クペside
レティの嘘は最初から丸わかりクポ。
大体寝ぼけながらプロレス技仕掛けるのはノクトがやることでレティはやられる側クポ。だからすぐに嘘だってわかったクポ。それに……召喚獣の気配がしたクポ。あれは、ようじんぼうだったはずクポ。
レティは何か企んでいることはわかったクポ。その証拠にノクトのファントムソード探しに一番ノリノリなのはレティだったクポ。
近くに王の墓所があるから行こう!って急かすようにノクトに言ってたクポ。
色々と情報通なのも気になったクポ。そこのコースタルマークタワーが夜にしか開かないこととかそのダンジョンの進み方とか。きっとバハムート辺りにでも聞いたクポね。バハムートはレティに甘いからなんでもいうこと聞いちゃうクポ。
なんだかんだいってノクトたちは夜のコースタルマークタワーに行って、強すぎなモンスターに相手に懸命に戦ったクポ。でも危ないって時に限って誰かが助けに入るクポ。
たとえば、あれはようじんぼうの愛犬ダイゴロウ並みの大きさだったクポ。全身黒く塗ったかのような感じの犬みたいな獣が豪快なキックを入れて倒してからさっと暗闇の中に駆け戻って行ったクポ。
ノクトたちは驚いてたけど、レティは暗闇に向かって親指立ててたクポ。
あれはグッジョブという意味だと思うクポ。
それと、ようじんぼう『らしい』全身黒づくめの召喚獣がイグニスが戦闘終了後に眼鏡落としたと取り乱している時にこっそりとレティに何かを手渡してすぐに暗闇に消えてたクポ。あれはきっと眼鏡手渡してたクポ。
だってその後わざとらしい演技で眼鏡拾ったとイグニスに手渡すレティが目撃されたクポ。やっぱり、あれはようじんぼうクポ。お金にがめついかと思ってけど意外と良心的クポ。
……レティがお小遣い欲しいって訴えてきたのはこのことだったクポね。一応それなりの金額は渡したけど一体いくら払ったのか、見当がつかないクポ。大体100ギルでダイゴロウが出てくると思ったけど結構頻繁にようじんぼうもお助けに入ってたクポ。……レティ相手ならようじんぼうも強く要求できないのかもクポ。
それからノクト達は疲弊しながらも無事にダンジョンの奥までたどり着いた先でジャバウォックと対決したクポ。ジャバウォックは相手を石化させてしまう技を持っていたけど、レティの容赦ない魔法とノクトたちの絶妙な攻撃のコンボ。さらにようじんぼうのひっそりとした手助けのお陰で見事倒すことができたクポ。
プロンプトは最初倒せたことがわからなかったようで呆けた顔してたクポ。でも理解したら誰よりも嬉しそうに笑ってたクポ。
……プロンプトは悩んでる様子だったからこれがきっかけに自信がついてくれれば嬉しいクポ。レティはもしかしたらこのことも考えていたのかもしれないクポ。
……覇王の大剣は無事手に入れることができたクポ。なんでジャバウォックが持って行ったか謎クポ。
うーん、ノクトに使いこなせるか正直心配クポ……。でもレティは真剣な表情で是が非でも使いこなしてもらうって厳しいこと言ってるクポ。……なんだかいつもよりもらしくなかったクポ。
少し、不安クポ。
※
プロンプトの為に『クペのお守り』を用意したクポ。
……『モグのお守り』じゃないクポ、『クペのお守り』クポ。ゲームみたいに経験値上げるなんて効果はまったくないクポ。でも『誰かと入れ替わるのを防ぐ』ことはできるクポ。誰が入れ替わるかはわからないけど、なんとなく作っておいた方が良いような、そう!女の予感がしたクポ。
さっそくプロンプトにあげるクポ。
【そこで文章は途切れている】
※
ニックスside
苦労してオレ達はやっとハンマーヘッドに着くことができた。着いた時には夕方で明かりがこんなにも安心できるものとは思わなかったぜ。今までが当たり前すぎたんだよな。すでに重い荷物となっているバイクを端に停めさせてさっそく腹を空かせているリベルトが店に行こうと促してきた。
