レグルスの子供たち   作:サボテンダーイオウ

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ダーティープリンセス。

不審人物に絡まれ、一時雰囲気が最悪化したものの気を取り直し船が本当にないかどうか直接確かめに行くことになった。さきほどのことからまたあのようなことがあるかもしれないと危惧し、レティを取り囲むようにしてノクトたちが歩く姿は他の客にからしてみれば異様と言える光景だったろう。自然に人の目を引くのは仕方がなく、レティもできるだけ人を視線を合わせないようノクトと手を繋ぎながら速足で渡船場へと向かう。

 

やはり、あの男が言った通りそこにあるはずの船はまったく見当たらなかった。他の客の話では向こうの港で泊められていると不満そうに呟いていたのをレティは聞き逃さなかった。プロンプトががっかりと肩を落とす。

 

「あーあ、やっぱ船いないよ。なんでー?」

「船が止められてるそうよ。向こうの港で」

 

レティがそうさらっと教えるとイグニスが顎に手を当てて考え込む仕草をする。

 

「……予想外の出来事があった、ということか」

「とにかく戻るぞ」

 

埒があかないとグラディオの一声で取り敢えずレガリアまで戻ることに。億劫そうに歩き出したノクト達は、突然ベンチに腰掛けて座っていた男から軽い口調でいきなり話しかけられた。

 

「オルティシエを出られないんだって。その筋の情報によると急に規制がかけられたそうで。で、君らノクティス王子御一行だろ?こんちは。オレ、ディーノ」

 

イグニスと似たような髪形が特徴的な男。フレンドリーに話しかけてくるが、さきほどの不審者の件があるのですぐに言葉を返すような真似はしなかった。ノクトたちは男を一瞥し、

 

「……」

 

無言で対応する。こちらに来た時からノクトたちの動向を探っていたらしいその男は不審がるノクトたちの対応も承知済みと言わんばかりに尋ねてもいない自分の素性まで喋り始めた。

 

「あ、オレ新聞記者だから色々知ってんの。高級車でハンター始めたのも知ってるし。お忍びだろ?記事にされたくないよなぁ。な、ちょっとオレの話、聞かない?」

 

レティは露骨に顔を顰め不快感を露わにし、ノクトは腕組みをして耳を傾けていたが吐き捨てるように

 

「全然聞きたくねーわ」

 

と軽い脅しすら平気だと突っぱねた。だがノクトのすぐ後ろで聞いていたイグニスが小さな声で待ったをかける。

 

「待て、変に刺激したくない」

 

イグニスが止めた理由としては、へたにスキャンダル記事など書かれては結婚式を控えるノクトだけではなく、その相手のルナフレーナのイメージダウンにも繋がりかねないと危惧したからだ。ひいてはレティの為でもあった。普段からノクトとべったりな姿はこれまで利用してきた店などで皆の周知となっているはず。そこでレティの身分を知らぬ者にしてみれば、王子に軽々しく付きまとう下種な女として世間からバッシングの対象とされてしまうかもしれない。様々な問題点に気づき、考慮した上でそう判断をしたのだが、やはりそこは世間知らずなお姫様。レティは思慮浅くそこまで考えが至らなかった。だから

 

「イグニスの弱虫」

 

と悪態づくもイグニスは気にした様子もなくレティの方へ視線を向けずに、

 

「レティは黙っててくれ」

 

とぴしゃりと言い返した。だがレティは眉間に皺を寄せて

 

「ム」

 

と口をへの字にさせた。プロンプトが見かねてレティの腕を引っ張って、イグニスからかなり離れさせた。

 

「はいはい、こっちこっち!行こうね~」

「ちょっとプロンプト引っ張らないでっ」

 

ギャーギャーと喧しく騒ぐ二人をちらっと一瞥し、イグニスは「はぁ」とため息をついた。ノクトとグラディオは毎度のことと慣れているので平然としていた。新聞記者ディーノはレティがプロンプトにヘッドロック仕掛けているのを内心驚きだがしっかりと目撃しつつ、

 

「はい、聞くってことね。じゃあ地図貸して」

 

とノクトに地図の提示を求めた。ノクトは嫌々地図を取り出しディーノに手渡した。

さらさらっとペンで目的の場所を書き込み、地図をノクトにかえしながら、説明を始めるディーノ。

 

「場所の印つけといたんで『原石』取ってきて。これ、宝石の原石。代わりに船乗れるよう話つけてやるよ。ダメなら王子の情報売っちゃうカンジで」

 

腹に据えかねてとうとうレティがキレた。ちなみにプロンプトはしっかりレティのヘッドロックが決まりレティの足元で沈黙している。クペが慌てて介抱しだすがレティの怒りの矛先はあの新聞記者に向かっているのでクペに全て任せズンズンとディーノ目指して歩き出す。

 

