レグルスの子供たち   作:サボテンダーイオウ

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心霊写真よりもウチの御姫サマ!

ビジネスとして信用を得る為ビルからの依頼を受けたレティ達。その内容とはオルティシエにて、名画として有名な【ラクシュミ】に憑りついた怪奇現象を調査するというものだった。何やら凄腕ハンター達でも手こずる仕事らしく噂も相まって中々解決の糸口が見つからないらしい。そこで戦闘にも特化したレティに白羽の矢が立ったというわけである。

ビル個人としてもレティの実力を試すチャンスと考えているようだ。

 

「というわけでラクシュミを調べる許可が欲しいの」

 

正直、ビルとの縁はこのような所で断ち切りたくないのが本音なのでニックスやシシィの反対を押し切って久しぶりにハンターとして動くつもりでいるレティだが、相談した相手であるアコルド首相、カメリアはあまり良い顔はしなかった。お忍びでやってきているだけでも迷惑なのに、一国の主が一度きりでもハンター稼業をやるなどと突拍子もないことを言い出すのだから驚かないほうがおかしいというもの。だが度々無理難題を突き付けられているのでそれなりの耐性は出来てきているようで今回も驚くというよりは迷惑そうにレティに釘を指した。

 

「あまり目立つような真似だけはご勘弁いただきたいですわね」

「それは勿論用心するわ。私だって自ら宣伝するようなバカな事はしたくないもの」

 

レティも手慣れたようにはっきりと皮肉交じりに言い返す。

 

「ならばこちらとしても支障はありません。アレに関して一部過剰にマスコミが騒ぎ出してオカルト扱いを受けていたものですから。今回の陛下自らの御活躍で解決するよう祈っておりますわ」

「それはどうも。それじゃあお忙しそうだからこれで失礼させて頂くわ」

 

おざなりの応援を受けてレティは後ろに黙って控えていたニックスを伴ってさっさと部屋を出た。必要最低限の会話だけで十分なのだ。こちらもあちらも馴れ合いは望んでいない。共に国の利益、あるいは国民の為に動いている上での合意でしかない。

一応名目として許可が欲しかっただけなのだ。

その許可も首相直接に貰えたのでこれ以上の成果はない。早々にやるべきことを終え、ニフルハイムに戻らねばいけない。だが依頼を終えてから少しだけ観光をしていこうと考えている。国外から出たことのないシシィの為に少しでも楽しい思い出を作って欲しいとの考えからだ。レティよりも二歳年上のシシィは今回の旅の同行に珍しく積極的に名乗りを上げ、ヴァーサタイルの心配ぶりをよそに元気に行ってきますと手を振って初めての飛空艇乗艇を一番誰よりも楽しんでいた。

 

病弱という話は聞いていがそのマイナス部分を払拭させるくらいの堂々たる姿に拍手を送りたくなる。そんなシシィも観るもの触れるもの初めての体験には子供のように瞳を輝かせて色々と目移りしていては、レティからの微笑ましいものをみる視線に慌ててコホン!とテレーゼ直伝の誤魔化しの咳をしたりしてつい笑ってしまったりもした。

そんな彼女の為、依頼は明日に回して今日は三人で観光廻りをしようとニックスと計画している。

 

「さて、早くホテルに戻ってシシィを連れ出しましょう」

「そうだな。まずは軽く観光巡りしてから……昼メシでも食いに行くか」

 

絡めとられる手を自然に繋いで二人は泊っているホテルへと戻った。

 

レティ考案オルティシエ美味しい物食べ放題ツアーを終え、満面の笑みでシシィから感謝されご満悦のレティは、メインともいえる依頼クリアの為、シシィ、ニックスを連れて指定された場所にやって来た。見張りの男から依頼のハンターである事の証を見せ、暗がりの地下へと案内される。奥の壁に設置されているレティの倍もありそうな大きな絵に三人はゆっくりと近づいた。

 

「ここが、依頼の【ラクシュミ】が飾られている場所ですか……。それにしても見事な」

 

シシィが吐息交じりに壁に設置されている絵画に見惚れながらそう呟いた。その隣でレティは少し首を捻りながら

 

「これが名画、ね。私にはゲイジュツとやらはきっと縁がない言葉ね。シシィのような感動はないみたい」

 

と肩を竦めた。赤いドレスを着た貴婦人が描かれているが、作者がどういった意味を込めてこの絵を描いたか凡人なレティには全然理解できないらしい。だがその意見に賛同する者もいた。周囲に警戒を怠らず二人をいつでも庇える位置でニックスは

 

「オレも同じく」

 

