レグルスの子供たち   作:サボテンダーイオウ

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Confessions of a 2 second

何度だって君にこの想いを伝えたい。許されるなら――。

 

イグニスside

 

 

突如レティの身に起こった変化から数日が経ち、その間レティはテントに閉じこもりがちになった。レスタレムへ急ぎ戻りたい所だが本人があの状態では動かしようがない。

クペが外へ出るよう誘っているようだがやんわりと断ってはベッドの上で丸まっているらしいのだ。無理に連れだすことももちろんできたが、そんなことをすれば精神的に落ち込んでいる彼女のことだ。今後においてどんな行動に走るか想像できない。……今までも予想だにしない破天荒な行動で何度激しい胃痛を感じたことか。

下手に刺激するような真似は避けたがったが、やはりこのままではいけないと腹を括りレティの部屋を訪れた。

 

「レティ、少しいいか」

 

控えめにノックをし、返事を待たずしてドアノブに手を掛けた。多少強引にいかねばと思ったからであって普段であれば女性の部屋に勝手に許可なく入ったりはしない。

今はあくまで緊急事態と自分に言い聞かせる。

部屋の主、レティはベッドに寝そべっていたようだ。億劫そうに上半身を起き上がらせて、普段よりも低い声と無表情で

 

「……イグニス、何か用?」

 

オレの訪問を出迎えた。やはり歓迎はされないらしい。

 

オレはひるまずにパタンと扉を閉めて改めてレティの状態を確認する。

……やはり、見慣れないというか落ち着かない。

元々レティの容姿は整っているほうだと思うが、それに神秘的な髪の長さが相まって猶更人間めいて見えない。まるで妖精の女王……。

正直、一瞬見惚れてしまっていた。

ベッド上に散乱するように広がるレティの髪は毛先が何処だかわからないくらい伸びている。

 

「いや、そのコホン!」

 

オレはわざとらしい咳をして間をつくった。

レティが怪訝そうな顔でオレの言葉を待つ。なんと言いだそうか迷ったが、やはりストレートに言うのが一番と考えオレはゆっくりと口を開いた。

 

「……少し君の髪を結ばせてもらえないか、と」

 

オレの突然の申し出に、レティは肩を竦めては軽い嫌味を言ってきた。

 

「……いつから貴方はノクティスのお目付け役から私のスタイリストに転職したの」

「したつもりはないが、ダメか?」

 

正攻法で言い返すと、レティは戸惑った様子で言葉を詰まらせ、少し間をあけて

 

「……別に、構わないけど」

 

と小さな声で了承してくれた。オレは

 

「そうか、ありがとう」

 

と礼を伝えベッドに近づき、レティに手を差し出した。

レティはしばしオレの手を見つめていたが、「はぁ」とため息をついて自分の手を乗せてベッドを降りた。

誘う先は、レティ専用の鏡台へ。

 

 

初めてにしては上々な出来栄えとなった。

オレは満足げに頷いた。

 

「よし、できたぞ」

「……すごい!綺麗に編み込んであって長さも短くなってる。可愛い…!」

 

鏡台備え付けの椅子に腰かけたレティは色々な角度から自分の様変わりした姿に喜んでくれた。少しレティの髪を編み込んで動きを軽やかにしつつ、レティの元々持っていた髪留めなどを使ってみたんだが。三つ編みされた髪の束を耳の横に持ってきて、「おお!」と感嘆の声を上げるレティを見てある種、達成感を感じられずにはいられなかった。

 

「喜んでもらえてなによりだ」

「さすがイグニスね、手先が器用でも一発でできる人はそうはいないわ。あ、ごめんなさい、もしかして慣れてた?」

 

慣れてた?それは主に女性との交流という意味なのか。

 

思いっきり勘違いされる前に訂正しなければとオレは内心焦った。

 

「……どう思われているのか言わないでおくが、他の女性にこんなことはしたことがない。その、レティが初めてだ。レティだからしてやりたいと思った」

「……そう、ありがとう……」

 

割と本気で言ったつもりなんだがあっさりと礼を言われ、レティの興味はまた鏡の方へと向いてしまった。このままではさっさと戻っていいわよなんて言いかねない。オレはこのチャンスを逃すまいと行動に移した。

