レグルスの子供たち   作:サボテンダーイオウ

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10月25日

レティーシアside

 

 

そういえば今日は何日だっけと何気なしにクペに尋ねれば、10月25日クポと教えてくれた。私は、ふーんと気のない相槌を打って、何かあったような妙な引っ掛かりを覚えて、なんだったけなんだったけ?と部屋の中をぐるぐると歩き回って思い出そうとした。けどやっぱり思い出せなくてクペを伴ってプロンプトを構いに行った。

私が声を掛けた途端、「ヒッ!」と小さく悲鳴を上げてぷるぷると体を震わせて怯えだした。どうやら私が声を掛けるのを待っていたらしい。愛い奴愛い奴。

私は首根っこ引っ掴んでズルズルと草原に引っ張り出した。

 

「お願いだから遊びの誘いで魔法連打しないで――!」

「遊びは遊びなの暇なの退屈なの思い出せないの何とかして!」

「それ明らかな八つ当たりじゃっ!?」

「ほらほら!まだまだ動きが鈍い」

 

いつものサンダー+エアロガ効果でビリビリしながら吹っ飛ばされるプロンプト。

ちなみにノクト達は私がテントから出てきてプロンプトに話しかけたと同時にそそくさと逃げた。解せぬ。

 

「うわぁぁあああああ―――」

 

うん、今日も見事にプロンプトが空を舞った。

レベルも上がっていることで上々。一応言っておきますがこれは私なりのプロンプト強化作戦の一環であるのです。皆の中で足手まといじゃないかと悩んでいる彼の手助けになればと思いついた案。レベルが釣り合わないならレベル上げればいいだけの話じゃない、と思ったわけ。そこで私の魔法の出番!幸い私は魔力が枯渇しないのでいくらでもプロンプト相手に発動できるし場所も選ばない。プロンプトもすっかりレベルの低い魔法に耐性がついたようで大げさにビビることはなくなった。今は中級クラスの魔法で相手している。

 

あれ、プロンプトが空を舞う……。プロンプト、プロンプト……。

ハッ!?

 

なんてこと、私は今日があの日だということをすっかり忘れていた。

 

ショックのあまり、よろりとその場に膝をついてしまった。

すぐ向こうで大の字になって目を回しながら地面に気絶しているプロンプトを回収しようとしているノクトたちは全然気にならなかった。

 

今日がプロンプトの誕生日だということを……!

なんてこと、大切な友人の生まれた日を忘れてしまうなんて。

レティーシア一生の不覚っ!

 

けどまだ取り戻せるわ!

今日という日はまだ、終わっていないもの。

 

「レティ、頑張るのよ!」

 

私はぎゅっと拳を握りしめ、みなぎる闘志を奮い立たせた。

 

「またろくでもないこと考えてるクポ」

「戻るわよ」

 

私の頭に乗っかっているクペの発言は無視。

私はこそこそとテントの自分の部屋に戻ってクローゼットを漁りながらクペに今日がプロンプトの誕生日であること。サプライズプレゼントをしてあげようと思っていることを教えた。

 

「クペ、良い作戦があるわ。前にグラディオが読んでた雑誌に書いてあったのを覚えているの」

「あの暇つぶしに読んでグラディオから奪い取った雑誌クポね」

 

クペは私が放り出した服を畳んだりまた、綺麗に整えながら話を聞いていた。

 

「一部必要ない説明があるわね。そうよ、そこにこう書いてあったわ。ずばり、あることをしてもらうと男は有頂天になって天国にでもいるような気分になるんですって!」

 

前、手に職を付ける練習用として気分でも味わおうと密かに買っておいた衣装があるはずなのだ。城の部屋にあったものは大概全てクペに持ってきてもらっているはずだからこのクローゼットにあるはず……。

 

私がごそごそと漁り始めてから三十分後。部屋中私の服だらけでぐちゃぐちゃだけど仕方ない。クペはソファに横になりながら気持ちよさそうに寝息を立てていた。

 

「見つけた!」

「クポ!?」

 

私の歓喜溢れる声にクペが何事と飛び起きた。

私はそれを自分の体に当てて笑顔でクペに向き直った。

 

「やったよクペ!ついに見つけた。男の欲望を満たすに相応しい衣装……メイド服!」

「レティがメイド、クポ?」

「そうよ、これでプロンプトにご奉仕するの。きっと最高のプレゼントになるに違いないわ」

「……血を見ることになりそうクポ。メイドはやめておいた方がいいクポ」

「?血?そんな物騒なことあるわけないじゃない。ほらほら、クペはイグニスに誕生日ケーキ作るようお願いしてきて。あ、プロンプトには内緒だからね?」

「一応、クペは止めたクポよ」

 

クペはパタパタと羽を動かして部屋を出て行った。

まったく、私にメイドが務まらないって言いたいのね。血を見るだなんて遠回しな嫌味に負けるレティじゃなくってよ!

