レグルスの子供たち   作:サボテンダーイオウ

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変革は何事も一歩から

戦局は圧倒的にノクト側にあった。作戦が功を奏し単純な命令を受けた魔道兵で統率された部隊では不意打ちに対抗できるほどの力はなかった。

 

「ノクト先に謝っとくゴメン!サンダラ!エアロ!」

「おわ!?あぶねっ!?レティ!」

「だから先に謝ったのに~」

「そういう問題じゃないっつーの!」

 

レティはお構いなしに魔法を連発。ちゃんと防御魔法張っているので当たる心配がないからだ。でもノクトやコルは知らないわけで、巻き込まれないように頑張って奮闘した。

 

「コル!そっち飛んでったわ!」

「お任せを、フンッ!」

 

エアロでコルに向かった魔道兵は見事ご自慢の武器で打ち返されホームラン!

壁に激突して動かなくなった。まるでコントのような戦いだが見事レティの完膚なきまでの容赦ない魔法攻撃も一押しあって、というか此方がメインになってしまっていたような気もするが、グラディオたちと無事に合流できたのである。ゲートの外側でもしっかりと魔法攻撃の様子は窺い知れたようで、しっかりとイグニスに「レティ、君は一体何度言えば……」と小言言われレティは、わかりやすく頬を膨らませてぶーたれた。その瞬間、プロンプトがシャッターチャンスを逃すわけもなくさっとカメラ構えて貴重な一枚ゲット!

グラディオは後にしろとプロンプトを叱り飛ばして戦闘に集中させようとするが、レティの所為で緊張感の欠片もなくなってしまい疲れた顔して肩を落とす。

ノクトはノクトで、不機嫌な顔をしてレティにツカツカ歩み寄り彼女柔らかな頬に両手を伸ばしてお仕置き攻撃。

 

「さっきのマジ危なかったし!」

「ほへ?」(そう?)

「そうだ!」

 

仲の良い二人の所為でまったく戦闘中であることを忘れるほどほのぼのとした雰囲気に。

コルだけは真面目に他に敵がいないか探っていてさすが不死将軍とグラディオは心の中で感動の涙を流した。

 

そこからは信じられないような怒涛の展開があった。

目ざとくコルが「来るぞ!」と大声を上げて発見したのが帝国の飛空艇。

『動くな侵入者!』とスピーカー最大で喋る敵軍の将を乗せスピードを上げてやってくる飛空艇を警戒するノクトたちだったが、何を思ったか、レティは相棒であるクペに

 

「クペ、しっかり捕まってて!」

 

と指示を出して、クペの返事も聞かぬままクルクルとバトンのように華麗に杖を回し、カツン!とその先を地面へと打ち付け音を鳴らしながら意識を集中させるために瞼を閉じた。そしてレティの足元に青白く現れる複雑な模様の魔法陣が展開される。

ノクトたちは何事かと驚愕し、レティから慌てて離れたりする。

クペはその召喚のやり方に見覚えがあった為、「またアレクポ~?」と嫌そうな声を出した。でもレティにはその声は届かず。

レティの声に導かれて、彼女の後ろに出現した【異世界への門】はその呼び声のまま開かれた。

 

「来て!イクシオンッ」

 

雷を纏いし召喚獣、イクシオンはレティの召喚に応じその身を【門】から風のように駆け抜けバチバチと雷を飛ばしながら出てきた。

 

『―――――!!』

 

聞き取れない嘶きを発しながらパカリパカリと地面を軽快に走り勢いを殺しながらレティのすぐ近くへとやってくる。そして自分に腕を伸ばして迎えようとするレティの前で止まると顔をこすりつけるようにして甘えた。

 

「イクシオン、一緒に行ってくれる?」

 

レティの願いにイクシオンは分かったというように頷いた。何処へ向かうかなど聞かなくともイクシオンにはすぐにわかっていた。だからレティは満足そうに一つ頷いてひらりとイクシオンの背に跨り、呆気に取られているノクトたちに一言「倒してくるね」と言い残し、彼らに止める暇を与えることもなくこちらに向かってくるであろう飛空艇へイクシオンと共に突っ込んでいった。

 

勿論、我に返ったノクト達が怒号を飛ばしたのはその後すぐである。

 

そして下の方でハラハラしながら首を上げて見守っていたノクト達の体感時間からして三分は経っただろうか。その間、敵将が喋っている様子は筒抜けでノクト達にも聞こえていた。

