レグルスの子供たち   作:サボテンダーイオウ

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二体同時召喚じゃなくて何体召喚?

今日も王子様御一行は帝国魔道兵に追いかけまわされていた。空から飛空艇でぶーんとやってきて、ぽいぽいぽい!と落ちてくる帝国魔道兵たち。だがすでに今ので八回目。幾らレティに無理やり鍛えさせられてRPG風に表現するとLv75くらいになっていたとしても飽きるものは飽きる。その中でも特に飽きていたのが、彼女だ。飽きていただけではない。朝から不機嫌状態なのだ。レティに会いに来たカーバンクルがぽろっと漏らした新たな事実。ルナフレーナがすでにタイタンへの啓示を終了させていたというのだ。これには愕然とさせられたレティ。まだ全てのファントムソード回収には至っておらず、どうにも気が焦るばかりなのにこの事実。ショックを受けないほうがおかしい。だがそれでも頑張ろうとしたのだ。レティなりに。たとえ、懲りずにやってくる帝国魔道兵らを相手にするのが億劫になってきたとしても。七回目までは許してやろうと寛大な心で出迎えていたのだ。これで、終わりだろうと。でも奴らはその期待を見事裏切って八回目に突入しのだ。だから、レティの色々堪えていた線は、プッツーンと見事に切れた。

 

「……そろっと懲りるって言葉を知らないのかしら、ね」

 

鬱陶しそうにレティはそういうと、右手に装備した杖をくるくると両手で回転させて、ぐさっ!と地面に突き刺した。そして武器を構えて出迎えようとする男衆に、こう言い放った。

 

「巻き添え喰らいたくなかったら私より前に出ないこと!被害被っても保証はしません」

 

いち早くその言葉に反応したのはノクトだった。顔面蒼白になり

 

「……レティが完璧怒った……、ヤベーぞ離れろ!?」

 

と言い残しさっさとレティよりも後方に下がるために駆けだした。必死に。

 

「ノクト!?」

「マジで?姫の怒るとこは見たことあるけど、本気の怖さっでどうなのかな…」

「お前ら、マジで死ぬぞ。さっさと下がれ!」

 

イグニスとプロンプトに危険を促しグラディオラスが狼狽えた顔でとにかく下がれと怒鳴った。二人が戸惑いながらも言われた通りにレティの後方へと下がった途端、レティはこちらに向かってくる魔道兵の大軍に声高らかにこう叫んだ。

 

「てめーらまとめてぐさぐさのぷすぷすのぺっちゃんこにしてあげるわ!」

 

そういうな否や、杖を媒介に召喚を始めた。一気に天候がガラリと変わり、どんよりとした曇り空がさぁーと広がるとそこに緑色の巨大な何かが現れた!

 

「サボテンダー、入ります!ぐさっ」

 

とちゃんとサボテンダーと言っておいて、巨大ジャボテンダー(髭)を召喚したレティは、「やれ」と目元ひくひくと痙攣させてイッちゃってるみたいに命令を出した。巨大ジャボテンダー(髭)はレティに向かってカクカクと手足を動かした。どうやらわかったと言っているらしい。そして巨大ジャボテンダー(髭)の攻撃が始まった。『すってんころりん』から始まって『針万本』そして最終技『針ン千本』。文字通り、魔道兵たちは穴だらけになり使い物にならなくなった。

 

「こわっ!」

「詐欺じゃん」

 

プロンプトがジャボテンダーの恐ろしさに身を竦ませ、ノクトがツッコミした。

だがまだ終わりじゃない!ジャボテンダーの好きに暴れさせてる間に、またレティの怒りは炸裂する。

 

「続いてトンベリさん入ります!ぷすっ」

 

黒い水たまりからぬっと緑色の手が這い出たと思ったら、左手にランプを携えて水たまりから姿を現す黄色い目とフードがラブリーのトンベリ。レティは「お願いします」と丁寧に頭を下げた。トンベリは静かにこくっと頷くと、ぺたり、ぺたりと一体の魔道兵に近づき右手に持つ包丁で、刺した。『プスッ』と。魔道兵は、音もなく地面に倒れた。レティは一人拍手を送り、

 

「お見事です。さすがトンベリさん」

 

とトンベリの攻撃を褒めたたえた。トンベリは誇らしげに胸を張ってまた次の魔道兵を刺しに行った。

 

「なぜ敬語なんだ…」

「あれ、結構年長らしいぜ」

 

首を傾げるイグニスとそれを説明するノクト。レティは次なる召喚に入った。

 

「続いてチョコ入りまーす!超かわいいからって舐めんじゃないわよ」

 

レティが呼び出した召喚獣、それは子供のチョコボだった。プロンプトは頬を緩ませて「チョコボだー!可愛いー」と喜んで魅入っていたが、その攻撃はえげつないものだった。『チョコファイア』で焼いて『チョコフレア』で二度焼いて『チョコメテオ』で星を落として潰し、『チョコボックル』でデブチョコボを落とし二度潰しにかかるという慈悲の欠片もありはしない残酷な攻撃に、プロンプトはチョコボへの認識を改めた。

 

「オレ、可愛いだけのチョコボで、いいよ……」

「現実なんて、こんなもんさ……」

 

遠くの彼方を見つめたそがれるプロンプトにグラディオラスがそっと肩をたたいて慰めた。その一方、レティはというと、

 

「ふふふ、ふはははははは!どうだ、参ったか鉄人形共よ!これに懲りたら一日に八回も来るんじゃないわよ来るなら一昨日きやがれってんだ!へーん!」

 

デブチョコボの上に乗っかって頭上から上機嫌に眼下に転がる魔道兵の残骸を見やっては、悦に入って喜んでいた。レティの傍ではジャボテンダーが空中でぐるぐると針を飛ばし続け、トンベリさんが残骸になった魔道兵にさらにプスッと刺し続けていた。

 

「さすが姫、と褒めたいとこだけど。正直言って怖いです。ダンジョンの中じゃもっと怖いです」

「才能のすごさと本人のレベルがあってねぇからな。見た目に反して」

「逆に敵が哀れに思えて仕方ない。あのやられ具合、まるで雑魚キャラ扱いのようだ」

「最近レティにしごかれてるオレ達から見りゃそうだと思うけどな」

 

遠巻きに見つめる男衆はそれぞれ感想を述べて、心に誓った。

 

絶対、レティ(女王様)を怒らせるな。

 

それは今後の戦闘で大いに生かされる教訓となった。

 

【その才、果たしてどう役に立つか】

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