レティーシアside
意外と楽しかったバイト生活を終えその中で得たある情報を活かすためにも私は最後のファントムソードをノクトに回収させる為、まったりと過ごす男達の尻を叩くようにレガリアに詰め込んで走らせ行きついたのは私達の本来の目的地であるマルマーレム。真面目に行けば結構早くつくもんだと今更ながらに気づいた。ベリナーズ・マート ラバティオ店でとりあえず運転の疲れを癒してからマルマーレムの森へ行くことになったのだが。
「ったく。もう少しゆっくりしてても良かっただろ」
むすっとした顔で私に文句を言ってくる隣の椅子に座るルシスの王様。
せっかく美味しくお昼を食べているというのにこの顔では美味しいものもまずくなるというもの。
一体何が気に入らないというのか。ノクトは人が必死にバイトしてる間にやけ顔でジュース飲みながら緩んでたくせに。それに知っているんだぞ、スマホであのゲームしてたよね。プロンプトと。私がバイトしてる時に!
ゲラゲラ笑っててさ、お店の雰囲気ぶち壊してたの気づいてた?
それとグラディオがとっかえひっかえと女の人にナンパしているのもクペによって確認済みだ!イリスに報告済みなのでその内イリスの雷がグラディオに降り注ぐであろう。
ケケケケ!
「あくどい顔してるぞ、レティ」
「まったくそんなことはないわ!イグニス。私達の目的はノクティスのファントムソード回収。これのみ!」
「……ふん」
ハッキリ言い切ってやればノクトは行儀悪くテーブルに頬杖ついて不貞腐れそっぽを向いた。
まぁ!なんて品がないんでザンショ。
イグニスは私達のやり取りに呆れながら尋ねてきた。
「それでこの先に聖王の墓所があるんだな」
「ええ。貴方達なら軽く倒せるレベルだわ」
「レティにかなり鍛えてもらってるから楽勝かもねー」
なんて余裕そうにプロンプトはお腰の銃を手に取って軽やかにくるりと回した。
「油断は禁物だ。プロンプト」
「そうだ。予想外の出来事だって起きるかもしれねーぜ。たとえば、レティの我儘発動とかな」
にやりとグラディオは意地悪い笑みを浮かべた。
「ふん。言ってなさいグラディオ!この私がそんな足先乱すようなことするわけないじゃない」
自信満々に言ってやったが、私の膝に座っているクペがぼそりと呟いていた言葉は耳に入らなかった。
「きっと何かあると思うクポ」
※
レガリアからチョコボに乗り換えた私達はさっそくマルマーレムの森まで全力疾走した。すでに夕暮れ時でモンスターと遭遇率も高くなっていたがそんなものノクト達の敵ではない。私ならもっと余裕だ。というか私では敵と認知されずに貢物を持ってきてくれるのでガンガン来て!という感じだ。これぞモテ期というやつではなかろうか。
だが相手がモンスターだから虚しくない?とイリスなら言いそうである。無料でもらえるのだから別に構わないだろう。別に求愛受けてるわけじゃあるまいし。
バンダースナッチ。乗ってみたくなる背中をしていた。抑えていた衝動が沸き上がりつい、暴走してしまった。乗りたくてたまらない。乗りたい、アレに乗って走ってみたい。
全身で風を感じ取りたい!
「ちょっくらアレに乗っても」
隙を見て飛び乗るくらい私ならいける!と地面を蹴りだそうとした時、ガシッと抗えない力によって私の行動は抑えられた。
「レティ」
「………はい。諦めます」
ああ、悲しきかな。乙女として扱われないこの虚しさ。振り返らずとも分かる強面のグラディオによって頭を鷲掴みされるといういらないイベントによって私の野望は見事破れてしまったのだった。
バンダースナッチはノクト達の華麗な立ち回りによりあっけなく倒されてしまった。ちなみにグラディオは私の見張り役です。だからって頭を鷲掴みしなくてもいいと思うのに。
「お前の足意外と速いからな。駆けだされたら終わりだ」
「さいですか」
ぶーと頬を膨らませて拗ねる私の手をノクトは「ほら行くぞ」と引っ張って率先して聖王の墓所へ向かう。途中でバンダースナッチの亡き骸が目に入り、うぅ乗りたかったと未練がましく追ってしまう。ムカついたのでノクトと繋いでいる手をブンブン振ってみた。
「なんだよ」
「別に!」
ツンとそっぽ向いて拗ねるとノクトは仕方ないと肩を落としては、一旦歩みを止めた。そこで私に向かって背中を見せしゃがみ込んだ。
「おんぶしてやるよ。ほら。昔よくやったろ?」
「あ!そっか」
ぽん!と一つ手を叩いて納得した私は躊躇いもなくノクトの背中にしがみ付いた。するとノクトは小さく「……う」と呻いた。全体重をかけているからもしや重たいと感じたのか。だったらショックだ。これでも私なりに体重に気を付けているのだ。主に戦闘でシェイプアップしているというのに。
ついとげとげしい口調になってしまう。
「何よ。言いたいことあるならハッキリ言いなさいよ」
「いや、重くはないけど(……胸が柔い)」
後半の言葉がぼそぼそと小さすぎて何言ってるか聞こえなかった。あれ、そういえば斜め前方にいるイグニスの気配が少しおどろおどろしいような?
「ブツブツ……(ちょっとポヨン!と当たっただけだ。そうだ冷静になれオレ。アレは兄妹としてのスキンシップであって恋人同士のスキンシップではない!決してない!)」
プロンプトは激しい歯ぎしりしてこちらを睨んできている。
「………(あれ絶対当たってるマジ当たってる!!役得?あれって役得!?)」
もしかして、ノクトに背負われたかったのか。だからそんな射抜かんばかりの目で私を睨んでいるのね!?羨ましいのね!?だが譲らん!
私はノクトの首に腕を回して離すまいとさらに密着させるとビクン!と分かりやすくノクトが反応したが気にしない。ノクトを急かすよう私ははしゃいで大声を上げた。
「ほらほら!走れノクティス号~!」
「いやここ斜面だから!」
昔懐かしやり取りに胸躍らせてしばしの戯れをした後、ノクトは無事に最後のファントムソードを入手することができた。でもそれは私がノクト達と別れなければならないというタイムリミットを過ぎた証でもある。
もう少しだけ、もう少しだけと誤魔化し続けてきた時間は私を追い立てる。
その日はもう遅いので一旦ベリナーズ・マート ラバティオ店まで戻って休息をとることになった。クペのテントを出してもらって自室のベッドに豪快にダイブ。
遅めとなった夕食が出来上がるまで少し横になることにした。
【さよならはどのタイミングで言えばいい?】