レグルスの子供たち   作:サボテンダーイオウ

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プリンセスサイキョー伝説?

「レティ!走れ!」

 

血相を変えたノクトに手を引かれ共に走るレティ。後方にはそれに続く形でイグニス、プロンププト、グラディオラスが続く。皆、ある集団から押しつぶされまいと必死な形相で懸命に走る走る走る。レティはなんでこうなっているのかなといまいち自分の状況が理解できない様子だった。ノクトが

 

「いいからとにかく足動かせレティ!」

 

と叫ぶので仕方なく今は言われた通りにしようと足を動かすことに集中する。クペが走る風の勢いに負けまいと小さな手でレティの肩に引っ掴まって耐えていた。

ことの経緯はレティのモンスターフェロモンから始まった……。

 

ある草原であるモンスターを見つけたレティは、危ないと止める男衆の言葉を無視してそのモンスターの近くへトコトコと歩いていき、好奇心の眼差しで「おいで!」と両手を広げて戯れようとした。ノクトたちはすぐに武器を装備してレティを助けようと一様に駆けだした。最悪なパターンがノクトたちの脳裏をよぎった。その時は。

 

そのモンスター、小さな体のガルラは両手を広げるレティをじっと見つめてあった後、どどっと勢いよく走り出したのだ。これから頭突きで突っこみます五秒前みたいな状況にもレティは笑顔でガルラを迎えようとした。

 

「レティ!!」

 

ノクトの悲鳴に近い叫び声が響いた。ガルラの攻撃(?)によってレティの体が軽く吹っ飛ばされた―――なんてことはなかった。

 

「「「「…………」」」」

 

一同は思わず言葉を失ってしまうような驚きの光景がそこにあった。ガルラがピタリ!とレティの前で急停止し、甘えるように短い鼻先をレティにこすりつけるではないか。レティは表情を緩ませて幸せそうだった。

 

「ねぇねぇ、この子可愛くない?」

「……レティ…マジか。こいつらにも効くわけな」

「姫ってばスゴいわ。相変わらず」

 

ノクトは脱力感を覚え、妹の意外な才能に脱帽しプロンプトは素直にレティの才能に感動して褒めた。だが本人が良くても周りが良くない。なんせ、ノクトたちがいる場所はガルラの群れの中なのだから。絶賛、ノクトたちはガルラたちの視線を集めている。それこそ、変な真似したら襲うぞ的な雰囲気である。しかもレティの元に近寄ってきたのは、子供のガルラのようなのだ。大きな体をしているガルラがレティの元へ一歩一歩近づく。

見守る側にしてみれば、子供を取る敵としか思えない状況。だからノクトたちは視線を合わせて同時に頷いた。

 

とっととズラかろう。

 

男子たちの気持ちは見事に一緒だった。ガルラの群れを引きつける役、逃げ道を確保する役、そしてレティを連れ戻す役にわかれ、それぞれ配置についてノクトの合図を待った。仲間からのサインにわかったという意味で軽くうなづくと、スゥッと息を吸って気持ちを落ち着かせる。

 

そして、ノクトは叫んだ。

 

「行くぜぇ!」

 

一斉にノクトたちは地面を蹴って勢いよく走り出した。ノクトはレティを目標に目掛けて全力で全身の筋肉を使う。ノクトの考えでは浚うようにレティの腕を掴んでそのままの勢いを殺さずにプロンプトが放った銃に驚いて隙間が出来た群れの中をイグニスからの誘導を受け進みプロンプトともにグラディオにしんがりを任せとに全力疾走すればいける!という感じに作戦は立てた。後は失敗せずに行けば全てうまくいく。ノクトはそう信じて疑わなかった。仲間の腕を信じていたからだ。だがひとり波長を乱す存在がいたことをすっかり忘れていた。

 

「あー!あっちの子も可愛い!」

 

そっち行くなよ!?

 

なんとレティめがけて走っていたのにその目標が自ら別のガルラに無邪気に駆けて行ってしまうではないか。ノクトは舌打ちしてレティの後を追う。これだけでかなりの時間がロスしてしまった。だがまだ挽回できるチャンスはある。ノクトはバカレティと怒鳴ってやりたいところ、ガルラたちの注目を集めてしまうのでやむなくレティを捕まえることだけに意識を集中させる。

 

「あれ、ノクトだ。全力疾走してるー。なに、トイレでも行きたいの?」

「違うっつーの!」

 

レティのおとぼけ発言に思わず止まり言い返してしまったノクトは、しまったとはたりとあたりの気配が殺気じめていくことに気づいた。

 

これは、ヤバイ!?