「ニックス!とりあえずメシ、メシ食おうぜ」
「ああ」
二人で共にダイナータッカに入室すると、夕飯にありつこうとそれなりの人数が賑わう中、色黒のマスターがオレ達を口下手ながらも出迎えてくれた。
「よ、よう……。お前ら見ない顔だな」
オレは軽く手を上げて挨拶し正面カウンターに腰かけた。リベルトはさっそくメニュー表に噛り付くように釘付けで「オレこれにするぞ!ジャンバラヤ。な!あとアルコール!ジャンジャン頼むぜ」とマスターに迫る勢いでオーダーをする。少し臆病な性格なのか、あからさまに驚いた様子のマスターは、リベルトの勢いに少し体を後ずさりしながらも「あ、ああ。わかった。……お前は?」とオレの注文を尋ねてきた。オレも同じでと言うとマスターは「わかった。待っててくれ」と料理に取り掛かった。どうやら他にスタッフはウエイトレス一人とマスターだけらしい。
広い厨房だが一人を切り盛りするのが好きなのか、それとも夜に近い時間帯だから他のスタッフがいないのかわからないがこの賑やかさでこの人手は大変だろうとぼんやりと注文が来るまで忙しなく動くマスターを見つめながらそう思った。
※
リベルトが満足するまで飲むのに付き合っていたら、情報収集など到底できやしないとわかっていたので、適当にやってくれと先にカウンターから立ち上がり、マスターに金を払ってダイナーから出た。残り少ない金額をどうやりくりするかが悩みの種だったが、ここではモブハントの依頼を受けれるとマスターから教えてもらいとりあえず一番低いランクのハントを受けて明日退治に行くことにした。
まともな所で寝るにはちょうどいいモービルも空いていたので早速頼んでおいたので、今日の宿は心配はいらないな。
「……ミニマートでいるものを買っておくか」
明日に備えてやれることはやっておこうと思ったのでオレはミニマートで色々と細々と旅に必要な物を買いそろえた。王都の品ぞろえには劣るがやはりこの地域独特の食べ物なんてものも売っていて興味をそそられるものもあった。だがそこは予備金も残しておく必要があるので、またの機会ということにしておいてミニマートを出た。
買い物袋を両手に一杯担ぎながらモービルに置いてくるためダイナーの目の前を通り過ぎる。横目に店内に視線をやればリベルトが酒瓶片手にテンション高くマスターに絡んでいる。
『イェーイ!オレたちサイコーだぜぇ!キャッホウぅぅぅうう――ー!』
『……おい、は、う、うるさいぞ』
『マスターも一緒に盛り上がろうぜっ!オレの親友はなぁ、ルシスを救った英雄なんだよ!!』
『…そ、そうなのか?』
『おうよ!今度は姫様の騎士を目指すと言い張ってんだ!こりゃ応援してやんねぇで誰がしてやんだよ?!』
『お、オレに言わないでくれ……』
もう暴露していやがる。オレは何も見なかったことにして通り過ぎた。だが口から出るため息はどうしようもなかった。
「……はぁ……」
気持ちの面ではすぐにでも出発したいところだが今のオレ達では到底無理なことはわかっている。だがああやって酔う度に暴露話されていたんじゃこっちの身が持たない。幸い、マスターは酔っ払いの戯言と気にした様子もないようだった。
これはある意味一人の方が良かったんじゃないか。と考えなおそうとも思ったが、リベルトの気持ちを汲んでとりあえず保留にしておいた。モービルの中に荷物を置いてまたオレは外へ出た。ミニマートの隣のガレージでバイクを修理してもらうためだ。ガス欠もあるが、戦闘中に不意を突かれて襲われたりもしたのでその影響か、スピードもあまりでなくなったからだ。幸い、明かりはついているようだったのでガレージに人がいると判断して覗いてみることにした。
「ちょっとすまない」
「……ん?」
余裕で車二台は入るだろう広いガレージ内には専用の道具が壁際にセットされていた。その片側に整備中の車が入庫されていて、カチャカチャと整備している音がした。