 

「見ていなさいプロンプト!貴方の誕生日、一生忘れられないくらい最高なものにしてみせるわ!」

 

高笑いさえしてしまいそうな高揚感に包まれ、私はさっそくメイド衣装を着ることにした。勿論、メイクも抜かりはなし。

……そういえば、これ初めて袖通すんだった。城の中じゃ使用人の監視の目があるから着る機会がないままクローゼットに入れっぱなしだったし。

ちょっと胸元が開きすぎてスース―するし背中もがばっと開いてるしスカートの丈も短すぎて落ち着かないけど、仕方ない。これもプロンプトの為と腹を括って、猫耳カチューシャを装備。

 

「頑張るのよ、レティーシア!」

 

グッと拳を強く握りしめてやる気に満ちた私はいざドアノブに手を掛けたのだった。

 

プロンプトside

 

途中までは良かった。レティのスパルタ修行に捕まりいつものグラディオに介抱されれて意識を回復させて、体調を気遣ってくれるノクトに肩を叩かれ「よく、耐えたな」とねぎらいの言葉をかけられて思わず涙ぐんでしまった。グラディオもノクトと同じように、「今日は一杯、飲もうぜ」と誘ってくれたりして感極まったプロンプトはつい、零れそうな涙を無理やり腕で隠しながらコクコクと頷くだけで精一杯。イグニスが「仕方ない、今日はプロンプトの好物にしてやる」とまで言われしまえば感涙するしかない。

 

自分にはこんなに親身になってくれる仲間がいる。

たとえ、鬼コーチ(レティ)に辛く当たられようとも(八つ当たり)自分は頑張れる。仲間が一緒にいてくれるなら――!

 

だがその仲間、ノクトとイグニスはすぐに掌返してプロンプトを敵とみなして、女ならハンカチ噛んで悔しがるところ、武器携えて今にも襲ってきそうな血走った目つきになっている。

 

確かに今日は、プロンプトの誕生日だ。自分でも今の現状を忘れていたくらいに。

 

どうしてこうなったと数分前の自分に問いたい。

どうして自分の膝に彼女が乗っているのか。

どうして自分は敵役を見るような目で仲間二人(ノクトとイグニス)に攻められているのか。

 

そう、全ては今日がプロンプトの誕生日である故!

 

麗しいメイド様はプロンプトに熱心に奉仕することで頭がいっぱいなので射殺さんほどの殺気を向けられていることに気づいていない。

普段はこんなこと絶対しない癖に、いざヤル気になるととことん頑張ろうとする彼女の前向きさはとても好感が持てる。もし普通の出会いだったら一発で恋に落ちているだろうと思う。

 

「ご主人様?ほら、あーん」

「あ、あーん」

 

小悪魔ミニスカメイドのレティが硬直状態にあるプロンプトの膝に座り、小さく切ってフォークに乗せたケーキをプロンプトの口元に運ぶ。促されるままプロンプトは口を開いてケーキを食べさせられる。レティの視線が見守る中、もはや恐怖で味がしないケーキを咀嚼して「おいしいですか?」と尋ねられれば「うん、おいしい」と答えるしかないだろう!

 

「レティ、今日はうーんとご主人様にご奉仕しちゃいますね!」

 

絶対わざととしか思えないそのたわわに実った豊満な胸を強調するような仕草。ってか、どうしても視線が釘付けになってしまうこの距離。ご奉仕って意味わかって言ってんの!?男は違う意味で受け取っちゃうん生き物なんです!その恰好マジで目の毒になんで着替えてきてください!ってかオレ、殺されるかも。マジでやめて!と思わず叫びそうになった。

 

殺気が、俄然と増した。グラディオが無言でプロンプトに親指を立て、静かに席を立つとテントへ逃げた。

 

「ほらほら、まだいっぱいありますから」

「あ、う、うん。あの、姫」

「駄目です。ちゃんといつも通りにレティって呼ばないと」

 

ぷっくりと吸い付きたいような柔らかい唇をツンと尖らせてレティはプロンプトを軽く睨む。

 

「あ、う……」

 

もう色々と限界に近いプロンプト。ただでさえ、性格を除けば可憐な容姿のレティにここまで傅かれれば思わず錯覚してしまいそうになる。え、もしかてこのメイド姫って自分の?お持ち帰りオッケーですか?って。

自分の膝に乗っかるレティのお尻がぷるるんぷるるんしててあ、下半身疼いてヤバイ。絶対領域から覗かせる白のニーソックスが艶めかしすぎて眩しいくらいです。拝みたいくらいです。高鳴る心臓がイカレテしまいそうになる。

数々の女子たちと仲良くなったプロンプトでも特定の女子は作らなかった。

 

なぜなら、本気になれなかったから。

 

だが吊り橋効果だろうか。

嫉妬に狂う男たちの殺気の中、普段とギャップの差が激しすぎるレティにプロンプトは、これは落ちてもいいのだろうかという問いさえ浮かんできた。というか彼は既に落ちている。なのでいくらでも落ちても構わない。

 

なんだかんだ言ってレティのお気に入りポジションにいるプロンプトは、ある意味イグニスよりも有利な立場にいる……はず。しかし、すでに恋の合戦に二人の男が名乗りを上げている現状、果たしてプロンプトに勝敗があるだろうか。

……否、考えるな感じろ!と彼の有名な故人は名言を言い残した。

今、プロンプトがやらなければならないのは、レティとちゃんと名前で呼ぶこと!

しどろもどろになりながらも、プロンプトは意を決して名前を呼んだ。

 

「そ、の…あ、うぅ……レティ…」

「はい」

 

照れくさそうに頬をピンク色に染めてレティは頷いた。

 

ズッキューン!

 

「はぅ!」

 

プロンプトのハートは見事撃ち抜かれた、というよりぶち抜かれた。

 

「きゃあ!」

 

大げさに仰け反った所為でレティも一緒に倒れてしまい、その反動で地面にレティを下敷きに覆いかぶさる形になってしまったのを目撃した二人は、無言で戦闘態勢に入ったとか。

 

ちゃんちゃん。

 

【Happy Birthday!プロンプト】

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