートを抓んでヒラヒラさせてみせればイグニスの目力が半端なく追ってくる。ちょっと何処見てるの。え、太もも?前よりも二ミリ痩せたって?あら嬉しいこと……。なんで太もものサイズ知ってるのよ?ちょっとそこで黙り込んで視線逸らさないで。
「ペーパードライバーだろ、レティ」
そうね、ルシスで運転以来だわ。あの時クレイから言われたの。姫は後部座席で十分だって。失礼しちゃうわ。私だって運転できるのに。何よ、ノクティスってば、同情するような顔して。
「オレも出発したばっかりで死にたくはないかな……」
私の運転に乗った事ない癖にプロンプトはいつも一言余計なのよ。死ぬなんて大げさな!精々酔って吐くぐらいよ。え、それも嫌だって?吐くぐらい何よ!クレイなんて私の運転に同乗する度に拒絶反応起こして吐いてたわ。……どうしてそこでグラディオがもらい泣きしてるのよ。
「素直に諦めろ。レティ」
嫌だと言ったら頭を抑えられたので脛を蹴とばしてやった。でもお返しとヘッドロック掛けられた。ちょっと!私皇女よ?ニフルハイムの次期女帝よ?この私にヘッドロックしかけるとか何様のつもり!?え、なにオレ様何様グラディオ様?ふざけんな!
上からイグニス、ノクト、プロンプト、グラディオといいです偽りないコメント頂きました。がこれくらいでへこたれる私ではございません。悪役皇女らしく我儘で突き通してやりたいと思います。
「だったらじゃんけんで決めるのよ!これなら公平だわ」
「運任せかよ!」
ノクトからのツッコミなど想定内だわ。
「オーホッホッホ!天のみぞ知る!これですわ」
「似合わない喋り方するなって」
「失礼ですわよ!?いいからさっさと皆でじゃんけんしましょ!そーしましょ!」
無理やり全員参加のじゃんけんをさせました。
『じゃんけ~ん、ぽん!』
声を揃えて後だし禁止のじゃんけんによって公平にジャッジが下りました。
「私が運転手~!」
イリスからもらったモーグリ人形を掴んでぐるぐると回って喜ぶ私と対照的に暗く沈む男達。
イグニスはなぜか黄昏ながら「エボニー、飲んでおくか……」とまるで悔いを残さないようないい方してるし、プロンプトは口元抑えて青い顔で申し訳なさそうにノクトの肩に手を置いている。
「ノクト、吐いたらゴメン」
「先に謝るなんて卑怯だろ……。オレも吐くかも」
まだ車にも乗っていないのにノクトも酔い始めたのか口元を覆った。きっと陸地で酔ったのね。そしてグラディオに至っては、
「父上……、オレはまだ死ねません!」
と明日の方向を見上げて誓いの涙を流し始めた。
「アンタら何気に酷いことばっかり言ってない?」
だが天の采配に逆らえる者などなしである。公平なジャッジは下された。レガリアの主導権は私にある!こんなこともあろうかと事前に用意していた運転用の眼鏡をスチャッとかけて運転席へと乗り込む私。
「レティ、本当に大丈夫?」
「心配しないで、大丈夫だから」
ちなみにモーグリ人形はイグニスに持っていてもらっている。彼の膝にちょこんと座っている姿はとても見ていて愛らしい。
「でもレティ、ハンドルにめっちゃしがみ付いてない?ガチガチだし緊張してるでしょ」
「大丈夫。武者震いってやつだから」
「絶対ヤバそうだしノクト達青白い顔してるよ。助手席にいるイグニスに至っては……ゴメン表現に困るわ。なんかマジ、大丈夫?」
やだイリスってば相当心配性だったのね。
私は余裕っぷりをアピールする為に親指をぐっと立てた。
「大丈夫大丈夫。これから楽しい旅にはしゃいじゃって蒼い顔になってるだけだから」
「……お兄ちゃん、頑張って。色々と」
「ノクト様!ファイトです」
「皆様、御達者で」
皆を勇気づけようと健気なタルコットと白いハンカチを振って送り出そうとするジャレッド。
