レグルスの子供たち   作:サボテンダーイオウ

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[grow apart~彼編~]

現在の職業。ルシスの王。

 

オレで114代目となる血筋ももしかしたら途切れるかもしれねぇな。

結婚?したいとも思わねぇ。好きな奴なら別だけど今は無理だ。だって、レティが眠ったままだし。

 

輝きの外側の世界、レティが身をもって救った外の世界は今日も隅々に広がるほどの青く澄み切った空が広がっている。暗闇から解放された世界は、芽吹き色々と目まぐるしく変化する。

 

それだってぇのに、相変わらず寝坊助だな、レティは。

昔からそうだったもんな、たたき起こされても中々起きない。オレが起こしに行った時もすぐに目を覚まさなくて逆にオレを引き寄せて抱き枕化してた。それでオレも起こす気失せて一緒に寝るってパターン。毎度毎度イグニスに叱られてたのは笑えるぜ。

 

……レティがいる場所は世界から隔離されている特殊な世界。

ここは『限られた者=オレ』しか訪れることができない。そういう決まりなんだとさ、守護者様の話だと。黒いフードを被った男は、オレの姿を認めた途端、呆れたようにため息をついた。

 

『また来たか』

「来て悪いか」

『いや、王という職業は暇なんだと思ってな』

「暇じゃねーし。やることやってから来てんだよ」

 

皮肉りやがって、コイツの方こそ暇そうにしてんじゃんか。

 

『ふぅん』

「興味ねぇなら聞くなよ」

『別に興味ないとは言ってないだろ』

「嘘つけ!」

 

あーいえばこーいう。どうも退屈しのぎに遊ばれてる気がしてやになるぜ。

……アイツ、レティの守護者になってからも態度全然変わんねぇよな。

今日もオレは執務を終わらせてレティの守護者から『ほらよ』と投げ渡された透明の鍵を受け取った。するとオレの目の前に一つの扉が現れる。

真っ白な両扉の鍵穴に鍵を差し込んで解錠すると鍵は空気に溶け込むように消え去った。

 

早く、早く、レティに会いたい。

オレはドアノブに手を掛けてバンと押し開けた。

 

そこから世界は一変する。強烈な光と共にオレは目をぎゅっと閉じて腕で視界を遮りながら光が収まるのを耐えて待つ。すると瞼越しに光が弱まっていき、ゆっくりと瞼を上げていく。

そこにはもう、現実世界を超えた別の世界が広がっていた。

音という音が遮断され、人が住まう場所から切り離された異界とも呼ばれる場所らしい。

時の中から隔離された場所は生と死すら存在しておらず、少し寂しい場所だ。

しばらく真っすぐに歩いて歩いて、蒼い輝きを放つ結晶が見えてくる。

 

「……レティ…」

 

そこにアイツは、いた。

【それ】の中で祈るように胸元で手を組んで変わらぬ姿で眠り続ける彼女は、神秘的でいて見惚れてしまうくらい綺麗だ。

 

「レティ、今日も来たぜ」

 

そう声を掛けてオレはそれに手を伸ばす。触れるとじんわりと温かくて彼女が生きていることを実感させてくれるからオレはまだ耐えられている。

彼女が目覚めない。オレはいつもの通り、【それ】の前で座り込むとじっと見上げていつもの通りの毎日を過ごす。時折、眠っている顔に変化がないか立ち上がって顔を近づけて確認したりもする。けど、何も変化はなくて落胆する。

 

アイツは起きなかった。次も、その次の夜も。

世界は闇から解放されたというのにオレの心は晴れることはない。

 

「変わんねーな」

 

この世界にクリスタルはもう不要らしいぜ。今は辛うじてこっちとあちらとの中間場所に留めている。『あちら側』としてはレティを完全に目覚めさせてこちらと縁を断ち切らせる腹積もりだ。けど、バハムートがレティの目覚めを待ってからでも遅くはないと庇ってくれている。召喚獣たちの間でも意見が真っ二つに分かれてるなんて、人間臭いよな。

