レグルスの子供たち   作:サボテンダーイオウ

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アイツは知らない。

ノクトside

 

 

レティは知らない。

オレの前からレティが消えるって恐怖がなんども突然やってくることを。

 

最近のレティは少しおかしい。城にいた頃はこんな滅茶苦茶にことを大きくさせる彼女じゃなかった。いつも書物室で分厚い本と睨めっこして、バレないように魔法の練習しては失敗してばっかで部屋をぶっ壊したりボヤ騒ぎ起こしたりともんだいばかり起こしてた。でも皆から好かれててどんな失敗してもめげたりしょげることはなかった。いつも前向きに諦めずに頑張っている姿をいつも見てたからオレも頑張らなきゃいけないと奮起できた。なのに、そのれが今回の旅で妙に落ち着きがないんだ。どこかソワソワしてるっていうか、何かを心待ちしているというか。

 

「レティ!」

「ノクト、どうし」

 

こっちを向きかけたレティの腕を無理やり取って乱暴にオレは自分の胸にレティを抱き込んだ。

 

「うわっぷ!」

「レティ、レティ……」

 

オレは掻き抱くように戸惑うレティを求めた。発作が起きたように、薬であるレティを求めて。レティはオレの様子に驚いたようだが、そっとオレの背中に手を回してぽん、ぽんと軽く叩いてオレが落ち着くのを待ってくれた。

 

「大丈夫、大丈夫だよ。ノクト、怖いことなんかないから」

 

そう、レティはずっと勘違いしている。オレが母さんを失った恐怖からいまだ克服できずにいると。でもそれでいい。ずっと勘違いしたままでいて欲しい。

 

「……わりー……。ちょっとキテた」

 

オレは見え透いた言い訳をしてレティから体を少し離した。でも背中や腰に伸ばした手はまだ外さない。レティはオレの答えを疑うことすらなく、わかっているという風に少し微笑んだ。

 

「ん、いいよ。誰だって不安になることはあるから」

「……なぁ…」

「ん?なぁに」

「レティは、いなくならないよな?」

 

オレは同じ質問を繰り返す。この衝動を起こしてから何回目の質問かなんて忘れた。

だってわかっているんだ。レティは同じ答えをくれる。

 

「うん。私はノクトの傍にいるよ、ずっと」

「ずっと、か」

「うん」

 

オレは瞼を閉じてレティの額に自分の額をこすりつけるように合わせた。

 

「ノクト」

 

その声が不安も寂しさも吹き飛ばしてくれる。

 

「レティ、愛してる」

「私も、大好きよ。ノクト」

 

オレが愛してると言うとレティは決まって大好きだと返す。分かっている。どこもおかしい所なんかない。レティはオレを大切に想ってくれている。家族として。それはオレだって同じだ。レティを家族として愛している。

けど、その言葉はオレを満足させるにはなんだか物足りない言葉だった。レティは事実を言ったまでなのになんでた。オレたちは血の繋がった、家族。それでいいじゃないか。

……だけど、どこかで納得してないオレがいる。

レティと、家族以上の関係を望む、オレが。

 

右手をレティの右頬にあてがい、そっとおでこにキスをした。

家族だから、許される箇所。でもそれ以外だったら?許されないのか?

家族、で愛しい気持ちと、それ以外で愛しいと思う気持ちは別なのか?

試しに他の箇所もキスしてみた。

瞼の上、頬、それと鼻の頭。これはレティが逃げようとするからここになっただけ。

 

「レティ」

「ノクト、くすぐったい」

「わかっててやったんだよ」

 

身をよじって逃げようとするレティを逃がさないように腰をがっちり捕まえる。

レティは両手でオレの胸を軽く押しやろうとする。だがレティの弱い力じゃ簡単にオレからは逃げられない。

 

「ノクト、そういうのはルナフレーナ嬢にやりなさい」

「レティにもしたい」

 

本音いうとレティだからしたいんだ。

 

「ノクト、あのね……」

 

レティは困った顔をして言葉を詰まらせた。オレは「ゴメン」とすぐに謝った。レティを困らせたいわけじゃない。

 

「はぁー、そんな顔しないで……私が悪いみたいじゃない…」

 

オレ、今どんな顔してんだ?