「いいか、アクセルとブレーキ間違えんじゃねーぞ」
「姫、どうか、どうか安全運転でお願いします」
シドさんからはアドバイスを、コルからは真面目くさった顔で旅の無事を言われた。
心配そうなイリス達に手を振られながら見送られて危なげなく出発することができた私達は……。
いつぞやの懐かしいイベントと相成りました。
―――そう、私達の最初のレガリア押して歩きイベント。私と運転を代わってハンドルを握るイグニスは額を抑えて飽きれた様子で言う。
「どうして出発して10分で故障することになるんだ……」
「たぶん打ち所が悪かったのね」
うんうん頷いて助手席からそう答えると、後ろから抗議の声が色々と飛んでくる。レガリアを後ろから一生懸命に押しているノクトから聞いてあげようか。
「真面目な顔して原因はレティだろ!」
「違うわ。不意打ちを狙ってきた帝国軍が悪いのよ!なんで私がいるのに襲ってくるの?馬鹿なの?うちの軍部は馬鹿なの?私がいるのに攻撃するってホント馬鹿なの!?」
呆れながら言ってくるのは同じく押し組のグラディオ。
「馬鹿馬鹿連呼してやるな。一応、お前の国だろ」
「いいのよ、私の国だもの」
そう開き直れば「はぁ」とため息つかれた。それに続くようにプロンプトが
「まさか全力でサンダガ×3仕掛けるとは思わなかったな~」
と暢気そうに言うので私は得意げに胸を張った。
「プロンプト、いいの。だって私に攻撃仕掛けようとしてるんだもの。全力でかかって当然だわ!万死に値する!」
「それをレガリア巻き込んでやるのがおかしいんだよ!」
最後のツッコミはノクトでした。
父上の形見であるレガリアがボロボロになってきっと落ち込んでいるのね。
ええ。ピッカピカのレガリアも流石に全力で落としたサンダガには耐え切れなかったみたいです。魔導兵共々巻き込んでしまいあえなく故障となってしまいました。10分間は無事に走っていたので問題なし!
というわけでシドニーに電話してレガリアを取りに来てもらうことになったのですが、私としては気まずいことこの上ない!だって全然連絡してないんだもの。しようと思ってたけど怖くてできなかったというかなんというか。でももしかしたらシドさん経由で連絡入っているかも。そうだきっとそうに違いないと考えた私はレガリアの物陰に隠れて彼女のトラックを待つことにした。
「皆、急にこっちに戻ってきたってじいじから連絡もらったから吃驚したよー。……あれ、誰かいる……?頭数が多いような……」
後ろに回り込まれて座り込んで隠れていたはずの私は彼女にしっかりと発見されてしまう。
「ギクゥー!?」
「…その変な反応の仕方は……レティ?」
「……えへへへ、こんちはーってグヘェ!」
「レティ!!」
シドニーの殺人的ボインに頭を抱き込まれて窒息しそうになった。暫くしたら離してくれるだろうと思い込んだのが間違いだった。
「レティの馬鹿馬鹿馬鹿―――!」
離れるどころか私を抱きしめる力はさらに強くなっていく。まるでナーガ系モンスターに絞殺されそうな気分だ。……あ、花畑にいらっしゃる父上と母上が慈愛に満ちた御顔で手を振ってこちらにおいでおいでしてる~。ヴァルハラもう近い~?今参りま~す。
「レティの手がぴくぴく痙攣してるぞ」
「ヤバイって!シドニー手加減手加減!」
あわや、物理的なやり方であちらの世界に強制送還されそうになってしまった私はノクト達のお陰で難を逃れた。シドニーの胸で死ぬなんて私の計画に予定はされていなかったのでまず助かった。
「もう!心配したんだからね。次こんなことしたらレティ専用のGPSでも付けちゃうよ」
「それは勘弁してください」