と素直な感想を述べる。その反応にシシィは「ニックスは別として姫様まで……」と呆れたような視線を向けた。お淑やかな淑女とは到底程遠いレティにはあまり関係のないジャンルである。たとえ国主と言えど、だ。まぁ、有名な作者の名前を憶えているだけでも良いほうなのでレティはさっさと終わらせましょと手を振った。

 

「それにしてもこうやって来たはいいけど……禍々しい気配よねぇ」

「……?そうなのですか?」

 

シシィは分からないと少し首を傾げて絵を見つめた。

 

「そうよ。バシバシ伝わってくるわ。ってなわけでシシィは危ないから後ろに下がっててね。あ!写真撮ること忘れないで」

「は、はい!お任せください」

 

ニックスが剣を構え、レティは両手に双剣を出現させカメラを構えたシシィを入口付近まで下がらせる。今回の依頼、心霊写真を撮るというMissionは欠かせないアイテムだ。

するとタイミングを狙ったかのように絵画から霧のような靄が溢れ出す。

 

「あれは……!?」

 

驚き息を呑むシシィは思わず声を上げた。レティは「お出ましのようね」と口角を上げる。

 

絵画から白い女の両腕がにゅっと出てきたかと思うと全裸の金髪の女が妖しい笑みを浮かべながらレティ達の前に現れた。プロポーション抜群のその姿にニックスは厭らしい笑みをうかべて思わず口笛を吹いた。するとレティは気に入らないように隣にいるニックスの脇を軽く小突いた。

 

「ちょっと真面目にやって」

「分かってるって!」

 

そう言いつつ、鼻の下を伸ばしていては説得力の欠片もない。レティは冷たい視線を向け嫌味を言った。

 

「あらそう?顔がにやけてるわよ。シシィ!写真スタンバイ!」

「はい!」

 

レティは双剣を構え、ニックスは顔をにやけさせ、嫉妬してもらえている事に嬉しさを露わにし、シシィはしっかりとカメラを構えて絶好のチャンスを狙い、皆でチャダルヌーク戦へと突入した。幸いにも場所は地下であってかなり広いので派手な魔法を使わない限り被害が及ぶことはない、はず。極力レティは力を抑えつつ、魔法集中で相手をし、ニックスは素早い動きで囮役に徹しつつ、そのスピードを生かしてチャヌルダークを翻弄した。

妖艶な女の姿から醜い本性を露わにしたチャヌルダークは唸り声を上げながらレティ達に襲いかかるが、所詮小物。レティとニックスのタッグには足元及ばず僅か15分程度で戦闘は呆気なく終わった。最後の断末魔を上げながら消えていくチャヌルダークを見送りながら、レティは双剣をしまいシシィの元へ小走りで向かう。ニックスも遅れて続いた。

 

「シシィ、どんな感じ?」

「バッチリ撮れましたわ」

 

自信満々に言うシシィから見せられた写真のほとんどはレティの華麗な活躍ばかりだった。

 

「シシィ!これほとんど私じゃない!?」

「確かに、オレのはないのか?」

 

ニックスの言葉は華麗に無視をしつつ、

 

「ご安心くださいませ、ちゃんとチャヌルダークも撮れてますよ」

 

そう言ってシシィは証拠写真を見せた。

 

「たった一枚だけじゃない……。アングルは良いけど」

「フフッ、実はプロンプトに少し教わったんです」

「そうなの?いつの間に」

「オレは無視か」

「レンズの視界に入っていなかっただけです。残念でしたね」

 

キッパリとシシィは見事な言い訳をするとニックスは「根性悪…」と呟いた。すると地獄耳なシシィは眉を吊り上げて「何か言いましたか、エロ騎士」と嫌味を返す。

ニックスはピクリと蟀谷を動かしながら「別になんでもないさ、ファザコン娘」と言い返す。

 

まるで水と油な二人にレティは頭痛がして額に手を当てた。

 

「あ~、頭痛いわ。私お腹空いたから先に出るわ」

 

だがこれで無事に依頼はクリアできた。レティはにらみ合いをする二人を置いてさっさと部屋を出ようと手をヒラヒラとさせながら背を向け歩き出した。

 

「姫様!お待ちを」

「おい待てって」

 

慌てて二人は後に続いた。それから見張りの男に悪霊は無事に払ったことを告げて三人は美味しい夕食を食べに行く為、人々で賑わう街の中に溶け込むように混じった。

 

次の日、ビルに約束を取り付けて証拠写真を渡して無事信頼を得たレティはその後、帝国に戻りガッポリと儲かるコレクターツアーを主催出来ることができた。その際出来るだけ値段をつり上げようと強かに出ようとしたレティだったが、シシィがしっかりと目を光らせていたのでその計画は無駄に終わった。

 

【ガッポリ儲けようと思ったのに~!】

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