レグルスの子供たち   作:サボテンダーイオウ

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朝のあいさつ。

トレーラーから出てきたノクトは最初にイグニスに挨拶をした。

 

「おはよ」

「ああ、いい朝だな」

 

次いでプロンプトとクペに。

 

「おはよー」「おはようクポ!」

 

そしてグラディオ。

 

「よ、おはよう」

 

んでもって最後に白の丸いテーブルチェアに顔を突っ伏しているレティ。だがいつも元気なレティの様子は明らかに違っていた。挨拶をしてきたノクトに気付き、のそりと顔を上げた。血色の悪い顔だったし、おなかを抑えてもいる。

 

「……おはよ……今日もデス日和だわ…。ああ、デスしたい、無性にデスしたい。誰かれ構わずデスしたい」

 

下手すれば無差別デス発動させそうなヤバイ雰囲気を出すレティ。歪んだ笑みに「けけけけ」と気味悪い笑い声を出しているものだから、周りの一般人が軽く引いていることに本人は気づいていない。ノクトは向かい側のチェアをレティの傍へと引っ張って座った。

 

「……何、朝から不吉なこと言い出すんだよ」

「うぅ…痛い…私、機嫌悪いから話しかけないで」

「あ?」

 

挨拶したのに話しかけるなとは意味がわからないと怪訝そうな顔をするノクトに、レティは死んだ目で

 

「察しなさい。女の日よ」

 

とズバッと言った。ノクトは途端、

 

「う!?」

 

と呻いてすぐにその意味を理解して頬を赤く染めた。レティはノクトのわかりやすい反応すらどうでもいいらしく無視して

 

「……あー、痛い」

 

とまた顔をテーブルに突っ伏した。ノクトは慌てふためき椅子を倒す勢いで立ち上がりレティの背中を優しく手でさすりながら

 

「痛いか?薬飲んだのかよ」

 

とレティの体調を気遣った。レティは「ん、飲んだ」と答えてテーブルから顔を斜めにさせてレティの顔を覗き込むノクトと視線を合わせた。

 

「ノクト~、抱っこして」

「え!?」

「ノクトの手、温かいからおなかさすって」

「お、オレが?」

「うん、ダメ?」

「いやダメとかそんなじゃないけど。イグニスがまたなんか」

「ダメ?」

「う!」

 

久しぶりに来たと感じたノクト。レティのお願い攻撃。

上目使いで痛みから潤んだ瞳にちょっと唇を突き出してむくれた表情。ノクトはこれに弱い。勝てたことすらないのだ。だから今回も仕方ないとノクトは白旗をあげた。

 

自分が座っていた椅子に腰を下ろし、レティを自分の膝に乗せて体をもたれさせる。ノクトの肩に頭を摺り寄せるレティ。

鼻腔を擽らせるレティの髪の甘い匂いとくすぐったさに、ノクトは一瞬、ほんの一瞬だがくらっときた。

だがなんとか踏ん張って耐えた。耐えるしかなかった。

 

「触るぞ」

「うん」

 

弱り切った声で頷くレティにノクトはドキドキといけないことをしている気持ちになりながら、ゆっくりとおなかに手を当てた。

レティは自らの手をノクトの手に重ねた。息を吐くようにレティは

 

「やっぱり、ノクトの、あったかくてきもちいい~」

 

と呟いて瞼を閉じた。どうやら少しは役に立てているらしい。レティは寝息を立てて眠り始めた。ほっとノクトは安堵した。

 

なんも問題はない。問題はないが、周りの視線が痛い痛い。

ノクトは懇願するように呟いた。

 

「……レティ、頼むからそういうこというな」

 

なんなんだ、この公開処刑は。

 

やましいことをしているわけじゃない。

朝から妹が弱っているから兄として求められたことをやっているまで。

だというのに、どうしてか背徳感を感じるのはなぜなのか、と心の中で問わずにはいられなかった。

 

「……仲が良いのは結構だが、時と場合にもよる」

「…イグニス…」

 

朝食も食べられなさそうなレティ用にと負担の少ないお手製スープを作って持ってきたイグニス。

 

「姫具合悪いんだね、さっきオレも心配して声掛けたんだけど『シャー!』って猫みたいに威嚇されて怖くて近寄れなかったんだ」

「プロンプト」

「でも薬草探してきたから大丈夫クポ」

「クペも」

 

少しでも気が休まるようにクペと一緒にその辺の草原で薬草を探してきたらしい。これを煎じて飲むと気持ちが落ち着くらしいということで透明のガラス茶器セットを持ってきたプロンプトとクペ。

 

「おらよ。昔から重い方だからな、レティは」

「グラディオ…」

 

寒がりなレティの体を温めるために大きなタオルケットを持ってきたグラディオがレティを抱くノクトごとタオルケットで包んだ。

やっぱりレティが心配な仲間にノクトは苦笑してしまった。

 

「なんだかんだ言ってお前らもレティ馬鹿だな」

「「「それはノクトもだ」」」

 

同時に声を揃えて言い返す仲間に今度こそ、ノクトは笑いを堪えずにはいられなかった。

だが彼女の存在を忘れていた。

笑い声に目を覚ましたレティの目はギラリンと怒りに染まっていて、まずい!と危機感を感じ取る面々だが一足遅かった。

 

「……うるさい、『サイレス』!」

「「「「……………」」」」

 

仲良く沈黙を喰らった男たちは効果が消えるまでおとなしくレティを見守ることにした。

クペには効かなかったようで「大変クポね」と肩を落とす男たちを慰めていたとか。

 

【ご機嫌斜めな王女にご注意を!】

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