ぷんすか!ぷんすか!怒っているシドニーなんてレアだ、スイマセン、ナンデモナイデス。こってり絞られた私は大人しく後部座席におさまることになりました。強制的にスタート地点はハンマーヘッドになり私は肩身の狭い思いをすることになった。なぜマルマレームの森を目指していたはずなのに出発点に戻ってきてしまったんだろう。気分はニューゲームから始めたようだ。
「どうしてこうなったんだろうな」
ジト目で言われたのでハッキリと言った。
「魔導兵たちの所為」
「堂々と責任転嫁するか」
ぽこりとノクトから手刀をもらった。つい懐かしくて笑みが零れたら変なものを見るような目で見られてしまった。おい、そこは一緒に笑えよ。
「王子!ねぇ、レティが運転してもいいようにレガリア改造してもいいかな?大丈夫!きっとレティの運転にも耐えきれるスゴイのに仕上げてみせるよ!」
目をキラキラさせて自信満々に告げるシドニーと私の顔を交互に見つめてノクトは暫く考えたのち、一言言った。
「頼むわ」
「ひどっ!」
というわけでレガリアはシドニーの手によって改造されることになった。しばらく時間が掛かるというのでそこらへんで憂さ晴らしにモンハンしに行った。
「あ、あれは!?」
「私のアッシー!」
「違う!あれは絶対無理だっ!」
途中でアダマンタイマイと出会った時には私の乗りたい病が発生し、ノクト達が必死に止めようとする中、アダマンタイマイの背中に乗ろうと躍起になったりした。デカい体してるけど大人しい亀と同じだし穏やかな性格で甲羅に上るまでが大変だったけど見晴らしは最高に良かった。ただ後からくっ付いてきたノクト達は死屍累々でした。
「レティ~、用事が終わったから来たクポ~って、何皆して疲れた顔してるクポ?」
「クペ!」
懐かしき相棒、クペがはるばる帝国からやってきたので歓迎の抱擁を交わす私達。ああ、このモフモフ久しぶり。
「あ、クペか」
「……ノクト、少し頬がこけたクポ?」
「いや、なんでもない」
げっそりした皆をよそにシドニーからレガリアが出来上がったとの連絡を受けてアダマンタイマイに乗ってハンマーヘッドに向かえばそこにはオフロード仕様に早変わりしたレガリアと得意げに胸を張るシドニーの姿があった。
「スッゴイのが出来たよ!これならレティが運転してもきっと大丈夫さ」
「本当!?」
「うん!試しに試運転してきなよ」
「わかった!」
早速レガリアに乗り込んだ私は男たちの止める声など一切無視してハンドル握ってアクセルを踏み込んだ。
「安全運転で行ってきま~す!」
「うん、行ってらっしゃい」
レガリアtypeーD、荒廃とした砂地もエンジン吹かして走る走る。ジャンプしたり走ったりジャンプしたり走ったり車体が斜めになったり気絶者が出たりそれはそれは大変楽しく運転できた。でも無事にハンマーヘッドに戻ってきた時にはこれまた死屍累々と化した男たちがおりました。
「お帰り~。どうだった?」
「楽しかったよ!私はね」
だけど私以外、特にノクトは切実にシドニーに引っ付いて訴えた。
「普通に戻してくれ!」
「えー、せっかく改造したのに」
むくれるシドニー(可愛い)に対して、
「金なら幾らでも出すから頼むから普通のレガリアに戻してくれ!」
「………」
お金にシビアなイグニスが藁にも縋るような必死な表情でそうシドニーに頼み込んでいる姿を見たらちょっと複雑な気持ちにさせられた。ちなみにグラディオはクペと共に気絶したプロンプトをテントで介抱していたのでこの場にはいなかった。
「分かったよ、じゃあ空も飛べるレガリアなんてどう?」
「楽しそう~!」
思いがけない素敵な提案に女子二人で盛り上がっている横で、
「オレもうチョコボでいいわ!」
ヤケクソになって全力で叫びこの場から逃走を図ろうとするノクトと、
「いやオレは遠慮しておこう」
と真顔で全力否定しているイグニスがおかしくて二人でふきだして笑ってしまった。
【笑うってこんなんだったんだね】