レグルスの子供たち   作:サボテンダーイオウ

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プリンセスの疑問

最近、恋の合戦図に新たな勢力が加わったことはご存じだろうか。

なんと意外な伏線、プロンプト・アージェンタム。途中参加だがその勢いは他の勢力と負けず劣らずで、チャンスを見つけたらすかさずアタックするのは、はやりナンパ慣れしているからだろうか。だがその彼の頑張りもレティ相手になれば空回りしてばかりいる。

二人のやり取りに毎回やきもちしている二人にはサムズアップしたいところだろう。

が、逆に自分の立場が危うくなる時も、たまにある。

 

それがたまたま、今日だっただけの話。

レティのバイト帰り、皆で温かな食事を終えて一息ついた頃。

イグニスから手渡されたココアを一口口に含んで、レティはほうっと息をつく。

思い出したようにレティはある話題を口にしてきた。

 

「……そういえば、気になってたんだけど」

「どうした?」

「イグニスって女性経験あり?あ、例外(私)は覗いて」

 

途端イグニスは

 

「ぶっ!?」

 

と口に含んでいたコーヒーを噴き出してしまう。その被害を被ったのはグラディオで

 

「おわ!?」

 

と反射的に椅子から仰け反ろうとしたが失敗して椅子ごとひっくり返ってしまった。

 

「レティ、いきなり確信突いてきたな」

 

ノクトは笑ってしまいそうなのをかみ殺して声を震わせながらそういった。

イグニスはすぐに体制を立て直し、ノクトを一睨みしてからレティに名誉挽回の言い訳をし始めた。

 

「いいか、レティ。確かにオレは君との婚約を破棄されてから数々の見合いをしたりそれなりに女性との付き合いもあった。だがやはり心のどこかで自然に振舞えない自分がいた。オレという人物を見てくれるがオレが逆に相手に対して別の何かを重ねてしまうんだ。そこで相手の女性も違和感を感じ取っていたのだろう。そんなことを何回か重ねている内に自然消滅に近い形で終わるんだ、いつもな」

「あー長いから切らせてもらうけどようはあるのね。それと手、どさくさに紛れて握らないで」

「……すまない……」

「別に責めてるわけじゃないから安心して。ただ皆はどうなのかなって素朴な疑問」

 

どうやら標的はイグニスだけではないらしい。

次の生贄は……。

 

「……何ですか、姫のその視線は」

 

プロンプトだった。じーっと見つめられて少し冷や汗をかいてしまう。

嬉しさと気まずさとイグニスからの流れで、これはヤバイようなという危機感が募った。

わざと姫と呼んだのに訂正させられる。

 

「レティ、でしょ?」

「…う、その、レティ……(あぁ!公開処刑だ!?しかも二人の視線が獲物を狩るような物騒なものにチェンジしてんですけどっ!)」

「何怯えてるんだか。変なの。それでプロンプトは?」

「へ?」

 

きた。

やっぱり、来てしまった。

 

「へ、じゃなくて女性経験、あるの?」

「……オレニキクンデスカ」

「なぜ片言に」

「……」

 

絶対言わなきゃ許さない、という無言のプレッシャーがビシビシとプロンプトに突き刺さる。

 

「……いや、そのあんまりないです」

「へぇ、意外。よく町中でナンパしてたから。こう、年上のオネーサンとか?」

 

ズバリ当たっている。

 

「それは前の話!今はしてないし年上には、興味無くなったというか……(だってすぐ目の前にいますから!)」

「どういう心境の変化かしら?あ、もしかして……」

 

緑色の瞳がきらりと光り、プロンプトは鼓動を早打ちさせる。

 

「……」

「あれでしょ!よくお昼のドラマである彼氏持ちの子と浮気しちゃって彼氏にその現場抑えられてぼこぼこにされちゃってトラウマになってるとか?」

「ぶっ!!違うからっ!ぜんぜん違うから!だいたい現場って何ですか現場って!」

 

あやうくイグニスと同じことをしそうになってしまったが、幸いプロンプトのカップはあとちょっとで飲み干しそうだったのでセーフ。いや、セーフじゃないとプロンプトは頭を振る。

 

「なんだ、残念」

「残念なの!?レティの中じゃオレは浮気者扱いなの!?」

「浮気は良くないよ浮気は」

「いやだから浮気とかしてないし。オレはこう見えて一途だって!」

 

必死に訴えた。指摘されて顔近づけるくらいにプロンプトは必死だった。

それとなくレティに両手で顔を戻されるくらいに。

 

「どこら辺が?それと顔近いわ」

「……、そのオレ、軽そうに思えるかもしれないけど!レティには一途だからっ!」

 

思いがけない告白にノクトとイグニスは息を呑んだ。

 