 

「その、ついでといっては失礼なんだが。……これを、受け取ってくれないか」

「ん?」

「手を出してほしい」

「こう?」

「君にこれを渡そうと思って」

 

内緒で購入していたもの。

ジャケットの胸ポケットから取り出し、レティに差し出した。

訝しみながらレティはそれを受け取る。

 

「……これは?」

「開けてみてくれ」

 

オレに促されおそるおそる箱を開くと、

 

「…あ、イヤリング?」

 

そう、ある店で買ったんだがレティに似合うと思って買ったものだ。

 

「ああ。君に、似合うと思って選んだんだ。気に入ってくれると嬉しい」

「……これを。私に?随分と装飾も見事だし高そうだけど」

「そうでもない。君が値段など気にする必要はない。オレが好きで買っただけなんだ」

「……でも」

 

どうにも受け取ってくれ無さそうな怪しい流れだ。

 

「……気に入らなかったか?」

「そうじゃない!……どうしてこんなことを」

「……レティ……」

「どうしてそこで頭抱えるの」

 

わかってはいた。こういうところも好ましいと思っていた。

だが贈り物をされて好意を抱かれていると予想できないものか。そいうところは箱入り娘だと思った。

 

「やはり、君にはちゃんと確認をとらなければならないな」

「確認?」

 

オレは腰かけているレティの前に片膝をついて、上向きに見つめながら彼女の手を両手でとり真摯に想いを告げた。

 

「……聞いてくれ、レティ。急にこんなことを言われるのは驚くかもしれない。君はあの時の、その、キスをなかったことにしろと、忘れろとオレに迫った。オレもアレは忘れようとした。でも日がたつにつれて君が気になり始めた。最初はただの興味本位だった。王女らしからぬ振舞いをし、全力で城から逃げ出そうとするなんて正直、頭のネジが取れてるとしか思えなかった」

「……頭のネジが、取れてる……」

 

キスという発言に驚くよりも先に後半の言葉に反応してレティは「ブ・リ・ザ・ラ」と魔法を発動させ、オレの頭上に先が鋭い氷柱を複数出現させた。オレは思わず告白の途中だということを忘れてレティから手を放してバッと条件反射で後ろに下がった。

 

「待て!まだ続きがある。ブリザラで串刺しにしようとしないでくれ。……ふぅ、そう思ったこともある。過去形だ。だが少しづつ君の隠された部分を知る内に自分の中で君の存在が日に日に増していくのがわかった。大きくなっていったんだ。いつの間にか、君の背を追いかけるオレがいた。きっかけは馬鹿みたいだが、あの頃から君を大切にしたいと思う気持ちは誰にも負けない。負けたくない。

それに、君がオレの両目を治すために施術を施してくれたことだって感謝している。君を傷つけた責任を取りたいなんて言わない。それは君に対してもっとも失礼なことだと思うからだ。こんなことを言うのは卑怯だと分かっている。だが言わずにはいられないんだ。

……好きだ、レティーシア。君を守りたい、君を憂えさせも悲しませもしないしさせたくない。全てのことから君を守ると誓う。今こんなことを言うのは不謹慎かもしれない。だがオレは後悔したくない。この旅で君を失うのは嫌なんだ。誰にも、渡したくない。帝国側にも召喚獣にも、全ての者に(ノクトにも)」

「……イグニス…」

「オレの気持ちは誤魔化せないんだ。君は聞きたくなかっただろうが、オレは君に伝えたかった」

「……」

「……その、……返事は気持ちが落ち着いた時で構わない。ただ知ってほしかった。オレは本気なのだと、……では、失礼する」

 

レティは呼び止めることはなくオレはテントから出た時緊張のピークに達しどっとその場に腰をついてしまった。我ながら、なんてざまだろうか。

 

好きな女性に、一度、いや、二度目の告白をし終わった後で腰を抜かすなど。

だが後悔はない。

 

不安はある。レティの精神は不安定で

だが言わないで後悔するよりもはっきり伝えた方がこっちもスッキリする。

 

何より弱っている彼女を見ていたくはないんだ。

いつものレティに戻ってほしい。

 

【ただ君に笑って欲しくて】

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