レグルスの子供たち   作:サボテンダーイオウ

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※※※

 

わたしは、ゆっくりと瞼を開いた。

腕が、手が、唇がうまく動かせない。のどがカラカラする。

ベッドに寝てたみたい。ベッド脇に見慣れた顔がのぞいてた。

 

「クレイ、…クレイ……?」

 

なんだか久しぶりにクレイの顔見た気がする。

わたしはかすれかけてる声でクレイの名を呼んだ。

 

「姫!目を、覚ましたか……!……良かった、本当に、良かった…!」

 

クレイは慌ててわたしの手を両手で握りしめては嬉しそうに何度も同じ言葉を言い続けた。なんだか目がうさぎさんみたいに赤いの。もしかして泣いてたのかな。

だったらびっくりしちゃう。だってわたしクレイの泣いてるところなんかみたことないもん。そういえば、クペの姿が見当たらないと思った。

そしたらわたしの顔の横にクペが一緒に寝てた。きっと頑張ったから疲れたのかも。

……あれ、なんでクペは頑張ったのかな。だって昨日はいつもと同じで一緒に書物室で本を読んでたはずだけど…。

まっ、いっか。今は寝かせてあげよう。

それよりも、クレイに言いたいことあったんだった。

大変!クレイったら部屋から出て行こうとしてる。なんだか焦った様子でメイドを呼び寄せてるし、お医者様もとかなんとか叫んでる。

 

「クレイ、聞、いて」

 

わたしは、クレイに聞いて欲しいことがあったから、自分の体を起き上がらせようとした。でもなんだか体がうまく動かせない。とっても重たくて、わたしは力が入らなくてまたベッドに倒れ込んじゃった。そしたらクレイがびっくりしてまた飛ぶようにベッド脇に戻ってきた。

 

「姫?無理をするな。まだ起き上がってはならない」

 

ってわたしをベッドに寝かせようとする。でもわたしは眠たいわけじゃない。だからクレイの手をうまく動かせない手で軽く触った。

 

「わたし」

「今は休むんだ。私の為だと思って…」

 

どうしよう、またクレイ泣きそうな顔になってきた。泣かせたいわけじゃないのに、ただ聞いて欲しいだけなのに。わたしはコクコクと頷いた。そしたらクレイはほっと息をついて安心してくれたみたい。良かった。これでちゃんと話をきいてくれるはずだもん。

 

「クレイ、聞いて。わたしこの国を出るわ」

「姫、今、なんと言った」

 

両目が落っこちてしまいそうなほど大きく見開いてクレイは声をふるわせてた。

怒ってるかも。でも言わなくちゃいけない。

 

「クレイ。いつか、わたしは自分の足で、この国を出るの」

「何を、言うんだ……」

「だれかにみてもらうためじゃない。だれかにひつようとされたいからじゃない。わたしは、わたしのためにこの国を出る」

 

どうしてかは、わたしにもわからない。

でもわたしの中で何かが変わった。誰かに必要とされる毎日じゃなくて、誰よりもわたしの、わたしの為だけに生きるって。ここにいることだけがわたしの全てじゃないって思えたの。

 

「だから、また明日から修行させて」

「…姫……」

「明日からちゃんとまじめにやる。弱音吐かないしわがままも言わない。わたし、ちゃんとやる。だから」

「レギスが、許さんぞ」

 

クレイはあの人の忠実な部下だもの。そうくると思った。

そうやってわたしを止めようとしてる。わかるよ、クレイは優しいもん。

でもわたしは笑顔でいいよって頷いた。

 

「あの人に伝えたければ伝えてもいいよ」

「………レティ……」

「クレイ。わたし、自分で決めたの。ここに、わたしの居場所はないの。だから外の世界へ出て自分の居場所を自分で探してみたい。きっとどこかにあるはずなの。わたしの居場所が」

 

ここ(インソムニア)にはない。ここはノクトの居場所だもの。

飾りだけの王女がいていい場所じゃない。

クレイはわたしのことを知っている。だからわたしの言葉になにも言い返せなかった。

詰まるように、口をぎゅっと結んで悲しそうな顔をした。

 

「レティ」

 

また名を呼ばれて、ゆっくりと大きな腕がわたしを包み込んで抱きしめてきた。

あの人にもしてもらったことないのに、クレイは愛情込めて抱きしめてくれた。

 

「…クレイ…」

 

あったかくて、泣きそうになっちゃった。

でも泣かなかったよ。

わたしは、もう泣いちゃいけないから。

 

「クレイ、ありがとう」

 

わたしにできるのは、今までのことに対してのお礼をちゃんと伝えること。

 

「それとごめんなさい」

 

これから先のわたしがきっと迷惑かけるからちゃんと謝ることだけ。

その時にわたしはクレイの前にいないと思うから。

クレイだけだよ。わたしの気持ち受け止めてくれてるの。今のわたしを否定しないでくれてるもん。

 

「クレイ、わたし、頑張るよ」

「………!」

 

クレイはお父さんみたいだねって照れくさいけどそう、伝えたら、今度こそクレイは泣き始めちゃった。わたしはぽんぽんと届かない手でクレイの背中をたたいてあげた。

親子ってこんな感じなのかな。

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