レグルスの子供たち   作:サボテンダーイオウ

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胸三寸に納める彼ら

ノクトside

 

オレ達はコルと合流するためハンマーヘッドに向かっている。レガリアを無言で運転するイグニスはいつもより多めにアクセルを踏んでスピードを飛ばしていた。普段なら安全運転とか口うるさいイグニスがな、なんてオレはまるで他人事のようにぼんやりそう考えた。

 

帝国に追われているオレ達に休んでいる暇はなかった。レティ連れてすぐにレガリアを飛ばしているけど、途中途中でやっぱり帝国の飛空艇が我が物顔で空を蹂躙して飛び交っているからその時はレガリアを停めて隠れたりしている。

状況がマズいらしい。今のオレ達じゃ叶わないってグラディオは難しい顔で言う。でも敵に見つからないのはクペの説明だとオレの隣で行儀よく座ってるカーバンクルのお陰らしい。緑色の小さな獣はレガリア全体に見えないバリアを張って周囲から敵に悟られないようにしてるだとさ。クペの説明に自慢げに「キュン!」と一鳴きしてる姿をレティが見たら猫かわいがりそうだと思った。そのカーバンクルに詰め寄って色々と質問ぶつけているクペは普段よりも動揺が激しいみたいだ。なんか「なんでこっちに来てるクポ!?」とか質問ぶつけてるけどカーバンクルがそれに応えるように鳴くと、普段一重の目がくわっと開いていたから相当衝撃的な話をされたんだんだなって感じた。

グラディオたちは今後のことについて相談し始めた。

 

「警護隊はもう機能してねぇんだろうな」

「ああ、将軍が外に出るというくらいだ」

「中、どうなってるんだろう…」

 

不安そうにプロンプトが呟いた。

 

「そのうち報道されるだろう」

「これだけでかい騒動だからな」

「これからオレ達、どうするの?」

「まずはハンマーヘッドだ。他は後で考えようぜ」

「イリスからも伝言があった。何人かとレスタルムに向かってる」

「無事なんだ。妹さん」

「ああ、あっちはどうなってるかわかんねーだろうがな」

 

どうなってるか、なんて言わなくてもわかってんだろうに。

全部、壊れてるに決まってる。クリスタルが強奪されたんだ。魔法障壁も無くなって丸裸になったインソムニアは恰好の餌食だろうさ。

 

「………」

 

なんかさ、まともに頭が働かないんだ。

ただ現実がそこにあって、嘆く暇もなく動くしかない状況にただ流されてるだけで精一杯なだけだ。そういや、城を立つ前、親父はオレにこういったっけな。

 

『すぐに帰れないことだけは覚悟しておきなさい』

 

それにオレはこう答えたはずだ。

 

『そんな簡単に帰らないし、ご安心を』

 

おどけて言って見せたけど、まさか本当に帰れなくなるなんてな。どうせオレに喝入れるために言った話だと受け止めたんだ、その時は。

 

オレは、自分の膝に乗せて眠っているレティ見やった。

静かに寝息を立てて眠っているレティに悪戯をしたら起きるんじゃないかって鼻抓んでみた。いつもだったら『ふがっ!?』って女に似つかわしくない声出して飛び上がって悪戯したオレをギラッと睨み付けてはサンダー落としてくる。でも、

 

「……」

「……」

 

反応は、なかった。抱きしめても、くすぐったいくらいに顔をこすりつけても、ウザったそうにしたり、恥ずかしそうに拒んでもこない。ただ、眠っているだけだ。

昏々と。クペの話じゃ魔力の暴走が起こってからしばらくして急激に眠りがレティ襲うらしい。だからあの時、インソムニアに単身突っ込んでなくてよかったと泣いていた。

帝国はレティ狙っているとかラジオで言ってたもんな。きっと、レティが誰から見ても利用価値があるから狙われてんのかもな。オレや親父、ルーナが死んでるってのにレティだけは行方不明とか抜かしてるしな。

 

どうして、こうなんってんだろうな?わかんねーよ、なんかもう、ぐちゃぐちゃで。どうにかなりそうだ。

でもオレは王子だから取り乱しちゃいけねーんだよな?王になる存在だから平然としてなくちゃならねーんだよな?

