レグルスの子供たち   作:サボテンダーイオウ

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お金がないっ!

レティーシアside

 

 

私はバハムートの助力を求めた。自分から異界に赴くことはできないので心内でバハムートに何度も呼び声を掛けてあちら側へと引き込んでもらい、そこでファントムソードの在処を全て教えてもらった。

 

『お願い、バハムート。ファントムソードの在処を、教えて』

『……全ては王子の為か』

『彼を死なせたために。……彼女のやり方は、あまりに真っすぐすぎるわ』

『分かった』

 

直接私の頭にその場所のイメージが伝えられてくる。少しまるで高速で駆け抜ける景色に吐きそうになった。苦悶の表情になってしまったが何とか最後まで耐えることができた。私の無茶なお願いに嫌な顔一つせず受けてくれるバハムートに感謝の言葉を伝えた。

 

『……ありがとう……。これで一つクリアできる…』

『礼などいらぬ』

 

それを地図に記し、効率よく順番に辿って行けばうまく回収することができる。だが現実問題、そうすんなりとうまくことが進まないことだとは承知ずみ。だからこそ、多少ゴリ押しに見えたとしても進ませる。召喚獣頼りになることもあるかもしれない。そのことをバハムートンに打ち明けると、バハムートは

 

『構わぬ。レティーシアがそれを望むのならたやすきこと。我ら七神は其方を守護せしもの』

 

と引っ掛かりのある言葉を言うではないか。

七神なんて、聞いたことはない。だって伝承では六神のはず。だから確認のために尋ねた。

 

『……七、神……?六神ではなくて?』

『歪められた歴史は真実を奥深く闇へと葬る。イフリートは裏切りの神と位置づけられ、人々は欲望のまま争いへと身を投じた。我らが託されたのはあくまで【観察】。過度の干渉は歴史に大きな歪を引き起こす』

『観察?』

 

バハムートはそれ以上教えてくれなかった。いつも通りに私を送り出してくれた。

 

『レティーシア、助けを求めるならいつでも来い。我らは其方の願いを拒みはせぬ』

『……ありがとう……』

 

消化不良のまま私は、それ以上質問を重ねることもできずに現実世界へと戻った。

 

 

私は現実世界へと戻るとベッドから飛び起きて机に向かいさっそく地図に各々の王の墓所を羽根ペンで記し始めた。バハムートが言っていた言葉は気になるけど、今は後回しにしよう。それにしても改めて地図に記すことで分かったことがある。それは王の墓所が各地に広がっていてレガリアでさえいけない場所もあるということ。

だがこれ幸いとチョコボを借りれる状況にはできている。だから行こうと思えばすぐにでも出発もできる。

 

「ここから近いのはコースタルマークタワーか……」

 

覇王の墓所は存在しているものの、そこから王の力は抜き取られたらしい。その抜き取った者がいるのが古代から存在していると言われるコースタルマークタワー。夜にしかその入口は開かず、踏み入れる者には試練を与えるらしい。脱落したらまた一番初めからやり直し。なんて手間のかかるダンジョンだろうか。けどあえてそこから攻めるのも手。場数を踏んでいないノクトたちを精神面で鍛えるという意味合いも十分ある。

彼らの足りない分は私が全力でカバーすればいいだけの話。

後は、どうやって彼らを誘導するか。それも夜に。実はぶっちゃけてしまえば夜、活動したことないのだ。今の今まで。

だからシガイとの戦闘なんてやったことない。知識としてはあるがそれがどこまで役に立つか。これは、ノクト達を守るためのボディーガードを雇う必要がありそうだ。しかもできるだけ諭されないように腕の立つもの。

私はそうと思ったら、さっそく彼を呼ぶべく部屋の鍵を掛けた。邪魔されちゃいやだし何よりこの話はクペにも秘密にしておきたい。もう少し様子をみてから話そうと思っている。

召喚獣の中でなおかつ腕の立つもの。

 

「ようじんぼう」

 

私の求めに、彼は異界からやってきた。天上からひらひらと綺麗な桜の花が舞い散って足元に降りてくる。そして、異界の門から顔を覗かせてやってきたのは、かなり大きい……

 

『わん!』

 

綺麗な模様の、大きなワンちゃんだった。それは私の元まで駆け寄ってきて全力で尻尾を振って愛想を振りまいてくれる。私は笑みを浮かべて膝をついてワンちゃんを撫で繰り回した。予想外の姿だったけど、これはこれで可愛いもの。

 

