レグルスの子供たち   作:サボテンダーイオウ

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限りなくnaughtに近いが完璧な零ではない。

レティーシアside

 

 

お仕置き実行忘れてた。

ということでしっかりと私が宣言した通り、イグニスのキッツイお叱りとグラディオのぐるぐる回しの刑(これは結構楽しかった)、そしてノクトの気がすむまで締め上げられる(ただ抱き着きたいだけ)をちゃんとその身で受け止めやるべきことはやった。プロンプトにその瞬間を撮られるという屈辱も甘んじて受けた。あとで覚えてなさいと一睨みしてやったがこれも目ざといイグニスによりしっかりと叱られた。皆の心配してくれる気持ちが嬉しくないわけじゃないし、反省だってキチンとしている。でもあの暴言には納得いっていない。だから実はさっき皆が休んでいる瞬間を虎視眈々と狙っていたのだ。興奮状態から鼻息荒くなったのはマズいと思ったが誰にも見られていないのでオッケー。油性マジックペン片手にあの捕虜たる准将ロキの寝込みを襲おうと実行にうつったのである。勿論モニカが離れた一瞬の時間を狙ってね。

敵だろうが何だろうが初対面の女性に向かって馬鹿を二回も連発するような男は即・滅である。だがそううまくはいかなかった。こそこそと辺りを確認し体制を低くしながらトレーラハウスのドアに手を掛けようとした瞬間!

 

「何処へ行こうというんだ」

 

一瞬で底冷えしてしまうような冷ややかな声が背後からした。私は怖くて怖くて、振り返るのが嫌でそのままの姿勢で固まってしまった。

 

「………」

 

たぶん、彼は腕を組んですぐ私の後ろで仁王立ちしているはず。想像ですけど絶対そうだと確信している!

 

「トイレ行くと言って出て行った割には妙に浮足立っていたからな。もしやと思って先回りさせてもらった。そうしたら案の定君がいた、というわけだ」

 

そう言ったイグニスに、がしっとフードを鷲掴みされ逃げられないよう背後をとられてしまった。

 

どうやって私の悟られずに外に出てきたのだ!?もしや、クペのテレポート能力を借りたのか。

油性マジック貸してって頼んだから私がやることを察知してイグニスに告げ口したの!?そんな!信じていたのにっ。

 

だがもはや私の逃走本能はない。というかビビッて逃げられない状態だ。それほどまでに彼の、イグニスの雰囲気が恐ろしいのだ。泣かないだけマシである。

 

「どうやら相当に君はオレの小言を好むようだな。ならば喜んで付き合おう」

「誰がイグニスの小言が好きだって言った!?そんなこと一言も言ってないから全力で遠慮しますっ!クッ、軍師の先の読み方がこんなところで発揮されるなんて……!」

 

首根っこ捕まえられしまい報復すること叶わず!悔しがる私に彼はさらに容赦なくこう言い放った。

 

「そのマジックペンも没収させてもらう」

「い~や~!」

 

マジックペンもボッシュート。その後テントに連れ戻され、しっかりと私の悪事を皆に公表したイグニス。

非難の視線が集中したのは言うまでもないだろう。その後、イグニスに加えてコルも参加して私は正座させられてくどくどと二人に叱られた。

 

【ザ!公開処刑】

 

モニカから彼が目を覚ましたと部屋に飛び込んで報告しに来てくれた頃には、私はげっそりとした表情で体を抱え込んでソファの上で丸くなっていた。モニカからの詳しい話はコルやイグニス達が聞いているので私関係ない。

というか相手できるほど私の精神状態に余裕がありません。ああ、頭の中で何度も響いているイグニスの小言のオンパレード。これで囁きボイスでも作れるんじゃないかってくらいの量でした。もう、一生分は聞いた……。

 

「………」

 

そんな私にクペがそっと寄り添ってくれて、私を励ますように髪を撫でてくれた。さすが私の相棒とちょっぴり嬉しかった。のに、クペは見事裏切ってくれた。

 

「レティ、髪から艶が無くなってるクポ……。自業自得クポ」

「励ましじゃないじゃない!?そこは慰めてくれるとかあるでしょ!」

 

バッとクペの方を向いて信じられないと叫ぶ私に、クペは

 

「イケメンの顔に油性マジックはダメクポ!駄目イケメンでもイケメンはイケメンクポ。保護すべき対象だと思うクポ」

 

と悪戯を窘めてきた。何がイケメン保護だ!?

くそ、私のクペが帝国イケメンに篭絡されるなんて!?