女の下半身が出ていたからきっと整備士か何かだろう。……恰好が大胆すぎるような、気がした。
オレの声に反応しその整備している車の下からゆっくりと出てきた。
「よいっしょっと……。あれ?見ない顔だね。どうかした?」
「あ、ああ。すまない、仕事中に」
「ううん、いいよ。もう少しで終わるところだったから」
整った顔に汚れた油をつけて気にした素振りもなく立ち上がる金髪美女。初対面とは思えないフレンドリーな対応にオレは多少面食らってしまった。
「それで、何か用事があったんでしょ?あ、私ここの整備士してる、シドニー。よろしく」
「ああ、オレはニックスだ」
軽い挨拶をしてオレはバイクが故障してしまっていることを告げた。するとシドニーは疲れている様子も見せずに、軽い言い方で「とりあえず見て見ないとわからないかな。そのバイクこっちまで持ってきて」とオレに指示してきた。オレは言われるがままバイクをガレージに移動させた。調子が悪いところをわかる範囲で伝えると彼女は、少し困った表情で「……うーん、ちょっと部品が足りないかな……。ゴメン、部品とか取り寄せになるから時間が掛かるかも」と申し訳なさそうな顔をした。
オレは「いや、大丈夫だ。しばらくここに滞在する予定だったから」と言うと、シドニーは「そうなんだ。オッケー、それなら大丈夫だよ」と明るく微笑んだ。
バイクは預かってもらうことになり、大体の費用を計算してもらうと思ったよりも高くはなかった。
「君さ、王都から脱出してきたんでしょ?」
「……そうだが、わかるものか?」
「分かるよ。そういう人結構来るからさ。……こっちも出血大サービスでやってるからね」
パチン!とウインクを飛ばすシドニーは様になっていて、
「……そうか。……ありがとう」
彼女の人となりが分かるやり取りにオレは笑みを浮かべて礼を言った。シドニーは顔を振って「気にしないで」と微笑んだ。それから彼女は外の景色に視線を向けながら、迷いのない言葉でこういった。
「きっと、ルシスは持ち直してみせるよ」
「……何か根拠でもあるのか?」
オレがそう尋ねると、シドニーは視線をオレに戻しながら
「まぁね、知り合いにルシスの為に粉骨砕身してる友人たちがいるからさ。……信じてるんだ。皆のこと」
とあえて詳しく語ることはなかったが、最後の言葉はその人物との関係性を現すものだった。絆、といったところか。
「……そうか」
それはオレにとっても心強い話で、深く突っ込むことはしなかった。
きっとそいつ等もオレのように大切な者を守るために行動していることは伝わったからだ。
「良い友人たちだな」
「まぁね。でも一人は妹みたいな可愛い子なんだけどね。危なっかしくて目が離せないんだよ」
「へぇ、オレの知り合いにもそういう奴がいる。奇遇だな」
「そうなの?世間は狭いものだね」
他愛もない話で盛り上がり始めた時、「ニックス!」と血相を変えたマスターがオレの名を叫びながら走り寄ってきた。シドニーは目を丸くして驚いた様子。
「あれ?マスター、どうしたの?」
「アイツを、なんとか、してく、れ」
疲れ切った様子で、オレにアレと示してきたのですぐにピンときた。
「ああ、リベルトか」
「豪快にいびきかいて、駄目だ」
「悪かった。すぐにモービルに運ぶ」
どうやら回収する前に眠ってしまったらしい。他の客にも迷惑をかけているようでオレはシドニーに「後は頼む」と挨拶をしてマスターと共にダイナーへと走った。
「頑張ってよ!」
シドニーからそう掛け声をかけられ、オレは走り様手を上げて挨拶を送った。
それからすっかり眠りこけているリベルトをマスター二人でモービルへと運び、礼を言ってマスターが帰るのを見送り、オレも「ふわぁ」と欠伸一つしてベッドへと横になったが眠るまで一分もかからなかった。
【こうして、忙しない夜は瞬く間に過ぎて行った】