レグルスの子供たち   作:サボテンダーイオウ

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プリンセスサイキョー伝説、確定?

確かに乗ってみたい、とレティは力強く熱願していた。だがノクトたちはそれは無理だと思いっきり否定した。いくらレティがモンスターに好かれる能力があったとしても。気軽に乗せてとお願いしてすんなりと乗せてくれる奴ではないはずと高を括っていたのだ。確かに、一般人なら決して近づかないモンスターでもレティは恐れず、むしろ嬉々として駆け寄っていく。周りの人間に止められたとしても、だ。むしろ張り倒す…よりは魔法で蹴散らして進みそうである。そんな王女様は、ついに標的を見つけてしまいました。

ダスカ地方にて、大きな沼地に遠くからでも一発でわかるほどの巨体の持ち主。道路を走っていたレガリアから標的を見つけてしまったレティは大声を上げて

 

「止まって―――!!」

 

と叫んだ。わざとイグニスの耳元で。

 

「いっ!?」

 

驚いて片耳抑えて思わず急ブレーキを踏んでしまったイグニス。

ノクト、グラディオ、プロンプトもその巻き添えをくらって呻いた。

 

「いで!」

「ぐぉ!?」

「うぇ!?」

 

レティはその隙を狙ってわざとその場に立ち上がってレガリアのトランク部分に上がって華麗に脱出。道路から平原へと一人で降りていきすたこらと逃げた。

 

「ちょっと乗せてもらってくるー!」

 

と暢気に叫んで。クペはちゃっかりレティの肩にしがみ付いていた。

 

「大丈夫クポ~。クペがいるクポ!」

 

と言っているがゆっさゆっさとレティの肩にしがみ付いているだけで精一杯らしい。レティに「ゆっくり走るクポ!?」とお願いしていたのが頼りない。

勿論、ノクトたちはレガリアから飛び出て慌てて追いかけ始めた。何度レティに止まれと声を張り上げたか。それでもレティは止まらない。なぜならレティだからと納得できてしまうのは、このような体験に慣れてしまったからか、それともこういうトラブルが毎回起こることを知っているからか。全力を出し切っていたとしても、なかなかレティとの距離が縮められないことにノクトは幾度となく舌打ちした。しかも

 

「馬鹿レティ!もうアホレティって呼んでやるっ!」

 

と怒鳴りながら自分たちに襲い掛かるガルラの群れ(レティがなんか叫んで頼んでいた)を蹴散らすため武器を装備して攻撃をけしかけた。イグニスはまだ耳がキンキンするらしく、左耳を抑えながら、

 

「…今日の夕飯、抜きだ…抜きにしてやる…」

 

とレティへのお仕置きを決めたようだ。何ともいえないおどろおどろしい気配がイグニスから放たれている。プロンプトは銃を装備しながら苦笑いしつつ、

 

「やっぱり前回の運転させてもらえなかったのを根に持ってるんだね」

 

とイグニスに同情し、それとなく八つ当たりをされないようにイグニスから離れた。グラディオは、

 

「だからってアレはねえだろ」

 

とレティの行動に心底呆れた様子で阻もうとするガルラに大剣を叩きこんだ。

ガルラの群れもレティのお願いに負けて堪るかと躍起になってノクトたちに猛然と襲い掛かった。だがガルラたちが必死なようにノクトたちも今回ばかりは必死なのだ。レティが向かったモンスターは、カトブレパス。あの、カトブレパスなのだ。レティにとっては、乗り物対象だとしてもノクトたちにしてみれば強敵以外の何者でもない。もし、万が一あの巨体の足で踏みつぶされでもしたら、一発で終わり。

そんな最悪な展開が脳裏をよぎり、猶更ノクトはガルラの巨体に蹴りを入れたりして押しのけて「邪魔だっつーの!」と怒鳴りながらレティを追う。

なんとかガルラの群れは抜け切れた。

 

だが一足遅かった。レティは沼地のほうまでたどり着いていた。

靴が濡れないようにちゃっかり裸足になって準備万端と沼地に入り込んでいく。前方には、二体のカトブレパスがいた。しかし、すんなりと足を入れれば泥に足元掬われ身動きができなくなるのは、レティだってわかっているはず。だというのにレティはそんなことも気にせずに足を沼地へと沈めていく。そして、案の定、足がはまったらしく「あれ?抜けなくなった…」と呟いた。

目の前にはカトブレパスがゆっくりと頭を下げてやってくる。沼に足を取られて身動きできないレティ。

銃でガルラを撃退しながら、カトブレパスのデカさに改めてレティの無謀さを感じ取ったプロンプトは焦りをあらわにした。

 

「うっそ、でかー。……やばいやばいやばい!姫がやばい!」

「んなことはわかってる!」

 

間に合うかどうか!ぎりぎりの瀬戸際にノクトは焦った。

 

「魔法を使う、その隙にレティを引っ張り上げるんだ」

「イグニス!」

「ノクト!逃げることだけ考えろよ」

「グラディオ、わかった!」

 

頼もしき仲間の存在に励まされ、ノクトは絶対間に合わせると決めた。

 

「レティ!」

 

声を張り上げて、全身の筋肉を使ってレティだけを目指す。この手でレティを助けるんだ!

だがカトブレパスのほうがやや動きが行動が早かった。どうにかして足を抜かせようと躍起になっているレティへ、ぐぐっと鼻先を近づけていった。

 

間に合わない、誰もがそう思った。

だが、予想外の展開が待っていた。レティが困った様子でカトブレパスにこう訴えた。

 

「足抜けなくなっちゃった、助けてくれる?」

 

とお願いすると、カトブレパスは鼻先をレティに近づけた。レティは両手を伸ばしてカトブレパスの鼻先にしがみ付いた。するとカトブレパスがゆっくりと頭を上げるとレティの足がすぽっと綺麗に抜けたではないか。そのまま岸の方にレティを持ち上げてゆっくりと下す。レティはほっと胸を撫で下ろして「ありがとう」と笑みを浮かべて礼を言った。

カトブレパスはレティの言葉を理解しているみたいに、気にするなという風に鳴き声をだした。

 

「あのね、ついでで悪いんだけど。私君の上に乗ってみたいんだ。ね、乗らせてくれない?」

 

レティの唐突なお願いもカトブレパスにはなんてことないらしく、快く(?)レティを頭の上に乗せてその長い首をぐーんと持ち上げた。

 

「すごいすごい!景色最高ー!」

「……こんなことできるのレティぐらいクポ」

 

目をキラキラさせて大喜びするレティと、ぐったりお疲れモードのクペ。

カトブレパスは周辺を歩き回ってレティを大いに楽しませた後、彼女を岸に下して沼地へと帰って行った。レティはカトブレパスに手を振って見送った。

 

「ふぅ、楽しかった。……あれ、ノクトたち。何してんのここで?」

 

ようやっとノクトたちの存在に気づいたレティだが、その言葉に一気に脱力感に襲われたノクトたちは、

 

「「「「……」」」」

 

無言で背を向けるとレガリアへと帰った。レティは「変なの」と首を傾げながらその後ろに続いた。クペがパタパタと羽を羽ばたかせてレティから離れてノクトの肩に飛び乗った。

 

「そう毎回頑張ってたらキリがないクポ。時には見守ることも大切だクポ」

 

とレティに振り回され続けて経験豊富なクペがアドバイスした。悄然とした表情でノクトは、

 

「だな」

 

と短く答えた。

夕飯時、やっぱりレティはイグニスにより夕食抜きの刑にさせられ「なんで?!」と信じられない様子だったという。

 

【お腹減ったと泣きついたら結局食べられました】

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