だがそのお陰でオレはレティとこうして会えるんだ。

 

「……気持ちよさそうに寝やがってさ」

 

オレさ、結構頑張ってんだぜ。前よりもしっかりしてると思うし、お前が言う立派な王様になってると思う。あれだけ混乱しまくった世界を治めるなんて一苦労してるけどよ、頼れる仲間がいるから助かってる。服装だって身なりだって王らしく堅苦しい奴だけど着てるぜ。たまにあの頃を懐かしんだりもしてる。

 

今度は、神々に頼るだけの世界じゃない。

自分たちの力で平和を維持できるようなそんな世界創りを目指してる。

 

「なぁ、覚えてるか」

 

お前と、仲間とさ、旅してた頃。

馬鹿みたいにはしゃぎまくって一緒に叱られたりもしたよな。

思わず笑みを浮かべてしまうが、オレと一緒に思い出し笑いしてくれるお前は、隣にいない。この壁はオレとお前を別つ檻だ。

そこに閉じこもったお前と、世界に立つオレは二度と同じ景色を見られないのか?

衝動的に内側の世界に飛び込みたくなったこともある。でもそれって責任放棄だよな。

お前はきっと怒るだろうからやらない。

 

時々さ、怖くなる。

お前に愛想つかされてんのかなって。だから起きてくれねーのかなって。

 

「レティ、あの、な。オレさ」

 

実はさ、そろそろ身を固めろって周りが騒ぎ出してな。ルナフレーナが再候補として名が挙がってるんだ。オレはそんなつもりないしルナフレーナだって今は無理だって断ろうとしてる。あれから二年経ってオレは二十二歳になったしな。

 

けど、オレ達の意思とは関係なしに世界がそう望むんだよ。

救世主たるルナフレーナとルシスを復活させた偉大な王との婚姻を。

イグニス達はオレの意思を一番に尊重するって言ってくれてる。無理強いさせようとしてんのは、元老院のお堅い頭のジジイどもだよ。アイツらしぶとく生き残ってやがったもんな。まだまだ若い王に王政は難しいだの勉強が足らないだのと口うるさく言いやがって。けどアイツらのお陰で何とか復興してきてるのも事実だ。国民を守る立場としちゃ、文句は言ってられない。……レティが死んだ事実を上書きしてなかったことにはできないもんな。

アイツらにとって、レティーシア・ルシス・チェラムは消えた存在で過去の者。

 

でも、それでもいいんだ。それはオレにとって好機なんだ。

レティが目を覚ました時に、堂々と告白できる。返事をもらえるかどうかは分からねぇけどう自惚れてもいいほどには実感得てるからな。

だから、後はレティが目を覚ます日を待つだけなんだ。

オレは、ずっと待ってるよ。

 

「愛してる」

 

なぁ、レティ。

 

オレはずっとここにいる。

お前が起きてくれるまで、ずっと。ここにいるぜ。

お前はオレにとって、かけがえのない存在だ。

 

もうすぐ、レティの命日なんだ。皆、お前の為に集まってくれるぜ。しんみりした日になるけどオレ達の再会を約束した日でもある。その時に、オレははっきりと言うつもりだ。

 

オレはレティ以外と婚姻するつもりもない。今後一切は。

 

だからオレが死んだらルシス王家はオレの代で終わりにする。その後はお前らの好きにしろってな。どうだ、結構格好いいと思わねぇか?……それくらいお前にはまっちまってるってことだ。親父が守り抜こうとしたのは血筋じゃない。この世界を守る存在だ。

今、オレの役目は半分果たしてるも同然。あとは好きにさせてもらうさ。

 

なぁ、この言葉はお前だけにしか捧げない。

お前だけにしか囁けない言葉だ。

 

「レティーシア、愛してる」

 

【約束の日まであと】

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