レティーシアside
唐突ですが私、レティーシアは悩んでます。色々と悩み多い時ではありますが、少しでも心に余裕を持とうと思います。さて、プロンプトは写真が趣味。暇さえあればカメラ片手にみんなを撮りまくっている。さっきも突然撮られた。許可してないのに。
「ねぇ、姫。こっち向いて」
「ほへ?」
丁度おやつに隠しておいたどら焼きをクペと一緒に食べようとしていた時だ。
ソファに座ってさぁ!どら焼きカモンと口いっぱいに頬張って、後ろから呼ばれたので振り返ったら、
パシャリ!とシャッター音。と悪戯が成功した子供みたいに満面の笑みのプロンプト。
「はい!もらった。ベストショット」
「……うぐ…何勝手に撮ってるのよ」
私は不意打ちを食らって睨みつけながらなんとか口の中のどら焼きをもぐもぐと咀嚼してごっくんと飲み込んでから文句を言った。けどプロンプトは対して気にした素振りもなく、
「可愛いからいいじゃん」
と開き直った。むかつく。
「許可してないから」
「残念、撮ったもん勝ち」
と卑怯にも逃げようとしたので
「……『サンダー』」
とプロンプト目がけて部屋の中で落としてやった。
「ああ!?カメラがっ」
とか悲鳴上げてたけど確認したらちゃんと撮れてたから壊れてない。
「横暴だ!」
「人が食べてる時に撮るのが悪い!」
一喝したらシュンと肩を落として「うぅ、ゴメンナサイ」と素直に謝ってくれたのでご褒美に一緒にどら焼きをどうかと勧めた。プロンプトはガラリと表情を変えて
「やった!」
とクペの隣に座って一緒にどら焼きをおいしそうに頬張った。その瞬間をちゃんと写真に撮ってあげた。
※
ノクトは釣りが趣味みたい。この間暇してたから一緒に行くかと誘われたので、ノクトが手綱を握るチョコボの後ろに乗って湖まで行った。桟橋でひたすら釣れるのを待つ作業。私は桟橋に腰かけて何度目かの問いかけをノクトに投げかけた。
「ねーねー、釣れた?」
「まだ」
「飽きたよー」
「だったら来なきゃよかっただろ」
いつものノクトじゃない。邪見に言われて少々へこんだ。どれだけこの釣りの大切さが伝わってきたが、こっちは暇つぶしにきたのであってここでさらに暇つぶしが増えるなど誰が考えるだろうか。私は子供みたいに頬を膨らませて拗ねて見せた。
「ぶー、冷たいノクト……」
「……」
だがまったく反応が返ってこない。ノーリアクション。無視されたのが癪に障った。けどかといって私はノクトみたいに忍耐強いわけじゃないので普通の釣りのやり方じゃ無理。だから前に本で読んだ知識を試してみることにした。その場に立ち上がって、ポシェット(クペからもらった特別のポシェット)に手を突っ込んでごそごそと目的のものを探し出す。
五分ぐらい探してようやくお目当てのものを見つけた私は意気揚々とそれを掴みだして
「えい」
と勢いよく湖に放り投げた。するとようやくノクトが反応して驚いた顔で私を見やった。
「な!?レティ!何して」
ビャッシャーン!
ノクトの台詞は途中で遮られた。湖の中心から大きな水柱が上がり勢いで飛んできた水が思いっきり当たった。冷たい……。
アレが水中爆発を起こしたのだ。何を投げたかって?もちろんアレである。
一体何事が起ったのか、信じられないと呆けるノクトの目の前で、湖からぷかぷかと浮き上がってくる気絶した大量の魚たち。
「爆弾投げて魚捕まえるって本で読んだから。手っ取り早いじゃない。良かったね!大漁だよ」
「……この、馬鹿か!?」
ノクトの怒りのげんこつが頭に容赦なく下され
「きゃん!」
でっかいたんこぶこさえちゃいました。
「痛いよー」
「今回は許さねえぞ」
あまりに痛くて涙目になってたら、耳元で突然シヴァの声がして
『可哀想なレティ、大丈夫よ。私が冷やしてあげるわ』
と私のたんこぶ部分に小型の雪だるまを創ってくれた。
『これで痛みがやわらぐでしょう』
「ありがとう!」
私は両手で雪だるまを固定しながら礼を言った。ノクトは雪だるまを目にしてぎょっとしていた。優しいシヴァが大好きだ!
