レグルスの子供たち   作:サボテンダーイオウ

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余計な気遣い

一体誰がこんな長い廊下を作ったのかと文句を飛ばしたくなるくらいその長さに彼女はイラついた。でもよく考えたら自分の祖父じゃない?と疑問が沸いたが無視した。今はそれどころではない。そう、彼女が真っ先に向かうべき所。

 

絶対、絶対用事がない限りで向かない場所がある。それは忌まわしい根源を生み出した膿のような場所。だが仕方ない。

文句飛ばしたい相手がそこにいるからだ。もっと日当たりの良い場所に研究所を作ればいいのにと後で助言してやろうと彼女は考える。どうせだったら温室辺りの隣とか。

 

……ああ、そんなことどうでもいい!

 

陰気臭い地下研究所に慌ただしい足音が響く。バンッ!と勢いよく開かれた先にははしたなく足蹴りをして扉を開けた人物がいた。

 

「この偏屈ジジィっ!」

 

怒鳴り込んできたのはニフルハイム帝国始まって以来の初めての女帝であるレティーシア・エルダーキャプトである。大股でドレスの裾で転んでしまいそうになりながらも怒りを抑えきれない様子である人物の元へ怒鳴り込んできたのだ。

 

真っ先に文句を飛ばす相手、祖父繋がりでレティの計画に協力している魔導兵の産みの親、ヴァーサタイルである。ファイル片手に億劫そうにレティーシアへと視線を向けた。ふかふかの回転チェアが何とも座り心地よさそうである。レティのお尻が痛くなる豪華な玉座など売り飛ばしてこれに変更したいぐらいである。おっと、今はそんなことどうでもよかった。

 

「おや、陛下。わざわざ陰気臭くかび臭いと申していた地下研究所に何か用事でもおありかな」

 

「わざとらしいのよ!白々しいいい方して。よくもあんなもの送り付けてくれたわね!」

 

お下品にも中指おったてそうな勢いの女帝陛下は鼻息荒くヴァーサタイルに詰め寄った。

 

「あんなもの、はて歳を取ると極最近の事までド忘れしてしまうからなぁ」

 

首を傾げてとぼけたフリをするヴァーサタイル。レティの目がギッ!と吊り上がった。

 

「しっかり自分で製作した説明書があっただろうが!あんな魔導スーツやらわけわかんない物作りやがって私に一体何の恨みがあるのよ!」

 

そう以前ノクト達が装着した帝国兵がわざとらしく落としていった呪われし防具魔導インジブル。彼らが嬉々として装着した結果、チョコボポストにて多大な被害を出してしまいそのお陰でレティがイグニスから嫌がらせの共犯者として長々と説教をくらった事件である。あの時の事をレティはずっと根に持っていた。なので帝国に戻ったら真っ先に文句言いに行ってやると前々から思っていた事を今日実現しに来たわけである。だがレティの怒りなどどこ吹く風とヴァーサタイルは素知らぬ顔でかわす。

 

「恨みも何も王子達の役に立てばと思ったまでだが。そうか、陛下はお気に召さなかったようだ」

 

レティは近くにある机に手をバンッ!と音を立てて勢いよく叩いた。実は勢いよすぎて掌がジンジンだったとは言えない。

 

「お気に召すも何もあれじゃ正義の味方じゃなくて悪役面子せいぞろいだってぇの。それに大きなお世話だわ!アンタの所為で私はイグニスからお仕置きのオンパレードでしたよ。どれだけ精神的屈辱だったか分かります?」

 

「いや分からんな。そうか、そうか。様は仲間外れにされて悔しかったとな」

 

「分かるわけないよねだったら体験させてあげましょうかぁ?あのさぁ、話がもう噛み合ってないんだけど頭耄碌してる?」

 

ぐぐぐっと拳を握りしめてメンチ切る女帝陛下。だが圧力に屈しない偏屈ジジィはバッサリと言い切った。

 

「断る。儂は陛下と違ってそんなに暇ではない」

 

くるりと背を向け用は済んだと言わんばかりに謎の設計図を書き始める。何かアイディアでも浮かんだのか。もうレティの声は届いていない、ように見える。

 

「くぅぅぅぅ!!私だって忙しい中わざわざ時間を割いてきてあげてんでしょうが!」

 

そう叫べばしっかりと答えは帰って来た。

 

「あいにくと儂の予定に陛下と戯れる時間は確保しておらん。出直してこい」

 

「きぃぃ―――!!」

 

地団太踏む麗しい女帝陛下は頼もしい守護者に引っ張られて地下研究所を後にした。というか強制的にお帰りになった。

 