 

ノクトはすぐに我に帰り、レティの腕をむんずと掴んで周りなど気にしてられるかと走り出す。と、同時にガルラたちが一斉に鳴き声をあげてそのでかい図体で前方を走るノクト目掛けて走り出す。

 

「プロンプト、イグニス、グラディオ!作戦失敗だ!」

「やっぱりそういうことになるんだよね!」

「だな!」

「いいから走るんだ!」

 

華麗にプリンセスをさらってかっこよく逃げる。なんて、やっぱり無理だったノクトたちはかっこ悪く逃げることになったのだ。だが強敵がまだ残っていた。ノクトたちの行く手を遮るように一際大きな巨体のガルラが現れたのだ。

 

「おいおい!マジかよ?!」

「ノクト!レティ連れて先いけるな!」

 

イグニスとグラディオが武器を取り出して勇猛果敢にそのリーダー格に挑もうとする。ノクトが信じられないといった顔をした。

 

「アァ!?なにいって」

「ノクト!お前はレティを守んなきゃなんないだろうが!」

 

グラディオに一喝され、ノクトはハッと自分の守るべき者の存在を思い出した。今オレも一緒に戦闘に参加したら、誰がレティを守るんだ?

 

「……ワリー!お前ら!」

「いいってこと!ノクトは絶対姫を守ってよね!」

 

プロンプトも銃を装備してウインク一つするとノクトとレティとは反対がわへ突っ込んで行こうとする。ノクトは溢れそうな想いに涙しそうになった。だが堪えた。必ず仲間たちは無事に帰ってくる。そう信じて、大切な者を守り抜いてやると固く胸に誓った。

 

「行くぞレティ!」

 

掴んだ腕を離すまいと一度レティの方を振り返るとレティは

 

「なんでみんな群れに突っ込んでいくの?」

 

とさも不思議そうな顔をする。

 

「なんでっ?って!それはお前のためって、そんなこと今言っている暇なんかなかった!とにかく走れレティ!逃げる「なんで逃げるの?」アァ!?」

 

思わず迫力ある顔つきで問い返してしまったノクト。だがレティはそれにビビることなく、納得したように、

 

「あ。そっか。ノクトたちはガルラたちに追っかけられて襲われてるって勘違いしちゃったんだね。そっか、そっか。じゃあ止めるね」

 

とあっさりと言った。

 

「え」

「おーいみんなー。止まってくれる?ノクトたちがビックリしちゃったから」

 

レティの間延びした声により、ガルラたちの群れはピタリと止まった。次いで、レティは絶賛応戦中のイグニスたちと戦っているリーダー格のガルラに向かって、

 

「ゴン太~!そこの男子らは敵じゃないから吹っ飛ばさないで!」

 

とお願い?をした。するとゴン太?はレティの言葉を理解しているのか、大きな牙を振り回すことを、やめておとなしくなった。レティは呆然とするノクトから離れてゴン太の方へ歩いて行き、独特の肌触りをもつゴン太を慣れた手つきで撫で始めた。レティがゴン太と呼んでいるあのモンスター、ノクトの知識によるとクイーンガルラと言って群れの中でリーダー格の存在だと認識していたが、レティ曰く、ゴン太という名前が付けられている。

 

「ゴン太いい子だね。この男子たち私の仲間だからさ。できれば出会っても手は出さないであげて」

 

ゴン太はわかったというように鳴き返した。そして、撫でて撫でてとハートマークを飛ばすようにレティに身を擦りつけるその仕草。完全にレティを慕っている証拠。止まれと言われたガルラの群れもぞろぞろとレティの周りを囲んで順番と言わんばかりにレティに迫っていく姿は、まるで珍獣マスターのようである。男子たちはなぜ、こんな展開を迎えているのか、理由も考えるのが嫌になるくらいショックを受けた。唯一嫌でもわかったこと。一通り、ガルラたちを撫でまくったレティが肩をもみほぐしながら、

 

「ゴン太。走って疲れたからテントまで乗せてってくれる?」

 

とお願いするとゴン太は快く(?)レティ&クペを軽々と乗せドシドシと去っていく。群れはレティが帰るというとぞろぞろと集団で去って行った。レティが後ろを振り返りながら「何してるの、置いてくよー」と声を掛けるが男子たちは聞いちゃいない。ただ、すごく精神的にも肉体的にも疲れたこと。そしては、ウチのプリンセス、サイキョーであるということ。

 

「……腹、減った…」

 

ぐーと腹の虫がなった。正体はノクトだった。お腹を押さえながら呟いたノクトに、皆頷いて脱力感に襲われながら帰路についた。

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