昔々でもないお話のことです。るしす王国の首都いんそむにあにて、歴代113代目の王、レギス陛下の子供、二人の双子である王子と姫が国民達へと御披露目されました。沢山の拍手や祝福を受け二人は国民から愛され慕われることになるでしょう。
ですが、片割れである姫にはある秘密が隠されていました。それはレギス王の妹、亡きミラ王女の娘であること。父親は敵国にふるはいむ帝国の皇子アルファルドであること。全てを承知でレギス王はレティーシアと名付けて産まれたばかりであるノクティスの双子の妹として育てることにしたのです。
「よく眠っているようだな」
「しぃー」
妻であるアウライアがジェスチャーで口元に指を当ててレギスに静かにするようお願いをした。どうやらゆりかごの中で子供たちは静かに眠っている様子。レギスは忍び足でゆりかごへと近づいていく。
「………」
「可愛いわね。男の子もいいけどやっぱり女の子もいいわ」
「ああ」
愛らしい二人の赤子が仲睦まじく顔を摺り寄せて健やかに眠っている姿は身悶えそうなほどである。だが王としての面子でなんとか耐えているレギス陛下。
「大きくなるなんてあっという間よ、きっと。レティはきっと素敵な女の子に成長するわ。貴方、もしレティがイケメン確保してきたらどうするのかしら?」
「嫁にはやらん!」
断固としてレギス陛下は認めたくないらしい。鼻息さえ荒くなっている。アウライアは頬に手を当てて、
「あらあら困った人。どうでもいい意地張ってこの子に厳しく当たろうなんて考えてる人とは思えないわねぇ」
と軽い嫌味を吐いた。それにたじろぐ一国の王。
「いや、それは将来レティの為にだな」
「下らないわね」
色々と理由を並べたところで妻から一蹴されてしまえば一国の王とて、勝ち目はない。レギス王は痛いところを突かれて呻いた。
「ぐっ!」
「そんな面倒くさい事なんて綺麗に水に流せば済むことでしょう。可愛い可愛いレティが傷つく姿なんて見たくないわ。貴方だってそうでしょう」
「……う」
確かに可愛い愛らしいレティが泣くところなど想像したくもない。
アウライアの追い打ちはさらに続きレギス王を容赦なく追い詰める。
「想像してみてくださいな。レティが物心ついた時に将来貴方のお嫁さんになりたい~だなんて甘えてきたら。父親としてこれほど嬉しいことはないでしょうに。でも貴方はレティの為と言って突き放す愛情を与えようとなさっておられますものねぇ~。自分で一つの可能性を摘んでいるようなものだとおもうのですけどねぇ~。自分勝手なやり方で自業自得というのかしら~。ほんと、残念でならないわ~」
「ぐはっ!」
レギスは想像以上のダメージを負い苦しそうに胸元を握りしめながら床に両膝をついてしまう。あまりにも愛らしくて胸を突き破る勢いだったらしい。
もしアウライアの話が本当だったらレティの為に突き放すような愛情はその輝かしい未来を消し去ることに繋がる。
「私は、……」
だがまだ渋っている様子のレギス王にアウライアはトドメの一撃を言った。
「貴方、レティならきっとイケメン選び放題よ。その内、駆け落ちなんてことも……」
「やめだ!レティは私が全力で愛情を注ぐ!誰にも嫁がせないぞ!」
「あらあら。それじゃあ行かず後家では……」
さすがにアウライアもそれはレティが可哀想だと訴える。だが何かの火が付いたレギス王を止めるだけの効力はなかった。
「私が認めた男でなければ認めてなるものか!ノクトとて同じこと!この私を倒してこそレティを得る資格があるというもの」
「ほほほほ。将来が楽しみだわ~。ねー、ノクト?」
なんだかんだでアウライアの掌で踊らされていることも気づかずに、こうしてレギス王が当初予定していた計画は白紙に戻され、レティ溺愛路線へと変更された。
それからレギスは一目憚らずレティやノクトを猫かわいがりしたりした。特にレティに関しては長年の友人であるクレイラスに馬鹿親と言われるレベルまでレティを可愛がりまくった。そのお陰か、ノクトとレティが丁度一歳になった頃。
レティが初めて喋った言葉は
「ぱー、ぱー」だった。
レギス王は大はしゃぎしてレティを軽々と抱き上げて頬擦りしては
「アウライア!私の事をパパと言ったぞ!よし、今日はレティが初パパ呼びした日の記念日にする!すぐに休日の設定を!」
と喜びまくった。静かに寝ているノクトを抱いているアウライアは
「良かったですわね~。でもそんなことで勝手に祝日作らないでくださいな」
とのんびり答えつつしっかりと釘を指した。レティは頬擦りされ髭が痛くて小さな手でレギス王の顔を叩いた。
「ぱー!」
「いた!ああ、嫌がる顔もなんと愛らしいのだ!」
しまりのない顔で嫌がるレティにさらに髭頬擦りを続けるレギス王。
「うー!」
「いだっ!」
今度は髭を引っ張られたようだ。
「あまりにも溺愛しすぎて将来嫌われないといいわねぇ~」
「……ぐぅ」
家族四人仲の良い姿は国民らに微笑ましいものと受け止めら理想の家族像として広く王都内で話題となった。
【物語改変!】