「「!?」」

 

レティは瞬きを繰り返して頬を蒸気させたプロンプトを見つめる。

 

「……」

「……」

 

しばらく静寂が続いたのち、レティがゆっくりと口を開いた。

 

「……それって」

「……」

 

プロンプトはごくりと息を呑んだ。

 

「私にずっと鍛えてもらいたいってことなのね」

「えぇ!?なんでそうなるの!」

 

思わずツッコんでしまうくらいのボケっぷり。わざと言っているんじゃないかと疑いたくなるくらいの展開だがレティはお構いなしに暢気に笑って手をパタパタと振りながら、

 

「やだぁ~、照れなくてもいいのに。大丈夫、プロンプトの根性は出会った頃に比べれば俄然逞しくなってるわ。その証拠に私が放つサンダガは余裕で避けられるようになったでしょう?」

 

と太鼓判押されてては困惑するしかないプロンプト。

 

「それは確かにそうだけど……」

「そうなのかよ」

 

何かが可笑しいとグラディオはツッコまずにはいられなかった。

ノクトとイグニスはほっと一息ついた。

 

「グラディオは、一応聞いておいてあげるわ」

「ノーコメントだ」

 

ニヤリとグラディオは笑って返した。

 

「そうくると思ってたわ」

 

レティは呆れてもう話題は尽きたように口を閉ざした。だがノクトが納得いかないとばかりに声を上げた。

 

「待てレティ。オレには聞かねえのか?」

「いやだってノクトは分かってるし」

「!?」

 

レティは恥ずかしげもなくこういった。

 

「ノクト童貞でしょ」

「~~~!?」

 

顔を真っ赤にさせて金魚のように口をパクパクさせて言葉を失うノクト。

 

「それこそごく最近まで一緒に寝起きしてたんだから分かるわよ。いくら私が城から出てないからってそういう性知識はあるつもりよ。一応、それなりの教育は受けてきたんだし……。たまに、その、ノクトのアレ、当たってたし……」

 

後半の台詞にはやはり、ぽっと頬を染めて視線を逸らしながら気まずそうにいった。

アレ、とあやふやな表現として言っているが、もう十分理解できた。だからこそ、男たちはノクトに同情の視線を送ることしかできなかった。

 

「……」(終わった、オレ)

 

ノクトは100メガショックをくらい椅子の上で膝を抱え込んで沈黙し、ついでと言わんばかりにグラディオが質問すると、

 

「ちなみにレティは……あー、失言でした。スマン」

 

最後まで続かなかった。無言の圧力で言葉が途切れたからである。

訊きたかったらデスを喰らえ、ともレティの顔には書いてあると読んだグラディオ。

イグニスは明後日の方向を向き、、無言で徹した。

 

「……」

「何も言ってないぞ、オレは」

「よろしい」

 

レティはふわぁ~と欠伸一つして「寝るね、おやすみ」と挨拶してクペのテントへと戻っていった。

 

「……ノクト撃沈だね」

「レティは、恋のABCのAまではいってるクポ」

「クペ!?」

「乙女の唇は安くないクポ」

 

ひそかな復讐を遂げたクペは普段の愛らしさを感じさせないあざとい笑みを浮かべさっさとクペのテントへ入っていった。

ここでノクトが完全復活を遂げ、プロンプトとタッグを組んだ。

 

「どういうことだ、イグニス」

「ちょっと詳しく教えてほしいかな~、なんて?」

 

珍しく、ゴキリゴキと手の関節を鳴らして満面の笑みを浮かべるプロンプト。

慌てふためいたイグニスは手で制しながら後退しながら必死に口を滑らせる。

 

「いや待て!まずは冷静に物事を見極めてだな。大体アレは事故であって決して他意があったわけでは…!」

 

だが、これがいけなかった。いつもなら冷静沈着な彼も恋に関しては冷静さを失うくらい取り乱すこともある。今まさに不意打ちを突かれ気が動転し余計なことまでするっと喋ってしまった。それを見逃すはずがない二人は、

 

「事故、だってぇ?」

「他意、どういうこと?」

 

とさらにイグニスを追い詰める。我関せずと言った風にグラディオは二人に発破を掛ける 。

 

「イグニス、今夜は二人とハッスルして来い。いい、礼は言うな。オレは静かなテントで快適に寝かせてもらうさ」

 

くわぁ~と大きな欠伸をひとつすると椅子から立ち上がりイグニスに手を上げてテントへと戻っていく。

 

「ま、待て!?何を勝手に」

「「ちょっとこっちきてもらうか」」

「なっ、ま!」

 

有無を言わさずノクトとプロンプトによって連れて行かれる憐れイグニス。

 

【そういう話題だってしたいじゃない】

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