コイツ、サンダー決定である。

そうと決まったら、人差し指を作り呪文を唱えようと口を開いた。

だが!第二の壁が立ちはだかった。

 

「サンもごっ!」「馬鹿!」

 

定番の流れを見越して後ろからグラディオがレティの口元を手で塞ぎ、新聞記者サンダー被害事件は起こることなく流れた。イグニスはアイコンタクトで『よく防いだ』とグラディオを褒め、グラディオもニッと余裕そうに口角を上げて答えた。

だがもごもご言っているレティはさっさと放せ!と暴れながらグラディオの弁慶の泣き所を思いっきり蹴とばした。

 

「いでぇ!?」

 

不意打ちを食らい思わずレティから手を離してしまうグラディオ。

 

「……ふ、逃げてやった……!」

「てめっ!このレティ!」

 

誇らしげに胸を張っては膝まづいて蹴られた箇所をさするグラディオに上から目線をするレティだったが、不必要に注目を浴びてしまったことには気づいていない。イグニスは思わず舌打ちしたい気持ちになったが、ここは冷静に対処しなければと己に言い聞かせ自分の後ろで騒いでいるレティをディーノの視線から隠すように体を動かして視線を逸らせた。だがディーノの興味はすっかりレティへと集まっており

 

「あれ、そっちの子……」

 

とベンチから立ち上がりイグニスの肩を掴んで退かそうとしてまでレティが気になっている様子にノクトまでやべぇと焦り始め

 

「オイ、アンタが用事あんのはオレだろ」

 

とディーノの腕を掴んだ。イグニスも

 

「君が欲しいのは原石だろう?」

 

と再度己が体でディーノの行く手を遮った。だがもう遅かった。

ディーノはみるみる内に表情を一変させ、

 

「…あれあれ、もしかして…噂のレティーシア姫!?おわっ、まさかこうしてお会いできるなんて!確信はなかったんだけど超ラッキー。あ、コホン!初めまして、オレ、ディーノと申します。まさかこのような地で貴方に会えるとは光栄の極みであります!」

 

わたわたと慌て始めたディーノは身なりを整え、イグニスらを押しのけてまでレティの前に向かうと急にその場に膝まづき、畏まった様子で挨拶を始めた。

ついにバレた!とノクトたちは焦るが、レティはきょとんと目を瞬かせたが表情を切り替え、自分を守るために動こうとしたノクトとイグニスに手で制して止まらせ、一歩前へ出た。

 

「……そう。ディーノさんと言ったわね。どうぞ、そんなに畏まらないでください。初めまして、レティーシア・ルシス・チェラムと申します。よく私のことをご存じですね」

 

朗らかに微笑むレティは先ほどプロンプトにヘッドロック仕掛けダウンさせた人物だとは思えないほど王女らしく輝いて見えた。ノクトやイグニスはよくこうも変わると感嘆さえしていたしグラディオは「後で嫌って程俵担ぎして回してやる」と恨みがましい視線を送ったりしていた。

 

「はい!以前公式の場で、と言っても数年も前ですが。姫の御姿を一目したときからいつか、拝顔叶えばと強く祈っておりました。まさかこのような場でお会いできる日が来るなんて……」

 

とディーノは一人感激に震えていた。さきほどプロンプトを沈めた女子だと目撃しているはずなのにすっかり頭から弾き飛ばされているようだ。

それは仕方ないと言えば仕方ない。滅多に城から出ない(出させてもらえない)彼女はルシスの民にとって羨望の対象とされている。ある式典にてレギスの後ろにて出席したレティの姿を今でも鮮明に思い出せるほどディーノの中で強く印象づいている。

控えめに佇むその姿は遠目からでも清楚でありながら王族としての品格と洗練された美しさを醸し出していて、さらに誰にでも分け隔てなく平等に接し、運よく視線が合い微笑を向けられればたちまちほうっと魅了されため息が漏れるほどであった。それにルシスでは珍しい白いドレスなどを好んで着ることでも知られていて、ある有名なデザイナーがレティの為だけにドレスを作り上げた、なんて話もざらである。

 

「私は王族とはいえ政治に疎いただの娘ですもの。貴方のように卓抜とした情報収集能力(パパラッチ)と素晴らしい人脈(コネ)を持っているわけではないのですから」

 

決して驕らずに控えめでありながら相手の気持ちをしっかりと掴む会話術には見守っていたイグニスもさすがと舌を巻いた。素のレティを知るだけに逆にレティを崇拝しつつあるディーノが哀れにさえ思えた。

 

「オレの能力をそこまでかってくださるのですか……!?」

「ええ、ぜひ貴方の助力を。どうかノクティス王子を助けてあげてくださいませんか?(逆に利用してやるわ)。兄の晴れ舞台である結婚式に遅れることだけは避けたいのです」

「はい!オレの全力を持って王子をお助けいたしますっ!必ずや!姫のご期待にそうとお約束いたしますっ」

「まぁ!嬉しいことおっしゃってくださいますのね。ええ、貴方のお力存分に期待しております(船用意しなかったらサンダー落とす)。でも無理だけはなさらないでくださいね?(失敗の二文字はないと思いなさい)」

