やっかいな拾い物を連れてハンター宿営地に戻ってきたノクト達。
まずは捕虜をトレーラーハウスのベッドに寝かせ、看護は一応何かあったら困るのでモニカに任せクペのテントで一休みすることになった。
トレーラハウスの隣にクペが出した小さなインディアンテントに次々と男たちが中に入っていく姿は、他人から見ればさぞ度肝を抜いたことだろう。 というか実際、何人かのハンターは目を疑った。最初は小柄なレティから次にノクト、プロンプトに続いてイグニス、そしてグラディオ。コルも最後に入って行ったが、本当に中に入れるのかと半信半疑だった。
だがどうだろうか。
ぎゅうぎゅうづめな予想とは裏腹に入った瞬間、息を呑むほど視界の先はガラリと変わり見事な調度品に囲まれた豪華な部屋が広がるではないか。さながらインソムニアでの城内を思い出すかのようなエレガントでありながら、派手さはなくシックな印象。何処かへ通じるであろうドアを複数確認できたことからまだ部屋数はあるらしい。
驚きを隠せず、入口で固まってしまうコルにレティは適当に座ってと促し、自分はシャワー浴びてくるからと言い残してクペと共に別のドアから出て行った。
「…シャワーと姫は言っていたが…そもそも一体、ここはどうなっているんだ」
すっかり自分の定位置と決めているふかふかのソファに座って寛いでいるノクトが親切に説明し始めた。
「ああ、ここか?レティの為にって創った部屋なんだとよ」
「姫の為、……ああ、クペか。これも召喚獣の力なのか……」
「コルさん、とりあえず座ったらどうですか?」
「あ、ああ」
四人掛けソファに座ったプロンプトに隣を勧められてコルは戸惑いながらその席に腰を掛けた。グラディオはアンティーク調のローテーブルを挟んだノクトの真向いのソファに腰かけ自分専用の戸棚から本を持ってきて読書を始めていた。
台所から戻ってきたらしいイグニスは、銀製のトレーに数人分のカップとコーヒポット。砂糖入れやミルク。そして受け皿とフォークに見事なガトーショコラワンホールを二回に分けて持ってきては
「将軍、コーヒーはいかがですか?」
とご自慢のエボニ―コーヒーを勧めた。ノクトがあからさまに「げ」と顔を歪めたのでイグニスは、「ノクト用にミルクもある」と付け足すと「じゃあ飲む」と掌返したいい方をした。手慣れた様子で準備するイグニスは心なしか上機嫌のようだ。
「……頂こう」
「どうぞ」
香り豊かなイグニスご自慢のエボニ―コーヒーはそのまま飲んだ方が味わい深くて美味しいらしい。勧められるまま口に一口含む。
「……うまいな」
「さすが将軍。この味が理解できるとは…」
「いや、そんなことはない。率直な意見を述べたまでだ」
「オレ以外にはなかなか共感を得られないので。特にノクトには」
「……あんだよ」
自分様にミルクと砂糖たっぷりと入れたカフェオレとさっそくガトーショコラに食いついているノクトは、イグニスの何か含みのあるいい方に眉を上げた。イグニスは言葉を濁して「いいや」と言いカップを一口。コルの隣ではおいしそうに頬を緩ませてプロンプトがいた。
「いや~、イグニスのお菓子っていつ食べてもおいしいよね~」
「台所が常にあるというのは大いに安心できる。使い慣れた道具の方が料理も手早く済むからな。食材も新鮮さを保てる」
「でもたまにカップヌードル食べたくなるんだよな」
何気ないノクトのつぶやきにイグニスは少し眉間に皺を寄せた。
それはそうだ。仲間の健康状態を考慮してのメニューを作っているというのにインスタント食品の名を出されてはまるで美味しくないようないい方をされているようなものだ。
「お、いいなぁ。それ!」
グラディオが読書を中断させて興味津々に話に参加してきた。
男だけで話が弾む中、ようやくレティがシャワーから戻ってきた。
「あ!騒がしいと思ったらお茶してる。ズルい!イグニス私のは?」
パーカーワンピースを着たレティは濡れた髪そのままにノクトの元に駆け寄り、ソファの背の部分にちょこんと腰かけてノクトに向かって顔を近づけると
「私にも頂戴」
とひな鳥のように大きく口を開けた。ノクトは
「ほら」
と躊躇いなく自分の食べかけのガトーショコラをフォークで掬ってレティの口元に運んでやる。それをパクッと口に含むと
「……うーん、美味しい!」
と頬を緩ませて蕩けそうな笑みを浮かべ、ノクトは
「大げさすぎ」
と苦笑した。プロンプトは二人の恋人のような仲睦まじい姿に
「うわ、まったく抵抗ないとかさすがだ~」
とわざとらしく言った。すると二人は
「「何が?」」
ときょとんとした顔で同時に聞き返すというシンクロを披露。これにはプロンプトも
「……いや、なんでもないです」
と曖昧に笑って誤魔化すしかなかった。
イグニスはレティの濡れた髪を見てため息をつきながらソファから立ち上がっては「ちゃんと乾かせといつも言っているだろう」とオカン節を発動。ささっとタオルを持ってきて自分が座っていた場所に座らせると手慣れた様子でタオルでレティ髪を丁寧に乾かし始めた。
グラディオとコルは今後の予定を話し合い始めた。
ノクトが思い出したように「クペは?」と甲斐甲斐しくお世話されているレティに尋ねると、
「あー、そういえば部屋でなんか一心不乱に書き物してる」
「へぇ~、珍しいな」
と相槌打ちつつ、すぐにクペの話題は流しパクッと残りのガトーショコラを運んだ。
※
その頃のクペはというと。
レティの部屋の机の上でまさに一心不乱に自分のマル秘ノートに今までの鬱憤を当たるかのように書きなぐっていた。
「クポ~~~~!!たまりにたまった情報書きまくってやるクポ~~~~!!」
想いのまま叫びながら全身全霊込めて書きまくっていたので、時折耳を澄ませると「クポ~~~~~!!」という叫び声がすることに耳ざといコルやグラディオなどは気づいていた。だが本能的になんだか関わってはいけないような気がしてクペのことはスルーして大人の会話に専念。その間にレティの悪事イベントやそれを見事見抜き防いだイグニスの手腕を褒めるイベントなど発生。
そろそろ外に出るかというタイミングで部屋から出てきたクペはフラフラな飛び方で「ふふ、ふふふふ……できたクポ……これで、これで…(ブツブツ)」どこか燃え尽きた顔をしていて怪しい笑い方をしていたのでビビりなプロンプトが大げさに怖がるということもあった。
とにかくそれぞれゆっくりと休むことはできたのである。
【なんてFree time!】