レティーシアside
相変わらずお金稼ぎの日々は続く。
草原を皆で走っている時に疲れた声でプロンプトがノクトにこういった。
「昨日は息苦しくて嫌な夢みちゃったよ。体もだるいし」
「滅多に夢見ないって言ってたもんな」
「そう、大体は姫に魔法攻撃喰らった時にしか見ないんだけどなー」
ぎくり!
実は聞いていて心当たりがあった。
妙に朝起きた時に肌がつやつやしてて化粧のノリもいいなって思ったら。
クペがこっそり教えてくれた。またやってたクポって。
実は、結構前に一緒に寝てたノクトにもやったことがある。本人にはバレずに済んでいることだけど。しかし、罪悪感がひしひしと私を追いやる。
プロンプトは私の数少ない貴重で大切な友達だ。私の友情表現(魔法攻撃)にも耐え忍ぶ耐性を持っている素晴らしい青年だ。そんな彼が朝から生気吸い取られた顔してるのを横目で見て耐えられるほど私はできてない人間である。
友達に黙ったままなんてよくないでしょう?
そうだよね。
言っちゃえよ、楽になろうぜ?
だよね!プロンプトなら許してくれるよ!
私は心の声に従って素直に謝罪した。走っていたプロンプトの腕を掴んで無理やり止まらせた。ついでにノクトが怪訝そうにして止まったが今は関係ない。
「ゴメン、なんか寝てる時無意識にアスピル唱えてたみたい。たぶんプロンプト標的にしてた」
「…………」
そのお前が犯人だったのか!?って衝撃的な顔はやめてほしい。一応私も自覚なかったんだから。言い訳だけど。
「ドンマイ、プロンプト」
ノクト、清々しい笑顔で他人面してるけど君も被害者だったなんて口が裂けても言えないよ。
プロンプトは涙目交じりで私を軽く睨む。
「……姫ってさ、そんなにオレのことイジメて楽しい?」
「楽しい」
「真顔で言い切った!酷い、オレのこと嫌いなんだ…」
頭抱え込むほどショックだったのか。これはからかい過ぎたか。
私は手をパタパタと振って否定した。
「いやいや、好きだよ好き好き」
「「?!」」
「嫌いだったら私干渉すらしないから」
これは本音である。普段の素を出すのは限られた人物のみだ。あとは王女、レティーシア・ルシス・チェラムの仮面で十分やり過ごせる。使い分けは今後の私の人生において、ひじょうに必要なスキルなのだ。これも練習だと思えば苦にもならなくなったし。
そういえば最初の頃は慣れるまで大変だったなーと昔の自分の頑張りに想いを馳せていると。
「…………」
なんとプロンプトが珍しく口元に手をあてがって頬を赤く染めているではないか。
「え、なんで顔赤くするのよ。プロンプト」
「いや、あの、その」
口ごもって言葉にならないプロンプトの様子にピンときた私。
どうやら今の好き発言に照れているらしい。女好きなのだから女の子から告白なんて慣れたものだろうに。たかだか友情としての好きくらいで照れるとは。意外と不意打ちには弱いタイプとみた。これはからかうネタが新たにできたと喜んでいいのだろうか。
「レティ」
だがプロンプトだけではなかった。ノクトにも変化があったようだ。
嫌な意味で、だ。
「え、なんでノクトは反対に怖い顔してるよの!?」
「別に」
「とか言ってちゃっかり武器装備してプロンプトに襲い掛かろうとしてるの?!」
「………オレ、幸せかも」
「プロンプトもちゃっかり幸せに浸ってないで防御しなさい!」
私は慌ててぽけーと何かに酔っているプロンプトにプロテスをかけた。
危機一髪である。ノクトが放った武器がカツン!と音を立て跳ね返り空中で消える。
「別になんでもないから邪魔すんなよ」
「別に別にって問題じゃないでしょう?友達に攻撃しかける王子がどこにいる!」
私がそう叱りつけると、ノクトはぷいっと視線を外して不満そうな顔をした。
「本気じゃなかったし。レティはプロンプトが好きなんだろ?オレに構うな」
「構うなって子供みたいないい方して……一体何が気に入らなかったのよ」
なんだこの王子様は。
頭が痛くなってきた。たまにあるんだよね、こういう拗ねる時が。
何がノクトの癪に触ったのかわからないが、毎回対処に困るのが私である。主に私関連に多い。この王子様不機嫌事件を解決するには私の平凡な頭脳で対処するほかない。
「……好きだって言っただろ…。三回も」
「(ちゃんと数えてる…)そりゃ嫌いじゃないでしょう。友達なんだから」
「ただの友達、か?」
確認するようないい方に、妙に目力に力こもっている。その友達じゃなかったら許さないぞ的な感情が込められていそうな気がした。
「そうよ。ただの友達、よ。何に焼きもち焼いてるのか知らないけどノクトの親友取ったりしないから安心して」
まったく私にプロンプト取られちゃうから冷や冷やしてるなんて可愛い性格してるわよね。ノクトは間をあけて呆けた後、否定してきた。
「…………そういうことじゃないつーの」
「姫って鈍感だよね。変なところで」
よし、機嫌も戻ったようだ。プロンプトも幸せの世界から戻ってきたようだし事件は無事に解決した。
「ほらもう、二人とも行くよー」
私はさっさと歩き出した。
向こうで待たせっぱなしの二人が早く来いと急かしている。ノクトとプロンプトもゆっくりではあるが、足を動かし始めた。ゆっくりと二人で何か話しているようだ。きっと友情の再確認だろう。いいことだ。私は気分よく鼻歌ルンルン歌いながら眉間の皺二割り増しされているイグニスとグラディオラスに手を振って駆けだした。
※※
「……プロンプト。さっきの悪かった」
「ううん、オレも姫の告白かと思ってまともにとっちゃったから」
「でもレティのアレは、『友情の好き』だからな」
「………ノクトってさ、ホント、姫関連だと性格変わるよねー」
「言っとけ」
【僅かな嫉妬に気づかない君】