 

「……」

 

なぁ、レティ。オレ達、これからどうすりゃいいんだろうな。疲れた。正直、疲れたよ。

 

オレはレティに頭を寄せて眠ることにした。少しだけ、オレも寝る。だから、今は少しだけ……許してくれ。

 

【君の寝息に寄り添って】

 

ノクトが寝たことを確認したグラディオにイグニスが声を小さくして尋ねた。

 

「ノクトは寝たか」

「ああ」

「……やっぱり一番ショックなのは、ノクトと姫だもんね」

 

プロンプトが労わりを込めてそういった。

小さな小鳥のように体温を求めて寄り添うあう姿は、見ていて胸が締め付けられそうになる。だからグラディオは前を向き直し、王の盾としての使命に徹しようと自分に強く言い聞かせた。必ずこの状況を打破する手立てがあるはずだと。グラディオも父やイリスの身が心配だった。だがそれよりも優先させるべき相手が二人いる。命に代えても守らなければならない二人がいるのだ。その気持ちはイグニスも同じだった。

カーバンクルのお陰でいまだ敵に見つからずにいることは彼らにとって少しでも戦闘になるリスクを軽減してくれているのだ。ノクトの死亡説もうまく利用できることだろう。

 

「だが死亡説はありがたい。向こうも派手には動けないだろう。……レティに関しては別、だが」

 

あえて言葉を終わらせてグラディオの出方を待ったイグニス。

自分が知らない情報を彼が持っていると悟ったからだ。長年共に過ごした幼馴染だからこそ気づく間柄と言えよう。グラディオはミラー越しに自分の視線を向けるイグニスから少し視線を逸らしながらつぶやいた。

 

「……そのことについては、後で話す」

「……つまり、帝国がレティ執拗に狙う理由を知っているということか」

「ああ」

 

微妙な空気が二人の間に流れ、プロンプトはどうしたものかと焦ってしまった。

だがイグニスはあっさりと引いた。

 

「今は、言えないということだな」

「そういうことだ。シドを交えて話す」

 

グラディオは毅然とした態度でキッパリと言い切った。

 

「分かった」

 

イグニスはそう言って会話を終了させたのでプロンプトはほっと息をついた。

 

本音は今すぐにでも吐かせたところだったイグニスだが、落ち着ける環境でなければグラディオは絶対梃でも話さないと思ったからだ。それほどに重要かつ、秘密にしなければならない内容なのだろうと推測される。

 

(……まったく、君はどこまで手が届かない存在なんだ)

 

召喚獣と共に駆っていく姿を目にした時は鳥肌が立ったものだ。畏怖し、自分とは違う圧倒的な力を見せつけられ自分の手にはまったく手が届かない遠い存在だと思い知らされた。だがそれくらいなんだとイグニスは跳ね飛ばした。気張っていなくてはレティのことを知ることなどできないと分かったからだ。

 

ともかく一刻も早くハンマーヘッドに着かなくてはという焦りを感じながら、イグニスはハンドルを握りしめアクセルを強く踏んだ。

 

レガリアをとばしてようやっとハンマーヘッドにたどり着いたノクト達。ガレージの前に停めたレガリアに駆け寄ってきて真っ先に出迎えたくれたのは心配そうな顔をしたシドニーだった。

 

「いらっしゃい……。レティは?何処か怪我を!?」

 

オープン状態で走っていたのですぐにノクトに寄りかかるように眠っているレティの異変に気づき動揺したシドニーはノクトがレティ抱えて降りるのを待ちきれずに身を乗り出してレティの頬やおでこに心配そうに手を伸ばした。

 

「意識を失っている。休ませてやりたいんだが」

 

そうグラディオが頼み込むとシドニーはすぐに頷いて

 

「そっか、トレーラー確保しておいたからそっちに休ませてあげて。天気も、悪かったし。大変だったね」

 

とノクトたちをねぎらいながらレティ降ろすのを手伝った。何とかレティ降ろしたノクトは「ありがとう」と生気のない小さな声で礼を言った。シドニーは「いいよ、礼なんて」と痛ましそうな視線でノクトを見ると首を振った。イグニスも軽く頭を下げて感謝を伝えた。

 

「すまない」

「プロンプト、手伝ってくれ」

「うん」

 

レティ抱えたノクトと共にプロンプトとその両肩にクペとカーバンクルを乗せてトレーラーの方に向かう姿を見送りながらグラディオがシドニーに肝心の人物について尋ねた。

 

「将軍は?」

「用事があるからってもう出てったよ。じいじに色々伝えてあるみたい」

「シドか」

「来るって知ってたからずっと心配して待ってたんだ。……でも今は少しでも休んでよ。顔、強張ってるよ」

 

事情を知るシドニーだからこその気遣いにグラディオは目を見張った。

指摘されるまで気づかなかった自分の状態に「悪いな」と少し笑い返した。

 

「皆、疲れてるからね。仕方ないよ」

 

シドニーはそう言い返すととにかく休んでと有無を言わさずグラディオとイグニスの腕を掴んでトレーラーハウスへと引っ張った。

 

【今は休息が必要】

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