 

『貴様何者だ!?それにこの奇妙な馬は何だ!』

『通りすがりの召喚士です。それと相棒のクペ。そして私のバリバリイカシテル、イクシオンでーす』

『クポ』

『なんだと?!召喚士など聞いたこともない!っていうか単身突っ込んでくるお前は馬鹿なのかっ!ふっ、所詮ルシスの低レベル弱者め。勝算もなくその命無駄散らすとか馬鹿だな!このオレの重魔導アーマー「キュイラス」で惨めに』『イクシオン、私のこと馬鹿だって二回も言ったよコイツ』

『――――!!』

 

バチバチドカンッ!(爆発音)

 

『ああ、オレの重魔導アーマー「キュイラス」がぁぁアー――!!貴様ぁぁ―『五月蠅い』―』

 

ごんっ!(何かを思いっきり叩く音)

 

『ぐげ』

 

とりあえずレティは怒り敵将を何らかの形で沈黙させたと判断できたノクトたち。

レティが放ったとみられる度重なるサンダガの影響により、飛空艇から黒い煙や火花が飛び散り上がりあっという間にひゅるひゅると低空飛行していきゲート外側に派手に墜落。大きな爆発音が辺りに響いた。

 

「レティ!?」

「なんということだ…」

 

息を呑んで見守っていたノクトたちだったが、慌ててゲート外側に向かおうと駆けだした。だがノクト達の行く手を遮るようにイクシオンが空から降りてきて背に乗っているレティが暢気に「やっほー。倒してきたよー」と手をひらひらさせた。

 

「レティ……!」

「お前な」

 

ノクトやグラディオからの心配の声や非難の声にレティはすかさず待ったをかけた。

 

「まぁまぁ言いたいことはよくわかってる。でも今は待って、拾いものしてきたから。まずはこの人寝かせてあげないと」

 

その言葉を聞いた瞬間、よくよく見ればレティの手前に人の足がプラプラ見えるではないか。まさか、と先ほどのやり取りの中を下で聞いていたノクトたちは、信じられない顔して一斉にその人物を警戒し始めた。

 

「まさか、連れ出してきたのか!?」

 

どうやら、先ほどの敵将を連れてきてしまったようだ。先ほどの一部始終から見て偉そうな態度だったが、今は意識を失っているらしくピクリとも動く気配はない。気のせいではないが、彼の頭部にデカいたんこぶができているようだ。きっと先ほどのレティの一撃で沈んだのだろう。手加減も一切なかったと知れる。

 

「あの流れでなんとなく」

「そんな流れがあるか!?」

 

グラディオの厳しいツッコミにもレティはけろっとした顔で言いのけた。

 

「でも気絶させた人そのまま殺しちゃったら後味マズいでしょう。あ、捕虜にすればいいじゃない。ね、そうしようよ。情報吐かせてついでにさっき馬鹿発言させたこと誠心誠意謝らせてやるわ」

 

とかなんとか言って本音はそっちか!?とノクトたちは皆思ったことだろう。

だがコルは意外と落ち着いているようで、

 

「ですが。犬猫を拾ってくるとはわけが違います」

 

と渋い顔をしながらも躊躇いなく流れるような動きでイクシオンから男を降ろし豪快に肩に担いで見せた。レティはイクシオンから降り礼を伝え彼を異界に帰らせると、

 

「とりあえず集落戻りましょう。コル、その人トレーラーハウスまでお願い。あ、乱暴に扱っていいから。重たかったら遠慮なく引きずってあげてね?というか引きずりなさい。このイケメン顔に一生傷が残るくらい地面にゴリゴリこすりつけてあげなさい。「いえ、そこまではさすがにやりすぎでは……」あら、そう?私が受けた心の痛みに比べたらなんてことないように思えるけど。……仕方ないわね、ここは妥協案として顔に油性マジックで悪戯書きしてあげることにするわ。あ、ノクトたちも早く来てよ」

 

と呆けるノクトたちを残してコルそして、戸惑いつつもコルに促されて着いてくるモニカと共に基地を出て行った。あとに残されたノクトたちはあまりの展開の速さについて行けず、

 

「……とりあえず、行くか」

「うん」「おう」「そうだな」

 

考えることは放棄し脱力感を感じながら大人しく集落へと向かうことにした。

その後、レティによる『准将ロキ洗脳計画』が発動されることになるとは、この時誰しも考えつかなかったことである。

 

【こんな展開アリですか】

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