レグルスの子供たち   作:サボテンダーイオウ

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エトロの涙
居酒屋の親父、旅に出る


移民たちが住まう地域で人々の喧騒の中に紛れ込むようにしてたつ居酒屋。王都で大人気の屋台でもあった。客はそれぞれ様々な年齢層で老若男女問わず客に愛されていた。

料理の腕前はさることながら、店の親父自身にも熱い人望があった。

王都で有名なグルメ雑誌で星五つ星と評価されるもそんな余計なもんはいらねぇと格好良く辞退したり、ガラードという同郷のよしみである王の剣に所属する若い衆に付け払いオッケーにしたり、恋に悩みやけ酒する青年の愚痴をひたすら黙って聞いてやったり、コソコソと城から抜け出してきた右も左も分からないお姫様には優しく「嬢ちゃん、これ食っていきな」とサボテンダーソフトクリームアイスおごってあげたり、お迎えに来た配達召喚獣に追加で「嬢ちゃんも食いな」とプリンソフトクリームアイスをあげたり、ご満悦と幸せそうな女子二人の後ろの方でコソコソとフード被った怪しいオッサン二人を盗み見ては、ああ保護者(王と宰相)かと納得しオッサン二人の背後に瞬間移動してあんパンと牛乳を差し入れして大層驚かれたり、そのオッサン二人が(王と宰相)居酒屋の親父を気に入って密かに贔屓にして自分の息子をこっそりと連れてきたり、世間を知れとの名目でそこの居酒屋でアルバイト経験させたり、宰相の息子も親父の心遣いに胸打たれしょっちゅう幼馴染の眼鏡軍師連れて一緒に飲みに行ったり、眼鏡軍師が親父の作る料理を口にした瞬間後頭部に雷が直撃したかのような衝撃を受けてひっそりとレシピ探りに通ったり、オッサン(王)の息子の友達も巻き込まれてアルバイトに来たり、イケメンアルバイトの二人の噂に女子から人気度が上がったり、抜け出す姫を見つけ出して無事城に連れて帰った仕事終わりの不死将軍と有名な男も親父の前では一人の普通な客であった。チョコボの手羽先に噛り付いて「親父、頼む」とライスで作られた美味い酒を一升瓶丸まるオーダーして昔の好きだった人を懐かしんだり。

 

それは本当に色々なことがあったものだ。

 

王都がきな臭いことを始めると本能で感じ取るまでは。

馴染みの客がついていることは親父も嬉しいが、正直戦争に巻き込まれるのは勘弁だ。

いつも生き生きと常に新鮮な味をモットーにしている親父には他の居酒屋とは違った食材の仕入れ方法があった。きっと熟練のシェフですら真似できないだろうその神業。

 

下駄をふっ飛ばしてシフトさせてモンスターに捨て身で突っ込んだりとか、【明日天気にな~れ】で下駄を飛ばして落とす攻撃とか、自分の身の丈以上もあるモンスター相手に足蹴り一つで動きを止めたりとか。自分で倒してきたビッチビチ新鮮なモンスターをさばいてお客に提供する。彼はそれこそ全力でこの食材探しを日常的にこなしていた。誰もが彼の人柄に惹かれ通うことをやめなかったが、居酒屋の親父はついに決断する。肩に乗っている彼に親父は静かに尋ねた。

 

「旅に出るか、なぁ?相棒」

「くぴゃ〜!」

 

縁あって助けた小さなモルボル、通称看板モンスター[もるぼるくん]が同意するように可愛く歯を見せた。目をキラキラとさせて恩人とともに広い世界へと旅立つことを待っていたと彼は喜んで歯を見せカチカチと鳴らす。親父はもるぼるくんを優しさ撫でると

 

「そうだな、ここいらも潮時だと思ってたぜ」

 

親父はツルツルの頭を一つポンっと軽快に叩くと、

 

「屋台引っ張って世界のモンスターさばいてみるか」

 

夢は大きく、スケールでかく。

親父は本気で屋台を引きながら旅をすることを決めたようだ。小さなもるぼるくんには親父の手助けをすることは無理そうだが親父の為に応援を送ることはできる。

臭い息ならぬ、【香り高い息】という技をもつ特殊個体であるもるぼるくんは常に親父に心地よい香りを提供している。カップルで来た常連客の雰囲気作りも彼の仕事である。もるぼるくんもまたさらなる高みを目指す香りの達人。

 

最強のタッグを組んでいる二人(人間と一匹)は常連客に店を閉めることをこっそりと伝えてひっそりと王都から姿を消した。二人がまず目指したのはハンマーヘッドである。

果たして、そこでどんな出会いが待ち受けているのか?

 

目指せ、世界一の居酒屋親父!

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