 

「これは一言物申さなきゃ!」

 

ぐっと拳を握りしめて決意固める私に、一部始終を傍観していたノクトが

 

「結局は報復しなきゃ気がすまないってわけだな」

 

と呆れた表情で言ったのはまったく聞こえません!

というわけで気を取り直して准将ロキの元へいざ尋常に勝負勝負!

 

「おい!先に行くなっ」

 

まだ話し合っているイグニス達の間を掻い潜ってノクトの制止を振り払い私は素早い動きでテントを出る事に成功。

クペ?もう知らない!イケメン保護でもイケメン漁りでもすればいいんだわ!

 

すぐにトレーラハウスのドアに手を掛けバッと勢いよく引き開いき声高らかに言い放った。

 

「准将ロキ!さぁ、神妙に縛につけば良し!でなければこの私、レティーシアの怒りのファイアがそのフサフサの髪の毛を全て燃やしつくしてあげるわっ!さぁどっち!?」

「どっちでもねーよ」

「あいたっ!」

 

ドア開いた瞬間に頭にぽこっと落ちる手刀と切り返しのよいツッコミ。私は目を瞬かせて呆けるしかなかった。だってガタイのいい躰がすぐ目の前にいるんですもの。驚くなって方が無理よね~。

 

「なんでグラディオラスがそこに……」

「お前が落ち込んでる時にもうテント出てんだよ、阿保か」

「オレもオレも~」

 

呆れた様子のグラディオラスの後ろからひょっこり顔を覗かせたプロンプト、はどうでもいい。すぐ後ろに追手が迫っているのでグラディオラスをぐいぐいと中に押し込んで無理やり中に入り込む。

 

「おい、押すな」

「うわっ!ちょっと危ないって」

「だったら外出なさい。私が用事あるのはそこのベッドで寝てる、男、なんだからっ!」

 

男二人の抗議の声など一切無視して、問答無用で侵入成功した私は、片側に設置されているベッドにいる男に狙いを定めた。男、准将ロキは上半身を起き上がらせて焦点定まらぬぼんやりとした瞳でこちらを見ていた。どうやらまだ寝ぼけ眼のようだ。

 

……クッ、やはりクペが面食いになる理由も分かるイケメンぶりじゃない。その点だけは認めてあげようと思う。

 

ここはもう一発叩いてやろうかと思ったが、「レティ!」と大声を上げて私を追いかけてノクトたちも駆けつけてきたのでそれも叶わず、思わず舌打ちしてしまった。

ただで狭いトレーラーハウスがノクトたちも入り込んできたことでぎゅうぎゅう詰めになってしまった。真っ先にノクトがやってきて「そいつから離れろっ!」と私の腕を掴んで准将ロキから離そうと自分の方へ引き寄せようとする。けど思ったよりも腕をつかむ力が強いことから私が「痛いっ!」と叫ぶとコルがさっと私とノクトの間に割り込んでノクトの手に自分の手を掛けて外そうとしてくれた。

 

「王子、少し冷静になれ。姫が痛がっている」

「邪魔すんなよ!」

 

私を庇ってくれようとするコルにまでノクトは気に入らないと言わんばかりに食って掛かった。思わずその姿にイラッときた私はコルを手で押し退け、ノクトを睨み付けた。

 

「コルは関係ないでしょ!?そんないい方しないでよっ!大体ノクトは心配しすぎなのよっ。どこ行くにも何するにもいちいち人のこと束縛しようとして一体何が気に入らないのっ!?私のことばっか気にしてる暇があったら少しは自分のこと考えなさいよっ!」

「なんだよそのいい方!?オレが止めてやんなきゃいっつも痛い目見るのレティじゃねーか!学習能力ないのは何処のどいつだよっ!レティじゃんか!今だって敵いる目の前にノコノコ馬鹿みたいに来やがって、何かあった後じゃ遅いんだぞ!わかってんのかよ?!」

 

私の言葉に買い言葉で反発してくるノクト。

私達の間で火花が散り合い、その間で挟まれたコルは深いため息をついて頭を抱えた。静観していたグラディオラスやイグニスも似たような心境だと思う。けどそんなの構ってられない。いつも腹に据えかねてた感情を吐き出さずにはいられなかったんだもの。

 

ノクトの束縛は、前よりも異常だから。あの人を失くしてから家族の繋がりを強く求めようとしている。

それは仕方ない。誰だってそうなると思うから。けど、これがずっと続くようではノクトの執着はずっと私に向いたまま。それではダメだ。今後のことを考えたらガツンと言い聞かせなくちゃならない。