 

にっこりと姫らしい微笑みとついでにそっとディーノの手を取ってみれば、もうディーノは感激のあまりふるふると体を震わせた。フフフと裏の顔で含み笑いしているレティに気づきもせずに、ディーノは「オレ、全力で頑張りますっ!」と叫んで意気込んで駆けて行った。してやったりと優雅に手を振り顔はほくそ笑んで見送るレティ。

 

クペの介抱によりこっち側に意識を戻らせたプロンプトは、床にへたり込んで静かに一部始終を見守っていた。

 

「オレ、姫の言葉に副声音が聞こえちゃうのは気のせいかな?」

「いや、間違ってねえぞ。大体アレであってる」

 

隣でしゃがみこんだグラディオが頷き返す。

 

「……オレ、あの人にちょっと同情しちゃうかも」

「知らぬが仏ってやつだな」

「何か言った?」

 

地獄耳を持つレティが振り返りじろりと二人をねめつけた。

 

「「何も言ってません」」

 

見事に声を揃えて二人はレティからさっと視線を逸らした。レティは「ふうん?」と疑わしい視線を向けるがノクトが「とっとと終わらせようぜ」と促したので、仕方なく見逃すことにした。その後、レガリアで移動中にどうして断らなかったのかと厳しい口調でイグニスを責めるレティだったが、イグニスがちゃんと理由を説明するとレティはその内容に驚き自分の方が悪かったことを恥じてすまなそうに謝った。

イグニスは、そういう素直な所が好ましいのだろうなと知らず知らずに微笑んでいて、プロンプトが意味深にその横顔を見つめていたのをイグニスは知らなかった。

 

【クエスト、秘密の対価】

 

 

ディーノからのお使い内容は原石の採掘場へ行き、宝石の原石を入手すること。簡単そうに見えたお使いも実はかなり危険度があった。レティにしてみればふっさふさの毛並みが愛らしい大きな鳥に見えても、ノクト達からしてみれば恐ろしく巨大な猛禽類のモンスター。そのすぐそばにお目当ての原石があるというからディーノに一杯食わされたようなものである。息を殺して身を屈めながら細心の注意を払いノクトたちは進んでいく。

だがそのあまりのデカさに思わずプロンプトが恐怖のあまり声を漏らしてしまう。

 

「ひ、はっ!?」

「しいっ」

 

ノクトかイグニスだろうか、目ざとく注意したお陰でヤバイと思ったプロンプトは落ち着かせるために軽く息をつく。モンスターの方を確認すると「グルルル」と唸り声を発しながらその瞼は閉じていた。

ほっと息をつく男たちは、そろそろと屈んで進みながら鳥モンスターの目の前を通過し、目的のものが埋まっているであろうポイントへ向かった。

そしてガーネットの原石を無事に確保。すぐにでも駆けていきたく気持ちもあるものの、慎重に慎重に来た道を戻ることに。ここまでは順調だった。

予想外の、

 

「クシュンっ!」

 

レティの可愛らしいくしゃみをされるまでは。

 

「「「「……」」」」

 

レティを除いた全員がこの世の終わりのような絶望的な顔をし、心底後悔した。

 

なぜ、レティを連れてきてしまったのか、と。

いつも身をもって体験していて何かしら騒動が起こることはわかっていたはずなのに。

ちなみにすでにクペはこうなることを見越してちゃっかりレガリアに残っていた。

 

「あは、ごめん。でちゃった」

 

悪びれた様子もなくレティは頭をかきつつ、てへっと舌を出してみせた。

 

((((オレ達、終わった))))

 

結果、レティのくしゃみに起きた超大型モンスターはパチッと目を覚まし、その大きな翼を広げ腹の底から耳を覆ってしまいたくなるような鳴き声を上げ、軽く吹っ飛ばされそうな風を起こしながら自身の鉤爪で地面を抉り大空へとはためいて行った。

圧倒され、言葉を失うノクトたち。

 

「迫力、あったな」

「旅も、ここまでかと思ったよ」

「さすがにあれと戦うのはやべえか」

「無理だと思った方がいい」

「えぇ~?可愛いと思ったけどな。背中乗ってみたい」

 

残念そうに飛び立ったモンスターを見つめては、一人的外れなことを言い出すレティに男たちは声を揃えてこういった。

 

「「「「とりあえずレティ(姫)は空気読(め)むんだ!」」」」

「ええ~?」

 

不満そうブーたれるレティだったが、「行くぞ」と置いてけぼりにされそうになり諦めて大人しくレガリアに乗った。

 

【クエストクリア~】

 

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