「まーまー、おやつでも食べて落ち着けって」

 

「まだこの恨み晴れさでおくべきか~~!離しなさい~~」

 

ジタバタと暴れるレティを強制的に抱き上げてニックスは来た道を戻る。

 

「あのじーさん相手にやり合ったって勝てっこないって」

 

「勝つもん!絶対勝つもん!」

 

「疲れるだけだろ。いいから少し休もうぜ」

 

「うぅぅうぅぅ」

 

獣が唸るような声を発する女帝陛下。品位の欠片も感じさせないのが素晴らしい。

結局シシィのお手製お菓子を食べた事で多少、イライラは緩和された模様。だが後日ヴァーサタイルから送られてきた謎のプレゼントがまたもレティの怒りを誘発させるとは誰も思わなかっただろう。

 

※おまけ※

 

シシィ「レティーシア様、父からレティーシア様に贈り物が届いております」

 

レティ「なんだろ。この間のお詫びってやつ?」

 

ニックス「さぁ、あのじーさんそんなに気を遣うタイプに見えるか?」

 

シシィ「私の父を貴方と一緒にしないでください。不愉快です」

 

ニックス「どうも嘘がつけないタイプなんでな。根が正直なもんで。どっかの腹黒タイプと違ってね」

 

シシィ「あら?そういえば小物風情のミニクロ男が大口叩いてアラネア様に喧嘩吹っ掛けた挙句ボロボロのけちょんけちょんにのされた風の噂で耳にしましたが一体どこの誰でしょう?確か一戦でも勝利することが出来たならば恐れ多くも我らが麗しい女帝陛下とのデート権を許可してもらうなどとほざいたとか?まぁ見るも無残な姿で負けてしまったから当人にしてみれば羞恥心に耐え切れずとっととこの地から消え去ってしまいたいと思っていることでしょう。私でしたら喜んで応援いたしますのに。その際はぜひご相談いただきたいですわ」

 

ニックス「誰がするか」

 

シシィ「あら、誰も貴方の事と一言も言っておりませんけど」

 

ニックス「……女に手を出す気はさらさらないが、我慢にも限界ってものがある」

 

シシィ「フフフ、どうぞご安心を。少々私にも戦の心得はありますので。レティーシア様の侍女なら当たり前ですもの」

 

レティ「あー、はいはい。喧嘩するなら私の部屋からでてやってね」

 

シシィ「申し訳ありません!すぐに片づけてまいります」

 

レティ「いや片づけなくていいから。いつの間にお淑やかなおねーさんから攻撃系おねーさんになってるのよシシィ」

 

シシィ「これからますますレティーシア様には困難と大いなる敵(ニックス)が待ち受けておられるでしょう。私も微力ながらお力添えしたく己の身を鍛えております。アラネア様から直々に指導していただき以前のか弱い己をかなぐり捨て新たな私を必ずやレティーシア様の御前で披露させていただきますわ」

 

レティ「一体何目指してるのシシィは。私よりも最恐になりそうで怖いわ」

 

シシィ「あらあら、そんなに褒めないでくださいな。つい調子に乗ってポッキリやってしまいそうです」

 

ニックス「………」

 

レティ「………ニックス、ここは男らしく退くべきよ」

 

シシィ「それよりも父からの贈り物とはなんでしょうね」

 

レティ「そうだったそうだった!すっかり頭から弾き飛ばしてた。……ご丁寧にアタッシュケースなんて入レティゃって厳重なのね。………ナニコレ」

 

ニックス「なんだそれ」

 

シシィ「まぁ、なんでしょう。……何やら衣装のようですが」

 

レティ「………全身真っ白。しかもどこかで見たことある品物……。これノクト達が着てた魔導インジブルじゃない」

 

ニックス「レティ、手紙が付いてるぞ」

 

レティ「………えーと、何々。『仲間外れにされて拗ねている捻くれ陛下に贈ろう。これで彼らの仲間入りを果たすといい』ですって……。私に変身しろと?コレを着て?」

 

シシィ「良かったですわね。レティーシア様。これで正義の仲間入りです」

 

ニックス「……黒と白の二色ヒーロー。もうちょっとカラフルさが欲しいよな」

 

レティ「~~~!そういうことじゃない!」

 

ヴァーサタイルの余計な気遣いでレティの怒りのボルテージは収まるどころかさらにヒートアップし今度は殴り込みに行ってやる!と双剣両手に装備して乗り込もうとした。それを止めるのにニックスが苦労したとかしないとか。

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