そう、後で言おうが今言おうが同じこと。だから私は今、ここで全部ぶつけてやろうと口を開きかけた。

すると、遠慮がちに「あの、喧嘩は良くないと思いますが」との仲裁の声によって一旦遮られる。私とノクトは同時にそちらに顔を向けて、同じタイミングで怒鳴った。

 

「「関係ないのは引っ込んで!」ろ!」

「はい!スイマセンっ」

 

私とノクトの剣幕に押されて萎縮してしまった彼は、申し訳なさそうに頭を下げてきた。まったく!勢いのままぶちまけてやろうとしたのに気がそれちゃったじゃない。

 

「………」

 

ちょっと、待て。そういえば今、仲裁に入ってきたのって、誰?

プロンプトは……あ、自分じゃないって手振って否定してる。勿論、イグニスやグラディオラスでもモニカでもない。ましてや、コルがあんな弱弱しい声でいうわけがない。ということは。私とノクトは顔を見合わせて、「「え?」」と首を傾げた。そしてもう一度二人でその彼を見やる。間違いではない。そこにいるのは准将ロキ、のはず。あの高圧的な態度で私のことを二度も馬鹿と罵ったムカツク奴。

 

のはずなのに。

 

「……あの……」

 

何だこの頼りなさげな、路頭に迷った子犬のような瞳を持つ男は。

思わず演技かと思って、条件反射で「コンフォコンフォコンフォ!」と魔法連発してしまった。慌てたノクトに「おい!」と突っ込まれたが後悔はしていない。イグニス達も私の行動に驚きを隠せない様子。だがそれらに対応している暇はない。

愚かにもこの私に小細工しかけようとしたのだ。

准将ロキの頭の上にはヒヨコさんがぐるぐると三羽楽しそうにしばらくの間回っていた。

それから准将ロキは軽く呻いて、額に手をあてがってこう苦しそうに呟いた。

 

「う!頭が割れるように痛い……」

 

それなりに混乱効果はあったようだ。准将ロキは痛みに耐えながら見下ろす私の存在に気づいた。

 

「あ、貴方は?」

「私のこともう忘れたの?あれだけ激しく私の心傷つけておいて忘れるとか最低ね」

 

両腕を組んでじろりとねめつけると准将ロキは信じられないほどに低姿勢な態度をとってきた。

 

「……申し訳ありません、なにぶん自分自身のことも思い出せず……。先ほどもモニカという女性に自分の状況を尋ねたのですが、お答えいただけず……。それだけではなく、以前のオレは貴方のような美しい方の澄み切った御心を踏みにじるような下劣なことをしてしまったようだ。……なんと愚かなことをしてしまったのか、オレは……!ああ、できるのならば今すぐにでも記憶を失う前のオレを殴りたいっ」

 

苦悶に満ちた表情で自分の悔しさを当たらずにはいられないようでドスっと拳をベッドに叩きつけた。私はというと、はしたなくもぽかんと口を開けたまま

 

「………」

 

ビシッと石のように固まってしまった。御世辞でならいくらでも言われ慣れている言葉でも、まさかあのように感情的な台詞の中で美しいなどと言われるなど想像できようものか。素で言っている彼は本当に私を罵った同一人物かと疑いたくなるくいらい。しかも私の状態などお構いなしに彼は顔を上げてキラキラとした瞳で胸に手を当てながら、

 

「どうか、お許しいただけるのならばこの罪を償うためにも、……貴方の名を教えていただけませんか?……美しく聡明な御方」

 

と二度目の爆弾を投下してきた。真正面からドストレートな恥ずかしい台詞喰らった私は、

 

「ぐはっ!」

 

と呻いて床に手を突いて倒れてしまった。

イケメンなだけに質悪い。まだ周りにイケメンぞろいでそれなりに耐性が付いている私だから気絶しないでいれるが普通の女子ならば可愛く気絶しているところだと思う。

ノクトが「レティ!?」と声を上げて慌てて私を助け起こしてくれる。私はその手に縋りつきながら、「き、強力な敵が誕生してしまったわ……」と弱弱しい声を出すくらいに情けなくも現実の壁というのを痛く感じてしまった。ノクトは私の手を握りしめ悲しそうな顔して「レティ……オレも同じこと言ったら…」と途中で言葉を詰まらせてしまう。

 

ああ、わかってるわ。ノクト。その言葉の先はきっとこうね。

 

オレも同じこと言ったらこっぱずかしさに呻いてくれるかってそういいたいのね?