※
イグニスは料理。…クッ、わかってたよ。初めてイグニスの手料理食べた時からわかってたよ。絶対かなうわけないって。ガクッと膝をついてきらりと涙を流す私。
「……負けた……」
夕食のメーンはやっぱりイグニスの
「今日はステーキだぞ」
ですよねー。恰好から気合入れてエプロンしたのに私が作れたのは不格好なおにぎり爆弾だけ。それも口よりもデカいサイズ。顎ハズレそうだわ。
「うぅ、私はおにぎりが精々ですよーだ」
「何を拗ねているんだ」
「別に!」
ツンとそっぽを向いているとイグニスが仕方ないとため息をついて私の傍にしゃがみ込んだ。
「君が料理を覚えたいというのなら教えてやるぞ」
「……ちなみに、優しく?」
上目遣いにお願いしてみた。こうすると男は弱いらしいって教わったから。
誰に?シヴァ。
でも究極の料理を目指す男、イグニス・スキエンティア!
「いや、料理は奥が深いんだ。それなりに覚悟してもらおう」
まったく私の魅力にかかることなく逆にスパルタ宣言してきた。
「いやー!」
私は悲鳴をあげて思わず立ち上げると皿に乗せたお手製おにぎり爆弾を掴んでイグニスの口に押し付けた。
「ふご!?」
うまい具合にイグニスの口にはまったおにぎりのお陰でその場から逃走することができた。でも後でこってり叱られ、ステーキは没収された。おにぎりは美味しかったと褒めてもらえたからよしとしてあげよう。……やっぱり、良くない。お腹すいた。自分が作った不格好なおにぎりだけじゃ足りなくて、グーと鳴るお腹抑えてベッドに丸まっているとノクトがやってきて、こっそり隠しておいたという肉まん持ってきてくれた!
私は大喜びでお礼を言ってそれを受け取り、ノクトが見守る中、美味しく頂いたのであった。
※
グラディオラスはキャンプ。これは言わずともわかる。
というか趣味というより本職とでもいえるレベルだ。何をやっても失敗してしまうので思わず相談を持ち掛けた。
「…ねぇねぇ、皆趣味がはっきりしてるんだけど私はなにしたらいいと思う?」
夜、たき火を囲うように置かれたチェアに座りながら、同じくチェアに背中を預けゆったりくつろいでいるグラデイオラスにそう聞いた。
「趣味ねぇ、様は好きなことだろ?深く考えすぎじゃねえか」
「別にそんなに深く考えては……」
腕を組んでうーんと唸る私に、グラディオラスはよっと体を起き上がらせた。
「これが好きだなとかってのあるだ?一つくらいは」
「好きなこと、読書?」
「それでいいじゃねえか」
「でもそれは生きていく上で必要な知識を身に着けるためであって好んでというわけじゃ……」
「じゃあモンスターに好かれる」
「それはただの体質!」
「クペ撫でまくり」
「それは愛情表現!」
「じゃあプロンプトいじり」
「それは!……確かに、好んでやってるわ。これが私の趣味だったの……!?」
「おい、冗談だからって、聞いてねぇ」
さっそく私はグラディオの助言のまま、ルンルンと気分よく鼻歌唄いながらプロンプトの元へと向かった。彼はテントから出てきてシャワーを浴び終えた直後らしく、Tシャツに短パンというラフな格好でタオルを被っていた。
「プロンプトー!明日は何して遊ぶ?」
「やめてこないでマジでオレ死んじゃうぅ――!カメラ壊されたし」
けどプロンプトは危険を察知して素早い脚力で駆けていく。訂正、私から逃げていく。
ウフフ、けど私は今自分の趣味が分かって機嫌がすこぶるいいので怒ることはない。
逆にこの状況を楽しむ余裕ができた。
「カメラは壊してません!黒焦げになっただけ。なるほど今から追いかけっこね!オッケー、私が鬼でプロンプトが逃げる方ね。ちなみに捕まったらモルボル狩りに付き合ってもらうから。よし!ヘイスト」
「うわぁぁああああ――――!殺されるぅぅ」
こうして私の趣味はグラディオラスの助言で無事見つかることができたのだった。
※
おまけ。
「すまねぇ、プロンプト。オレが余計なこと言っちまったばかりに。……強く生きてくれ!」
とか言いつつ被害を受けたくないので卑怯ながら見守っていたグラディオだった。