ノクトside
お互いの体を密着させてオレ達は抱き合ってベッドに横になっている。
そういや、一緒に寝るのはこの前以来か……。最近じゃイグニスが小うるさいからな。
「寝た、か」
オレの上でレティはスゥスゥと寝息を立てている。薬が効いてきたんだな。
前よりは顔色も良くなってるみたいだ。ランプの明かりを頼りにもぞもぞと動きポケットからスマホを取り出して時間を確認する。げ、二時過ぎてんじゃん。
レティを起こさないように慎重に体を動かそうとするが、がっちりとレティがオレの服を掴んでいて結局動けねぇ。
ふぅと、軽くため息をついた。
クペの姿が見当たらないのは気を利かせて別室で寝ているんだろうな。一度、部屋に誰か訪れた形跡がある。テーブルの上にはお腹を空かせたときにでも食べろという意味でおにぎりが数個用意されている。イグニスが作ったのか、……やべ、腹減った。
ぐぅ~と盛大に腹の音が鳴って一瞬レティが起きるかと焦ったが、起きる気配はなかった。
「…はぁ…」
レティが起きるまではこのまま、か。
仕方ないと納得して我慢するオレは、きっと相手がレティだからだと思う。
他の奴だったらここまで優しくなんかしてない。……ルーナだったら、そうだな。ベッドまで運んでそのまま部屋を出るな。まぁ、ルーナが水で酔うとは到底思えないけどな。
馬鹿やらかすレティだから目が離せない。
今も、これからもその役目はオレでありたいと願う。
政略結婚を控えた身でオレは不謹慎なことを考える。
レティを、手放さずにいられる方法があるんじゃないかって色々手段を講じようとしている。オレが結婚しちまえば、いずれレティは降嫁させられるかもしれねぇ。あの親父のことだ。散々あんな扱いさせてたんだ、簡単に捨てることぐらい厭わねぇだろ。
けどオレは絶対納得しない。レティが誰かの所に嫁ぐなんて。
いや、そもそもオレ以外の手を取るなんて、考えられないぜ。
……前々からあったオレの中にあった気持ちが膨れ上がってる。
妹であるレティに、抱く恋心を。
家族だと言い聞かせてきた。
家族ならレティと離れることはないって。
でも、家族だから離れる時が来た。オレがルーナと結婚することでレティは一人になる。
ルーナを城に迎えたとて、オレが帰る場所はレティが待つ部屋じゃなくてルーナが待つ部屋だ。
だからレティはオレに甘えようとしなかったんだ。
オレの為に、ルーナの為に。
それがやせ我慢だってことはすぐわかる。
「…うぅん…」
小さく呻いてはオレが側にいることを確認するように服を掴んでいる手にきゅっと力を込める姿がいじらしい。空いている手で乱れた前髪をそうっと横に払う。
レティは子供の時から何も変わらない。儚げな印象を持ちながら、活発で好奇心旺盛。人見知りは激しいが、自分の懐に入った相手には無条件で気を許す。警戒心が強いのかと思わせるが、そうじゃない。自分を認めてくれた相手にはとことん甘えるんだ。
その中で、レティが気を緩めて甘えられる相手がオレだって自負してもいい。
オレの腕の中で安心しきって眠るレティを、ずっと傍で守ってきた。
今でも、これからもその役目はオレのものだ。
「最後じゃない」
王族として責務は全うしたい。けど感情押し殺してまでルーナと添い遂げたいとは思わない。何より、
「最後に、させねぇよ」
させてたまるか。
「オレは、レティが、好きだ」
実の妹だとしても、この気持ちはもう抑えようがない。
世間から後ろ指さされようが気にしねぇ。
「レティ、……好きだ」
滑らかなおでこにそっとキスを送り、また身を寄せ合って眠りについた。
【自覚したら止まらない】