でもゴメン。ノクトが同じこと言ってきたら、酔っぱらってるの?って冷静に返すと思う。

 

そんな二人の世界を展開する私達にグラディオラスが疲れた顔して「茶番はやめろ」とヤンキー座りして視線を合わせながら会話に乱入してきた。私の頭にぽこんと手刀落とすこと忘れずに。

 

「レティ、お前ダメ押しにコンフォはねぇだろ。それも三回も。これじゃあ此奴の記憶も元に戻らなくなるかもしれねぇぞ」

「ええ!私に責任転嫁きますか!?ってか、どういうこと?記憶喪失って、本当なの?」

「ああ」

「本当ー?モニカー」

 

男たちに紛れて外から見守っていたモニカに尋ねると静かに「はい」と返事が返ってきた。

オーマイガー。誰かが私の耳元でそっと囁く。思い付きで行動するからこうなるんだぞ、と。

 

「……つんだ……」

 

口から魂抜けかける私にさらなる追撃がグラディオラスから繰り出された。

 

「そもそもはお前が拾ってきたんだから何とかしろ」

「私が!?どうやって」

 

ぎょっとする私にグラディオラスはやり方までは考えていないらしく困った様子で頭を掻きながら、

 

「それは……お得意の魔法かなんかで」

 

と自信なさげに言うが、そんなことは無理だ。

 

「そんな素敵魔法があったらとっくに試してるわよ」

 

そういくら無限魔力を持つ私でさえできないことはある。

攻撃とか回復魔法は得意だけど、精神、それも記憶に効果を示す魔法なんて試したことがない。実験でもしてさえいればそれなりの効果とか試せていたかもしれないけど、窮屈な城内じゃ実験に付き合ってくれる相手を探すのも一苦労だった。だから魔法でどうこうなる問題じゃない。もしかしたら、最初の杖でおもいっきり叩いたのがそもそもの原因かもしれないのだ。

 

「じゃあどうすんだよ、アレ」

「「「………」」」

 

皆で振り返って捕虜をじっと見やる。

 

「あの、オレが何か?」

 

やめて!そんな心抉られるような純粋な瞳で私を追い込むのは!もう、ここは私が責任もってやるっきゃない!

覚悟決めた私は、精一杯声を張り上げ大げな身振りで彼の興味を引き付けることにした。

 

【ここから始まる新たな劇】

 

レティは意を決してすくっと立ち上がると大げさな身振り手振りで、皆の注目を集めることを理解した上で声を張り上げた。

 

「……、ああ!ようやく帝国の魔の手から解放されたのですね。我が見習い騎士候補よ!」

「……レティ、一体何を」「(黙って!)」

 

怪訝なノクトたちの戸惑った声に血走った目付きで有無を言わさず黙らせることに成功。その目力、半端ない。だが幸運にもロキには気づかれずに済んだようだ。

 

「見習い、騎士?」

 

それどころか、レティの台詞に相手が乗ってきた!レティはすかさずチャンスを逃さず、大根芝居を続けた。

 

「そう!貴方はこのレティーシア・ルシス・チェラムの見習い騎士候補として日々鍛錬に明け暮れ誰よりも優秀な成績を修めていたのですよ!そんな貴方が帝国の魔の手にかかり我がルシスと敵対すること………んん年!今やっとこうして私達同胞の手に戻ってこれたのです!」

 

舌をもつれさせることなくスラスラと台詞を述べるレティの気分はまさに舞台女優、そう思い込まないとやってられないぐらいだった。

 

「……オレが、貴方の見習い騎士候補だったなんて……!それじゃあオレは今まで帝国に利用されてしまっていたのか!?……なんということを……」

 

ロキは自分の失態を悔いるように顔を伏せる。

すっかり騙されている。色々とツッコミたいのだがそれを許さないレティは迫真の演技を続ける。

 

「ですが、貴方はこうして無事私達の元帰ってきました。……今ならまだその罪を償うことができます」

 

静かに諭すように言うとロキは

 

「っ!?オレに、再びチャンスを頂けるというのですか!」

 

とベッドから転げるように降りてレティの足元目の前に肩肘ついて期待を込めるような視線を送ってきた。人を疑うことを知らぬ、無垢な少年のよう。まさにロキは完全に記憶を失っていた。

 

「ええ。私は貴方が真なる騎士として活躍する日が来ると信じているのですよ」

「……レティーシア、様……」

「今までの名を捨て、新たな自分として過酷な道へ進むことを、選びますか?」

 