情けない顔してんのか。レティが戸惑うくらいだ。よっぽど酷い面してんだろ。マジ情けねえ。

 

「………」

 

もし本当にレティが嫌がってるならオレはもうやらない。

 

「わかった。わかったわ!ノクトが不安でどうしても落ち着かないって時は、その、こういうのやっていい。でもそれはノクトがルナフレーナ嬢に会うまでの日。後は私じゃなく彼女に慰めてもらいなさい。彼女がこれから貴方の家族になるんだから……わかった?」

「一応」

 

ルーナが家族……。あんまピンとこねぇな。

そういや、オレって結婚するんだよな。あんま実感ねーわ。

 

「そこは大丈夫だって言ってよ。私の方が不安になるわ……」

 

眉間に手を当てて痛そうに瞼を閉じた。

 

「だったらレティもオレにしていいぜ」

「しません。私のキスは安売りしないことにしてるの」

「なんだよ、それ」

「……私だって夢見たいもの。一応、こんなんでも、プリンセスですから」

 

ぷいっとそっぽ向いたレティの横顔は照れているように見えた。

 

「はぁ?」

「とにかく!ちゃんと言ったからね!もう寝るわ「イテ!」おやすみ」

 

鳩尾に少し加減してだがレティの拳が打ち込まれたオレは、防御の態勢など取れなかったため、痛みからレティの体を離した。

 

「イテテ、…もう寝るのかよ」

 

オレは打ち込まれた所をさすりながら、レティの後を追った。

 

「寝るわよ、ってなんで付いてくるのよ?」

「オレも寝るわ~、ふぁぁ~」

 

安心したら眠くなってきたオレは欠伸をしながらレティとクペ専用のテントに入ろうとする。レティ押しのけて。するとレティは目を吊り上げて驚いた。

 

「ちょ、ちょっと!?なんで一緒にテントに入ろうとするのよ。ノクトはあっち!男の住処はあっち!」

 

指さしてる方向にはオレが寝起きするテントがある。けどあっちじゃ抱き枕がないからよく熟睡できない。

 

「別にいいじゃん。たまには」

「良くない!ってああ勝手に入るな~!?」

 

なんだかんだ文句言ってもレティはオレを追い出すような真似はしなかった。テントに入ってレティの寝室に続いて入る。ぶつぶつと明日の朝イグニスに怒られるの私なんだから、とかぼやいてたから先にベッドに横になった時に「ノクトはソファなの!そこは私のベッド!」と思いっきり蹴られた。どすんと床に落とされて何すんだよと文句言ったが、レティの頭からにょきっと角が見えたような気がしてオレは仕方なく言われた通り、レティの部屋のソファに寝転んだ。本当なら寝室にまで入る必要はなかったけどなんとなく一緒にいたかった。

 

「フン!もう締め上げられるのはゴメンだわ」

 

と意味わからないことを言って憤慨していたけどオレは先に寝たふりを決め込んた。

レティは寝るのだけは一人前ねと嫌味言ってたけどちゃんとタオルケットをかけてくれた。レティらしい気遣いだ。

そのうち本当に眠気が襲ってきてオレは瞼を閉じた。

それからどれくらいの時間がたったか。

ふと、目が覚めてしまったオレは無性に人肌が濃しくなって、ソファから静かに降りてレティが眠るベッドへとそろりと向かった。

レティはすやすやと眠っていて、こっちが呆れるくらい無防備だった。

 

涎垂らしてむにゅむにゅと口を動かしているから美味しいものでも食べてる夢でも見てるんだろうな。

もし、オレ以外の男が目の前にしたらあっという間においしく頂かれてしまうくらいに無防備だ。

オレも全然男として認識していない証拠ということでもあったけど。

 

「……なんかムカつく…」

 

どうしてかわかんねぇけどムカつく。

この幸せそうな顔が。

 

「……むが……」

 

オレはベッドに膝をついてレティの口元を引っ張ってやった。レティはされるがままだけどしだいに苦悶に満ちた表情になっていく。八つ当たりもとい、お仕置きはこれくらいで勘弁してやった。

そろそろいいだろうとオレは手を離し、一度ベッドを降りて靴を脱いで転がした。

レティが口酸っぱく言ってたからな。

私のベッドに土足で上がるなって。オレはレティを端に転がして自分もベッドに寝っ転がる。幸い、レティは起きなかったので良かった。

オレはいそいそとレティを引き戻して自分の腕の中に収める。

 

よし、これで眠れる。

 

「…おやすみ、レティ…」

 

オレは今度こそ熟睡できるはずと確信を感じながら、腕の中の存在を感じながら瞼を閉じた。




※次の日の朝

自分専用のベッドから起きたクペはレティを起こしに来た。そこでいるはずのない人物がいたのてクペは驚いて凝視してしまった。

レティ「うー、うー、ぐるじー……」
ノクト「………」(熟睡中)
クペ「……またやってるクポ。懲りない二人クポ」

やっぱりレティを締め上げて幸せそうに寝てたノクトがいた。
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