「貴方が、ようじんぼう?ワンちゃんだったのね……可愛い」

『わんわん!』

「…あれ?違うの?」

 

どうやら違うらしい。

では、一体誰がと尋ねようとしたところ、続けて異界から誰かが入ってこようとした。けど。

 

めりっ。天井が軋む音がした。

天上でつっかえてしまって体が入ってこられないようで再度チャレンジして体を斜めにしてこちら側にやってきた。

 

「…あ、この方がようじんぼう!?これは大変失礼を…!…あの、初めまして」

 

慌てて頭を下げると彼も返そうとしてくれたけど、体勢がきついままなの慌てて手で制した。

 

「あ、あの!そのままで結構なんで」

『―――』

「可愛いワンちゃんですね。お名前は?」

『―――』

「ダイゴウロウ!強そうな名前ですね」

『わん』

 

褒められて嬉しそうに一鳴きするダイゴロウ。

よし、ちょっと雰囲気が和んだようだ。私は意を決し、ようじんぼうを見上げて口を開いた。

 

「実は、そのボディーガードをお願いしたいんです。ノクトたちの」

『―――』

「お金?……ああ、お金!?ああ、どうしよう。今これだけしかもってない……」

 

私のポケットに入ってたのは500ギル。それでも何とか部屋中引っかき回して(ダイゴロウにも手伝ってもらった)集めた金額、3000ギルでした。思わず少ない金額にガクッと項垂れてしまった。

 

ああ、普段からクペにお金の管理を任せているから財布なんて携帯してないのが祟った。

でもきっとクペはお金の管理は厳しいから渡されるお小遣いなんて少ないだろうけど。

 

どことなく哀愁漂わせる私にダイゴロウが『キューン』と心配そうに気遣ってくれたけど肝心のようじんぼうはというと、私の両手に乗せられた少ない金額をじっと見つめたままで、

 

「足りない、ですよね?」

『―――』

 

彼は期待外れだと思ったのかもぞもぞと動き始めた。

 

「ああ!帰らないでっ!?貴方しかいないんですっ!頼れるのが!」

 

思わず腰を上げて縋りつく私にようじんぼうは首を振った。

どうやら私の勘違いでちょっと体制がきつくなったので座りたいらしい。正座したら丁度良かったみたいで話を続けろと言ってくれた。私も同じく正座をしてようじんぼうの向かい側に姿勢を正して座った。ダイゴロウも大人しく私の横にお座り。

 

『―――』

「……え、最初はこのお金でいい?後でまたもらうから?ほ、本当に?!」

『―――』

 

お金にうるさいとシヴァから聞いていたから心配していたけど、全然そんなことなかった。私は丁寧に頭を下げて心込めてお願いした。

 

「ありがとう!どうか、ノクト達をお願いしますっ」

『―――』

 

ようじんぼうは私から3000ギルを受け取ってダイゴロウと共に異界へと帰っていった。

 

これで、ノクト達は大丈夫だ!

 

と安堵できたのもつかの間、クペがドンドン!と戸を叩いて「レティ~、どうしたクポ?なんだか騒がしかったクポ」とやってきてしまったじゃないか。

私は慌てて「何でもない!」と叫び返すが遅かった。クペのテントの持ち主である彼女の前じゃ鍵なんて役に立たない。あっさりと鍵は開錠されドアを開けてやってきたクペは、部屋の惨状を目の当たりにし、一瞬固まった。

 

「……なんで散らかってるクポ?」

「……夢見が悪かったからプロレス技で撃退してたの。起きたらこうなってた」

 

我ながら咄嗟に出た言い訳とは言え、もっとマシなこと言えないの!?と心の中で絶叫していた。大体クローゼットの服まで床に放り出してプロレスとかないでしょ!!ああ、私のばかー!

 

「……」

「……」

 

ああ、痛い痛い。クペのじとーとした視線が私の嘘を見透かしているようだ。

 

「……ちゃんと片づけるクポ」

「……あ、うん…。はい」

 

でもクペはあっさりと流して部屋を片付けることだけは言い残して部屋を出て行った。あの目ざといクペが気づかなかった。私の嘘に。

 

「…もしかして、私の嘘が通用した!?」

 

思いがけない展開に私は喜ばずにはいられなかった。それからクペに部屋を綺麗にするよう言われたことをすっかり頭の外に放り投げていた私は、数十分後、再びやってきたクペによってしかりつけられることになる。ついでに少し私を顔を見に来たイグニスにも。

 

【うっかりさん】

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