もうちょっと。もうちょっとで落ちるのよ!頑張れレティ!と自分を叱咤することで痛む良心を放り投げる。

 

「はい!もし、もう一度オレにチャンスを頂けるのならば……。必ずや貴方様の騎士になってみせますっ!」

 

ちなみにレティは騎士募集もしていないし今後実行したいとも思っていない。なのでロキには悪いが、この先彼が騎士になることはおそらくないだろう。

だが嘘だからと言って演技をやめるわけにはいかなかった。何よりこれも彼の為であり、彼を拾ってきたレティの責任でもある。

そう!拾ったものは責任もって最後まで面倒見なければならないという情操教育をしっかりと受けているレティにとって彼も例外ではない。

 

「……その覚悟、確かに受け取りました。…では名を改めなさい。貴方は今この時から【グレン】と名乗り、不死将軍と名高いコルと共に帝国の情勢を探るのです!敵は強敵ですが相手にとって不足なし!必ずや我が国はクリスタルを手に再び復興を遂げるのです!……良いですね、グレン」

「はい!」

 

使命感に燃えるロキは元気よく返事をした。

 

「……貴方の活躍、期待しておりますよ」

「……ありがたき幸せ……!必ずや、姫のご期待に応えて見せます」

 

畏敬の念込めて深々とレティに頭を下げ忠誠を誓ったロキ、改めグレン君。こうして、打倒ニフルハイム帝国という目標を掲げる彼らに新たな仲間が加わったのである。

 

 

そんな二人によく黙って拍手を送るノクトとプロンプト。よく騙せたもんだとは、言わない。

一方、怖いくらい無表情なコルは気まずそうなイグニスとコルの様子に珍しくビビってるグラディオラスを伴って外へ出て何やら秘密の話?をしている模様。

 

「最後に姫の教育係を担当した奴は誰だ」

「……いえあの」

 

言い淀むイグニスにコルはスッと目を細めた。あくまで尋問ではなく問いだ。

 

「別に責めてはいない。ただ、誰だと尋ねている。オレは主に警護の方を担当していたから教育面の方の関与していない。だから情報を共有することもできなくてな」

「………」

 

だが二人は口を割ろうとはしなかった。その人物を庇っているか、もしくは別の理由か。どっちにしろ、このままでは何も問題は変わらないとコルは仕方なくいい方を変えて語り始めた。

 

「……こうなった結果は致し方ない。『アレ』も姫の苦肉の策だとオレは信じている。だが繰り返すべきではないとオレは考える。ましてやホイホイとなんでも拾われてきては後始末が大変になる。その内、壊すのも勿体ないと言って魔道兵でも拾ってこないとも限らない。そうなっては、困るのは誰だ?今回は、オレが対処できるからいいようなものの、次はお前たちだぞ。……お前たちの考えはどうだ」

 

静かにそう尋ねたコルに、イグニスは少し躊躇いを見せたのち、

 

「……オレも将軍と同じ意見です」

 

と同意を示した。すかさずグラディオが抗議の声を上げた。

 

「イグニス!」

「グラディオも分かっていることじゃないか?『アレ』はレティだから可能であって、本来ならコントで済ませられることだと」

「……ああ。十分わかってるさ……。『アレ』がコントじゃなくて現実だってな」

 

今だ現実であるとまことに受け入れがたいことだがイグニスの正論によって混乱していた頭がようやく冷めていく感じがしたグラディオ。

 

「お前たちの考えは分かった。……今後姫の動向は逐一報告しろ」

「分かりました」

「お前たちで対処できないようならすぐに連絡しろ。それなりの対策を考えよう」

 

心強い将軍の言葉にグラディオは感謝の言葉を述べた。

 

「……恩に着るぜ、将軍」

「お前たちには姫のストッパー役になってもらわなくてはならないからな」

 

この瞬間、確かに強い絆で結ばれた三人だった。

だが肝心のレティに理解させなければ根本の解決に至らないことをすっかり頭から弾き飛ばしていることに気づくことはなかった。

 

 

その頃レティは男たちの苦労など知らずに演技をやり切ったことにより清々しい笑みで「ありがとう」と称賛を受けた。ちなみにノクトが興味本位で、「グレンって誰だ?」と尋ねたところレティはこう返した。

 

「昔絵本で読んだ魔王に呪いでカエルにされちゃった騎士の名前からとったの」

 

と茶目っ気たっぷりに微笑んだ。

 

―――これから、未来【運命】は変わっていく。崩壊の序曲から。

【IRREGULAR=フラグ崩壊】

To Be Continued--

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