レグルスの子供たち   作:サボテンダーイオウ

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夢花火

イグニスside

 

 

知っているようで知らなかったレティの様々な表情をこの旅で知れたことはオレにとってかけがえのない出来事だったと思う。日常のほんの些細なやり取りの中で、一人の女性として好ましくも思えるときもあれば、悪戯っ子のように手に負えない苦労を感じさせられたり、問題児を抱える教師にでもなった気分になったりもした。

城にいたときとでは知ることのできない彼女の隠された表情。

 

いや、違うな。

本来の彼女といったところか。

以前、レティはオレにこう切なげに訴えた。

 

王女としてではない。ただのレティーシアを見て欲しい、と。

 

オレは自分の彼女への想いを気づいた後でもやはり王女というフィルター越しにレティを見ていた様な気がする。あそこであえて口に出してその辛さを教えてくれたレティに感謝したい。

でなければオレは好きな女性に知らず知らずのうちに辛い思いをさせていただろう。

 

彼女のはつらつとした姿に何度目を見開くほど驚かされたことか。

多少元気すぎるときもあるが、許容範囲だ。問題ない。

いつからオレは他人に甘くなったのだろうか。レティを意識する前ならノクトの補佐役として常に完璧さを求めていただろうに。

 

こうまで変わった自分に驚きもし、また新鮮さも感じた。嫌な気はしない。

 

 

「ねぇ、花火やりたい!皆でやろうよ」

「花火?」

 

今日の夜もレティはいつもの調子で花火をやりたいと言い出し、ノクトを困らせていた。

 

花火か。多少時季外れな気もするが確かショップの片隅に売れ残りであったような気がする。オレはちらりと腕時計を確認しショップがまだ空いている時間帯であることを確認した。レガリアを走らせれば二十分くらいで戻ってこれるはず。オレは揉めない内に二人の声を掛けようとした。だがその前にレティが用意周到と言わんばかりにクペから大人数用の花火セットを受け取り、してやったりな顔をしてノクトを驚かせた。

 

「実は用意してあるの、ね!だからやろうよ」

「なんだ、あるんじゃん。…てっきりショップまで行って買ってこなきゃいけねえのかと思った」

 

ノクトは苦笑しながらレティの額を軽く小突いてみせた。レティは一瞬だけ目を見張って驚いていたが、すぐに笑みを浮かべた。怒られるとでも思ったのか、それなりに学習してきているらしい。だがノクトもオレと同じ考えだったとは…。

 

オレはなんだか気に入らなくて眼鏡を持ち上げなおした。

隣でレティたちの振舞いを見守るようにいるグラディオがこちらを見ずに

 

「甘やかしてばっかだとそのうち痛い目見るぜ」

 

と忠告めいたことを告げてきたが、オレは

 

「十分苦労させられているさ」

 

と軽口で答えた。グラディオは、小さく「……そういうことじゃねぇよ…」と零すように言ったがオレがどうした?と尋ね返すと言い淀みながら結局は「別に」と誤魔化した。オレは何か引っ掛かりを感じたが、グラディオは押し黙りじっとレティへと視線を向けていたのでこれ以上は聞き出せないなと考え、またノクトたちの様子を見守ることにした。

 

「おお!オレこれがいいな~」

「ちょっと!?私が一番最初に選ぶんだから」

 

今度はレティとノクトの間に割り込むようにプロンプトが乱入し、どの花火をやるかもめているらしい。

 

「だったらコレにすっかな」

「ああ!?私がやりたかったやつとったー!」

「早いもん勝ちだ」

「ノクトの馬鹿!」

 

花火くらいでへそを曲げるのはきっとレティぐらいだろう。

その愛らしさに自然と頬が緩んでしまった。

 

…オレならもっと自由に振舞わせてやりたい。いや、そうさせてやる。必ず。

もし、もう一度告白してオレを受け入れてくれたなら彼女を苦しませる要因を取り除いてやりたいと思う。ノクトに譲る気は最初からないし、そうでもあってもノクトには無理だ。兄妹であることもそうだし、何よりノクトは王となる身。

生涯の伴侶に自分で選択できる権限はないんだ。だからこそ、レティがオレを選んでくれたのならノクトが王として振舞う日、それ以降も生涯を賭して全力で支えて見せる。

レティの傍でならオレはそれができると確信できている。

 

「イグニスも姫ばっかり見てないでこっちにおいでよ!」

「なっ!?」

 

どうやら気づかぬ間にレティに視線を集中させていたらしい。プロンプトが茶化すようにオレにそうわざとらしく叫んだ。

 

「ち、違う!あくまでオレはレティを見ていたわけじゃなく何か問題を起こさないかと監視をしていたのであって」

 

オレは慌てふためきそう言いつくろうが、ノクトの冷ややかな視線に負けて視線を逸らした。プロンプト、余計なことを…!

オレの動揺っぷりにレティは不思議そうな顔をしていたが気にすることもないと思ったのか、それとも花火の方への興味が勝ったのか、「花火やろうよー!」とオレたちに手を振った。

 

「行くか、王女様のご命令だしな」

「ああ」

 

グラディオに促されオレたちも、賑やかな輪の中に参加した。

 

【この先の時間に夢を描いた】

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